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異文化コミュニケーション

2013年05月30日書き換え


現在文章の書き直し中です。前後の話と整合性がとれていない部分がありますので、ご了承ください。

 目覚めは唐突にやってくるものだ。

 それがどんな場合であれ、人は眠り、食べ、そしてまた眠る。

 昔から、寝溜めと食い溜めは出来ないと言われているが、睡眠は大変重要だ。


 人間は睡眠することで、脳内の記憶を整理し、時に緊張した脳を休め、また脳の疲れをとる効果もある。


 健康的な人間であれば、それは避けて通れない宿命。それが睡眠である。


 そして、僕もその例外に漏れず現在眠りの世界から急速に現実へと引き戻されていく。


 うっすらと目を開けて、周りを見た。

 見覚えのない木組みで出来た天井が見えてきた。

 寝起きは良い方だが、まだ頭が回っていない感じだ。


 段々頭がはっきりしてくると、先ほどの記憶が蘇ってくる。


 あぁ、僕あのまま気絶しちゃったんだ……。

 いい大人がみっともないなぁ……。 


 泣き崩れ、犬顔の人が心配していたような記憶がある、意識が途切れる前に、抱きとめられた記憶もある。


 なんとも恥ずかしい話だ。人前で大の大人が泣き崩れるなど、今思い出しても、恥ずかしいやら情けないやらで、なんとも言えない気分になってくる。


 あぁ、過ぎたことは仕方ない!もう泣いちゃったんだし、いいや!


 そんな事を思いながら、自分の状態を観察してみた。特に体に異常は無いようだ。


 手足に異常はない。

 五体満足で、怪我もしていないようだ。


 ただ寝ていた場所が硬かったのか、下になっていた部分が、若干痛む程度だった。


 次に周りに誰も居ないことを確認し、ゆっくりと体を起こした。


 どうやら家の中らしい。

 外観からも推察できたが、内部を見るとまさに縄文ハウス。


 藁葺き屋根の古民家を見たことがあるが、あれと同じように、木がしっかりと組まれ、その木を植物性の繊維か何かで固定し、その間に丈の長い草を隙間なく詰めて、風雨から身を守っているようだ。


 外観からは想像もできないほど、内部はしっかりとしていて、明かり取りのためだろうか、窓が一つ開いている。


 部屋には特にこれといってものがなかった、隅に籠のような物が数点置いてあるだけで実に殺風景だ。


 家具があり、部屋がいくつもある家を当たり前と思っていた自分の考えからは想像もできないこの家の状況は僕に漠然とした不安を与えるには十分な威力があった。


 とりあえず、安全そうなのでホッとした。


 足を入口側に向けて、藁のような草の中に僕は寝かされていたらしい。干し草の良い香りが体中から立ち上り、細かいクズが洋服にびっしりくっついていて、ちょっと嫌な感じだが、なぜか懐かしい記憶に包まてたようで、心を落ち着けるのにはちょうどいいかと思って、気にしない事にした。


 足元の壁際に僕の荷物があって、ホッとした。


 あれは僕の今の僕の全てが入った大事なリュックだ。

 貴重品もそうだが、何よりもキャンプ道具や非常食など、いざという時に役立つ物が色々入っているリュックだ。

 無くしていたら色々と難儀するだろうことは、なんとなく予想できた。

 

 ここがどこであれ、自分の持ち物があるという事でまず安心した。


 僕はまず、荷物を引き寄せて、何か盗られていないか確認した。

 いくら拾ってくれて、ここで寝かせてくれた人だとしても、いい人とは限らない。

 その代金を勝手に徴収されているかもしれないので、僕は気が気でなかった。


 僕は臆病で、小心者なのだ。そして、若干疑心暗鬼でもある。

 

 現金はそのまま、食料、キャンプ道具その他諸々すべて揃っていた。


 道具をあらかた出して調べてみたけど、盗まれたものはなかったようだし、どうやらここに寝かせてくれた人物は、悪い人では無さそうだ。


 しかし、無償の親切というものも信用出来ない。ただより高いものは無しと昔から言うからな。


 さて、どうしようか。


 ここで一旦状況を整理してみようと、僕は今度は頭の中を整理することにした。


 まず現状だ。

 

 ここはあの村で見た家の一軒だろうと推測する。

 あの犬人さんは、どうやら良い人のようだ。

 簡単に信じて良いかは分からないが、ここに来て何もわからない僕が唯一頼れそうなのは、彼しかいない。

 そして、彼の頭はどうやら被り物では無いようだということもわかった。


 気絶する前に、彼が僕に駆け寄り、体を支えた時にマズルが体にあたった記憶がある。


 あれは、中にワタや粘土やワイヤーなんかが詰まっている感じじゃなかった。


 本物のイヌの顎の感触がした。


 よく、近所で飼っていた大型犬がじゃれついた時に感じた感触と一緒だ。


 つまり、あれは本物と考えるしか無い。


 植生の違い、どう見ても本物そっくりの被り物の犬人。


 色々考えて、段々と嫌な考えが湧いてきた僕は、荷物から急いでラジオを取り出した。


 ラジオ波は地球上どこにいても、大体入ってくる。地球はよく電波の星と言われるが、あらゆる電波が地球上を飛び交っている。


 地中や遮蔽性の高い建物内以外ならどこでも何らかの電波を受信することができる。


 つまり、ここが少なくとも地球かどうかぐらいかは分かるはずだ。


 アンテナを立てて、スイッチを入れる。

 ザァーっと言う音だけが虚しく響く。


 チャンネルを変えてみても一切、なにも引っかからない。


 家屋は電波を遮蔽する素材で出来ていないことを考えると、最悪の結論に達した。


 ここは、地球じゃない。


 多分、別の惑星なんだと思う。


 しかも、電波を一切受信できないことから考えると、文明レベルも相当低いことが考えられる。


 そこまで考えて、僕は少し考えを休むことにした。

 ラジオをしまい、カバンからサバイバルナイフを取り出して、服の中に隠すと、一息ついた。


 サバイバルナイフは、キャンプの必需品だから常にキャンプに行くときは持ち歩いていた。

 しかしここが地球ではないと判った以上、何が起きても不思議じゃない。

 そして、僕は身を守る手段が全くない状況で、安心して居られるほど、図太い神経を持っているわけじゃない。

 ナイフを服の内側に忍ばせたのは、万が一あの犬人が襲ってきた場合、反撃ぐらいはしてやろうという気持ちでの事だった。


 ただ、現実問題として素人がナイフをむやみに振ってもすぐに相手に奪われる可能性が高かったので、威嚇用という意味合いが強い。


 だからといって、常時刃物を見せるけるようなことはそれこそ不信感と疑心暗鬼を双方に生むので、あえて見えないように携帯することにしたのだ。

 因みに、日本では理由もなく刃物を携帯していると職務質問で没収されるからこんなこと出来ない。

 キャンプに行くときですら、すぐに抜けない所に入れておかないと、しょっぴかれる恐れが有るので、今もリュックの底の方から取り出したのだ。


 その御蔭か、相手にもナイフの存在は気づかれていないようだ。

 とりあえず、ナイフを持てたことで少し心に余裕が出来そうだ。


 その場に座り込んで荷物を片付けながら思った。


 地球外知的生命体とコンタクトか……。

 SF映画じゃあるまいし。


 どちらかと言えばファンタジー世界の住民だよな。彼らは。


 そう考えると、ここは地球外惑星と考えるより、異なる世界、異世界と考えるほうがしっくり来るのかもしれない。


 どのみち夢物語の中でしか会えない住民であることには、変わりなかった。


 兎に角、ここでしばらく何とかしないと行けない。


 食料は、非常食を含めて7日分ある。

 問題は、ここで食べられるものが手に入るかと言う事だ。


 地球育ちの僕が、ここの人たちと同じ食事をして平気という保証はない。

 地球でもあるのだ。例えばジャングルの果物には若干の毒素が含まれていて、人間は食すことが出来ないが、動物は可能で、それを知らずに食べると、段々と毒で弱って死ぬのだ。


 とりあえず、今は考えられる手段も限られるし、何より情報が大事だ。

 食事が出来なければ、どの道僕は餓死するしか無い。せめて水だけでも飲めるようなら、生存の可能性は飛躍的に高くなる。

人間は水だけでも、一月は生きられるらしい。

昔、太平洋をカヌーで横断した人から聞いた話だ。


 よし、そうと決まれば、即行動。

 それが僕の何時ものパターン。


 考えてもダメなら、突っ走る。

 そんで、ダメなら立ち止まって考える。


 今までそれで生きてきたんだ、ここでもそうして生きてみよう。


 いくら僕が前の世界で適当に生きてきたからって、流石にあの世界で生きていくのがイヤになったわけじゃない。


 親兄弟も一応いるし、友だちも居る。

 帰れるかわからないけど、兎に角行動あるのみ!!


 さてと、それじゃあまずは……。


 そんな考えをしている時に、入り口からの光が遮られた。


 「(もう目覚めたのか、人間)」


 さっき助けてくれた、犬人さんだった。

 どうから、ここは彼のお宅らしい。


 「あ、ど、どうも、こんにちは!」


 こういう時は、笑顔で挨拶。

 不思議なもので、言葉が通じなくても、ニュアンスはなんとなく伝わるものだ。


 人間ならの話だが……。


 幸い、彼はその意図がわかったらしく、少し緊張を解いてくれた気がする。


 飽く迄も気がする程度だが。


 「先程はありがとうございました。」


 とりあえず、お礼を言って頭を下げると相手は不思議そうな目で僕を見ていた。


 早速異文化ギャップにハマったようだ。

 お辞儀がどうやら通じないらしい。


 まぁいい、お礼の言葉は僕の心の問題だからそれはいいとして、言葉がまず通じないのがマズイ。

 犬の顔で、体は体毛で覆われているが、不思議と人間の体に近い彼らは、どうやって発音しているのか分からないが、とりあえずその疑問も今は後回しにして、まずは言葉の学習からだ。


 僕はリュックと別に持っていたショルダーバッグから、ペンと紙を取り出すと、ページにペンでグルグルとクロマルを描いた。


 そして彼に、それを見せた。


 「(なんだそれは?)」


 「ナんダそレは」


 相手が発した言葉は恐らく疑問をいだいた時に聞く言葉だと思い、俺は相手の発音を真似して、発音した。


 すると、相手も驚いた顔をしていたが、まだ同じように返してきた。


 「(なんだそれは)」


 今度はゆっくりと、はっきりと発音してくれたので、聞き取ることが出来た。

 どうやら、僕の意図を汲んでくれたらしく、わざとゆっくりと発音してくれたらしい。

 やっぱり良い人なんだなと、あらためて思った。


 「(なんダそれハ)」


 まだ、怪しい部分も残っているけど、恐らく通じるだろう。


 とりあえず紙をしまって、今度は自己紹介をすることにした。


 まず、自分を指さして


 「シロウ」


 と、繰り返した。


 この世界に同じ様な発音の変な意味や誤解する発音が無いことを祈りつつ、下の名前だけ教えてみた。


 そして、相手を今度は指差しして「なんだこれは?」と言ってみた。


 本当なら、指差しがいけない文化の可能性もあったし、モノに対して使う言葉を人に対して使うといけない文化かもしれない。文化は本当に

多様であるから、得てして挑発行為や逆の意味になる行動をした時などは、死を覚悟する場合もあるほどだ。洒落抜きでヤバイのだ。


 だがしかし、こういう時は必死で動いた奴の勝ちなのだ。


 なにもしないで、ただ黙っているのも自殺行為だ、消極的な自殺か積極的に動いての自爆かでは意味は大きく違う。同じ自殺行為ならアクティブな方を選ぶぜ!的な発想で、とりあえず動いてみたのだ。


 すると、相手も意味がわかったのか、僕のことを指さして


 「シロウ?」


 と、聴いてきたので、僕は了承の意味を込めて、同じ動作を繰り返した。

 この時うなずかなかったのは、頷きが肯定の意味を持っているか不明だったからだ。

 ある民族では、頷きが否定の意味になったりするのだ。


 すると今度は、相手が自分を指さして


 「ロウヤ」


 「ロウヤ」


 僕が何度か復唱すると、相手は少し表情を崩した。


 顔が犬顔だから、よくわからないけど、多分笑顔なんだと思う。


 イヌの笑顔って想像できなかったけど、こんなふうに笑うのか、なんか表情筋が少ないせいか、目で感情を表現している感じだ。


 確か、日本人は目で感情表現をし、外国人は口元で感情表現をするのが文化的傾向だったと記憶している。


 その点で言えば、日本人の僕としては読みやすくてありがたいことだろう。

 

 どうやら、コミュニケーションの第一段階が終わった事で、相手も気分が少し楽になったらしい。


 しかし、まだまだやることはたくさんある。


 兎に角言葉と習慣を覚えよう。なにがいけなくて、何がいいのか。

 異文化との交流は時に衝突を生むが、そこは日本人である僕が譲ればいい話だ。

 日本に生まれてよかったと、密かに思った。

 これがアメリカ人だったら、絶対に自分の主義主張を変えないで喧嘩になるだろうな。


 僕は、シロウと名乗るこの犬顔の男に全面的に甘えつつも、油断せずにこの世界の文化を習うことにしたのだった。


 こうして、僕のこの世界での第一歩が踏み出されたのだった。

お読みいただき、ありがとうございました。

今回のエピソードは、実際人類が未知の文明と交流する時に、同じような方法でやったと言う話を元に、書いてみました。

むかしやっていたテレビ番組で、ドロンズがヒッチハイク旅行をした時にも、同じように住民から「これはなに?」を、聞いてひたすら単語を増やしていったエピソードがあるので、おそらく異世界でも有効だと判断して、書いてみました。


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