海羊竜とあやめと魔女会
ごきげんよう、あたくし叶山彩萌と申しますわ。
お嬢様風な今日の彩萌はミニスカートじゃないんだぜ、ロングスカートなのです!
これでお淑やか度が上がっている筈です、たぶん。
さて、彩萌は今とってもうきうきわくわくしているのです。
それは何故でしょーか! 分かります? 分かんないですよね!
昨日来たフレンジアさんとイズマさんにエミリちゃんとジェリさんを呼んで欲しいと頼んだのです。
ほら、彩萌は女の子ですから。女子会に興味があるんですよ。
女子会したいなー、と言う事でお願いしましたよ。
その代りに本とか、いろいろイズマさんに持って行かれましたけど。
いつ来るか分かんないけど、用意はしておきますよ。
「あやめー、なにちてるの?」
「女子会の準備ですよ! 今日来るか分かんないけど」
「ぢょちかい! ちーちゃんもぢょちかいさんかちたい!」
失礼ですが、彩萌は驚いてしまいました。
だって、だってしーちゃんドラゴンのカッコ良さアピールばっかりしていたので男の子だとばかり……!
本当に女の子なんですか?
「しーちゃんって……女の子だったんですか?」
「えー! あやめちらないの? いっちょにおふろはいったりちたのに!」
「しーちゃんはしーちゃんって思ってました、だってドラゴンだし?」
「あー、どらごんだもんね! がおー!」
納得してくれたようです、っふ……ちょろいぜ。
いつも綺麗にしていたので掃除はすぐに終わったんですよ、ジュースも部屋に持ち込んでお菓子も持って来ておきましたよ! 事前に準備ができる彩萌は素晴らしい女子ですよね!
あとはドキドキしながら待つだけですよ、まあ今日来るか分かんないんですけどね!
「ねー! あやめみてー! ちーちゃんりぼんぐるぐる!」
「誰かにプレゼントでもするんですかー、ちゃんとりぼん縛りしてあげますよー」
「これでちーちゃんはかわいくてかっこよくてつよいどらごんだね! がおー!」
しーちゃんは確かに女子だったようです。
彩萌が綺麗にしーちゃんをラッピングしてあげれば、ご満悦です。
ぴょんぴょんはねてましたよ、……しーちゃんもしかして空飛ぶとき翼を使ってない?
今翼ばさばさしてないのに飛んでたよ? いつもばさばさしてたのは、あれですか? ドラゴンっぽい感じにするためですか……!?
見てはいけない物を見た気分になってしまいました。
そんな微妙な気分になっていれば、彩萌の髪を触る人物が居たんですよ。
さらに彩萌のテンションを下げてくれましたよ、その人は。
「彩萌ちゃんも髪の毛結ってみたらー? エミリ・リデルとお揃いにしてみたらー?」
「……なんでディーテさん居るんですかー、女子会なのー」
「お兄さんも女子会に参加したくて」
「お兄さんは女子じゃないからダメなんですよ!」
振り返れば、びっくりするほど赤いお兄さんがいましたよ。
このやろー、ニヤニヤしやがって、ジェリさんとエミリちゃんは居ませんでした。
まあ、すぐに来たんですけどね。ディーテさんの姿を見て驚いてました。
「なんで魔王が居るんすか!? 私達がこっちに来るときリーディア先生の横に居たじゃないっすか!?」
「お兄さんに不可能は無いんですよー、彩萌ちゃんお兄さんを尊敬しても良いんですよー?」
「……分裂、したわけ? 髪の毛が短いわこいつ」
「あ、確かに今日の魔王は髪の毛が短いっすね……」
「トカゲみたいですね、霧状の魔物だからできる技なんですか?」
いつもは長い三つ編みが、今日は短いです。
そんな魔王にしーちゃんは興味津々ですよ、髪の毛に噛り付こうとしています。
器用に避けられてますけどね、髪の毛に。
「今日は女子会だから、帰って下さいー。女子っぽい会話をするんです!」
「お兄さんに不可能は無いんです! お兄さんはお姉さんにだってなれるんですよ!」
「え、魔王ってそう言う趣味だったんすか? そう言う趣味は傭兵の得意分野だと思ってたんすけど」
「違う、ゴーストは霧状の魔物で人に化けてるだけ、本当は性別なんて無いの」
な、なるほど……。つまりディーテさんは本当にお姉さんにもなれるんですか。
ディーテさんを見上げれば、にっこり笑ってました。
ディーテさんはなんか、自分の体を手で払う様な仕草をしたんですよ。そうしたらなんか赤い煙になっちゃったんですよねー。
びっくりしましたよ、やっぱり煙になってもびっくりするほど赤かったです。
その煙が人影っぽくなったなー、って思ったら人になってました。
顔とか髪型とかはあんまり変わって無かったですけど、服装とか身体が変わってました。
すげー、魔王。なんかディーテさんが魔物だって実感も魔王だって実感も無かったけど実感わきました!
すごいです、すごいおっぱいです! そして美女です!
「すごいです! ディーテさん凄いです! おっぱい凄いです!」
「そうでしょー、すごいでしょー。あとお姉さんが凄いんであっておっぱいは凄くないからね」
「触っても良いですか!」
ディーテさんは清くおっけーしてくれました。
うわぁ、本物だーすげー! ふにふにだー!
なんか普通に触るのはどうかなって思ったので、突っついときました。
「彩萌ちゃん惑わされちゃダメっすよ! 所詮それは偽物のおっぱいなんすよ! 中身は霧なんすよ!」
「えー、本物と変わんないと思うよ、触ってみる?」
「うん、触る触る! テンションあがるわぁ!」
「……下らないわ」
だって、さっきまでカッコいい魔物のお兄さんがかなり美人なセクシーな魔物のお姉さんに変わったんですよ!
凄いですよ、りあるふぁんたじーです!
エミリちゃんはまあ、知ってたから感動が薄いんですね。
「……でも、どうせ中身は男性思考だと思うわよ」
「女子会に参加するには女の子であることが条件なんでしょ? 条件はクリアしたと思うけどなぁ」
「本物のおっぱいよりもハリがあって、素敵なおっぱいだったから私は良いと思うんすよ」
「しーちゃんも参加したいって言ってましたよ、性別が曖昧な感じの魔物の参加はダメですか?」
彩萌がそう聞けば、エミリちゃんは不快そうな顔で悩み始めてしまいました。
そう言えば、ディーテさん嫌いなんでしたっけ? 悪いことしちゃったかな?
気付けば、ジェリさんは一人でポテトチップスの袋を開けてバリバリ食べてました。
家に帰る前に出来るだけカロリー取っとかなきゃ、と呟いていてなんかかわいそうに思えて注意はしない事にしました。
でも、しーちゃんが勝手にチョコレート菓子の箱を空けて一人でさくさく食べていたのは注意しました。
彩萌だって、お菓子食べたいんですよ!
「……彩萌は、ロリコン魔王の事好きなの……?」
「彩萌が好きなのは山吹君です、一択です。ディーテさんは嫌いじゃないけど、お友達です」
「そうだよー、お兄さん……じゃなかった、お姉さんとお友達なんですよー」
むっと、エミリちゃんは拗ねた顔をします。
寂しくなっちゃったのかなー、彩萌がディーテさんをひいきするから。
エミリちゃん友達いなさそうだもんね、それにディーテさんあんまり好きじゃないもんね。
エミリちゃんは山吹君と少し似ていますね。
「エミリ・リデルと彩萌ちゃんは親友だろ? お姉さんが入り込む余地なんて無いくらい仲良しなんだろ? 何を心配しているのか、お姉さんには分からないかなー」
「そうですよー、エミリちゃんとは親友ですよ! こんなよく分かんない生物なんかよりも大事ですよ!」
「彩萌ちゃん辛辣だね、お菓子美味しい……」
そう言うお兄さんは大人ですね、ちゃんと引いてくれるのは大人にしか出来ない技だと彩萌は思います!
伊達に長生きしてないですね……、っは……!? って事はお兄さんでは無くおじいさん? お姉さんでは無く、おばあさん?
「……そうね、彩萌、エミリはお菓子を作ってきたわ、幻想世界にしかない食材を使っているの」
「……彩萌が食べても大丈夫ですかね?」
「大丈夫、問題ないわ」
その言葉信じますよ? エミリちゃんを信じますからね!?
エミリちゃんが取り出したのはクッキーでした、真ん中に木の実みたいな、果物みたいなのが埋まってますね。
雰囲気的にはさくらんぼに似てます、色は焼けてて分かんないけどたぶん赤くないです。
青っぽい色……ですかね……。
「リイムの実って言うの、世界で初めて生えた花と実をつける聖樹なの」
「へー……聖樹の実なんて食べて良いんですか?」
「リイムは強い木だからね、貴重な物では無いんだよ。ただ汚い環境とか魔力が汚れた環境ではちゃんと育たないんだよー、警告の木なんだ」
懐かしいなー、と言いながらディーテさんはクッキーをさくさく食べてました。
うん……、なんか毒見して貰ったみたいで悪いけど、食べよう。
おー不思議な味がしますー、爽やかな感じでさっぱりした甘さです。
クッキーにちょっとクリームチーズとか入ってるんですかね、なんかそんな味がします。
エミリちゃんの料理美味い。
「リイムの木ってねー、面白いんだよ。汚い環境で育つと動き出して人を襲ったり人を食べたりしちゃうんだよ」
「それ怖いんですけど、面白くないんですけど」
「たまーに傭兵の所に討伐の依頼来てんすよ、そんでリーディアせんせーのとこに環境を良くしてくれって依頼が来るんすよ」
聖樹がそんなので良いの!? 人を襲っちゃう聖樹で良いの!?
神社の御神木が平和的で素晴らしいものだと思えてきます。
「でもちーちゃんりいむのきだいすきだよ! おいちいんだよ! いっぱいひとたべてるのまりょくいっぱいでおいちいんだよ!」
「……流石ドラゴンです」
「ちーちゃんてきにー、いまはまおうがきになる!」
……魔力の塊の様な魔物だから? 魔力いっぱいが美味しいからディーテさんはごちそうなんですか?
ディーテさんは苦笑いを浮かべてました。
いつかディーテさんはしーちゃんに食べられちゃう日が来るのかもしれません。
だってさっき食べようとしてたもんね、髪の毛。
あとジェリさん、炭酸飲料のペットボトル大きいやつをラッパ飲みでガバーッと飲むのは止めてください。
クッキーが甘いミルクティーとよく合います、美味しいー。
「これってただのお茶会だよね、女子っぽい話してないよなぁ」
それは言ってはいけないお約束です!
――アヤメちゃんの魔法日記、十三頁




