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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
幻想スケッチ
33/107

暗闇ではどんな色だって意味が無い

 とっても長い時間、落ちていた気がします。

 なんだかとっても寒いような気がします。

 何時の間にか、叫び声は出なくなっていました。

 のどがつぶれてしまったのかもしれないし、彩萌が疲れてしまったのかもしれません。

 しーちゃんは彩萌の腕の中に居ます、どこまで落ちるのか分かりません。

 マントを着ていれば、もう少し暖かかったのかな……?

 永遠と落ちて行くのかもしれない、なんとなくそう思えてしまって彩萌は目を閉じました。

 終わりが来ることを祈って、温もりを求めて彩萌はしーちゃんを強く抱きしめます。

 お菓子とかどうなっちゃったのかな、分かんない。

 マントも魔法書もランドセルも置いてっちゃって、どうしよう?

 突然寒さも感じなくなって、目を開けばやっぱり真っ暗な空間に居ました。

 でも、真っ暗は真っ暗でももう落ちていなかったです。

 いつもとは違う感じです、いつもだったらそのまま投げ出されるのに。

 どうしたんだろう、なぜかしーちゃんは体を震わせて彩萌にすり寄ってます。

 でも真っ暗だからしーちゃんの姿なんて見えません。

 さっきまでは不思議空間に居たおかげか見えていたのに。


「……しーちゃん?」


 かすれてたけど、声は出ました。

 しーちゃんは珍しく怯えたように震えて、彩萌に強く抱き着いてきます。

 灯りが欲しいなって、思っていたら誰かが居るのかしゅるって感じで服がこすれたような音がしたんです。


「……誰? 誰かいるの?」


 聞き覚えのある声が聞こえます、その声を聞いて彩萌はちょっぴり安心したんです。

 だってディーテさんの声だったから、でも安心したのに彩萌は不安な気持ちにもなったんです。

 彩萌に抱き着いてくるしーちゃんも同じ感じになったのかもしれません。

 彩萌はディーテさんの声を聞いて、安心したのに怖くなって不安になったんです。

 なんていうか、気分が悪い。

 すごく、嫌なんです。気持ち悪くて怖くて嫌で、気分が悪くて寒くて泣きたくなったんです。

 どうしてか分からないけど、すごく逃げ出したくなったんです。


「誰? どうやって入り込んだの? どこに居るの? ――……あぁ、灯りをつければ良いんだ」


 なんだか当たり前のことを、気付かなかったように言うディーテさんはやっぱりいつもと何かが違います。

 見付かるのが怖くて、ディーテさんの声が聞こえない方向に音を立てないようゆっくりと四足歩行で逃げればすぐに壁に当たってしまいました。

 手を伸ばして隠れる場所を探すけど、微かなすきま風を感じたけど隠れる場所なんて無かったです。

 ぼっ、て何か燃えるような音が聞こえました。

 彩萌は目をつぶって、ディーテさんに背を向けてたから見えませんでしたけど。

 こつこつこつって、歩いて近づいてくるのが何だか怖い。


「全然力なんて感じないけど、ここまで忍び込んで来るなんて何処の馬鹿な――……」


 彩萌の肩をぐいって引っぱって、ディーテさんは言葉をつまらせます。

 彩萌はまだ怖いので、しーちゃんを抱っこしてギュッと目をつぶってました。


「えっ、あれっ、……もしかして、彩萌……ちゃん? う……わっごめんね! どうしよう、わりと本気で悪意ぶつけちゃったかもっ」


 慌てる声は、いつものディーテさんでなんだか怖いのが無くなった気がしました。

 ほっとして、おそるおそる目を開けばあせった顔で慌てるディーテさんが見えました。

 なんだかその顔を見ると、安心できて涙が出て来てしまいました。


「あ、あぁっごめんね! お兄さんちょっと確認不足だったかもっ、本当にごめんねっ!」


 今までで、一番死ぬかと思った。

 ムファトさん(フレンジアさん)がクレイドールと戦っている時よりも、ずっちんに売られかけた時よりも。

 一番怖かったかもしれない、異世界に来ちゃったと実感した時よりも。

 穴に落ちる時よりも、ずっとずっと怖かったです。

 本気でディーテさんに殺されるかと思いました。

 魔王様は、やっぱり怖い存在なのかもしれないなぁって思います。

 安心したからか、怖かったからか分かんないけど彩萌の涙は止まりません。

 放心状態ってやつかもしれません……。


「ご、ごめんね……怖かったよね。――……お兄さんのこと、嫌いになっちゃった?」


 放心状態な彩萌はまともに答えられなかったけど、首は振っておきました。

 しーちゃんは、ディーテさんの事を少しだけ警戒してました。

 ディーテさんは首を振った彩萌の涙を指で拭きます、……ハンカチ持ってないの?

 よしよしって頭を撫でてくれます、オリーネ先生に撫でられた時は嬉しくなったけどディーテさんに撫でられるとなんだか安心します。

 お母さんになでなでしてもらった時みたいな、お父さんに抱っこされた時みたいな感じ?

 うん……彩萌の事知ってて彩萌に好意を向けてくれて彩萌を受け入れてくれる存在だから、安心してしまうのかもしれないです。

 だって今まであった人たちは、彩萌が一方的に知ってるだけで相手は知らない。

 彩萌は知ってるのに、警戒されて変な目で見る。

 ……怖かったなぁ。

 ディーテさんにもされたけど、真っ暗だったから仕方ないね。

 ディーテさんはぎゅーってしてくれました、いつもだったらセクハラだって言ってやるところですが今は許します。

 彩萌は今家族的な愛にうえているのです。お母さんに会いたい。

 ディーテさんの好意は、なんだかお母さん的な愛に似ていますからね。

 なんでだろうね。

 そう言えば過去なのに、どうしてディーテさんは彩萌を知ってるのかな。


「ごめんね、お兄さん反抗期だったから……つい、触れるものみんな傷付けちゃう系だったから……」

「……でぃーてさんは、ろりこんじゃないですよね。おかあさんてきなかんじですよね」

「お母さんでもお父さんでも、お兄さんだろうとお姉さんだろうと彩萌ちゃんが望むならそれで良いよ」


 前にも同じようなこと言ってたような気がする。

 その時は、ロリコンでも良いよって言ってた気がするけど。

 あー、ディーテさん暖かい。なんか冷え切った彩萌に温もりをくれるよ……。


「こんな場所だから、お茶も何も出せなくてごめんねー……彩萌ちゃんが来るなら綺麗に掃除しておもてなしの準備したのになぁ」

「そう言えば、ここどこですか?」

「ん? 牢屋だよ?」


 そうですか……、牢屋ですか……。

 何なんだよー、みんな檻とか牢屋とか好きなのかよー。

 というかディーテさんなんで牢屋なんかいるんだよー、魔王様でしょ?

 そもそも牢屋でおもてなしってなんだよー、そこはなんか牢屋から出ようよ。

 まあ牢屋だから出られないんだろうけど。

 いや、なんかディーテさんの口振りだと簡単に出られそうな気がするけど。


「お兄さんはやさぐれて反抗して牢屋で引きこもりしてるんです、現実を見るのが怖くなっちゃったんです」

「……えーっと、せめてもっと明るいところで引きこもりした方が良いと思いますよ?」

「そうだね、彩萌ちゃんかどうか確認できなかったもんね。もっと明るいところに行くよ」


 ディーテさんは彩萌から離れてにっこり笑って言いました。

 そう言えば、すごい明るい。ディーテさんの魔法のおかげでくっきりはっきり部屋の中とか見えます。

 鉄格子じゃなくて、鉄の扉が見えます。部屋は狭いです。

 埃はちょっとつもってますけど、以外と綺麗ですね……。カビも無いですし。


「なんか、お兄さん希望が湧いてきたかもしれない。未来の彩萌ちゃんの為にも、お兄さんやっぱり魔王様になろうかな」

「あれ……魔王様じゃなかったんですか」

「そうですよ、まだお兄さんは本と愛情の精霊のディーテ・カーマインですからね。魔王様じゃないのです」


 本と知識を管理するとか、言われてなかったっけ?

 愛情……だったんだ。以外とは思わないけど、なんで知識になったんだろう?

 というか、魔王様ってなろうと思えばなれる職業なの?

 今の魔王様、居るのかな。


「彩萌ちゃん、もし目が覚めていろいろ知ったとしても……お兄さんを嫌いにならないでほしいな」

「えっと……どういう意味ですか?」

「愛なんてもう名乗れないってこと、でも……これはお兄さんの我儘みたいなもんだから気にしないでね」


 頭をもう一度撫でて、ディーテさんは彩萌を突き飛ばします。

 落ちる感覚はいつもの穴に落ちる感覚でした。

 もうお別れなの? 見上げれば、辛そうな顔をしたディーテさんが見えました。


「世知辛いね」


 遠くにいる筈なのに、よく聞こえた声は寂しそうな声でした。

 落ちて行く、なんだか悲しくって涙が出ちゃいます。


「かこにさかえたまぢんのくには、まおうがけちちゃったんだよ」


 それが答えなのかな、彩萌には正解はわかんないけど。

 魔人の国……、そういえば魔法書にも書いてあったかもしれない。

 戦争の引き金となった技術を作った国……だったような。

 すごい力を引き出すオーパーツを作って、それをめぐってなんたらかんたらって書いてあったような気がする。


「おーぱーつはまりょくをよごちちゃうんだって、まりょくがよごれたらいきていけないんだよ」


 なんて言ったらいいのか分からないから、何も言わないことにします。

 本当に、世知辛いね。





 ――アヤメちゃんの魔法日記、三十三頁

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