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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
幻想スケッチ
21/107

さらさら、おちた

 影に隠れる様に、火の光のオレンジ色が見える方向へと忍び足で近付きます。

 冷たく暗い色の壁や床が彩萌の恐怖心をあおります、みんな大丈夫かな。

 正直言うと、実感が持てないのです。

 死というのが間近に迫っているのかもしれません、誰かが死んでしまう危機に面しているのかもしれません。

 でも彩萌は、実感できないのです。だって彩萌の知ってる世界には、死なんて無いから。

 頭はぼんやりしていて、身体は冷え切っているみたいで、心臓が熱いです。

 どきどきと大きな音が、耳ざわりでした。

 その通路の先は、下の階を見下ろせる通路の様になっていました。

 大きな音が耳をびりびりさせています、彩萌は目の前の落ちない様につくられた壁に身を寄せて、爪先立ちになって下の階を見下ろします。

 目に飛び込むのは大きながれきの山みたいな、何かでした。

 それは真っ黒な霧の様な物が関節になってて、出来の悪いお人形さんみたいでした。

 なんだかゲームとかに出て来る、ゴーレムみたいだと思いました。

 くれいどーるを見た後、辺りを見回せば焦りが見えるムファトさんに、彩萌を探しているしーちゃんと、苦しそうに胸の辺りを抑えるイクシノア様が見えました。


「クレイドール、汚染されたゴースト種が土や瓦礫などに憑りついて形をなす魔物、物理は効かない」


 ぼそぼそと話す声が聞こえて、彩萌はびっくりして肩を震わせました。

 声が聞こえた隣を見れば、彩萌と同じように前足を壁に掛けて下の階を見下ろすファントムドックさんがいました。

 えっ、喋れたの? 驚いて彩萌がドックさんを見ていれば、ドックさんは言います。


「あれを倒すにはまず憑りついている物から追い出す事が重要、追い出してしまえば物理も効くでしょう、でも追い出すには魔法が必要」

「ど、どうすれば良いんでしょうか……、イクシノア様はなんか、発作起こってるみたいです!」

「ですが、今は追い出すことより重要なのはクレイドールが取り込んだオーパーツ、あれをどうにかしなければ月の加護を得ているムールファグトでも倒す事は難しい」


 おぉう……、オーパーツ……。

 でもなんか、ドックさんの話だと追い出す事は簡単なのかな? どうにかならないのかな?

 視線を戻せば、ムファトさんが囮になってなんとか攻撃を受け流してる感じです。

 なんか、石で出来た手で殴られたら痛いじゃ済まなそう……。ひぃっ。


「フルーリア、貴女の御力をお借りできるなら、オーパーツをどうにかいたしましょう。ですが、追い出す事は出来ないでしょう」

「えっ、追い出せないの?」

「追い出すには退魔の魔法が必要、ですがフルーリアは持っているでしょう? あとは祈るだけ」


 持ってるって、これですか? イズマさんがくれたジェリさんの魔法付きお守り。

 すげーな、ジェリさんの魔法。ちゃんと効果があるんですね。


「オーパーツをどうにかするって、どうするんですか?」

「あれは汚染を作る、穢れた技法で作られた魔具ですから壊さなばならない」

「あの、こんな時にこんなこと聞くのってあれですけど……、ドックさんなんでそんなこと知ってるんですか?」

「私がファントムドックでは無いからです」


 そう言えば、ぐにゃっとドックさんが歪んでどろどろって溶けたんですよ。もう、引きました。

 びよんって感じでそのどろどろの黒くてねとねとした感じの液体っぽいのから腕っぽいのが生えてきて、彩萌を掴んだんですよ!

 彩萌はもちろん叫びましたよ。


「――ギャァアアアアアアアア!」

「喉がつぶれます」


 べっとんべっとんって音が聞こえます、なんか彩萌は宙をぶらーんって浮いてました。

 なんかワイヤーアクションしてるハリウッドスターな感じで彩萌は浮いてました。スカートの中見えちゃう!

 横腹の辺りを力強く黒光りするどろどろの手が掴んでるの、いやぁあああああ!

 たぶんドックさんは天井を這ってるんだと思うんですけど、どんな見た目してるのか気になるけど見たくないぃぃい。

 べっとんべっとん聞こえるから、這ってるってよりは歩いてるのかな!?

 視界の隅に見えた、天井に手を伸ばす黒い腕みたいなのは見えなかった!


「祈ってください、世界平和の為に、祈ってあげてください、イクシノアの為に」


 なんか規模大きくなった!

 クレイドール含め、みんな彩萌とドックさんに視線が釘付けですよぉ!?

 でも祈らないとクレイドールをどうにかできないんですよね、神頼みならぬ、ジェリ頼み?

 もうどうにでもなれって感じで彩萌は目を瞑って祈りました。


「完璧」


 その声が聞こえたと思ったら、彩萌は何か暖かな物に包まれる感じがしました。

 それは水の中に居る様な感じで、目を開けばあたりが真っ暗です。いや、うっすらと向こう側が透けて見えます。

 息も出来ます……、ドックさんに取り込まれたとしか彩萌には思えないです。

 クレイドールが崩れ落ちるのを、ドックさんの中から見ました。

 そしてドックさんは彩萌を取り込んだまま、天井から落下します。

 高すぎて、怖かったので彩萌は目を閉じます。

 べとんって、音が聞こえて目を開けば綺麗に着地していたようです、クレイドールからなんかドックさんによく似た物が滲み出るのが見えました。

 あれが汚染されたゴーストかな、……あれ? じゃあドックさんも汚染されたゴーストの可能性がある?

 びよーんと腕を伸ばしてドックさんは崩れたがれきから、何かちょっと赤錆たような腕輪を手に取って引き寄せます。

 それをぱきりと割ると、中から丸っこい結構大きい石が落ちるのが見えました。

 割った瞬間、一瞬だけすっごく熱くなりましたよ。

 どぽっ、って音がしたと思ったら彩萌はドックさんの中から吐き出されていました。

 ついうっかり振り返れば、たぶんドックさんがたぶんクレイドールから出て来た汚染されたゴーストを取り込んでいました。

 どろどろすぎて、わけわかんねーですよ。

 どろどろは一つになり、それはどろどろしたものから別の物に姿を変えました。

 背の高い、フード付きのマントを着た人みたいな感じになりました。

 フードをかぶってて、中は真っ黒です。一つだけ大きく赤く光るのがたぶん目です。


「じゃ……邪神族」


 イクシノア様の呟きが聞こえます、確かにそんな見た目してたら邪神って呼ばれる。

 どうしてそんな見た目してるの、ファントムドックな見た目の方が可愛かったのに……!

 そう彩萌が思えば、ドックさんはこちらを向きました。


「はじめシルエットの様な見た目はどうかと提案したのですが、それだと犯人の様だからダメだと却下されまして」

「でもそれだと黒幕っぽいですよ!? いやっ、そんな事よりなんで彩萌の考えを見抜いたんですか!?」

「黒幕っぽいのは面白いと、神は言っています」


 そう言うと、邪神族だったドックさんは消えてしまいました。

 邪神族……よく分からん存在ですね。

 ぽかーんと、たぶんみんながしていたと思います。イクシノア様が胸の苦しみを忘れてしまうくらい。


「今まで邪神族と一緒だったのですか? 急に居なくなるからびっくりしましたよ」

「ムファトさん、ごめんなさい……」


 彩萌はぼろぼろになっているムファトさんを見て、視線を逸らしてあやまりました。

 直視するのが、怖かったです。ムファトさんの事じゃなくて、傷が怖いです。

 視線をそらした先で、イクシノア様が地面に膝を着くのが分かりました。

 顔色がとっても悪かったです、すごい、悪いです。

 ムファトさんが近寄るのが見えました、でも彩萌は何も出来ません。うろうろして、おろおろするだけです。

 彩萌はそもそも、近寄ったらダメなんですよね。


「しっかり、気をたしかに!」


 でも本当に彩萌に出来ること、無いのかな。

 足元を見れば、しーちゃんが腕輪から出て来た丸い大きな石を食べてた。

 えっ、食べて平気なの!? 大丈夫なの!?

 おろおろしてればしーちゃんは、暢気な声で言います。


「これませき! おせんはぢゃちんぞくがたべたからへいき! ちーちゃんつよくなる!」

「そっか……、しーちゃん……彩萌どうしたら良いのかな」

「いのればいいぢゃん!」


 きらきらした目で言われたけど、それはなんか冷たいよ!

 でもそうだね、彩萌に出来ることなんてそれくらいだよね……。

 彩萌はテレビで見た様な、祈りのポーズを取って祈ります。

 だってこれしか出来ることない、本当は何かしてあげたいですけど。

 ドックさんも、イクシノア様の為に祈ってあげてって言ってましたしね。


「イクシノア様の病気が、良くなります様に!」


 そうすれば、なんか……綺麗な変な音が聞こえて目を開けば床がきらきらしてました。

 あっ、これ見た事あります、最後に教室で見た魔法陣です。

 ちょっと色違うんですけど、でも同じ感じがします。

 そうすれば、やっぱり体ががくんってしてエレベータに乗った時の感じがしました。


「う、あ――――――――――!」


 なんか無責任な所でっ、イクシノア様ー! ムファトさぁん!

 驚いた様な表情のイクシノア様の顔が見えました、ちょっとだけ顔色が良い様に見えてホッとします。

 ……ムファトさん? 残念ながらそこまで見る余裕は無かったです。

 なんか疲れちゃってた所為か、恐怖でギュッと目を閉じると彩萌は気を失ってしまいました。

 ふわふわした何か、に支えられた気がしました。




 ――アヤメちゃんの魔法日記、二十一頁

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