緑の商人と銀色へたれとあやめ
子供の声が響いております、こんにちは! 山吹君の叶山彩萌だよ!
窓が開いている所為で寒いですねー、彩萌は風の子では無いので温かい方が好きですよ。
彩萌は今、床に寝っ転がって絵を描いているんですよ。
なんとなくそんな気分の時ってありますよね、彩萌はごろごろしたい気分です。
「彩萌ちゃん足癖悪いね、スカート捲れてしまうから」
「あー……うん、そう言えばフレンジアさん、男性はぱんちらが好きだって山吹君のお兄ちゃんが言ってました、でも彩萌はパンツがちらちら見えている人はお淑やかじゃないから良くないと思います!」
「正に今のチビだな」
このやろー、彩萌はイズマさんの発言は無視しますよ。
イズマさんの所為で彩萌はベッドでごろごろできないんですよ!
この人タバコ吸う為に窓開けて彩萌のベッドに腰掛けてやがるんですよ、まったく。
他人の部屋でタバコ勝手に吸ってんじゃねーぞ、ですよ!
「イズマさんとフレンジアさんは人間じゃないので見られてもどうでも良いです」
「いや、人間だからね? 確かに私は微妙なラインだけど人間だからね? お淑やかな女性はそんな言い訳しないと思うな」
「まあ、お前みたいなチビにお淑やかさも女性らしさも求めてないから俺達は構わないが、山吹は幻滅するだろうな」
しかたないです、彩萌は正座しましたよ。
別にイズマさんに言われたからじゃないですからね、彩萌がお淑やかな女性だからですから。
「というかなんでイズマさんとフレンジアさんなんですか? なんか全然相性良くなさそうです!」
「仕事帰りだからだ」
「仕事帰りなのになんで彩萌の部屋に居るんですか」
「小遣い稼ぎに」
「イズマさんなんて一生お金を稼いでいればいいんです」
「言われなくても、そうするつもりだ」
「私的に、彩萌ちゃんとイズマが会話を成立させている方が不思議なんだけど……」
「仕事だからな」
仕事じゃなかったらお前みたいな小娘と話してやんねーよ、と言う事が言いたいんですね……。
ふんっ、別に彩萌ちょっと寂しいなんて思ってないんですからねっ。
イズマさんのばーかばーか! 金の亡者!
「下手くそな絵だな」
勝手に見た癖に鼻で笑いやがった……!
くそーっ、許せないのだ! イズマさんなんてー、このやろー!
彩萌は感情のおもむくままに、今さっきまで絵を描いてた紙をぐしゃぐしゃに丸めてイズマさんに投げました。
避けられると思っていましたがイズマさんは避けずにそのまま丸めた紙を頭で受け止めました。
そして丸めた紙はベッドに落ちる前にイズマさんに掴まれ、そのままゴミ箱にシュート!
やっぱりイズマさんは鬼だ。
今日はもう絵を描く気になれません! ばーか!
「そーいえば、フレンジアさんの職業は聞きましたけどイズマさんのは聞いてなかったです」
「まあ、いろいろ手をつけすぎて簡潔に言うのは難しいが、本業はスカウト」
「スカート?」
「スカートについてならそこに居る腰巻き野郎の方が詳しいだろうな」
「詳しくないから、というかそう言うネタは言ってる方は楽しいかもしれないけど言われている方は堪ったものじゃない!」
「でもフレンジアさんがスカート履いててもたぶん誰も変だなって思わないと思いますよ!」
彩萌のフォローはフォローにならなかった様です、フレンジアさんは変な顔になって黙り込んでしまいました。
険しい顔って言うんですっけ? その顔。
「さっきまで、代理でスカート履いてたもんな」
「言うな!」
「代理でスカートを履く仕事ってなんですか……?」
「ファッションショーのモデルが怪我をしてな、それの代理」
「なるほど、確かに凄い背が高いですし、細身ですし、美女って感じの顔してますからね!」
褒めたのに、フレンジアさんの心にはダメージになってしまった様です。
悲しそうな表情です、愁いを帯びた美女ってやつですね! 男ですが。
「……こう見えても、剣豪として名が知れ渡っているのに」
「最近は歌って踊れる可愛い傭兵として有名人になりつつあるな」
「誰の所為だと思っているんだ!」
「金に目が眩んだお前の所為だろ、俺は強制はしていない」
「やっぱりフレンジアさんはお金にがめついんですね」
イズマさんとどっちが……、聞かなくても分かりますね、イズマさんですね。
お金好きだから仲が良いんですかね。どちらかというとイズマさんに良い様に使われている感じしかしないですけどね!
普段はこうやって絶対いや! ってなるんだろうけどお金を目の前に出されるとうんって言っちゃうんですかね?
ダメな大人って奴ですね、お金をチラつかせればなんでも出来ちゃうんですね。
イズマさんもそうなんですかね? お金を出せば何でもやってくれるんですかね?
……何でもやりそう、怖くて本人には聞けないけど。
「世の中お金より大事な物ってあると思いますよ……」
「それも間違ってはいない、だが金とソレを同じベクトルで考える事がそもそもの間違いだろう」
「じゃあイズマさんの大事な物ってなんですか?」
「――…………」
答えられないのかよ!
というかタバコ吸い終わったなら窓閉めてくださいよ、もう換気しなくても良いですから、寒いですから。
イズマさん、大事な物ないのかな? それとも誰かに言いたくない様な物なんですか?
「まあ、……探してる途中ってところだ」
「それってないって事じゃないんですか? フレンジアさんはありますか?」
「……えーっと、あはは」
笑って誤魔化せませんよ、無いんですね……。
イズマさんとフレンジアさんは寂しい大人でした。
かわいそうな物を見る目で二人を見詰めていると、イズマさんは溜息を吐きました。
「そこのと一緒にするな、俺は無くしただけだから」
「だから探しているんですか? 見つかる様な物なんですか?」
「どうだろうな」
そう言った後、二人は何故か彩萌の部屋でぐーたらしてから帰ったんですよ。
まあフレンジアさんはすぐ帰っちゃいましたけど、イズマさんは何故か夕飯食べてから帰りましたけどね。
あの人何処にそんなに入るんだよってくらい食べて行きましたよ。
もう、家の食糧全部食べて行く気かよ! って聞いたら、それも良いな、なんて言うんですよ。
イズマさん暴食過ぎますよ、体に悪いんですよ。
まったく食費ぐらい置いて行けよー、お父さんが泣くだろー。
でもなんだかんだ言ってイズマさんは彩萌をかまってくれているので優しいです。
――アヤメちゃんの魔法日記、十二頁




