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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
幻想スケッチ
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偽りで繋ぐ真実の首輪

 とりあえず、べるさんの説得はあきらめてエミリちゃんを観察します。

 エミリちゃんは、ぐるぐると鳴いていかくしながら檻の様子を見ています。

 観察されているのはどっちなのか、分からなくなりそうです。

 なんだか、苦しそうに見えます。それとも彩萌が苦しいのでしょうか? 何も出来ないから。

 部屋はきれいに見えるけど、よく見れば窓辺には血が付いていますし、壁にもひっかいたあとがあって血が付いています。

 きっと魔法で元に戻しているだけで、もしかしたらエミリちゃんが暴れたのかもしれません。

 危ないって、みんな言ってましたし。

 エミリちゃんの血なのか誰かの血なのかはわからないけど、壁のひっかいたあとと血は、間違いなくエミリちゃんのものだと思います。

 よく見ればエミリちゃんは全身ひっかいたようなあとがあります、自分でかきむしってしまったようです。

 どうして、そんな事をしてしまったのでしょうか?

 野生動物だって、そんな状態は普通ではないと思います。

 ノミとかダニがついたのかもしれませんけど、本当にそうなのでしょうか?

 早く治してあげないとあとが残ってしまうかもしれません、女の子ですから気を付けないといけません。

 しばらくして太陽がとっても赤くなって暗くなってきたころ、べるさんは動き始めました。


「さて、面倒だが薬の時間か」


 そういうと、なんか人影みたいな姿になりました。

 本当に人影で、なんか怖い。というかそんな姿にもなれたんだ。

 そんなべるさんはエミリちゃんに近付きます、エミリちゃんはとっても怖がってました。

 なんか怖がっててかわいそうに思います、というか薬って何? エミリちゃんは病気なの?

 元のエミリちゃんだったら、そんなに怖がらないんだろうなって思うと、さらに酷い事してるのかもって思います。

 棚の中から、注射器となんか液体の入った瓶を取り出してエミリちゃんを捕まえます。

 逃げようと暴れたんですけど、なんかてなれてるみたいですぐに薬を打ったんです。

 というか、本当にその薬なに? なんだかべるさんが信じられないのであやしいものに見えてきました。


「べるさん、それはなんですか……」

「睡眠薬に栄養剤を混ぜたものだ、害はない。エミリ・リデルは夜になると自傷行為をしてしまう、困ったものだな」

「……元に戻せば、必要無いもの?」

「元に戻しても必要だ、エミリ・リデルが自傷行為をするのは昔からだ」


 なんだか、問題は根深いようです。

 ふむ……、べるさんが悪いやつのように思えていましたが、話を聞かないだけで悪いやつではない可能性もあるのかもしれません。

 しーちゃんは暇そうにごろごろしてるし、そういえば彩萌ずっとここに居るのかなー、トイレとかどうするんだろ。

 そんな事を考えていれば、ぐったりしてるけどまだ起きてるエミリちゃんをベッドに寝かせたべるさんが答えます。


「エミリ・リデルが眠れば、外に出ることも可能だろう」

「べるさん、エミリちゃんはどうしてそんな事をするんですか?」

「死ねないからだ、灰色の魔法は肉体強化、それは無意識に行われる生命維持、病魔に蝕まれ激痛に体を冒されても肉体は健康そのものに見える、故に彼女は嘘吐きと呼ばれその通りに彼女は嘘吐きになった」


「普通なら死ぬ様な怪我でも死なない、だから自傷行為と称した」とべるさんは素直に答えてくれました。

 べるさんは嘘が嫌いだから、本当の事なんだろうな。

 本当の事なのに信じて貰えないって辛いな、だから本当の事が言えなくなっちゃったんだ。

 でもそんな本当の事が言えなくなっちゃったエミリちゃんを嫌うのは、かわいそうな気がしますけど無理な物は無理なのかな。


「どうして、魔物なエミリちゃんも自傷行為をしちゃうの?」

「身体が痛く、違和感があるからだろう」


 なるほど……、夜になると痛みとかがひどくなるのかな?

 でも、それをべるさんが誰かに言えばいいのに、そうしたらエミリちゃんを信じてくれるんじゃない?

 あ……でも、そういえば彩萌が山吹君をかばった時とか、そう言えって言われたんだろー、とか言われた事あるからそう思われちゃうってこと?

 べるさんはエミリちゃんが作った魔法だから、もっとそう思われちゃうのかな?

 うーん……世知辛い世の中だよー。


「べるさんが良い理解者になってあげれば、エミリちゃん良くなると思うんです」

「何故私がそんな事をしなければならない、私は王だぞ」

「やっぱりエミリちゃんの事嫌いなんですね……」

「何故そうなるんだ、私は嘘吐きは嫌いだがエミリ・リデルが嫌いな訳では無い、だがやはり嘘は嫌いだ」


 うーむ、複雑だ。

 でもエミリちゃんの事は嫌いじゃないんだ、良かった。

 痛いの……治してあげたいな、どうすれば良いんだろ?

 こういう時に何故か真っ先にイズマさんが思い浮かぶ彩萌は、イズマさんが万能だと思ってるんだろうな……。

 薬の事なら絶対に山吹君だろうけど、原因はきっとイズマさんの方が簡単に分かっちゃいそう。

 だってあの人、物事の本質を把握する魔法に長けてるんだよ!?

 きっとすぐにエミリちゃんの病気を把握しちゃうよ。


「べるさん、エミリちゃんの病気が治ったら人の姿に戻してくれませんか?」

「断る」

「ど……、どうしてですか!?」

「あの姿の方が、好きだ」


 えー……、どういう事なのー。

 なにそれー、なんでー、エミリちゃん元の姿の方が可愛いじゃん。

 まあ変な耳はあれだけど、エミリちゃんがつけてたリボンみたいだから違和感ないけどもー……。

 えーなんでー、わけ分かんなーい。


「それとも貴様がああなるか?」

「え……、やだよ」


 エミリちゃんはあの姿の方が可愛い、って思ってるからそう言ったわけじゃないの?

 誰でも良いの? 彩萌でも良いの? なにそれ、どういうことなの。

 あんながるるーって感じなのに、怖いじゃん。


「頑丈な檻もある事だ、猛獣を買うには丁度良いだろう?」

「うーん……、ちょうど良いのかなぁ?」


 じゃあ、ライオンとか飼えば良いじゃん。

 有名人はトラとか飼ってるんでしょ? トラとかライオンとかが良いと思うよ?


「私は黒色が好きだ、白よりも」

「だーめー! あやめはちーちゃんのー! あやめはちーちゃんのなのー!」


 さっきまでごろごろしていたしーちゃんが、べるさんにむかって水を吐きました。

 うん……、なんかよく分かんないけどちーちゃんありがとう。

 彩萌はべるさんに飼われそうになってたのかな? うーん、他人の趣味ってよく分かんないね。

 そもそも今のべるさんハエで人影だから、なんかやだなー。

 猫さんの姿に早くなってほしいです。


「猫の姿なら良いのか?」

「よく分かんないけど……猫の姿なら良いって話じゃないと思いますよ?」

「そうだな、猫の姿だと難しいな」


 この自称王様はちょっと、面倒な性格みたい。

 でもまあ、とりあえず明日イズマさんにみてもらうようにエミリちゃんのお父さんに言うとします。

 しばらくべるさんはしーちゃんに睨まれながら、彩萌に話しかけてました。

 真っ暗になったころ、静かにやってきたメイドさんたちのおかげで彩萌は檻から出られましたー。

 べるさんはなぜか彩萌について行きたがってたけど、エミリちゃんの面倒を見なければいけないので部屋に残りました。

 なんか、ちって舌打ちうってました。人影の癖に器用なやつです。

 ちなみにエミリちゃんも黒色、好きなんですって。





 ――アヤメちゃんの魔法日記、二十九頁

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