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【完結】『いらない』と言われた令嬢の幸せ物語 ~うちの子なので返しません、と魔王様がご立腹です!~  作者: みなと


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9話:いらっしゃい

 魔族。

 人とは異なっている種族。

 人に害を加える種族。

 怖い。

 近寄ってはいけない。


 そういった情報だけはいくらでもあるのに、どんな所に住んでいるのか。どんな生活をしているのか、などという情報は全くない。


「……私が、魔族」

「正確には魔族、というよりもハイブリッド種族、とでも言おうか。人間と魔族、両方の性質を併せ持っている」


 一体それはなんだろう、とリュシエールは首を傾げていたがハッと我に返ってぶんぶんと手を振りながら必死に訴えかける。


「ま、待ってください! 私は本当に、魔力ナシなんです! だから、元の世界でホワイト、と呼ばれている本当に、その……役に立たない存在、でして……」


 言いながら、リュシエールは劣等感に苛まれていってしまう。

 生まれてから行われた魔力測定で、『魔力ナシ』と判断されてしまったことで、とんでもない扱いばかりをうけてきていた。

 それなのに、今ここに来て、必要な存在、だと言われたところで誰がどう信じれると言えるのだろうか。


「ああ、それなんだがな」


 リュシエールが顔色を悪くしている中、レオンは大して気にしていない様子で言葉を続けていく。


「リュシエール嬢、君の魔力は人間界の測定器では測定不可能なんだ」

「……へ?」


 あっけらかんとそう言われ、さすがのリュシエールも悲壮な顔はどこへやら。

 知らなかったハンナは少しだけ気まずそうにしているが、レオンとフレディは特に何とも思っていないような、ごくごく普通の顔をしている。


「ハンナ」

「あ、はい!」


 そうだった、とハンナが慌てた様子で一旦リュシエールの部屋から出ていき、少ししてから何かを持って帰ってきた。


「……それは?」

「ありがとう、ハンナ。さて、リュシエール嬢」


 ハンナから受け取ったものを、リュシエールの座っているソファーの前に設置されているテーブルへと置いたレオンは、すっと手を差し出した。


「さ、ここに手を置いてくれるかい?」

「ここに、ですか?」

「そう」


 人間界の測定器では測れない、ということがどういうことかよくわからなかったものの、リュシエールは言われるがままにそっと運ばれて来たものに手を置いた。

 それは、小さい頃に見たことのある魔力測定器と似たような装置。


 台座の上に水晶が乗っているだけのシンプルな構造だが、これに手を乗せることでその人の魔力の値を測定することが可能となっている。今の言葉からして、恐らく同じように測定するものなのだろうが、と思ったリュシエールは疑うことなく手を置いた。

 もしかしたら警戒心が足りない、と叱られてしまうかもしれない。

 だが、レオンの言っていることがどうなのか、それを確認してみたい、という気持ちの方が大きく上回ったのだ。


 ぺた、とリュシエールの手が乗ると、ふわ、と淡い発光がある。

 ああ、やっぱりこの程度なのか、と思っていたリュシエールだったが、直後に目が開けられないほどの眩い光に包まれてしまった。


「!?」

「うわっ!」


 きっと、今驚いた声をあげたのはフレディだろう。

 レオンの『いや、防げよ』という呆れた声のおかげで誰の声なのかは想像できた。


「……眩しい」


 光の発生源であるリュシエール自身も眩しい状況ではあるものの、周囲に比べるとましな状況ではある。

 水晶から手を離せば、すっと光は収まっていき、目を押さえているフレディと、しれっと平気な顔をしているレオン、目を手で覆っているハンナがリュシエールの視界に入った。

 ぐるりと周囲を見てみれば、周囲の人々はかなりの人数が光で目をやられたらしく、うずくまっている人もいた。


「……リュシエール嬢、分かったかな?」

「ええと」

「こちらの測定器では、問題なく測定できている。人間界では測れないもの=ないもの、とされたから『ホワイト』と区別されてしまった、ということだ」

「そう、だったんだ……」


 しみじみと頷いて、リュシエールはぎゅっと手を握ってから魔界に来る経緯を話し始めた。

 自分が、人間界……もとい実家では存在しているだけで邪魔な存在だったこと。

 いてもいなくても変わらない、それならば少しでも力になれるように道具になれ、とも思われていたこと。


 淡々とした口調で話しているうちに、じわりと涙が滲んできてしまうが、リュシエールは少し乱暴に拭い去る。今、リュシエールがいるのは人間界ではなく、魔界なのだから、こちらの流儀に慣れていく必要がある。

 元の世界のことを考えている時間すら惜しい。

 そう思っていることも口からするりと出てくるが、それらを聞いた面々は渋い顔をしている。


「……こちらの思惑とは全く違っていたのか」

「え?」

「こちらは、本当に早く戦争を終了させたかったんだ」


 レオンの言葉を聞いたリュシエールは、ぱちくりと目を丸くした。


「本当に?」

「ああ、そうだ。そもそも、戦争を続けていたのは人間側の都合であって、こちらはどうでも良いと思っていた。戦争を続けることで、武器が売れていくから、経済が嫌でも潤うからな」


 そんな理由があったんだ、とリュシエールが思っていると、レオンがぽつりと続けた。


「……まぁ、こちらが戦争にも飽き飽きしていたところに、人間側でも同調する意見が少なからず出たことで、今回の条件を元にした終戦締結を結ぶ予定だったんだが……」

「寄越されたのは、私」


 まずい、とリュシエールは思う。

 実際に押し付けられるような形で婚姻関係を結んだのは、人間界でハズレとされているリュシエール。

 戦争を終えるためにやって来たのに、これでは戦争終結になんて夢のまた夢、となってしまう。どうしたものか、と思っているとレオンが手を伸ばして、リュシエールの体をふわりと抱き上げた。


「君は、気にしなくて良い。ただ人間界で生まれてしまっただけの、始祖の姫。本来あるべき場所へと来ただけのことなのだから。……改めて、いらっしゃいませ、リュシエール嬢――我らが始祖の姫よ」


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