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【第六章】†ep.5 数奇な運命の結末①

終わっても良かったんですが、番外編的なものも含めてもうひとつの話で終わりですw

 授業が終わるなり、レティシアは「ごめん」とリュシファーにそう言うと、屋上へと走った。

 外は鉛色の雲が辺りを覆い、天気があまり良くない。

 エミュ~に話しかけようと思ったのに、エミュ~の姿はない。

 精霊の女神レティシア、土の大精霊ウレハの名、雷の大精霊イシュタリス、水の大精霊リーヴァ、聖の大精霊リザルトの名を呼んでも、返事はない。

風の大精霊セイレシルは声をかけてはいないが、どうせ返事はないとわかりきっていた。

 ――いつからだ。

 声がしないのは、そうだ。

 確か、大魔神ザロクサスに闇の炎の魔法を使われた時、水の大精霊リーヴァが少し防壁を張ってくれていた。

 その時は確かにいたのだ。

 しかしその威力の強大さに倒れ、操られてからは声がしないのだ。

 一体、どういうことなのだろう――。

 とにかく、ため息を吐くレティシアはその場に座り込んだ。エミュ~が出てくるかもしれないと思った。

「!?」

 低く重々しい声が聞こえた気がしたレティシアは、辺りを見回した。

 しかし、誰もいない――。どこかで聞いたことがある声だった。


 ――レティシア……


 もう一度はっきりと聞こえたその声は、自分の心の奥底から聞こえて来ていた。

「!?」

 レティシアは驚愕して立ち上がった。

 そして静かに語りかけるその声にこう言った。

「誰だッッ」

 ――私はお前、お前は私だ。

 そして、お前がこの様な素晴らしい力を持つとは知らなかった――。

 やっと私は目覚めた――。

「!?」

 レティシアは心の中で確かに聞こえたその声に、その名を思い浮かべた。

 ――そう、私はお前に消されて身を失った大魔神ザロクサス。

 お前に操りの術をかけて置いたおかげで助かったわ…。

 突然だったがあの場で少しでも術が残って入れば、入り込むなど容易いからなぁ。

「な、何…!? あの時から――私に……!?」

 レティシアは目を見開いて後ろに後退した。

 そんな…まさか……ッッ

 ――くっくっくっ、あれからちょうど三日たった今やっと目覚めた。

 お前に食らった光の魔法――そのせいでお前に取り込んだが少々目覚めるまでには時間がかかった。

 しかし…これでもうお前の身体を自在に操ることが出来るというもの…。

「な、何だと……! そんな事させるか…ッッ」

 ――ふふふっ…悪いな。

 お前の意志はもはや何の意味も持たない――。

 この私に乗っ取られ、精霊達の力も及ばぬ…むしろありがたく使わせてもらおう。

 ふっははははははっ………ッ

 ―――……

 ――――…


 リュシファーは心配で見に行った屋上に倒れているレティシアを運び、ベッドに寝かせていた。

 隣ではミグがため息を吐いている。

 ベッドで寝かせてから30分くらいはたっただろうか。

 やっと目を開けたレティシアは、具合があまり良くないようだ。

 顔色が少し悪い。

「――大丈夫か? 心配したんだぞ? 今日は朝から変だし…」


「そう…? そんなことはない…」


 レティシアがそう言ったので少し安心した。

 レティシアはトイレに行くと言った。

 ひとりで大丈夫かと尋ねたが大丈夫と答えるので、ひとりで行かせた。

 しかし、先程からミグが一言も喋らないので少し気になり尋ねた。

「――い、いや…なんかアイツ少し変じゃなかったか?」

「え? 具合が悪いからじゃないのか? 顔色も良くなかったし」

と答えたが、ミグはうーんと考え込んでいた。

 その時だった――。

 突然の悲鳴――。

 驚いてばっとドアを飛び出して廊下へと出る。

「きゃああぁぁっ――姫様、どうしたのでございますっ!?」

 侍女が何人かその場に倒れている。

「姫様…? 悪いな…お前達の知る姫様の身体は私が乗っ取っている。したがって姫様ではない…」

 何……!? …大魔神ザロクサス……!?

 レティシアのその手に風の法術が発生し始めている。

 マズイ…!

 リュシファーは急いで侍女の前にスッと移動すると炎の防壁を張った。

「――くッ、またお前か……しかし、この私には攻撃出来まい」

 レティシア――いやその姿と声をした大魔神ザロクサスは、その可愛い顔を不敵に微笑ませながら言った。

「おい、リュシファーッ、どういうことだっ。こいつ死んだんじゃなかったのか!」

 ミグのその言葉に、大魔神ザロクサスは言った。

「悪いなぁ~、操りの術の毒牙にかかった者がたまたま側にいてくれて助かった…少しでも術が残っていればこんな風に乗っ取ることが出来る。しかもまさか精霊たちが残した最後の希望だったとは。ただの美少女じゃなかったわけだ。この身に入るまで全然知らなかったぞ――ははははは、だがもはやこれで終わりだな。最強じゃないか…? この力があればもはや怖れるものなどないわ――」

 そう言って大魔神ザロクサスは手を下にかざして地割れを起こした。

 城がゴゴゴ…と揺れ、大地震で城が崩壊を始める。

 既に廊下にも炎が放たれていた。

 そこに様子を見にやってきた兵士長テヴァンと兵士達に向け、不敵な笑みを浮かべた。

「ほぉ、お前たちは剣を扱うのか。ならば剣には剣で相手をしてやるか…」

「な、姫――私は姫に刃を向けるなど出来ませんッッ」

 一人の兵士がそう言ったがレティシアは問答無用で無理矢理剣を取らせたかと思うと、次々と薙ぎ倒していった。

 …うわ~…剣も大した腕だ……とリュシファーは青ざめていた。

 しかし、兵士長テヴァンが剣を構えた時、その場の空気はガラッと変わった。

 二人の間には何ともいえない緊迫感が漂っていた。

 廊下の絨毯がチリチリと音を立てながら燃える中、その睨み合いは続く。

 テヴァンは目の前に縦に剣を構え、目は閉じているかの様に細め、大魔神ザロクサスは頭上上段に剣を構え、その刃を片手で僅かに支えて触れ、見合っている。

 どちらからしかけるともなく物凄い速さで金属音が鳴り響き、スッとお互いに身を重ね、過ぎ去った後――。

 ドサっと倒れる兵士長テヴァン。大魔神ザロクサスも腹部を押さえ膝を床に着く。

「ふっ…少しかすったか…。まぁこのくらい大した事ない。…さてと、次はお前達だ」

 しかし、階段から次々と来る兵士達は膝をついた大魔神ザロクサスにさえ怯み、後退を始めていた。

 テヴァンでさえ敵わない相手だということは、兵士の戦意を喪失させていた。

 おまけに大魔神ザロクサスと聞いても、我が国の王女レティシアに剣を向けるなど…とざわついていた。

 ついには「思いついた」と言って剣に風の魔力を秘めさせ、魔法剣として衝撃波を放つ最強のこの国の王女のその様子に、誰もが勝てる見込みがないと怯んでいた。

「――もう、誰もかかって来なければつまらぬ。やはりお前にしよう」

 大魔神ザロクサスはその場に立ち上がると何故かスッと消えた。

 そして、リュシファーは後ろを振り返れなかった。

 気配はすぐ後ろにあった。

「リュシファー…ッッ!」

 ミグの叫び声がする。

 …こいつの手にかかって死ぬなら、それでもいいか――…。

 そう思って少しだけ死を覚悟して目を閉じた。

 しかし、「ッう…!」と聞こえるその声に、リュシファーはばっと後ろを振り返った。

 何と、大魔神ザロクサスの胸に剣が刺さっている。

 おまけにそれは自分で思い切り突き刺した様子で、後退をしながら苦痛に顔を歪ませながら、少し笑顔を作って見せていた。

「――グッ…オノレ…、コンナ事シテ、オ前モ命ヲ落トス…ノダゾ…!」

というレティシアの声じゃない邪悪な声が発せられていた。

 はっとした。これは……。

 その後に聞こえた元のレティシアの声。


「――リュシ…ファー…ッ、これで…いいね……ッ。ごめ――…ね」


 剣に添えられた手から魔力が加えられたらしく剣が青白い光に包まれ、そして辺りをカッと眩しい光が包んだ。

 奪われたその視界の中、レティシアが穏やかに微笑む姿を見た気がする――。


 絶句―――。


 視界を取り戻した目の前に広がっているその光景に、誰もがその二文字に当てはまる行動を取っていた。

 誰も動けない――。

 口に手を当てる者――。

 現実逃避する者。

 一歩も動けずにただ倒れている美しい少女から床に流れ、絨毯に染まる血を眺めていただろう。

 恐る恐る近づくリュシファーは生死を確認した途端、発狂しそうになった。

 首を横に振り、ざわめく中、不思議と涙は出てこなかった。

 現実を、現実として受け止めていなかった――。


 ミグが倒れているレティシアの体に深々と突き刺さった剣を抜くが、ただ横たわるだけのレティシアにミグは泣き崩れ、言えるだけの文句をたくさん並べていた。

 見ていると痛痛しい程に伝わるその悲しみに、誰もが声をかけられなかった。

 国王エリックと王妃リーディアが慌てて報告を受けてやって来た。

「お…ぉお、な……んということだ……」

「嫌ぁぁぁぁああぁぁーっっっ………ッッ!!」

 王妃リーディアはそう叫んだ途端にその場に倒れ、国王はレティシアの遺体を清めるよう指示を出し、皆戻って行った。

 ミグとリュシファーだけがその廊下に残っていたが、お互いにどちらからともなくレティシアの部屋へと戻った。

「嘘だ……嘘だ………ッこんなの…嘘だ……」

 レティシアが先程まで寝ていた場所を見てミグが呟いている。

 レティシアは今日、様子がおかしかった。

 気になる事があると言っていた。

 まだ大魔神ザロクサスが生きていることを知っていたのだろうか。

 しかし今や、それも聞くことは出来ない。

 何故だ……とても哀しいのに、現実に起きた事の様な気がしていないのか、涙の一つさえ出て来ない。

 本当に悲しい時と言うのは、涙は出ないと――誰かが言っていたのを思い出す。


「ミグ――レティはこうなることを…知っていたのかもしれない」


 ――何を言っても何の意味もないことなど、わかっていた。


「――相変わらずひとりで背負おうとするヤツだと、思わないか?」


 ――ひとりで背負わせずに、力になってやりたかった。


「でも、あいつはこうでもしなければ俺達を助けられないと、ああしたんだぜ? …ほんと、馬鹿だよな…ほんと…っ――」


 ――初めて涙が出た。

『ふざけるな』とか、続き言おうと思っていたのに言えなくなった。

 文句を言いたくても言えないこと――実感して初めて涙が止まらなくなっていた。


「――リュシファー……」

 ミグはそんな俺を慰めていた。

 自分も泣いていたというのに、見ていられなくなったのだろう。


 そんな日から二日経ち、レティシアの葬儀が密かに執り行われた。

 レティシアは墓に入った。

 まだ、信じられない気がしていたのだが、墓の存在は大きかった。

 次第に死を本当に認め始めてからが、地獄のような日々だ。

 一ヶ月ほとんど誰とも口を聞けない程に自暴自棄となったミグと同様、俺自身もそれに近かっただろう。毎日涙を流し続け、もう枯れたと思っていた。

 そう言えばレティシアが最期に流した涙が、どういうわけか結晶化して宝石の様に水色の石となって落ち、俺はそれをこっそりと拾って大事にとっておいた。

 真夜中、誰もいないレティシアの部屋に行き、バルコニーに出てそれを握り締め、俺は満月を見ながらひとり、こう語りかける様に言っていた。


「…レティ、やっぱり俺お前いないと駄目みたいだ――。いつからなんだろうな…ここまで存在感が大きいとは思っていなかった……俺、駄目だ……どこにいてもお前のことを考えてしまう、もう…お前はいないのに――」


 その場にがくっと膝をついて、握り締めた石を見ているともう涙は溢れて止まらなくなっていた。

 その時、突然満月に少し影が出来た気がして、一瞬少し暗くなったかと思い、前を向いた。


「――あのぉ…な、泣いているので声をかけずらかったのですが…、願い事はなんでしょう?」


「!?」

 俺は驚愕した――。

 いや、絶句――。

 硬直したまま身が動かせない。

 その声は紛れもなくレティシアの物で、その顔立ちもレティシアによく似ている。

 そして違うのは、髪の毛が金のような銀色で長いという事と、その背に天使の様な羽根が生えている事だ。他人の空似にしては良く似ている。というより、翼を持つ者など初めて見た。

「ぁ、あのぉ…? 呼んだでしょぉ? それ――」

 レティシア似の少女は俺の右手にある石を指差した。

 これ? 呼んだ? どういうことだ?

 怪訝そうな顔を少女に向けると、おっとマズイ。少女は少し怯えてしまったようだ。

「あ、ご…ごめん。イマイチよくわからないんだが、これ…何だ?」

 そう言った俺に少女は目を見開いて「ええっっ知らないで使ったのぉっっ?」と驚いた様子だった。

 説明を聞くと、どうやら少女は女神(しかも見習い)で女神の涙石という貴重なその石に、自分も本当に哀しいと思って涙を溢した者の元に、願いを叶えに女神はやって来るとのことだった。そして、その願いとは――三つ叶えてくれるのだと言っていた。

 どうやら初めてこうして人間界に願いを叶えに来たというこの少女は緊張しているのか、もじもじとしている。その様は少し可愛くて、ふっと微笑んで俺は言った。

「――ど、どんな願いでも、いいの…か?」

「はいっ」

 なかなか素直そうなレティシア似の女神に、少し考えて俺は尋ねた。

「女神というのはどういう者がなる?」

 少し考えて少女は言った。

「生前にいいことをした者がなるそうですよ。でも、覚えていないんですけどね。何かとてもいいことをした者が女神になるんだとか神様が言ってました」

「へぇ……」

 俺はしばらくそのまま考えていた。

 少女が怪訝そうな顔をして時を待っていたが、次第に暇そうにし始めた。

 くすっと微笑んだ俺は少女に言った。

「じゃ、一つ目の願い。君の記憶を戻して欲しい」

 少しの沈黙の後、女神は驚いて聞き返してきた。

「…な、なんでそんなことをっ?」

「――理由ナシじゃ、願いって叶えてくれないものなのか?」

「い…いえ――そうではありません。でも、貴方にとってそれが幸せになるのかが理解できなくて…」

 女神は困った様子で顎に人差し指を当てて言っている。

 俺はふっと微笑んでこう尋ねた。

「どんな生前を過ごしていたか、知りたくはないのか?」

 きょとん、として女神は答えた。

「そ、そりゃあ…知りたいと思った事はあるし、それを知る神様に尋ねてみたことはありますが、生前の名前すら教えてくれずに、『知る必要はない』と言われてしまいました。でも、『お前の記憶は少し哀しい――だから思い出さぬ方が良いのだ』と言われたので、それ以来そのことは考えなくなりました…」

 ――哀しい記憶……。

「頼む――。この通りだ。もし、それが嫌な記憶であったら、他の願い事で消してやるから。頼む…この願いを叶えてみてくれないか…」

 俺は女神に頭を下げた。

 少しして、女神にその想いが伝わったのか女神は前にしゃがみ込み、俺の頭に触れた。

 はっとして顔を上げて見た優しく微笑む女神の顔は、やはり見れば見る程レティシアにそっくりだった。


「――そんなに言うなら、わかりました。顔を上げてください…」


 女神は手を胸の辺りで組み、目を閉じた。

 女神の周りを金色の優しい光が包む――。


 一瞬だけ眩い光に視界を奪われて、目を閉じた。


 その願いは叶った様で、女神は目をゆっくりと開けた。

 目の前の女神――。

 その目には涙を浮かべ始め、身体は小刻みに震えている。

 俺をそうやってただ見ていた。

 一筋の涙が零れ落ちた時、女神ははっとして俯いた。

 俯いたまま、口元が最後ふっと緩んだのを垣間見た次の瞬間、女神は言った。


「…お前な、こんな意味のない願いをするより、自分の為になる願いをしたらどうなんだ…」


「!」

 震えたその声は、やはり口調が変わりレティシアの口調その物だ。


「レティ――そうなんだろう…? なぁ、お前なんだろう……ッ?」


 俺は顔を覗き込む様にしてそう言った。


 女神は床についていた手をぎゅっと握り締めて答えた。


「――そうだ。確かに私だ、リュシファー…。だが記憶を消して貰おう…」


「!?」

「――約束だろう? 思い出したくない記憶ならば消してくれると…」

 女神のその言葉に、驚愕した。

「何故だ…レティ……」

 女神は俺の言葉に顔を上げて、突然抱きついて来た。


「――こうしてっ、側にいたくなるだろう? 天界へ戻り、その記憶を持ったまま過ごすのは酷だと思わないのか…!? なんてことしてくれたんだ……っ」

 女神は俺の背を握った手でドンドンと叩いた。

 俺のその手に、柔らかな羽根が触れる。

 そう、レティシアは女神――。

 記憶を戻したからと言って、どうにかなるわけでもない。

 しかし、それは次に言う一言を言うまでだと俺は、ふっと呆れた様に微笑んでいた。

「――レティ、落ち着いてくれ…。二つ目の願い。お前が叶えたい願いを叶えていい」

「…え………何――言って…」

 女神は顔を見合わせずにそう呟いた。

「それとも、俺が願おうか――」

 俺の一言に女神は少し身を離して驚いた表情で見ていた。

 俺はふっと微笑んで人差し指でその涙を拭った。

 女神はそれでも涙を流しながら、微笑んで言った。


「――リュシファーと、ずっと一緒にいたいって…願うに決まってるじゃないか……」


 俺は微笑んで頷いた。


 そして、女神は手を目の前で組んで祈った。


 もう一度、金色の光が女神を包み、視界がはっきりとした時、柔らかな羽根が頬に触れた。

 飛び込んできた女神に向かって、俺は言った。


「――お帰り…レティ」


 ――――…


 ―――…


 こうして、俺のもとにレティは戻って来た。


 その日――。

 初めて一線を越えたのは――、書くべきことではないかもしれない。


 レティシアのベッドの上で、俺とレティシアは話をしていた――。

「――お前が女神様ねぇ…。俺は罰でも受けることになるのかなぁ~…」

「…前例がないからわからないが…お前という者は、本当に頭に辞書でも入っているかの様に想像もつかぬ事を言う…。明日、何て皆に説明すればいいんだ…?」

「うーん。ありのまま言えばいい――。それと、お前に言っておかなければならないことがある」

「ん?」

 聞き返すレティシアに、俺は横を向きその顔を見て言った。

「――俺さ、エルフィードに寄った時、親父からその時初めて聞いたんだが、どうやらエルフの王族らしい――」

 レティシアが何も着ていない裸のままで、ばっと起き上がってリュシファーに驚愕の視線を向けた。

「な…ッ、何でもっと早く言わぬッッ!」

「だから、あの時初めて知ったんだ。仕方がないだろう? 少し心の整理も必要だし…時期が来たら言おうと思っていたんだ」

 少し俺も起き上がり、レティシアに毛布を掛けた。

「――親父あんなんだろう? 長男だから王位継ぐ筈だったんだけど、自由気ままに城を出て暮らしてるんだそうだ。王など弟がやればいいと言ってな…。お前みたいに問題児だったんだろうなぁ…とはいっても王族であることには変わりない…」

「じゃ、じゃあ…立場がどうのというのは――」

 レティシアの言葉を遮って、俺は言った。

「――そう、不相応ということはない…ってことだ。そこで、聞こう。俺と一緒にいてくれるか? 姫君…」

 俺は少し微笑んで言った言葉に、レティシアは微笑んで頷いた。


 そして――。朝――。

 目を覚ました時、レティシアの姿はそこになかった――。

 ぼんやりとした頭で、夢だった――あんな事が起こるはずがない…と思った。

 ため息を吐いて、レティシアのベッドから足を降ろしてドアへと足を進めている時、後ろからふんわりとした柔らかな感触とともに腕が回された。


「――おはよぅっ…どこへ行くんだ?」


 ばっと振り返ると、レティシアは微笑んで確かにそこにいた。

 俺は思わず「わぁぁッ!」と叫んでいたのだった。

 ――――…


最終話へ続く。

ありゃーなんか哀しいエンドにはするつもりなかったんですが、こうして悲劇から一変させると、とんでもないことになってまいりました。

そしてリュシファー視点へと移って今後は展開を進めます。

どのくらい進めるかは未定ですが。ではでは。


「――お帰り…レティ」

 ―――…

で終わらせても良かったんですがね。

終わりで良い方はここで終わらせてくださいw

番外編的にもうひとつ書いて終わりにしたいと思います。



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