小さな島の星空信仰
目を開けば、明るい色の髪が見えた。
オレンジ色で、炎の様で温かい色でした。
きっちりと閉められたカーテンに、小さな明かりを灯すランプ。とても小さな部屋です。
その人は彩萌と同じくらいの年だと思います、椅子に座って寝ていました。
たぶん、彩萌がベッドを独占してたからこの子は椅子で寝てるんですよね……、なんか申し訳ない。
彩萌は落ちたと思ったのに、どうしてこんな小さな部屋に居るのかな。
彩萌の部屋より窮屈に感じるのは、カーテンを閉め切っているからかもしれない。
隙間から微かに射し込む光から、昼間だと思います。
しーちゃんも居ないし、ここドコでしょう? またどこかに飛ばされちゃったの?
ベッドから起き上がってその子の近くに寄ってみます、ひざ掛けを掛けてますねー。
うーん、たぶん男の子だと思います。とってもきれいな髪だし、なんかほっぺたもぷくぷくしてるし、女の子みたいですけど。
肌が凄い綺麗です、なんか日焼けとかした事ないのかな? 白くてつやつやです、たまご肌?
それにしてもしーちゃんは何処に行ったんですかね? 置いてきちゃった……とかは無しでお願いします。
じーっと彩萌がその男の子を観察していれば、身動ぎして唸りながら起きたんです。
「あ、おはようございます」
「――っ、わ!?」
少年は椅子ごと倒れました、よほど驚いた様です。ごめんなさい。
少年に手を貸して起こしてあげながら、彩萌は重要な事を聞きます。
「あのー……ここ何処ですか?」
「……おれの家」
いやそんな事じゃなくて、いや大事だとは思いますけどね。
起き上がって身体の埃を払う少年は、ぶかぶかの上着を着てて袖から手が出ていませんでした。
なんか、その服装イズマさん思い出すんですけど、まさかね。流石にね、髪の色違うし……。
「どうして、彩萌はベッドを独占して眠っていたんですか?」
「一緒に寝て欲しかったのか?」
「いや、そう言う訳じゃなくってですね……んーと、どうして彩萌はこのお家に居るのかなって?」
「拾ったからだけど、それ以上の理由が必要か?」
「あ、はい……。どうして拾ったのかとか、近くにもこもこした生き物がいなかったのかとか、彩萌のランドセルは何処かとかいろいろ聞きたいです……」
可愛らしい見た目に反して、有無を言わせない口調というか、俺様の雰囲気があるというか。
彩萌はきょうしゅくしてしまいそうです!
「ランドセル? 持ち物だったらそこの棚の上、拾った理由を強いて言うなら繁殖の為?」
「はんしょく?」
「この島滅びそうだから、保護?」
「……よく分からないけど、助けられたと言う事で良いんですか?」
「幸せ者だね、お前」
あわれむような、あざ笑うような視線を向けられました。
言葉の意味をちゃんと受け取れなかったから、馬鹿にされたんですね。くつじょく的です。
「かわいそうだから教えてやるけど、おれはお前を売るって話をしてるんだよ?」
「彩萌は何も売るものは持っていませんよ、たぶん……」
「お前良いとこ育ちなの? 箱入り娘なの? それとも本当の馬鹿なの?」
「失礼な……、彩萌は少しバカかもしれませんけど本当のバカではありません!」
本当のバカは人を勝手にバカにして見下すような人間なんですよ! まったくもう!
助けてくれた、のかもしれなかったけどなんか、苛々しますよ!
彩萌に対して悪意があるのは分かりました、しーちゃんがいないと困るんですけど、どうしましょう。
「馬鹿じゃない? 黒は優性遺伝なんだよ、多少魔力に影響されるとしてもそんなのスゲー持ってる奴くらいなんだよ? そんな奴そうそういねーんだよ、この島は明るい色の髪を持ってるやつばっかりなの、分かる? おれみたいな。この島は夜活動するの、明るい色は邪魔なの、そしてこの島の国はもう滅んだも同然なんだよ! 此処まで言われて何言ってるかわかんねーんならお前は本当に馬鹿としか言い様が無いんだよ!」
「――……彩萌を売ったとして、何をするの? お金をもらってどうするの?」
何が言いたいのかは、なんとなく分かりました。
柔らかく言えば、彩萌にお母さんになってほしいわけですね……幻想なのに現実が辛い。
そう言われた少年は口を噤んでしまいました、やる事は特になかったんですか?
「……この島から出て、広い家に住みたい」
「なんで?」
「関係ないだろ」
「なんで? 彩萌が居る事で出来るお金じゃん、関係ないの? 関係ないって言えるなんて、君は凄い無神経で幸せ者だね! ストレスフリーで生きていけるんだね! 羨ましいや!」
すごい、彩萌……毒舌出来てる! これなら本物のイズマさんにも勝てる日が来るぞ……!
まあ此処で彩萌がなんとかして生き残らないと、イズマさんにも会えないんですけどね……、イズマさんより山吹君に会いたいけど。
なんか今、彩萌すごい……覚醒状態なのかもしれない! なんか言葉がスラスラ出てきます。
流石大人な彩萌は格が違いましたね!
「彩萌は商品なんでしょ? 商品が傷付いたら大変だよね、クレームもんってやつだよ!」
「……この家だと、三匹入ると狭すぎる」
「三匹?」
少年はすごく悔しそうに話してくれました、まだまだ子供ですね! 彩萌を見習えよ!
少年はこの小さい家に魔物三匹と一緒に暮らしているらしいです、何でも命を救われたとか。
その魔物は、妖精と悪魔とその手下だそうです。この世界の魔物は悪とか邪が付いてても悪いやつとは限らないようです。
ようやくすると、広いお家をプレゼントしたい、ですね!
「どうしても、お金が必要なんですか? お金が無くても、海を渡る方法があるかもしれませんよ?」
「船を持っていれば、それも可能かもしれないけど持ってないし、作り方も分からない」
「……あ、彩萌魔法で簡単に作れる船の作り方知ってます、というか書いてある本もってます」
持ってて良かったリーディアさんの魔法書、もう一度言います。持ってて良かったリーディアさんの魔法書!
豊かな海に囲まれた、湿地の多い島国に行ったときに教えてもらった魔法だって書いてありましたよ。
いつ孤島に流されちゃっても、これがあれば国に帰って来られる、とかなんとか言ってたって書いてあったんですよ。
棚の上に置かれたランドセルを下ろして、中を開きます。
あぁ、なんかすっごく懐かしい気がしてしまうのは何故でしょう?
「これです! 此処に書いてあります!」
「――……これ、何語?」
「……そうか、彩萌が読めるって事は日本語だったか……、盲点だった」
その後、彩萌は身振り手振りをまじえて説明を試みたところ、ダメそうです。
やばいっ彩萌が売られてしまう危機、……って思ってましたが少年はその本自体に興味を持ってくれた様で、読めないのに本にかじりつくようにして眺めてました!
ちなみに、少年がひざ掛けに使ってたのは彩萌がイクシノア様に貰ったマントだった。
あと気が付けば少年が勝手に彩萌がイクシノア様に貰った干しリイム食べてた。あの後、味をしめた彩萌が袋ごと貰ったんですよ。
そして、少年は何故か彩萌のノートと鉛筆でメモしてた、解読したいようです。
勉強熱心だなぁ、というか所有者に許可取ってから食べたり使ったりしてくださいよ……。
ノートの一ページを貰って、彩萌は暇潰しに絵を描く事にしました。
日記はなんか、無くしたら恥ずかしいので書きません。
――アヤメちゃんの魔法日記、二十二頁




