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【第五章】†ep.4 光と闇と†

校正していないですがあとでチェックします。

――ラクロエ様…ラクロエ様……

 …ラクロエ? ああ、精霊界の王女の名じゃないか。

 まぁ私はレティシアだぞって言っても皆大精霊達は皆ラクロエ様と呼ぶけど…お前は?

――私は、炎の大精霊フレイです。やっとあなたを守護できました。

 …え、だってまだ聖なる炎石の所に行ってないのに、何で?

――あなたを助ける者が私をラクロエ様の側に置いてくれました。あなたは気を失ったまま、今は眠っているのです。

 …じゃあ、眠っている隙に守護したってこと?

――えぇ、その通り。そして、あなたは全ての力の守護を得ました。

ですから、ついに私達大精霊が力を合わせる時が来ました。

光と闇合わさる時、双の力は一つになり、双の二つは一つに目覚め、真の力となるでしょう。

光しか知らぬ貴方は闇を知り、光と合わさるでしょう。一つになるために――…

 …え…意味がわからな――――

――さぁ、真の力を目覚めさせましょう――……

 ………!?


 眩い光――。


 その中で、私は意識が遠くに飛ばされていく様な感覚を覚えていた。


 自分の存在自体が消えてなくなる様な、何故かとても怖かったのを覚えている――。


 私は―――……

 ―――……

 ――…



 ……………。

 わたしは目を開けた。

 あれ……? どうして――……

 あっ、わたしを覗き込んで来た少年の顔――、知っている。

 話したことはないけれど、あの子が良く知っている者――。

「大丈夫かッ、目、覚ましたー良かったぁッッ」

 そう言った美少年。たしか、あの子の双子のお兄様。

 あの子は何て呼んでいたんだっけ――。そう、ミグだった。

「ミグ――?」

 わたしは聞いた。

「ん? なんだよ、レティ。寝ぼけてるのかぁ?」

 そう言ってわたしの顔を呆れたように微笑んで見る。

「いいえ、寝ぼけてなどおりません。ただ、名前を呼びたかったのです。お兄様」

 その言葉にミグは唖然としていたが、冷めた目で言った。

「――は…? お、お前、…やっぱり熱でもあるんじゃないのか…?」

「いいえ、ですから平常です。それより、私は何日眠っていたのでしょう?」

「……え、だから…その口調――ま、まぁいいや。二日だ。二日も眠っていたんだぞ。心配したんだからな」

「そう…ですか。二日も……」

 ミグはそんなわたしのもとから『少し待っていて』と言ってどこかへ消えた。

 少しして戻ってきたミグは、また知っている顔の男を連れて来た。

 あの子の恋人、あ、でも内緒にしているんだった。気をつけなくちゃ――。

 確か、名はリュシファー。

 リュシファーはわたしの目をじーっと見つめている。それも怪訝そうに。

 その目は青く澄み切った空の様に綺麗に澄んでいる。

「レ、レティ? ど、どうした…そんな初めて見るような目で見て…。なんか、ミグの話だと少し変だとか…なんとか。いや、俺が見ても確かに少しおかしい気がするが…」

 そう言われてわたしははっとした。

 皆、わたしのことをあの子だと思っているから変だと思っているんだという事に――。

「あっえと、そうでした。言っておりませんでした。あの子ではないのですよ、わたし――」

「えっっ……!?」

 ――ど、どうやらかなり驚いて「えっ?」と言った後は、声も出ない様子だわ…。

 少し段階を踏んでから言うべきだったみたいだ。

 でも、段階と言ってもきっとどのみち驚くことになるのだから仕方がありません……。

「――ちょ、ちょおおおおっと待った。じゃ、君は一体誰だと言うんだ」

「はい。ラクロエと申します。精霊界の王女ラクロエ――」


 ―――やはり…、段階を踏んだ方が良かったみたいです。

 皆さん驚かれてしまって、説明するのが大変でした。

 あの子が知る者が全員集まって来て、深刻な顔をしています。

 はぁ……。

 言わないほうが良かったのでしょうか。

 ――――…

 ―――…


 ―――…

 ――――…

「――つまりだ。今はレティシアじゃなくて、ラクロエの意識が覚醒しているということで――間違いはないの…かな?」

「はい。その様です。聖なる炎石を枕元に置いてくださっている間に、どうやら炎の大精霊の守護を得た様なのですが、目覚めた時には私の目が覚めていたのです。わたしはいつもあの子とともにおりました。だから皆さんの事もあの子が感じるとおりに知っています。どうしてかって聞かれてもわかりません」

 ラクロエのその言葉に、ミグは引きつった笑顔を浮かべて呟く様に言っている。

「あは…ははは、なんてことだ……ていうか全然意味が解からない……」

 しかし、ラクロエの意識が裏にあったとは…。

 ではレティシアの意識はどこに……裏に回ったということなのか?

 リュシファーは額に手を当てながら考えていたが、ラクロエは言った。

「えと、皆さん。考えていても仕方ありません。それよりも一刻も早くミールティアへ向かいたいのですが…」

 ラクロエは言ったその言葉にルクチェが明らかに表情を変える。

「――ラク…ロエ様、ミールティアへは何故?」

「――行けばわかります。神殿に用があるのを思い出しました」


 ――ラクロエは何かを知っているが、多くを語らない。

 何かを聞いても「わかりません」ということが多い。

 普通に何か関係ないことを話しても普通に話すが、レティシアのようなつんつんした感じは微塵もなく素直だ。

 おまけにレティシアの容姿でおしとやかに話されるととても違和感がある。

 レティシアがおしとやかな王女だとしたらこんな感じかと少し笑える。

「――リュシファーは何故微笑んでいらっしゃるのですか? わたし変な事でもいいましたか?」

 レティシア…いやラクロエが不思議そうな顔で尋ねてきた。

 リュシファーは首を横に振って何でもないと答えておいた。

 ここでレティシアなら確実に教えろと絡んで来るが、ラクロエは首を傾げたまま納得する。

 転移の杖を使いミールティアへと戻ろうとすると、ラクロエが言った。

「あ、その杖には時の精霊の気が感じられますね。でも、その杖を使わなくともわたしがみなさんを移動させましょう――」

 ―――え―――?

 そうリュシファーが思った時だった。

 ラクロエが左手を上にかざしたかと思うと、大きな白い魔法陣が頭上に現れ、辺りに小さな丸い玉が連なった線が吸い込まれるようにその魔法陣に差していくのが見え、一瞬ぱっと眩い光を放った。

「わ………ッッ!?」

 目を開けた時、リュシファーは目を疑った。

 そこはミールティアの神殿の前――。

 時空を移動した………!? 杖なしで………ッッ。

 ラクロエはかざした左手を下ろし、リュシファーに微笑んで「ねっ?」と言った。

「――て、ていうか何故私も一緒に連れてこられたのだ?」

 リアジュがラクロエに尋ねた。

「あ…ごめんなさい。全員連れて来てしまいましたね。帰りたければ送り返します」

 ラクロエの言葉にリアジュは少し考えて、帰らないと呆れたように微笑んで言った。

 どうやらラクロエは時の魔法も使うらしい。

「と…時の魔法なんて使えるヤツ初めて見た」

 ミグが唖然として口にした一言だった。

 時の魔法に大精霊はいないとラクロエは言い、存在自体が所属が違い、そこら中にたくさんの精霊達がいてどんな世界にも存在しているらしく、認められれば呼びかけにも応えてくれるのだとラクロエはミグに説明していた。

 ラクロエは神殿の中に真っ直ぐに歩みを進める。

 ルクチェがその後に続き、リュシファー達もその後ろに続く。

「――えと、ここですね」

 ラクロエが進んだのは何やら女神像が左右に飾られた祭壇の前だった。

「!」

 ルクチェは驚愕した視線を浮かべてラクロエから後ずさった。

「まさか………」

「――ん? なんだルクチェ」

 ミグがルクチェのその表情に怪訝そうに聞いた。

 ルクチェは祭壇の裏に、実は“ラクロエ”という文字が書かれた錠前のついた扉があって、どう頑張っても誰も開けたことがないのだと話していた。

 だから、ずっとラクロエという名を聞いた時から気になっていたらしい。

 ――その時だった。

 ラクロエが前に手を軽くかざすと、祭壇が右にずれた。

 現れた大きな錠前のついた扉――。

「――これは……!?」

 リュシファーが言った一言にラクロエは微笑んで言った。

「ここにあるのですよ。光が―――」

 そう言ってラクロエは錠前に触れた。

 その瞬間に錠前はチャッと音を立てて外れ、扉はゴゴゴゴ……とずっしりとした重低音を響かせて開いた――。

「あ、あんなに開かなかったのに……簡単に……!?」

 ルクチェが驚愕しながら呟くと、ラクロエはふふっと微笑んで真っ直ぐに進んでその中へ入っていったので、リュシファー達も後を続く。

 そこには何もない殺風景な白い部屋があった。

 ラクロエは中央で立ち止まると、振り返って言った。

「――うーん。忘れてました…。えと、皆さんやはりこの部屋から出てもらえますか?」

「え、あ…あぁ、わかった」

 そう言ってリュシファー達が去ろうとするのをラクロエはもう一度口を開いた。

「あ、リュシファーは残ってください。後の皆さんは外で――」

「えっ? 俺だけ…残る?」

「――はい」

 不思議そうな顔をしながらリュシファーが残ると、ラクロエは入り口に手をかざして扉を閉めた。そこには何もなかったかの様に白い壁だけが広がっている様に見える。

 何だか閉じ込められた様な気になりながらリュシファーはため息を吐いた。

「――で? どうして俺は残らせたんだ?」

「いえ、とくに儀に必要というわけではありませんが、個人的に話しておきたいことがあったのです」

 淡々と動じた様子もなくラクロエは真っ直ぐにリュシファーの目を見て言った。


「――あなたとレティシア。二人は好き同士なのでしょう?」


「えっ!? あ、あ…あぁ、ま、まぁ――し、しかしこれは一応内緒であって」

「くすっ、心配なさらずとも、だからこそ皆は下がらせたのですよ。少し話がしてみたかったのです。レティシアが好きになったあなたと…」

 レティシアの容姿をしたラクロエは少しだけ俯いて言ったので、リュシファーはまるで別の女の子と浮気でもしているかの様な気分に陥り、気まずそうな表情を浮かべた。

「え、あ…そ、そうか」

「くすくす、そんなに困った顔をしないでください。あの子ね、普段は偉そうなのに時々優しいと始めは苛々としていたのですよ。それが恋だとも知らずに…。わたしもまるで自分の事のようにそれを感じて来ました。でも、私達はどちらかしか表にいられない――。それに、あの子とともにずっと傍にいて、すごく近くにいるというのにわたしの声はあの子に届かない――そんな場所にどちらかがいなければならないのです。光と闇――表裏一体です。わたしは、六人の大精霊全ての力を持って表に目覚めました。しかし、今あの子とわたしの場所が入れ替わったまで。わたしの裏には今あの子がいる…」

「!? …じゃッ――じゃあ、レティはッッ」

 リュシファーはその言葉にラクロエに少し声を荒げて言った。

「――ご心配なさらず…この儀が終われば戻ると思います」

「…光があるというのは、どういう意味なんだ…?」

「――えぇ、それはわたしにとっての光。予想ですが、なんとなくわかるんです。暗闇にいたわたしと、光の場所にいたあの子――。きっと同じ光を見る――わたしはあの子、あの子はわたし」

 相変わらずラクロエは少し難解に物を言う…。しかし、なんとなくだが大体予測は付くが合っているかを聞いても、また難解に返されて混乱して来るだろうなと思考していた時だった。

 ………!?

 唐突に触れた唇――。

 驚愕の視線で身が硬直していた。

 その唇の柔らかさはレティシアと同じであるものの、それは明らかにラクロエとしてのレティシアのもの――。ゆっくりと離れていくラクロエの口づけに、リュシファーははっとして唇を押さえて困惑していたが、ラクロエはふっと微笑んで立ち上がった。


 そして唱える様に呼ばれる6大精霊達の名――。



「――今こそ目覚めよ、さらなる光―――!!」



 そうラクロエが言った時だった。


 視界は眩いばかりの光に奪われて、真っ白になる。


 きつく目を閉じて耐えている最中、聞こえた気がした――。


 ラクロエの、ふふっ…、と微笑む声――。

 ―――…


 目を開けた時、そこにはラクロエが倒れていた。

 しかも、ここは神殿の外であり、泉の女神像の前にいた。

 ――なッ!? い、一体どうなっているのか、さすがの俺にもさっぱりわからない……!

 そう思ってラクロエを抱き上げると、神殿の中まで足を運ぶ。

 そこにはルクチェたちが祭壇の扉をじっと見つめて待っている様子があり、ため息を吐いてリュシファーは事情も説明できない面倒くさいこの事実をどう伝えるか頭を悩ませていた。

「ん!? あれ!? え? え?」

と、ミグがリュシファーに気付き驚愕した表情を浮かべながら言った。

 その声にルクチェとミュイエとリアジュも駆け寄ってきた。


 はぁ……なんて説明するよ……。


「い、いや、眩しい光が差したかと思ったら、なーんか神殿の外にいたんだが…こいつが倒れていたのでさっぱりよくわからんのだ」

 何故か苦し紛れに言ったその事実の一部だけで皆は納得して、ラクロエをひとまずルクチェの屋敷へと運ぶこととなった。


 そして、ラクロエの目が覚めた時――。

 リュシファーはその鋭い瞳に睨まれ、掴みかかられていた。

 おまけに大声でわめくそれはラクロエではないと告げていた。

 さらにその側にいたミグとルクチェ、ミュイエ、リアジュは唖然と驚愕の表情を浮かべてそれを始終誰も口を開けずにいた様だった。


 しかし、ルクチェがついに口を開いた。


「え………嘘――……」


 それに触発されたのか、口々に皆が口を開き始め、ミグは言った。


「――う、嘘だろう………?」


 ミュイエが言った。


「えと、でも僕は初めから仲が良いなぁと思ってました」


 リアジュが言った。


「…なんだかよくわからんが、隠していたのか?」


 ・・・・・・・・・。


 嫌な沈黙――。


 ラクロエではなくレティシアに戻ったレティシアと、リュシファーはお互いに苦笑を浮かべてみんなの方をおそるおそる見た。


 既にため息を吐くミグと、ルクチェはにやにや、ミュイエは嬉しそうに微笑み、リアジュは相変わらず良くわかっていない様子だ。


「――ミ、ミグ…こ、これにはちょっと事情があってだな…その」

というレティシアの側までやって来て、ミグはにっこりと微笑みながら言った。


「――どういうことかなぁ? レティシアちゃん。……お兄さんにじっくりと聞かせてくれないかなぁ~?」


 ひぃぃぃぃという文字が久しぶりにレティシアの脳裏に浮かんだ。

 笑顔だというのに物凄く怖い――。

 レティシアはリュシファーの後ろに隠れ、こっそりミグの顔を見ると、もう笑ってもいない。


 ……ついにバレた。

 皆と再会してからなるべく怪しまれる行動をとっていない様に気を使っていたというのに…。


 しかもそれは自分が口走った一言が撒いた種だったのであった。


 ―――…


つづく。

ついに全ての守護を得て一体化しましたが、新たな力とは…。

あと、バレました。

次回謎を明かして次の章に行きたいですが…。

なんとかここまで進みました。

大分長編になってしまいましたねぇ。小説描くのは初めてですがもっとすっきり進められたらいいんですが。どうしたらすっきり出来るのかよくわからないので書きたいように書いてしまいます。未熟者ですみません。

ではではまた。りんごでした。

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