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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
始まる為のエンディングノート
105/107

家族と友達と、あやめ

 みんなでお話しして、ご飯とか食べたりしてからお店を出ました。

 本当に李白さんは奢ってくれた、フレアマリーさんが大量に飲んだやつも。

 李白さんちょっとかわいそうじゃないかな?

 本人に聞いてみたら、振り回されるのは悪くない、わがままな女の子も嫌いじゃない、らしいです。

 すごいね李白さん、突き抜けちゃってるね。

 でも彩萌的にそう言い聞かせて納得しようとしてるようにも見えましたけどね。

 だってフレアマリーさんはわがままじゃないもん。

 この世で一番偉いのは太陽の俺である、異論を言おうものなら死刑! が持論の人だもん。つまり俺様だよね、実際に異論を言って死刑にされてる人は見たことないし、聞いたこともないけどね。だってフレアマリーさん言い返されたり、反論されたり反撃されたりするの好きだもんね。

 水都グレーキィはすっごい近いらしいです、だからこのまま行くって。

 グラーノさんと手を繋いで、シェリエちゃんも繋ごうって言ったらお断りされちゃった。恥ずかしいから嫌って、じゃあしょうがないね。

 なんだか、物の見方がちょっと変わったような気がします。

 グラーノさんのこと大きいなって思ったこと無かったけど、ちょっと大きいって感じる。グラーノさんは背が低めだけど、彩萌より高いもんね。

 なんだかちょっとだけ寂しい気分になりました。

 ミアーティスの外に広がる草原も、すごい広く感じます。

 空も遠いし、太陽も高いです。なんでだろうね。

 よく分かんないけど、空を飛んでる鳥さんとか手を伸ばせば届きそうな気がしてたのに、今は全然届かないのが分かっちゃう。

 なんだか、すごい……手を繋いでるのにグラーノさんがすごい遠くに居るみたいな気がしてきた。

 そっかー、精霊さんと普通の生き物の距離感ってこんな感じなのかなぁ。


「彩萌ちゃん……、どうしたの……?」

「うーん、グラーノさんと彩萌はずっと友達ですよね?」

「えーっと……、えっと友達、じゃなくって……家族、でしょ?」

「……うん、そうでしたね!」


 そうだね、うん。家族だね。

 グラーノさんの手はひんやりしてます、今は彩萌の手の温度がうつってぬるいけど。

 彩萌は家族がいっぱいいて幸せですね……うん。

 なんか、よく分かんないけど大丈夫な気がしてきた。

 頑張れば鳥さんにも手が届きそうな気がしてきた、今は無理だけど。

 やっぱり帰るのはちょっと不安だったけど、大丈夫だよね。

 山吹君とかみんなに嫌って言われたらどうしようって思ってたけど、いっぱい家族が居るから平気だね。

 ごめんね、ありがとう。

 グレーキィは塀は無くって、水掘に囲まれてて橋がかかってる。

 ミアーティスに似てる感じだけど、ミアーティスよりも新しい感じ。

 人がいっぱいで賑わってる、良い感じの街だね。

 やっぱり彩萌を二度見したり、ひそひそしたりする人がいるけど気にしない!

 だってフレアマリーさんとかグラーノさんとかシェリエちゃんとか李白さんが居るもん。

 一人だったら、絶対心が折れてたけど今は大丈夫です。

 絵描きさんとか、大道芸人さんとか歌ってる人とかいろいろいるね。


「グレーキィきれいだね」

「フレネージェとは大違い、これは心境の問題かな……」

「いやいや、お嬢さん達のほうがグレーキィの街並みよりももっと綺麗だよ、将来が楽しみなくらい」

「堕天使……頭大丈夫か?」


 李白さんは調子を取り戻してきたらしい、でもちょっぴりシェリエちゃんと同じ意見です。

 でも……シェリエちゃんは魔人さんだから、将来すっごい美人さんになるんだね。

 今もすごい可愛いけど、もっともっと美人さんになるのかな?


「魚食いてぇな、魚竜も捨てがたいよな」

「うみのどらごんもおいちいよね」

「商人の町……、だけど……売って、ないよ? ドラゴン……」

「一狩り行って来いよ、俺は泳げねぇから無理だけど」

「わ……わたしだってむ、無理だよ……」


 フレアマリーさんは相変わらずだね……。

 カモメさんを見ながらあれってうまいのかな、とか呟いてるし。

 でも「マリーなら……美味しく、できるかも……」ってグラーノさんが返しててちょっと面白いと思った。

 いつかカモメ料理を作るフレアマリーさんが見られるかもしれないね。

 今日はグレーキィに泊るのかなぁ、って考えてたら頭になんかぶつかって引っついたみたい。

 取ろうとしたら、なんか頭にぶつかって引っついたのが逃げるんです。

 生き物なのか……!?


「ふむ、邪鬼になってしまったのか……悪くないな」

「何この黒猫、はね生えてる」


 えっ……!? はねが生えた黒猫!?

 いや、まさか、そんなっ、べるぜびゅーとのべるさんか!?

 ロリコンのハエが彩萌の頭に引っついてるんですか!? シェリエちゃんお願いします、取ってください!

 取ってーってシェリエちゃんに泣きついたら、なんかその頭に引っついたのは不機嫌そうになんかばしばし彩萌の頭を叩いた。

 シェリエちゃんに取られたその黒猫は、見覚えがあってやっぱりべるさんだった。

 ……べるさんが居るってことは、エミリちゃんもいるの?


「へぇ、魔法で出来た使い魔か……素晴らしい出来だねぇ」

「たしかに……これは魔法だね、素晴らしい……私もこれを作った人に会ってみたい」

「なに……褒めても何も出んぞ、だがその称賛は素直に受け取っておこう……真実だからな」

「うわー、本物のべるさんだ」


 その変な喋りかたと上から目線はべるさんだよ。

 彩萌には嫌な記憶しかない、べるさんだよ。

 なんだか怒ってるべるさんに気を取られてたけど、なんか気づいたらグラーノさんとフレアマリーさんが居ない。

 しーちゃんも居ないけど……、どこ行っちゃったの?

 きょろきょろしてフレアマリーさんとか探してると、白いのが目についた。

 リボンの髪留めと、真っ白でふあふあな服は見覚えがあります! エミリちゃんです!

 でもなんか、すごい怒ってる顔してて顔が怖い……。

 えっ……、どうしよう。

 エミリちゃんは静かに歩いてくると、シェリエちゃんが持ってたべるさんをちょっと乱暴に奪い取るみたいな感じで取ったんですよ。

 ど……どうしたの?


「……エミリは、ちょっと悲しかったけど……新しい友達作って楽しそうにへらへらしてる彩萌を見てイヤな気分になった」

「え、なんかごめんなさい……、えっとえっと……! 彩萌はまだエミリちゃんの友達でいたいです!」

「なんかよく分かんないけど、これが修羅場か……」

「微笑ましい修羅場だねぇ……」


 いやいやいや、ほのぼのと見るの止めてください……。

 どうしよう、エミリちゃんに嫌われちゃったのかな? でも彩萌はシェリエちゃんとも仲良くしたいし、エミリちゃんとも仲良くしたい。


「彩萌はエミリちゃんとも仲良くしたいです……、友達はいっぱい居た方が楽しいですよ! えっと、だからエミリちゃんもシェリエちゃんと仲良くしよう!」

「私もぜひ、その使い魔について詳しく教えて欲しい……」

「……良いわ、別に……でも彩萌、貴女はエミリに言うべき言葉があるんじゃないの?」

「えっ……えと、勝手に死んだり居なくなったりしてごめんなさい……?」

「――……もっと真摯に謝って、どれだけエミリが心配してあげたと思ってるの?」


 あ、エミリちゃん泣きそう。

 そうだね、ごめんなさい……。いきなり消えたり死んだりして本当にごめんなさい。

 ちゃんとごめんなさいって謝ったら、エミリちゃんは何も言わずにそっぽを向いちゃった。

 どうしよう……、ダメだったかな?


「彩萌さんが真摯に謝ってくださったのですから、貴女もそれ相応の言葉を返して差し上げるのが正しい対応だとは思いませんか? だから彩萌さん以外のご友人が出来ないのですよ、テニアスフィールさん?」

「なんなの、貴方みたいな性悪に言われたくないわ……上っ面の友達しか居ない癖に」

「社交的で素晴らしい、の間違いでは? 一人で会いに行くのが怖い、とおっしゃってた級友に付き添ってあげているのですから」

「あ……王子、お久しぶりです。あと、ごめんなさい……」

「えぇ、お久しぶりです。謝罪はけっこうですよ、止むに止まれぬ事情があったのでしょう?」


 にこにこ笑ってそう言ってるけど、なんか怖いです……。

 エミリちゃんへの言葉は嫌味ったらしいけど、なんかでもちょっとエミリちゃん王子の言葉で元気になった気がする。

 王子すごいな……、さすが社交的で素晴らしくてステキな嫌味ったらしい王子です!


「初めまして、私はユヴェリア・マルクス・トリアライド=ヴァージハルトと申します。彩萌さんがお世話になっている様で」

「なんか、彩萌の友人って変な人が多いね」

「変な人が多いでは無く、凄い人が多いの間違いだと私は思うけどねぇ……テニアスフィールと言えば、ホテル王だしね……」


「ヴァージハルトは……ね」って、李白さんが苦笑いして呟いてた。

 そういえば、彩萌の知り合いってすごい人が多い!

 まあ、彩萌の知り合いはいこーる山吹君の知り合いだから……結果的に山吹君がすごい!

 やっぱり山吹君はすごいんだよ、カッコいいんだよ。

 でも、李白さんだってギルド運営してる方の人だから結構すごいじゃん。


「でも……なんて言うか、二人とも彩萌が変になってるけど気にしないの……?」


 李白さんとシェリエちゃんは驚いた後に受けいれてたから、疑問を感じなかったけど……二人は何も反応してないから逆に不安。

 彩萌がそういえば、二人はなんかちょっとだけ不思議そうな顔した。


「何と言いますか……私は逆に違和感が無くなったかな、と存じます」

「そうね、なんか逆にスッキリしたんじゃない?」

「……貴様は私の言葉を求めていないだろうが、その方が可愛らしいぞ」


 そうだね、べるさんの言葉は求めてないです。

 そうなんだ……逆に違和感とかが無くなったんだ……。

 昔は違和感ありまくりだったんだ……そうだったんだ、衝撃の事実だよ……。

 というか王子とエミリちゃんって同級生なんだね。

 エミリちゃんは本当は十五歳だけど病気してたから同じなのか、それとも王子が飛び級してるのか分かんないね。

 でも……良かった、嫌って言われなくて。

 彩萌には素晴らしい友達がいて嬉しいです、なんか涙出そう。

 なんか泣きそうになってたら、エミリちゃんがべるさんを叩き消しててびっくりした。

 なんでそんなことしたの? って聞いたらいつもこうやって消してるって……。

 なんかちょっとべるさんがかわいそうに思えた。

 もうちょっと優しい消しかたないのかな……?

 エミリちゃんも彩萌に話しかけようとしてくるんだけど、王子も彩萌に話しかけようとして被ってなんか険悪なムードになってた。

 王子はどうも彩萌の杖にすごい興味があるらしくって、エミリちゃんは彩萌が今までどうしてたかが気になるご様子です。

 王子がにっこりと「お先にどうぞ?」って言うんだけど、エミリちゃんがあまのじゃくな所為で「別に大した用じゃないし、貴方から先に話せば良いわ」って言っちゃって王子は気を使ってか「いやいや、お久しぶりにお会いした御友人なんですから、積もる話もあるでしょう? 私の用こそ大したものではありませんから」って言うんだよ。それでエミリちゃんがあまのじゃくな所為で「後でゆっくりと話すわ……だから貴方のくだらない小話から話しなさいよ」って言うもんだからギスギスだよ。

 さすがの王子もエミリちゃんの言い方にカチンと来たのか、にっこり笑いながら怖い雰囲気出してる……。

 この二人相性すごい悪いみたい。


「別に……彩萌の今までを振り返ってればその中で杖の話も出てくるんだから、二人で大人しく聞いていれば良いんじゃないの」


 シェリエちゃんが正論過ぎて、誰も何も言わなかった。

 さすがシェリエちゃんです、魔女っ娘カッコいい。

 落ち着いたところで李白さんが「座れる場所に移動した方が良いね」って笑って言った。

 やっぱり王子とエミリちゃんは大人びてるけど、大人じゃなかったんだね。

 ところで……二人は二人だけで来たのかな。

 誰か保護者と一緒に来たのかな?





 ――アヤメちゃんの魔法日記、一〇三頁

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