初めての、居場所
久しぶりの更新です。時間かかってしまって申し訳ない。
それでは13話目をどうぞっ
「あのさ・・・徹。いい加減に俺以外の奴とつるんでみたら?」
「え?」
学校での昼食中。急なタイトもとい狼牙の言葉に身を固めた。購買のパンを握りつぶしそうになった。
「な…んだよ。どうした?急にそんなこと」
心臓の鼓動が急に早くなるのを、感じた。心臓が締め付けられる感覚も。
狼牙が学校に転校生としてやってきて、徹の傍にいてくれるようになってからは、ほとんど無くなったことだったのに。もう大丈夫かもしれないと、思っていた矢先に・・・。
「いや・・・。別に、これと言った理由はないんだけど・・・」
徹の手が軽く震えていた。タイトはそれを、見逃すことはない。そして、無情にもそれに、同情しようとはしなかった。しかし、徹の、動揺して少し青ざめた顔色も、震えている手も、タイトを苦しめるばかりだった。けれど、こうしなければ・・・。
「徹さ、俺が転校してきてから、俺以外と話してないじゃん?つまりさ、それって、俺が転校してくるまで、誰とも話さなかった。ってことでしょ?」
それじゃあねぇ・・・・。小さく呟きながら罪悪感に似た感情に顔を伏せた。
「・・・でもっ・・・俺、大丈夫だよ。ホントっ・・・お前いれば・・・。」
だから、そんなこと言うな。俺をお前から遠ざけないで。
出かかった言葉を飲み込むのに精いっぱいだった。
狼牙・・・いや、タイトにも考えがあるのだろう。いつまでもこんな自分では駄目だと。いつまでも狼牙に頼っているなと。徹にもその意思は読みとれた。
だが、そんな余裕は徹にはない。今でさえ、廊下でざわめくあいつらの姿に、まるでバケモノをみるような視線に、眩暈を覚える。ただ、隣に狼牙がいてくれるのが幸いなのだ。
それを・・・。
「・・・必要だと思うんだ。そろそろ、さ。もちろん急に大人数で、なんて言わないし、一人でとも、言わないからさ。ただ、もう少し・・・・徹も視野を広げるべきじゃないのかな~って思っただけなんだけど・・・・・。」
やはり、徹を思いやってくれての提案だ。そう簡単にいくことではないという事は、狼牙も分かっているだろう。
それなりの覚悟はしなきゃいけない。狼牙も、俺も覚悟はしているから、と決意をもった表情で、徹に聞かせていた。
「・・・・・・。」
確かにこのままではいけないことは、徹だって理解している。いつまでだって、狼牙が傍にいてくれるわけではない。自分で踏み出していかねばならない。
分かってはいる。
しかし、どうやっても無理な事はある。
「俺も、頑張るからさっ。・・・・後は、徹の気持ちだけだよ。」
「けど・・・・。」
「確かに、徹が辛い思いしてたのは知ってる。でも、俺は、このままでいいとは思わない。このまま徹に塞ぎこんでいてほしくないし、今はこれでこれでよくても、あとあと良くなくなるかもしれない。・・・・もちろん、今すぐにってわけでもないし。・・・リハビリみたいなもんだよ。・・・・・・・・徹にとってはそんな簡単な事じゃないけど。」
優しく、なだめるように。徹の焦る気持ちを落ちつけてくれる。
「でもさ、ほら。リハビリだって急な運動はしないでしょ?ゆっくりゆっくり、根気よくやってくものだと思わない?徹の周りの人とのわだかまりも、そうやって時間かけてやってくものだと思うんだ。焦んないでやってったらきっとわかってくれるからさ。」
「・・・・・・・・。」
「一緒にがんばろ。ね。」
いつの間にか、徹の気持ちは治まっていた。あの不良との事件から結構な時間がたつのに、未だ冷めない、わだかまりから逃げていたのは徹自身なのかもしれない。
いずれやらねばならないものならば、傍にいてくれる人がいる方がいい。一人よりも、隣に誰かいる安心感が欲しい。
甘えかもしれないが。
「・・・・分かった。」
小さくうなずく。
「・・・・そっか。」
狼牙もほっとしたようだった。
「俺のこと、一人にすんなよ。」
念を押すように、強く言う。
「分かってるよ。大丈夫。」
柔らかく微笑んで、徹の手を握った。
久々の投稿ですが、いかがだったでしょうか。
読んでくれた人は、是非、コメントで、アドバイス等をよろしくお願いします。