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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
幻想スケッチ
20/107

月は導いてくれない

 一つ一つ、頑丈な扉をぶっ壊しながらイクシノア様は倉庫内を見て行きます。

 壊しているのはもちろん、イクシノア様です。

 ムファトさんは見てるだけー、彩萌もドックさんも見てるだけー。

 正確に言えば見てるだけなのは彩萌ですね、ムファトさんもドックさんも周囲を警戒してましたね。

 イクシノア様はいっぱい短剣を持ってました、その中で一番頑丈そうなやつを扉の隙間に刺し込んで、なんかぴかって光って小さくバンッて音がすると開いちゃうんです。

 鍵だけ壊してる、らしいです。

 イクシノア様は実はムファトさんより魔法が使える分だけ強いらしいです。

 武芸の腕はムファトさんが上でも、魔法使われたら敵わないらしい。

 でも病気の所為で魔物に近付けないんだそうです。

 本当はお部屋に居なきゃいけないらしいけど、隙を見て抜け出したところをムファトさんに見つかったらしいです。

 でもムファトさんじゃあ太刀打ちできないし、そもそも乱暴に出来ないしで無理やり連れて来られたらしいです、ムファトさんどんまい!

 でもでもイクシノア様に武芸を伝授したのはムファトさんらしいです、実はムファトさんは半人で超長生きしててずっと王家に仕えている騎士らしいです。

 半人だという話を聞いてやっぱりフレンジアさんなんじゃね? と彩萌は思いました。

 そう言えばフレンジアさんの本名はフレンジア・ムールファグト・ソーナじゃん。

 プライベートネームがムールファグトじゃん、略したらムファトになるじゃん。

 やべー本当にフレンジアさんかも知れない、彩萌過去に飛んじゃったのかも……、山吹君居るかな!?

 暇な彩萌がそんな事を考えていれば、腕の中で眠っていたしーちゃんがもぞもぞ動き出しました。


「きゅあぁ……、なんかぁへんなにおいちない?」

「変な臭いですか? 全然分かんないですけど……」

「なんかぁ、よごれたにおいがいる、ここあんまよくない」


 ドラゴンだからですか、ドラゴンだから分かっちゃう何かなんですか?

 でも汚れた臭いがしてる、じゃなくて汚れた臭いが居るってどういう事ですか。

 でもこういう事は早く報告した方が良いと思います、彩萌はしーちゃんを離してムファトさんに近付きました。

 彩萌の横を飛んでるしーちゃんを見て、ムファトさん超びっくりしてました。

 そういえば、ずっとマントの下に居たから見えなかったんだね。


「ねーふれんあー、ここよごれたにおいいる、あんまよくないよ!」

「ふ、フレンア……? このシーシープドラゴンは私を屈辱しているのですか」

「しーちゃんはちょっと舌っ足らずなだけなんです! そう言う意味じゃないですよ!」


 やっぱりフレンジアさんだった、いや今はそんな事はどうでも良いけど。

 でもやっぱりしーちゃんの発言は難解だった様です、ムファトさんは変な顔をしています。

 扉をぶっ壊していたイクシノア様もしーちゃんに気付いたようで近寄ってきました。


「おぉ、フルーリアお前はドラゴンを従えていたのか!」

「うわぁ、おいちそう」


 よだれをたらしたしーちゃんを慌てて彩萌は捕まえます、だってムファトさんの表情が険しかったから。

 人間は食べちゃダメですよ! っめです、しーちゃんめーっ!

 それにしても仕事用フレンジアさんは怖いなぁ。


「ははっ、それでこそドラゴンだな! それで、どうかしたのか?」

「なんかぁ、よごれたにおいいる、はやくでたほうがいーよ!」

「汚れた臭い……か、その言い方だと汚染された魔物が居るって解釈で良いのか?」


「となると、暴れているのは汚染された魔物か」とイクシノア様は小さく呟いていました。

 イクシノア様って以外と頭が良いですね、でも汚染された魔物って何ですか?


「ドラゴン種は魔力に敏感だと聞いていたが、臭覚で感知するのか」

「……私の知っているドラゴンは聴覚で感知していたのですけど、種族によって違うのでしょうか」

「あんね、ごーすとおとない! ごーすとにおいすごい!」

「つまり、汚染された魔物はゴースト種か?」


 イクシノア様とムファトさんのこうさつが始まってしまいました。

 彩萌は暇です、ちょーひまです。だってわかんないんだもん、でもふらふらするのは怖いのでできません。

 というかしーちゃんが早くここから出た方が良いって言っているし、場所移動した方が良いんじゃないですかね?

 そういえば、ドックさんどこ行ったんですか?

 辺りを見回しても、ドックさんの姿がありません。

 あ……、あとさっきまで視界の隅にいっぱい映ってたもやもやした魔物さんも居ないです。

 でも、エミリちゃんはゴーストは知能も色も無いけど、他の生物を害する事は無いって言ってましたよ。

 汚染されてるから、襲うのかな?

 うーん、と唸りながら考えていれば、彩萌のスカートが引っ張られたんです。

 ドックさんでした、彩萌のスカートを噛んで引っ張ってました。なんか伝えたいようです。


「ドックさん、どうかしたんですか?」


 まあ、喋れるわけ無いよね、しばらく引っ張ってたんですけど、ドックさんはなんか引っ張るのを諦めて彩萌の顔をじっと見詰めるんですよ。

 きっと危険を察知したんですよ、二人に伝えようと思って顔を上げれば、なんと誰も居ない!

 これは……、彩萌の危機再来ですね! しーちゃんも居ないもん!

 でもドックさん居るから、ちょっとだけ安心……出来るの?


「ドックさん……、どうしましょ?」


 灯りが無い筈なのに、暗くない所が怖いです。

 すっごい不安になってきたけど、そういえばイズマさんがくれたお守りがありますよ。

 ジェリさんの魔法付き! ランドセルから外してとりあえず手に握ります、こっちの方が効果がありそう。


「こういう時、歩き回るのは良くないんですよ……、冷静に行きましょ」


 ムファトさんやしーちゃんが彩萌だけ置いて行くなんてありえません、イクシノア様は前しか見えて無さそうだからわかんないけど。

 魔法かもしれません、でもこれって彩萌が魔法をかけられたんですか? それとも他の人?

 もしイクシノア様が魔法をかけられたんだとすれば大変です! 発作が起きちゃうらしいです。

 いや、彩萌が魔法をかけられてても大変です、一人で対処できない!

 ドックさんだけが頼り……――って居なくなった!?

 足元に居たはずのドックさんも居ません、ヤバイです、彩萌一人です。

 ど、どうしよう? れ、冷静になるんだ彩萌は大人だもん。

 お守りもあるし、大丈夫だよ。


「付いて来ていると思ったら、付いて来ていなくてびっくりしたよ。あまりぼんやりしないでくれるかな?」

「あ……ムファトさん、私もびっくりしました……」


 声を掛けられて顔を上げて、彩萌はすぐに気付きました。

 これ、ムファトさんじゃない。

 えっ、でも彩萌どうすれば良いんですか? これ気付いてます的な感じにしたらすぐに殺されちゃう系ですか?

 気付かないで付いて行ったら、付いて行った先で殺されちゃう系ですか? 死亡フラグが、いっぱい……。

 ムファトさんの眼はオレンジ色なんですよ、微妙に違うじゃないですか!

 彩萌が固まって、偽ムファトさんを見上げていれば彼は首を傾げます。


「これじゃ、ダメ?」

「えっ、な……何がですか?」

「だって、これと仲が良さそうだったから、仲良くなれると思ったのに、困ってるから」


 やべぇ、自分からネタばらししたよ、どうしよう。彩萌はどうすれば良いんだ。

 でも仲良くしたいって事は、意外とフレンドリーです! 彩萌は魔物に好かれるなんかがあるんですか?

 でも簡単に気を許しちゃダメですよ、ロリコンかもしれませんし……。


「どうして、私と仲良くしたいんですか……?」

「だって――……」


 最後まで彼は喋る事なく、さらさらーって感じで砂になっちゃったんです。

 えっ、なにこれ。どういうこと!? ぷちぱにっくですよ。

 これ、えっ? 魔法なの?


「ダメダメダーメー! 彩萌ちゃん失格です!」

「えっ、誰ですか?」


 元気な声にびっくりして目を向ければ、通路の先にある広くなってる場所に全体的に銀色というか、灰色っぽい見た目のチビッ子が居ました。

 彩萌より小さい子です、というかなんで名前知ってるんですか?


「ぼく? ふふん、ぼくの名前が知りたいか! 特別に名乗ってやろう、ぼくこそがムールレーニャ・ミスト様だ!」


 よく見れば、その子は耳と尻尾が生えてました。

 むーるれーにゃ・みすとって誰ですか、彩萌知らないです。たぶん。

 彩萌が何も言わないで、その女の子か男の子かよく分かんない、猫っぽい尻尾と耳の生えた子を見ていれば狼狽えてました。

 なんか手も人とは違う感じですねー、肉球とかがある訳じゃないけど。


「月の精霊……、灰色のカラーゴーストのムールレーニャ・ミストです、覚えて帰ってください」

「あぁ……うん、分かった」

「じゃあね彩萌ちゃん、死なない様に気を付けてね、ムールファグトとイクシノアはこの先でクレイドールと遊んでるよ」

「くれいどーる?」

「次会う時は、いっぱいいっぱい遊んでね!」


 むーるれーにゃ……、長いからむーちゃんでいいや、は上を向いてなんか、弓矢を打つような動作をしたんですよ。

「ぱきゅん」って言って、そうすると天井が壊れてどごんって土と天井が落ちてきて穴が開いたんです!

 えぇっ、むーちゃん潰れちゃった!? 慌てて近付けば、くすくす笑う声が聞こえたんですよ。

 上を見上げれば、宙に浮いているむーちゃんが見えました。お月様と同じ色してます。


「死んじゃったらぼくに体ちょーだいね、お家に飾ってあげるから! 絶対だよ、約束だよ! ディーテ・カーマインなんかにあげたら許さないんだからね!」


 彩萌が何かツッコミを入れる前に、むーちゃんは霧になってから消えちゃいました。

 なんか、ちょっと物騒な事言ってた気がしますが彩萌は山吹君と同じ墓に入りたいです……。

 あとディーテさんはたぶん死体欲しがらないと思いますよ。

 気付けば辺りは暗かったです、月の明かりが射し込んでるおかげで見える程度でした。

 もしかして、彩萌の為に穴をあけてくれたのかな?

 この先、と言ってむーちゃんが指を指した方向から、物騒な物音とか水しぶきみたいな音が聞こえました。

 遊ぶって、戦ってるって事ですか。

 気付けば、ドックさんが足元に帰って来ていました。避難してたの?

 彩萌はお守りを握ってひっそりこっそり忍んで見に行きますよ、ドックさんは役に立たないので頼りません。

 そう言えばさっきの偽ムファトさんは何だったのかな?





 ――アヤメちゃんの魔法日記、二十頁

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