海を越えて、生まれ変わる
はっと目を覚ませばなーんか真っ暗な場所で倒れてますね。
……うん、なんていうか。
あれ? 彩萌フレアマリーさんにおんぶされてたんじゃなかったっけ?
おんぶされてー、なんか階段下りきったのは憶えてる、うん……憶えてる。
それからどうなったっけ?
彩萌が起き上がると、彩萌のお腹の上の何かがずるずるって落ちた。
真っ黒ですー、なんかそれを持ち上げるとうねうねしてる尻尾が生えてて、耳みたいな角が生えてて……なんか邪神族みたい、ちっこいけど。
ちょっと揺さぶったりしてると、なんか顔っぽいところの目が開いた。
目……だと思う、一つしかないけど。真っ赤に光ってます、邪神族さんみたい。
「……うにゃにゃ、おはよーございます。唯一の死の化身……最後の邪神族の死の精霊ウェルサー二世でござる」
「ござる? ……えっとおはようございます、えーっと叶山彩萌です?」
「他の者共との区別化を図る為に、二世はいろんな口調に挑戦したいと思っておりまする故に愛してください」
「はあ……、そうなんですか」
……うん、あれ?
りっちゃんがウェルサーの後を引き継ぐって言ってたから、もしかしてこれりっちゃん?
……いやいやいやいやいや、これはりっちゃんじゃないよね。
というかここは何処なの? 階段ないけど、というか神様とかどうなったの?
みんなどこ行っちゃったの?
「うにゃにゃ、死の精霊は革新と夜の精霊の付属品ですからに、本業は穢れを浄化する邪神族ですからに」
「うーんじゃあ、邪神族さんなんですか?」
「うぃ、邪神族ですの、やはりそのままウェルサーの力を人間に全部ぶっ込むのはいささか危険だと神が判断しまして、夜の精霊殿の魂にはちみっと入れましてですねぇ……はい、残ったウェルサーの力と神様の管理が無くなった邪神族とかで二世は出来ておりますの」
友好の握手、って二世さんはうねうねしてる尻尾をさしだした……二世さんには手が無いのかな?
尻尾は触ってみたらぷにぷにしてた、なんかつるつるしてそうな見た目だったからびっくり。
「神はこの世界を見縊ってどっか旅に出ましたので、この世界の管理は全て精霊殿に任せるとおっしゃって消えてしまいましたのです」
「神様は輪廻に戻れたんですか?」
「その辺は滞りなく! あ、それと神が一緒に穢れを持って行ってくれましたので呪いの方の穢れはありませんが、元より存在しておりました穢れを浄化する作業を二世は受け賜っております、彩萌殿はもう何もすることは無く、ただのがきんちょ様に成りましたのでご了承くださいませ」
「聖女卒業おめでとうございます~」って二世さんは尻尾で拍手してた、万能な尻尾だね。
うーんそうかー、聖女卒業かー。なんかよく分かんないけど、ありがとう?
それでここは何処なんだろう?
「此処は澱みの海でございます、夜の精霊殿は神が弾き出したので夜の間に戻っておられると思いますがどうでしょう?」
「どうしてりっちゃんは弾き出されたの?」
「彩萌殿の体を作り替える為でござる、ほら……プライバシー的なあれとかこれとかを守る為、彩萌殿が此処を出る頃に澱みの海は消滅する予定でごわす」
「愛されたいならさ、もっとかわいい喋りかたの方が良いと思う。山吹君ネコ好きだし……彩萌はネコっぽいのが良いと思う」
「分かったにゃ、二世は打倒シーシープドラゴンだからにゃ……シーシープドラゴンよりも可愛くなりたいのですにゃ」
その顔で? その顔でシーシープドラゴンより可愛くなれるの?
だって……一つ目だよ? なんか、赤いあの……消火栓とか入ってるアレの光みたいだよ。
二世さんはどっちかというと不気味だよ?
お人形の悪霊とか言われても納得できる見た目だよ?
まあ彩萌はそんなことは言わないけどね……、二世さん頑張ってね。
「彩萌殿はケット・シーではなくなってしまいにゃした、人間に戻った……って言いたいけど人間じゃないにゃ」
そう言われて、彩萌は腕を見てみました。
毛は生えてなくて、つるつるだけど……なんか手が黒い! なんか痣みたいな感じ?
足も膝から下がそんな感じになってた……、ヤバイじゃん。
お腹とかもちょっと痣があった。
「にゃにゃ……女子にはお辛い事だとは思いますが、お顔の方にもその痣は少しありますが……どうか気を病まないでくだにゃいませ」
……マジか、いや……うん、なんかよく分かんないけど……しょうがないよね。
なんでしょうがないかよく分かんないけど、しょうがないことのような気がした。
なんとなく頭が重い気がして頭を触れば、角が生えてるみたい。
黒い額の石は無くなってたよ。
「彩萌殿は邪鬼という魔物ににゃってしまわれました、はい……。魔法に弱い体ではありませんが、魔法は使えません……」
「そうなんだ……まあ、なんていうか……うん、しょうがないね」
二世さんが気にすることじゃないよ、うん。彩萌が悪い。
この痣は呪いなので薬でも魔法でも治らないとか、魔法に長けた人が見ればすぐに呪われてるのが分かっちゃうらしい。
でも別に実害は無いらしいよ、痛いとか苦しいとか貧乏になる呪いはかけられてないんだって。
ただ見た目に影響する呪いだから変な目で見られちゃうかもって、二世さんは心配してくれてた。
心配してくれてありがとう、でも彩萌は大丈夫です。
澱みの海から出るってことで、二世さんの尻尾につかまってびよーんって感じで飛び出した。
ちょっとバンジージャンプみたいで怖かった……。
それにしても二世さんの尻尾はよくのびるんだね。
「お……、彩萌大丈夫かよ!? なんか黒くなっちまってるじゃねーか! でも角なんかカッコいいぞ、似合ってるぜ」
「うむ、私とお揃いじゃないか。私は嬉しく思ってるよ」
あ、そうだね。テスさんも角生えてるから、お揃いだね。
フレアマリーさんはまだ黒いままだったけど、二世さんがうにょーんって尻尾を伸ばしてびしって頭叩いたら元に戻った。
いきなり叩かれたフレアマリーさんはちょっと二世さんにキレてたよ。
しーちゃんは彩萌の肩に乗って、角を掴んでバランス取ってる二世さんを見てなんかショックを受けた顔してた。
「なんかぁ、なんかぁ……カッコいい! ズルーい! ちーちゃんもなんかかっこよくあやめにのりたい!」
どうも尻尾で角を掴んでバランスとってるのがかっこよく見えたらしい、でもしーちゃん四足歩行じゃん。
しーちゃんにそう言われた二世さんはちょっとだけ誇らしげでした。
あのさ……ところでさ、りっちゃんどうしたの?
りっちゃんどこ行ったの? りっちゃん居なくない?
りっちゃんは? って聞いたらフレアマリーさんたちはちょっと離れたところを指さしたんですよ。
床に倒れてりっちゃんはぐでーってなってた、魂作り替えられるのめっちゃ痛くってそうなっちゃったらしい。
彩萌は記憶にないからわかんないけど、もしかしてすっごい痛かったから記憶が無くなったのかな?
そういえばね、りっちゃんもなんかフレアマリーさんたちみたいな感じで顔に模様があった。
あと耳がちょっと尖がってた、ちょっとだけね。
りっちゃんはね、精霊になったおかげでジャッカルに変身できるようになったらしいよ。
ジャッカルってなに? って聞いたら、犬ってフレアマリーさんから返ってきた。
そうなんだ……りっちゃん犬に変身できるようになったんだね。
魔女っ娘スティックで叩いたら、可愛いワンコになるのかな……。
りっちゃんが元気になったらやってみよう。
――アヤメちゃんの魔法日記、一〇〇頁




