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9 婚約破棄と申されましても

「ニーハ、すまなかった」


今日は卒業パーティー。

そのパーティーに向かう馬車の中で父上が何度も私に謝ってくる。婚約の話を持ちかけたのが父上であるから罪悪感で一杯でいるみたいだ。


「気にしないで下さいお父様、その為の契約書でもう期日を向かえましたから」


卒業パーティーとは無事に卒業出来た事を祝うパーティー。

そう卒業出来たと言う事で契約も無事に期日を向かえた。


馬車が会場に着く。

パーティー会場に入ると周りから拍手で迎えられた。

悪役令嬢のようなつり目は変わらずであるが、それを打ち消すかのような妖艶な美貌と気品により、ニーハは悪役令嬢どころか誰もが認める淑女として貴族内で崇拝されていた。

皆がニーハに好印象であった。

契約も満期を向かえた事もありニーハは油断をしていた。

断罪劇などが起こるはずがないと。


「二ーハ・オーザッカ!貴様の貴族とは言えぬ行動は許しがたい。よってアガヤ・トーギヨンは貴様との婚約を破棄する!」


声高らかに婚約破棄を宣言したのはアガヤ第二王子であった。

まさかの宣言にニーハはミーファの方を見るとミーファは首を横に振っている。

ミーファも知らない事らしい。

まさかの断罪劇に油断していたが動揺はしていない。

先程のアガヤ第二王子が述べた事は何一つ言われなき事であった。


「アガヤ殿下、お伺い致しますが、私の貴族とは言えぬ行動とは何で御座いましょうか?」


「貴様は私が懇意にしていたミーファ令嬢を苛めていただろう」


「私とニーハさんは親友です。殿下には何度もそのようにお伝えしたはずです」


殿下が述べると直ぐにミーファが反論した。

ミーファの側にはミゼルがしっかりと守っているので安心出来る。


「か、可哀想にニーハにそのように言うよう言われているのだな」


「他には?」


「はぁ?」


「他には御座いませんのでしょうか?」


「あ、あるぞ、えーと、学問を疎かにして・・・」


「わたくしは学園1位の成績を修めており疎かにしておりませんが?寧ろ、常に下位におられた方はおりましたが」


「その悪質な性格により民や貴族からの人望がなく・・・」


「わたくしは皆様に生徒会長に選ばれましたが?」


「異性と二人きりでいるなど不貞を・・・」


「異性と言っても弟でございますよ。しかも生徒会室で生徒会の仕事をしていただけで、ミーファさんが数分離席されていただけです。国王陛下からは寧ろ生徒会に入れなかったアガヤ殿下が叱られたはずですが?」


「・・・」


もう何もないらしい。

それでは私の方から止めの一手を打つことにしましょう。


「国王陛下、契約は期日を向かえましたのでお話しても宜しいでしょうか?」


「うむ」


「では、アガヤ殿下にお伝え致します。わたくしとアガヤ殿下は婚約をしておりません」


「「「えーーーーーーーー!!!!!!」」」


会場全体が驚愕で会場が振動で揺れる。

全員が婚約していないとは思っていなかったのだろう。


「な、何を言っている?私と貴様は書類にサインしたであろう」


「私と殿下がサインしたのは『契約書』で『婚約書』ではありません!」


「・・・」


「ご説明しますと、わたくしは殿下から最初に掛けられた言葉が『悪役令嬢』と罵られたため、私は婚約ではなく契約書を結ぶ事に致しました。

契約内容は『アガヤ第二殿下が態度を改めてニーハ令嬢を尊重し手を取り合う事が出来るのであれば婚約する。この期限は学園卒業までとし、ニーハ・オーザッカは期限まで他の者と婚約をしないものとする』でございます。

そして、学園を無事に卒業出来ました現在はアガヤ殿下に改める兆しなしと言う事で契約は期日を向かえました」


ニーハの説明を終えると会場のざわめきが止まらない。

ざわめきを止めたのは国王陛下であった。


「ニーハ嬢とアガヤの契約は期日を迎えた。ニーハ嬢よ長きに渡りソナタを縛り付け申し訳なく思う。

そしてアガヤよ、お主は卒業後はボーガイド王国の女王陛下の元へ婿に行く事が決まっている。

早急に準備せよ!」


「畏まりました」


ボーガイド王国は女王国家。

確か既に6人の夫がおり、女王と王妃は同級生だったと聞いたことがある。

でも、どこか可笑しい。

アガヤ第二王子が大人しすぎる。

近衛兵に連行されパーティー会場からご退場される時でさえ大人しく連行されていった。

まるで全てを知っていたかのように


「ところでニーハ・オーザッカよ、お主に会いたいと申すものがいてな。少し会って貰えぬか?」


無事に終え安堵している所に国王陛下からニーハに会いたい者がいると告げられる。

私に会いたい?

誰だか解らないが国王陛下の合図により一人の男性が大きな花束を持って現れた。


「ユージュック殿下!?」


ユージュック殿下が何故?

動揺するニーハの前にユージュック殿下が片膝を付き花束を前に出す。


「一目見た時から貴女に恋をしておりました。

私が『時を来るのを待っている』といったのはこの時です。貴女が自由になるのをお待ちしておりました。

待っている間も貴女を想う気持ちは褪せることなく、寧ろ増すばかりでございました。

ユージュック・ドーギヨンはニーハ・オーザッカの事を愛しております。

私の伴侶は貴女以外考えておりません。

私と婚約して頂けませんか?」


「???」


「すまんな。こやつはニーハ令嬢以外は妃に迎える気はないと言って令嬢を紹介しても断ってばかりでな。

このままでは王妃のいない国王が誕生してしまう。

私もニーハ令嬢のような優秀な者がユージュックを支えて貰えると助かるのだが、駄目であろうか?」


「で、でも私つり目で怖くないですか?」


「貴女の目は周りの者の気を引き締め、貴女が笑顔となると一瞬で周りの者が和みます。そんな貴女の目は魅力の一つであって決して欠点では御座いません。

ニーハ嬢、私の横には貴女にいて貰いたい!」


「あっ、えっ、その、私で宜しければ・・・」


ニーハが花束を貰い受けるとパーティー会場に歓声で盛り上がる。

ミーファとミゼルは勢いで抱き合ってしまい、互いに顔を赤らめていた。

あんなに憂鬱でフラグとしか思えなかった王子様との婚約が今では涙を流すほど嬉しい。

ニーハは悪役令嬢ではなく誰もが尊敬する淑女として幸せを掴む事が出来た。

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