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1 悪役令嬢と申されましても

私は悪役令嬢なのかもしれない。

鏡を見ながら少々キツく見られがちな目付き、その割には整った顔立ち。

そして侯爵令嬢と言う高い身分は悪役令嬢そのものにしか見えなかった。


何故、そう思ったのか?

それは私が転生者であったから。

生まれた時から前世の記憶があった。

記憶はあるのだけど問題があった。


私はこの世界の話について何も知らない。

前世の私は悪役令嬢ものの小説を読んだ事がなく、ゲームもやった事がない。

そもそも知っているのが当たり前の展開で話が進みがちだけど、百万本の大ヒット作でさえ国民の1%未満なので、聞いたことがあると言う私程度のレベルなどが大半なのだ。


私は、ここサルガ共和国で第二の都市として栄えている領地を持つオーザッガ侯爵家の長女として生まれる。

しかし、サルガ共和国もオーザッガ侯爵も私の名前であるニーハも前世で聞いた事がない。

なので、自分にどう言ったイベントが発生するかなどのシナリオが一切解らない。

そもそも取り越し苦労でそんなシナリオ自体がないのかもしれない。

このように何も解らない状態が8年続き、物心ついてからはほぼ毎日のように鏡を見ながら思い悩んでいた。


8年間、フラグらしいフラグが一切発生せず、平穏に過ごしていたところ、フラグは突然訪れる事となった。

サルガ共和国第二王子であるアガヤ王子が訪れると言う。


何しに?

父は私も応接間に来るようにと言う。

何故私が?

何か怪しい雰囲気が漂って来る。

怪しくてお断りしたいが、そんな我が儘が通る訳がない。

ニーハは「畏まりました」と告げる。


その夜も私は鏡を見ながら溜め息を吐く。

キツイ目付きが少しでも和らぐよう毎日、指で目尻を下げたりしているが変わる訳がない。

最終的には目尻を伸ばしたり縮めたりして遊んでいた。

明日はフラグと会わなければならないのかと思うと憂鬱で仕方がない。


はぁー、仕方がないわね。

優しい人だと良いのだけれど・・・

私は諦めてベッドに入りフラグに抗うのをやめた。


「何だ、その目付きは?本当に悪役令嬢だな。こんなのが婚約者なのか?」


私は挨拶をした。

ちゃんと礼儀正しく挨拶をした。

その挨拶に対し返って来たのが、この言葉であった。

あまりの言葉にお茶を淹れていた侍女がお茶を溢してしまった。


「侯爵家とは教育がなってないものだな」


王子がお茶を溢した者に文句を言う。

お前のせいだし、教育がなってないのはお前だろうが。

それよりも彼が発した言葉に気になる所が幾つかある。

先ず、アガヤ第二王子は残念王子キャラのようだ。

容姿は王子キャラだけあって素晴らしい。

だが、性格の悪さが顔に滲み出ているせいか私の脳内では「ないわぁ~」と言うワードが連呼している。


次に気になるのは婚約者と言う言葉だ。

私はそんな話は聞いていない。

母の顔を見ると首を横に振っていたので、残念王子の勘違いみたい。

でも、まるっきりの見当違いと言う訳ではないと思う。

おそらく、今日は婚約に向けた顔合わせなのに違いない。

そんな大事な顔合わせの最初の一言がアレとは・・・


そして一番気になるのが、彼が発した悪役令嬢と言う言葉。

この世界に悪役令嬢と言う言葉はない。

いや、悪役令嬢と言う言葉は解ると思うが、それがどう言ったものを指すのかが解らない。

なので、皆からしてみたらアガヤ第二王子が突然に悪口を言っているとしか思われていない。

しかし、私は彼のこの一言で彼も前世の記憶持ちである事が解った。

解ると更に最悪である。

前世の記憶がある中で残念王子なのだから前世も碌でもなかったはず。

こんな男が私の婚約者になろうとしているのかと思うと将来の人生は地獄しかない。

地獄を回避するためには、この婚約を回避するしかない。

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