暴食商人イズマさん
ぐーてんたーぐ、叶山彩萌だよ。
今日は、なんか冬祭りとかなんとかで賑わっちゃってる公園に居ます。
別に何もないのにねー、何でお祭りするんだろうねー、彩萌はーたこ焼きが食べたいですー。
そこそこ賑わってます、夜はいるみねーしょんが綺麗らしいので夜の方が賑わってるらしいですよ。
大判焼きだってー、食べたいねーしーちゃん。でも食べられないんですよ、隣にいる人がお金持ってないんですもん。
「……イズマさーん、出店許可取ったんですかー?」
「絶対にばれないから問題ないな」
お得意の洗脳をやらかしてしまったようですね。
イズマさんはなんか、可愛いアクセサリーとか、ストラップの様な物を売ってます。
お守りなんですって、自家製なんですって、魔法を掛けたのはジェリさんなんですって。
一人でやれば良いじゃん、と思ったのですが彩萌が居ないとこっちの世界に居られないんですって。
ぶっちゃけると魔法書はカーナビで、彩萌が車なんだそうです。
なんでイズマさん車とカーナビの存在知ってたんでしょう、幻想世界にもあるのかな?
「かってってー! かってってー! おかねおいてってー! なでなでちてってー!」
「うわっ、何この羊喋るんだけど!」
「というかこれ羊なの? なんか、ぬいぐるみみたいな頭してんですけどー!」
若い女の子とチビッ子には客寄せしーちゃんが有効的でした。
彩萌はというと、イズマさんの横でぼーっとしーちゃんを眺めてます。
あれかわいいなー、彩萌も欲しいなぁ。
「イズマさんって口は堅い方ですか?」
「内容とそれに関連する人物によっては堅いし、軽いかもな」
「ユヴェリア王子の事なんですけど」
「墓場まで持って行っても良い」
イズマさんは分かり辛いですけど、お金が関係すると分かりやすいですね……。
誰にも言うなって言われてたけど彩萌は約束破っちゃいますよ。気になる事があるんですもん。
でも詳しくは言わないですから! 大人の力を借りる事も大事だと思うんですよ!
「あのね、ユーヴェリウス・モーブと同じ色だから、悩んでいるみたいなんです。ユーヴェリウス・モーブはそんなに悪い人なんですか?」
「あぁ……確かにヴァージハルトでは、悪の象徴だな」
なんだか、含みのある言い方ですね!
そして王子の国はヴァージハルトって名前なんですね……、名字と同じですね。
イズマさんの様子が気になって、覗き込めば笑われました。
「幻想世界に興味が湧いたのか?」
「うぐっ、み……認めましょ、彩萌はちょっぴり、ほんとーにちょっぴりだけど湧きましたよ!」
「それはありがたいな、成功報酬が楽しみだ」
「……そういえば、どうしてお金貰ってんです? やっぱり……、リーディアさんはロリコンなんですか!?」
おーばーりあくしょんで彩萌が驚けば、イズマさんはくすくす笑います。
「そうかもな」と呟きました、リーディアさんがかわいそうですから嘘でも否定してあげた方が良いですよ。
「俺も詳しくは知らない、お前に幻想に興味を持ってもらう事が依頼だからな」
「リーディアさんは彩萌にふぁんたじーってほしいんですか……」
「どちらかと言えば本当にそう願っているのはカーマインゴーストだと思うな、憶測だから詳しくは本人に聞け」
おおう、ディーテさんかー。
そーいえばディーテさんはリーディアさんの使い魔なんですよねー。
あの二人がぐるになって悪巧みをしているんですね、今度ディーテさんが来たら聞いてみよ。
「それで、ユーヴェリウス・モーブの話なんだがヴァージハルト周辺では悪の象徴だが、とある小さな島国では信仰されてるぞ」
「小さな島国ですか?」
「あぁ、その島国では昼間の時間が少し長い、それに凶暴性の高い魔物が多く住み、ほとんどが昼行性だ、人間や弱い生き物は夜にしか活動できないんだ」
「星空の精霊だから、夜にしか活動できないその島では神様なんですか」
「それに、夜に活動するなら明るい色の髪は目立つから出来るなら暗い色が良い、深い紫、黒や深緑は大変に好ましい」
イズマさんはその国では大変好ましい色なんですね、深緑色だから。
なんか、イズマさんの方を見れば微妙な顔してました。
「だがその島にはフレアマリーが住んでいるとされていて、髪の色が明るい人が多かった」
「そうなんだ……、なんか……ひにくってやつですか?」
「あぁ、そうだな、その国はそんな昼行性の魔物の所為で滅びたらしい」
「……そうだったんですか」
「ユーヴェリウス・モーブは、その国では悪戯好きで無邪気な子供を演じていると言われてる、無垢な子供を演じて大衆に紛れた悪に近付き警告する存在だと言われている」
王子の住む国とは、違う伝えられ方をしているみたいです。
どちらが本当のユーヴェリウスさんに近いかは分からないですけど、でも良い感じに言っていた場所もあったみたいです。
「だが、王子にこれを話したところで何の役にも立たないだろうな」
「どうしてですか?」
「同じ土俵に立ってないからだ、ヴァージハルトの常識を持ってヴァージハルトの感性を持った奴以外に言われたら癪に障るだろうな、お前に何が分かるんだ、って思うだけだ」
「だから王子は不愉快だって言ったんですね……、だからフレンジアさんの事が気になったのかな?」
「それでもチビに話したのは、無関係で無責任で何一つ持ってないからかもな」
イズマさんの話は、すっごく為になりました。
これは王子以外の時にも役に立つこころえです! すごいです。
お金と食べ物への執着もすごいですけど、常識も一応あったんですね。
「ところでイズマさん、どうしてこんな所で商売してるんですか?」
「何をするにも、金は必要だ。もっと本が欲しいな」
彩萌の部屋にあった本は良い感じに売れたんですね……。
イズマさんはちょっぴりあくどい感じの笑みを浮かべていました。それが素敵とお姉ちゃんなら言いそうです……。
お姉ちゃんの趣味が変わってしまった様に感じるんですけど、洗脳ですよね?
お姉ちゃんはどちらかと言えば、ディーテさんとかフレンジアさんとかみたいな感じが好きだったはずです!
「それにしてもなかなか良い店番だな、金勘定も出来るとは思わなかった」
「しーちゃんは返しませんよ」
「喧しいのは嫌いだ、それとイベントの最終日になら何か奢ってやっても良いぞ」
奢ってやっても良いなんて言ったけど、本当はイズマさんが気になってんでしょ?
さっきからちらちら見てますもんね、屋台。
でも彩萌はそんな事言いませんよ、だって奢ってほしいです! お母さんはケチだから買ってくれないんですもん、お小遣いくれなかったんですもん!
あ、それともし売れ残ったらアクセサリーなんかください。
――アヤメちゃんの魔法日記、十六頁




