まだ居る赤い悪魔とあやめと銀色のへたれ
気付いたら、一週間です。
おはようございます、私は叶山彩萌です。夢見る現実的な小学四年生だよ!
帰るのめんどくさい、とか言っちゃって魔王が家にまだ居るんですけど、どうしたら良いのでしょうか?
彩萌の部屋に居座ってます、最近リーディアさんの魔法書から誰も出てこないんですけど、もしかしてディーテさん何かやったんですか?
封印しただろーおまえー、早く帰れよなー家出悪魔めー。
彩萌は今日、学校がお休みなので部屋で本を読んでますよ、ディーテさんは彩萌のベッドでゴロゴロしてますよ。
暇そうです、帰れば良いのに。
しーちゃんはお母さんと一緒に散歩に行きましたし、暇ですよね! 帰れば良いのに。
「ねぇねぇ、彩萌ちゃんお兄さん暇だなぁ、なんか面白いこと言ってよ」
「無茶ぶりしないでください、彩萌はギャグ製造マシーンではありません、早く帰れば良いんじゃないですか?」
「そんな事言うなよ、寂しくなるじゃない。お兄さんの心は繊細で綺麗なんですよ?」
「繊細で綺麗かどうかなんて知らないですけど、リーディアさんに怒られて家出しちゃうくらい幼稚な心を持っている事は知ってます」
「彩萌ちゃんは辛口だね、いつになったらお兄さんにデレてくれるの?」
デレを期待されても困ります、彩萌のデレは山吹君の物ですよ!
ディーテさんにわけあたえる分なんて無いんです。諦めてください。
「ディーテさんが魔族止めたら」
「来世ってこと? それは来世でもお兄さんと仲良くなってくれるってこと? いやーお兄さん嬉しいなぁ」
「どんだけポジティブなんですかー」
「お兄さんは彩萌ちゃんの事大好きですからねー、前向きに捉えますよー」
「ロリコンさん?」
「彩萌ちゃんがお兄さんがロリコンだったら良いなーって言うなら、ロリコンになっても良いんですよ?」
「全ては彩萌次第なんですね……、ディーテさんには自分の意思という物が無いのか!」
「あるよ、彩萌ちゃんが幻想世界に来たら良いなっていう気持ちがあるよ」
ディーテさんがしつこく話し掛けて来るので、本が読めません。
この一週間、ディーテさんと過ごして思った事はこの人は優柔不断です。ですが、それは彩萌限定っぽいです。
「彩萌ちゃんがそう言うならー」とか「彩萌ちゃんがそれが良いならー」とか「彩萌ちゃんが嫌なら止めるー」とかばっかり言うんですよ!
しかもお姉ちゃんとか、お母さんとかお父さんと話している時には相手に合せようと一切しないんですけど、やっぱりロリコンさんなんですかね?
でもこの人口先だけで、やっぱり彩萌が嫌な事とか言った通りになんかにしないですけどね。
何なんでしょうかね、この違い。彩萌はウザったくなったので文句を言おうと振り返りましたよ。
「ディーテさん、彩萌は幻想世界になんか行かないですよ」
「ふふっ、俺が此処に存在している時点で彩萌ちゃんが幻想世界に行く事は決定しているんですよ、無駄な足掻きですよ!」
「むぅ、反抗してきたなっ! 彩萌は山吹君と結婚して一姫二太郎で幸せな家庭を築くんです!」
「ふっふっふっふっふっ、お兄さんは魔王様ですからね、彩萌ちゃんの希望をぶっ壊すっていう設定も良いと思うんですよ、悪役でも良いと思うんですよ!」
「じゃあ、しーちゃんを操る彩萌はドラゴン使いなので勇者ポジションです! 魔王覚悟しろー」
文句を言おうと、思っていたんですけど……ペースに巻き込まれていました。てへぺろ!
いやー、お兄さん彩萌の扱い上手いですよね! このやろー!
とりあえず軽めに殴ってやろうと思ったんですけど、彩萌は脇の下に手を入れられて宙ぶらりんですよ。
リーチが長いってやつですね、魔王ズルいのだ!
「お兄さんは手足が長いモデル体型なので、これで彩萌ちゃんの攻撃を封じる事が出来るのですよ」
「にゃー! 卑怯だぞー、魔王め! この勇者彩萌が退治してやるのにー!」
「こうしてればちゃんと子供だねー、お兄さんは安心ですよ」
「――……あの、お楽しみ中悪いんだけどちょっと良い?」
声を掛けられて視線を向ければ、銀色の髪の人がいました。あー、なんか見た事あるようなー。
そんな事を考えながら銀色の人を見てると、ディーテさんはくすくす笑い出しました。
「あれの名前はね、フレンアだよ、正真正銘ロリコンのフレンアだよ」
「あー、確かそう言う名前でしたね! フレンアさん!」
「ち、違う私の名前はフレンジアだ! フレンアなんて呼ぶんじゃない! ロリコンでも無い!」
「どうしてフレンアはダメなんですか?」
「ふふふっあれの故郷の昔の言葉ではね、フレンが太陽って意味でジアが男性とか人って意味なんだよ、つまりフレンジアは太陽の人だね。それでね、フレンアってなると、アが子供とか女の子って意味らしいんだよね、だからフレンアだと太陽の少女って意味なんだよ、フレンジアの女性名がフレンアなんだよ」
「へぇ……、でも何で太陽なんですか? 銀色だし月って感じですよ?」
「私は、フレンジア・ムールファグト・ソーナって名前で、ムールファグトが月の加護って意味なんだ」
「眼がオレンジ色だから太陽の人? なるほどー勉強になりますね!」
「こいつには勿体無い名前だよ、名前返上してきた方が良いとお兄さんは思うんですけどね」
ムスッとした表情でディーテさんは呟きました。邪魔されてすねちゃった子供の顔をしてますよ、ディーテさん。
フレンジアさんはそう言われて、表情が引きつってました。
この二人仲悪いんですかねー?
「ディーテ……、お前が機嫌悪そうにしているところを見るのは初めてだよ。そもそも笑顔以外を見るのが初めてだよ……」
どうやら仲はそこまで悪くないみたいですね。
じゃあ彩萌とのごっこ遊びを邪魔された所為ですかね。
「俺はリーディア以上に彩萌ちゃんが大事ですからね、フレンア如きに邪魔されたら不快なのですよ」
「……えー、それは、やっぱり理の人間だから?」
「そんな事以上に、彩萌ちゃんが彩萌ちゃんである限りお兄さんは彩萌ちゃんを大事にすると生まれた時から決まっているんですよ、半人のお前なんかには理解できませんよーだ、お兄さんを理解できるのは同じ創世記のゴーストだけなんですよーだ」
「それは半人関係ないじゃないか……、大抵の魔族が理解できないじゃないか」
「彩萌も理解できませんよ! それでー、フレンジアさんは何か用事があったんじゃないんですか?」
すねちゃった幼稚なディーテさんに任せていたら話が進みません、だからここは彩萌が大人になってフレンジアさんに聞いてあげます!
彩萌はやっぱり優しい女の子ですよね、えへん!
そうだった、みたいな顔をしてフレンジアさんは話し始めます。
「そろそろ帰ってこい、って伝えて来いってリーディアに言われてね、……彩萌ちゃんの所に居るのも不快そうだったけど」
「えー……、お兄さん帰りたくないなぁ。リーディア我儘なんだもん、此処で彩萌ちゃんやしーちゃんと遊んでる方が楽しいのになぁ」
「八つ当たりされるのは私なんだけどな……、ヴァージハルト国の王子に魔法を教授する約束していただろ?」
「――……そんな約束したっけ?」
「お兄さんは口先だけだから忘れちゃうんですよ、約束は破ったらダメですよ! マルク……えっとユヴェリア王子ですか?」
「あー……あいつか、確かになんか約束したかもー! お兄さんが色々教えてあげないとだよねー!」
あれです、お姉ちゃんに言わせるとユヴェリア王子死亡フラグが立ったってやつですよ。
眩しいほどの良い笑顔ですね、ディーテさん。
ずっと持ち上げられていた彩萌はやっと宙ぶらりんからの解放ですよ!
「彩萌ちゃん、大好きな山吹君ともっと仲良くしてねー、だからあの紫頭に近付いたら駄目だよー」
彩萌の頭をなでなでして、ディーテさんは突然帰っちゃいました。
来た時と同じように突然音も無くです、ちょっと寂しいぞコノヤロー。
フレンジアさんの方へ顔を向ければ、苦笑いを浮かべられました。
「ごめんね彩萌ちゃん、お世話になりました。今度来た時は私ともお喋りして欲しいな」
「はーい、フレンジアさんばいばーい」
撫でやすい所に頭があるんですかね? フレンジアさんも彩萌の頭をなでなでして帰りましたよ。
なんだか、ちょっぴり寂しい気分にさせる出来事でした。
この一週間、誰も来なかったのはディーテさんが何かやったのかどうかの謎は解けなかったですね。
そう言えば、エミリちゃん元気かな?
――アヤメちゃんの魔法日記、十頁




