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【第五章】ラクロエ†ep.0 それぞれに†

ネットがおかしかったのでやっとアップです。

エピソード1も夜中にupします。


「なぁ、この塔何階まであるんだぁ? ルクチェ~」

「うーん。そこまではわからないけど、でもそろそろだと思うんだけど」

「ふふ…、疲れちゃいましたか。ミグは」

 ミュイエは一番後ろを続くミグを振り返り言った。

「疲れたも何も、疲労困憊ってところだ。さっきから魔物も多いし。魔物は外で元気に歩いていればいいんだ」

 そう言ってうな垂れた様子でルクチェの後を続きながら、ミグはため息を吐いた。

「――あ、ねえ階段よ。目印が今までと違うわ」

 ルクチェが指を差した階段の傍の壁、そこによくわからない古代文字の様な絵が刻まれているのだが、そこの絵は毎回同じだったが今回は違った。

「おっ。ってことはやっと“聖魔の石”に近づいたかもってことか…」

「そうね」

 階段を上がった三人は、塔の頂上へと辿りついた様だった。

 頂上には誰が炎をこんなところまで保持しに来ているのかはわからないが、中央に四方を松明の炎を囲んだ祭壇がある。風が穏やかに吹き、松明の炎が揺れている――。

「――こ、これが“聖魔の石”…なのですね」

 ミュイエがその石を見てあまりの美しさに圧倒されていた。

 サファイアの様に青く、ダイアモンドの様なカッティングが施されてあるその石は、少し大きな宝石の様である。台座にただ一つだけ置いてある石は、玉座に王が君臨するように存在感を持つ。

 ルクチェが前に立ち、跪いた。

 ただ目を閉じ、手を胸元で組んで祈る――。

 その祈りに聞こえる声はルクチェに語りかける。


 ――巫女よ、…我はリザルト。聖なる力を導きたまえ。

 魔の者は忍び寄る……。我らの希望の新芽を摘まんとする魔の手――。

 その力の前に、今はどうすることも出来ぬやもしれん。

 しかし、希望の光を見失う前に――、我を持ち、僅かな希望の新芽の元へと参られよ…――

 そなたたちに僅かな我の加護を与えん。


 そう語りかけた石は、淡い光を携えて浮いた。

 一瞬パッと眩い光を放ったかと思うと、石は光を失いルクチェの手の内におさまった。

 真剣な面持ちでルクチェの後姿を見つめていたミグが近寄る。

「――ルクチェ、今度は何て?」

 一瞬ミグの方をはっとした表情で振り返ったルクチェは、深刻な面持ちで言った。

「新芽――摘もうとする魔の手――…、今は、どうすることもできないかもって…。き、希望の光を……見…失う前に…新芽の元へと――」

 ルクチェは声が震えてしまい、動揺していた。

 ミグの表情も驚愕した表情へと変わる。

「――せ・・・“静寂の滝”のところでは…そんなこと言っていなかった…よな? えと、“急ぎ希望の光を讃えるため、我を持ち希望の元へ届けたまえ”だっけ? な、なんだよ。新芽を摘もうとする魔の手…って」

「魔の者――と言っていたわ…忍び寄る魔の者と…」

 二人の深刻な様子にミュイエは、自分もその表情を浮かべながら静かに塔から遠くを眺めた。

 三人がいるのはムテール大陸――。

 ルーセスト大陸からはるか西のこの大陸は、レティシア達が現在いるミスレイル大陸の南に位置している。精霊の女神レティシアがレティシアに言った場所を書いたメモを写していたところによると、流れ着いたここ――ムテール大陸には、偶然にも二つの石が眠る場所があった。

“静寂の滝”に『流水石』――。

“聖魔の塔”に『聖魔の石』――。

他には、

 ルーセスト大陸には、“新緑の洞窟”に『大地の眠り石』――。

 サンザルス大陸には、“紅蓮の洞窟”に『聖なる炎石』――。

 そして――。

 ミスレイル大陸には、“雷迷の遺跡”に『天罰の石』――。


 メモをもう一度眺めながら、ミュイエはため息を吐いた。

「――ここまでレティシア達とはぐれた間に、二つ石を手にしました。…芽を摘まれない内に石を渡せと言われても、船が出ていないのではどうすることも出来ませんねぇ……。この大陸に訪れるのを待つしか――」

「……でも、きっとこの大陸に来るよ。アイツ、簡単にのたれ死ぬ様なヤツじゃないし――。

魔の者だかなんだか知らないけど、アイツはやられそうになっても睨みつけて屈したりしない。きっと大丈夫だ」

 ミグの妙に説得力のある発言で、ルクチェとミュイエも少しだけ微笑んで頷いていた。


「そう――きっと、大丈夫…」

 ミグはもう一度、遠くの空に思いをはせる様に眺めてそう呟いた――。

 ―――…

 ―――。


 一方――。

 レティシアとリュシファーは喧嘩をしていた。

「だーかーらっ、私だって色々考えていたと言っているんだっ」

「ほぉ? じゃあこの大陸のこと知ってたのかぁ…いやぁ、城の中にいながら雷迷の遺跡のある場所を知っているとは大したものだなぁ…」

「く……、そういう地理のことは確かにわからないが、そんな言い方しなくてもいいだろうッッ」

 少しだけ目に涙を浮かべてまで怒っているので、リュシファーは仕方なく軽く詫びてじゃあ何を考えていたかと優しく聞いた。

「――…意識的な問題だ。――このままではいけないとか心の準備の話だ。そういう石を探せだとかいうのはよくわからんのでお前に任せるが、私は今のままでは何も出来ないただのッッ…ただの……城を抜けてきた無知な――王女だ…」

 歩きながら俯いたレティシアの顔を横から覗きこむと、悔しそうに下唇を少し噛んでいる。

 かと思うと、レティシアは立ち止まって呟くように小さな声で言った。

「魔の者…セルローズ…それ以外にもたくさんいるんだ。あの様な者が…三人。私という芽を摘みに――。またやって来る…。さらに大魔神ザロクサスはその上をいくのだろう?」

「…………」

「今のままじゃ――駄目なんだ。悠長に構えていては…ッ」

 リュシファーは黙ってレティシアを抱きしめた。

 優しく頭を撫でてやった。

 レティシアは体を小さく震わせていた。

 それは、怖れの言葉は吐かないが怖れでもあるとリュシファーは思った。

 怒りかもしれない。自分の未熟さへの憤り、新たな敵の到来により、レティシアなりに色々と思うところがあったのだろうと、少しからかった自分を反省していた。

 しかし、強い――とも思った。

 弱さを見せぬところはエルトに似ていると思った。

 セルローズとの戦いの際、レティシアは窮地に立たされながらも敵を睨み続けていたと聞いた。

 怖れを怒りに変えるのは大したものだ。

 だが本人は気付いていないだろう。

 それが怖れであったことさえ、今も怖れから生まれ出た怒りに体を震わせている事を。

 リュシファーは言った。

「よし、じゃあ雷迷の遺跡へ急ごうじゃないか」

 レティシアは顔を上げると前を力強い瞳で見て頷いていた――。

 ――――…

 ―――…


―――セルローズよ…・・・無様だな……。


『は…、も、申し訳ございません………』


―――して、何故にお前ほどの者がエルフの街ごときでやられて帰還した…


『それが…ついに不穏因子らしき原因を突き止めました。それで、無様な格好をお見せしてでも報告しなければと、帰還いたしました――』


―――それは真か……。して、どのような…。


『はい。一人の娘――…。強大な魔力を持っていました。私が稲妻を扱う事も知らずに炎を放って来ましたが、その炎はかなりすさまじい威力でした。もしこれがブルガローズに向かっていたら、一溜りもなかったと始めに思いました。そして、それよりは威力は弱かったですが、風も放って来ましたが、その風に大精霊の姿を見ました――』


―――な、何ッ!? 精霊界は我らが封印したではないか…何故ッ。


『――わかりません。しかし、確かに見たのです。僅かながらに不穏因子が妖雪の森付近で発見された時、力が大きくならぬ内に摘み取れと大魔神様は仰いました。ですが、ひょっとしたら何やら良からぬ動きがある様な気がしてままなりません』


―――…………わかった。お前はよくやった。引き続き様子を見ろ。状況がわかり次第報告をと、他の者にも伝えよ。あぁ、まだ殺すな。探して様子を見るだけでいい。


『――なッ何故です? 芽の内から摘み取れと――…』


―――状況が変わった。こうなんというか、余興の様なものを見たくなった。

ただ征服するだけでは、つまらんからなぁ~…少し楽しませて貰おうじゃないか……。


 大魔神ザロクサスと、雷鳴のセルローズ達四天王――。


 ――単なる余興――

 不穏因子の存在はまだその程度のものだった――。

 しかしそれが、――精霊の宿りし者――だということを、魔の手達はまだ知らないのであった。


 レティシア、リュシファーの二人が向かうミスレイル大陸の雷迷の遺跡――。

 移動できず留まるしかないムテール大陸にはミグ、ルクチェ、ミュイエの三人が、レティシア達二人がやって来るのを待つばかり――。

 そして残るはサンザルス大陸の紅蓮の洞窟。


 五人の行方はどうなっていくのであろうか。

 それは神のみぞ知るのであろう――。


つづく。

それぞれの会話を…

という始まり前のエピソード0でした。

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