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【第三章】†ep.3 視界†

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 片手で剣を身構えたレティシアは、魔物の動向に神経を集中させつつ魔物の腹部を目指して踏み込んだ。

 ――よし……!

 レティシアはもう片方の手を剣の柄に添え、一気に刃を魔物の腹部に突き刺す側で魔物は暴れ、爪がその頬をかすめ薄っすらと血が滲んでいる。

 だがそれにも動じず魔物の身から勢いよく剣を抜いたレティシアは、その場から少し後退する様に飛び上がり宙で身をひるがえす。そして重力に任せ地に足をつけた瞬間に素早く相手の懐へと再度踏み込んだ。

 魔物は怯む様子もなく襲い掛かって来るが、レティシアの剣の放物線は既にいち速く直線を描くように横に斬りつけていた。

 少し遠目でルクチェが見たレティシアのその表情には、とてもいつものレティシアとは思えないほど口元には僅かに冷淡な笑みを浮かべている。

 戦闘になるとその様に残忍ささえも感じられる表情に変える、そのレティシアの真っ直ぐな鋭い光を放つ眼力と勢いのいい剣舞に圧倒されていた。

 レティシアの後ろではすでに魔物は真っ二つになり、さら……っと黒い砂のように灰になったそれは虚空へと風に飲まれ消えゆき――、レティシアは剣を鞘にしまっている。

「……ふふっ」

 そこに残った魔石――。……深い闇の様な漆黒にも見えるその石は、太陽の光にかざせばうっすらとした紫色も浮かばせている。見る者をまるで闇をさらに深いものへと染める様に妖しく禍々しい独特な印象を与えていた。それを手に取ってレティシアは口元に笑みを浮かべる。


「――エ、エルフィンちゃん。……ティアラちゃんって、剣を振るう時……ず、随分楽しそうね……」

「――あぁ……、あいつ魔法嫌いだから剣のが好きなんだよ」

 ミグとルクチェは、魔物が増え出すカザフールの村付近になり、次々と魔物を倒して行くレティシアを、先程からずっとただ見守っているだけだった――。

“魔法が嫌い”と口にしたミグは、ため息を吐きながら何かを考えている様子も伺わせたが、ゆっくりとレティシアの元へと歩いていった。

「お前な……ほら顔。傷ついてる――」

「……え? 傷?」

 レティシアは自分が傷を負わせられたと思っていなかったので、顔に触れて手を見て血がついている事を知り、ぎこちない微笑みを浮かべた。

「癒しの風吹く大地の糧よ、その地に眠りし聖なる力の理となり傷つきし者に今ここに与えん」

 レティシアの元に優しい白い光が集まり、傷をスッと修復してその光はぼんやりと消えていく。

「あ、ありが―――」

と、レティシアが礼を言おうとしたのだが、ミグはもう既に先に歩みを進めていた。

「…っ……ミグ……」

 レティシアはその後姿を悲しそうに見ながら呟いたのだった。

 ミグは、レティシアが詠唱なしに使ったフリシールの魔法を目撃してから、レティシアにそっけなくなった。何故かいつも元気なミグは、口数も少なくて黙っていることも多かったのだ。

 あの時ミグにそれを問われた時、何故そんなことが突然出来る様になり始めたのか、自分自身でもわからない事だというのに、どう説明していいかなんてわかる筈がなく、戸惑った様に慌てて言い訳のようなことを色々と並べ立てることくらいしか出来なかった――。

 そして、ミグは『……ふぅん』と突然声を静かにレティシアに言ったかと思うと、くるっと背を向けて、呼んでいるルクチェの元へと静かに歩みを進めていったのだった。

 それからというもの、何か話しかけても「……ふぅん」とか「……そうだな」とか、ミグらしくないそっけない返事ばかりで、レティシアは少し困惑していた――。

 今も、傷を治してはくれたものの――やはりレティシアとあまり話したくない様子のミグに、レティシアはため息を吐いていた。

 ルクチェは二人の様子がおかしいことも気付いていただろう――。

 でも、黙って見守ってくれている様子だった。

「ティアラちゃんって剣の腕はかなりのものねぇ。この辺の魔物は結構強いのよ? ルーセスト大陸の魔物よりは手強い筈なんだけど、習ってたの?」

「あ…あぁ……少しだけ……途中で魔法を勉強しろって言われて教えてもらえなくなったけど、一応それでも密かに練習だけしていただけ。…でも、実戦はあまりしたことがない」

「………ふぅん。もう少しでカザフールの村よ。少し休んでから夕方にはミールティアへ着けるわ――」

 ルクチェがそう言った時だった――。ミグの横の木の陰から突然、虎の様な魔物の前足がミグに飛び掛かって来ていた。ミグは杖でそれを食い止めるが、魔物の強い力との攻防により、ミグはついに後ろに押し倒され、そして次にミグの口からは苦痛を訴える声が漏れる。

「ミグ!!」

 魔物の爪は杖で受けきれずに、ミグの肩をえぐるように食い込んでいる――。

 瞬時にレティシアは剣を取り、急ぎ走ろうとするのをルクチェが止めた。

「!?」

 ルクチェがレティシアに微笑むと立ち上がり、ただ黙っていただけだった。

 しかし、ミグに襲い掛かって来た魔物の回りに、ぼんやりとした緑色の光の玉が現れ始め、それは弧を描く様に周り、勢いは鋭くなっていき、魔物を真空の刃で切り裂くように強くかすめていった。ルクチェの右手が高々と上げられて、思い切り振り下ろされたかと思うと、魔物は吹っ飛んで何回か地に体を打ちつけた後、黒き灰となって虚空へと流れて消えてゆく。その間、たったの数秒の事だっただろう。あっけなくルクチェの手により魔物が倒されたので、レティシアは唖然としていたが、はっとしてミグに駆け寄る。

「――ミ、ミグッッ!」

 痛みに顔を歪ませながら肩を押さえ、苦痛の声を漏らして激しく呼吸を繰り返している。

 その後すぐにルクチェがやって来て、ミグの肩に手をかざす――。

 辺りをぽっ…ぽっ…と水色でぼんやりとした光の玉の様な物が現れ始めると、一気にミグの傷に集まって、強い光を放ったかと思うと一瞬にして消えた。

「大丈夫か? ミグ」

 レティシアが言うと、ミグはゆっくりと起き上がって言った。

「あぁ~死ぬかと思ったぁ……突然出てきてびっくりしたぁー…」

「ひとりで歩いて行っちゃ駄目よ。北に行くほど魔物は強くなるわ。でも、サーベルタイガーが出るなんて、この辺も魔物が強くなってきたのねぇ――…」

 そう言って、ルクチェは下を向きながら頭を横に振りながら、ため息を吐いた。

「そ、それにしてもルクチェは凄い魔法を使うのだな…何も詠唱もしてないのに、何か光の玉の様な物が空に浮かんでさぁ…。――初めて見た」

 レティシアがそう言ったのに、ルクチェは顔を上げない。黙っている。何かを考えている様子だったが、ミグが口を開いた。

「え? 俺、痛みで目を瞑ってたから何にも見なかったぁ。でも少し魔物を倒すところは見たけど、光の玉なんて見えなかったけど?」

「………え? 気のせいかな……まぁいいや」

 レティシアがそう言って立ち上がると、魔石を拾いに歩いていく。

 魔石は二つ落ちており、先程の自分が倒してきた魔物よりも強い魔物である事を知り、魔石を二つ軽く叩き合わせて機嫌よく戻って来た時には、ミグは立ち上がっていた。

 少し歩くとカザフールの村が見えて来て、レティシアは機嫌良くミグたちより先に歩みを進めていた。カザフールの村は、古い木で出来た家が立ち並び、それぞれ畑にはそれぞれの野菜を育てているらしく、それはまさに田舎といった風景だ。

 その村には何故か老人しかいなかった――。はしゃぎ回って歩みを進めていたレティシアは、どんなに見回しても老人しかいないその村を見ても、変わり映えのしない光景に、テンションが少しずつ下がって行き、先頭からルクチェやミグの一番後ろに回り、中間を越えた辺りまで歩みを進めて来た。しかし、やっぱり老人しかいない――。

 その様子に飽き飽きとしてレティシアは、怪訝そうな表情で後ろに続いていたのだった。

 ――村長も、やっぱり年老いたお爺さん。こっそりと村長を観察すると、優しそうな面持ちでルクチェに挨拶をした後、世間話に花を咲かせている様子だったが、少々話が長い。

 ミグの方を見ると、多分ミグも同じ気持ちだろう。つまらなさそうだったがぎこちなく笑顔も作りながら、話に耳を傾けていた。

 レミーナ婆さんというお婆さんが、ご飯を作ってくれた。

 たくさんの料理があり、多分5人くらいは食べれそうな量だった。レティシアは、何もない田舎という感じの印象を始めに受けたが、村長さんや村の人々は皆優しく、オルフェシアお婆様もとても優しいが、この村の人たちもとても優しくて、本当のお婆様やお爺様が増えた様な気分で嬉しくなったこの村を出る頃には、この村にまたいつか来ようと思ったのだった。

 村長に礼を言ってカザフールの村を後にすると、ミールティアまで歩みを進め、着いたのは夕方でもうすぐ日が沈みそうな頃だったのであった――。


「やっと着いたぁ~」


 レティシアはミールティアの町の入り口で、看板を眺めてそう言った。

“Merltiaz”と書かれたその看板が、『偉い』『よく頑張った』と書かれているように見えた。

 後ろから来た二人がそれを通り越し、途中、ミグが後ろを振り返りながら静かに言った。

「…………のんびりしてるとはぐれるぞ」

 ミグの態度は少しまだおかしいが、それでもちゃんと気にかけてくれる事が嬉しかった。

 微笑んで頷くと、ミグたちの後姿を少し眺めてから向かおうとした。


 ――奥に見える神殿の様な水色に透き通った綺麗な建物。

 その周りを何か玉の様な丸い光が、ふわふわと浮いていたのが見え、思わず足を止め、ぼんやりとしたその薄い緑やピンク、黄色に水色…白などといった玉の様な丸い光は、たくさん周りを浮遊している。その様子に驚愕しながらも輝いた表情を浮かべ、ぼーっと立ち尽くして見ていたレティシアは、歩みを進め出そうとしたのだが、気がつけば二人の姿がない。

 慌てて二人を探して走り回ったが、町中どこを見ても二人の姿は見つからない。

 ――ガーン。――え…えと、…私っ、知らない町で迷子っ…? ど、どうしようっ…

 少しきょろきょろとしながらも、気になる光の玉が浮いている神殿の方へと、気がつけばその足を進めていたレティシアは、神殿への入り口にある門を通り過ぎ、庭の様な木々や芝生が広がっている場所に来ていた。

 浮遊している光の玉はレティシアの周りに優しい光をぼんやりと携えながら遊ぶように回っている。光がたくさん集まっている方向に進むと、そこには小さな泉が湧いていて、その泉のすぐ側に、石で出来た女神の様な像があった――。

「ん? 何か書いてある…“精霊神の名の下に、清め――捧げよ、祈りと魔力の杯を…”  あれ? かすれて下の文字は読みずらいなぁ…現れ…し? 精…霊の魂…えーと、宿――りし…者…混沌の闇から…世界は…、…あーもうっかすれてて読めないっ。まぁいいか」

 擦れた文字を読解するのを諦めたレティシアは、その女神像をもう一度眺めた時――。

 女神像の元へと浮遊していた光の玉が全て集まる様に、ぼんやりとした光の集まりは眩しいばかりの光を放ち始めたのである――。

「!?」

 レティシアが目を開けていられない程のその光を防ぐため、目の前を腕で覆っていたが、足元がよろけ始めていた。しかし、光はなおも眩い光を放ち、ついにかかとの地の感触が、芝生から硬い物へと変わっていた時――それが何であるかレティシアは気付き、ひやっとした。

 ……いっ、泉の周りにあった――石だっ…や、やば…ぃっ! 落ち……っ

 ついにかかとに石の感触がしなくなり、次の瞬間には冷たい水の感触――。そのままそれは、全身へと包み込むようにやって来る。そして、ぼこぼこと小さな泡が辺りに見え、慌てて口を開けない様閉じるが、息苦しさにあたふたと暴れ回る。視界はぼやけて何も見えず、小さな泉だと思っていた筈なのに、手を伸ばしても何も触れる物がないだけではなく、泉の底さえも足が触れることが出来なかった。

 ――な……!? こんなに深かったとはっ…待てっ。私、泳げな――…っ…

 何としてでも上に上がらなければと上を見上げたが、先程の光が揺らめいているのがもう結構遠くに見え、無限に落ちて行く様なこの泉の水の中で、ただ落ちていくレティシアは、ついに息苦しさから口からごぼっと空気の泡を吐いてしまっていた。

 ――も…もぉっ…駄目っ……苦……し……

 意識が遠のく中で、レティシアは…苦しくなくなっていく事に気がついた。

 あ、あれ――?……空気全部吐いたら、苦しくなくなった――?

 ……………

 し、死ぬ寸前ってこんなのなのかな……?

 レティシアは何となくもう暴れる気にはならずに、ひたすら落ちていく泉の水の中で―――、声を聞いた。


 ………

 ――シア…


 ――レティシア………


 女の人――。綺麗で、神様みたいに澄んだ声――。

  …あぁ、そっか――私、…さっき泉に落ちてもう死ぬから迎えに来たのか……。

  あ~ぁ、ミールティアの洗礼を受けたのに、ミールティアで死すなんて

  嫌な運命だなぁ。

“――いいえ、死にませんよ。”

  …え…? 誰…?

“――…私は精霊の女神…レティシア……”

  …へ? せ、精霊の女神…? しかも、同じ名前?

“――えぇ。レティシア…よくお聞きなさい…。あなたにとって、重要な事です。”

  …わ、私にとって重要な事?

“――はい。私達の世界…精霊界は、この人間の世界のあるところに存在していました。

誰も人間は足を踏み入れた事はありません。見える者もそういないでしょう。

しかし、精霊界は、あなたが生まれた少し前、14年近く前に滅びました――。


滅びましたが、現世に精霊の魂は残ります。

生きとし生ける者全てに、今でも僅かに力を貸し続けることが出来るのです――。


私達の精霊界が滅んだのは、魔族の侵入によるものです。

大昔、といってもたった今から200年程前のこと――…

レティシアは、“ザロクサス”という名前を聞いたことがありますか?”

  …へ? 誰そのザロクサスって。

“――……はぁ……あなたという人は、何という無知なのでしょう。”

  …う、うるさいなぁ……知らないものは知らないんだ。もったいぶるなら帰るっ

“――泳げないのにどうやって帰るんですか? くす…”

  …な、何かムカつくなぁもぉ。精霊の女神っていうのは、結構言う事がきつ――

“――ザロクサスというのは、大魔(だいま)(しん)ザロクサスの事――。”

  …む、無視するなっ!…まだ言いかけてる途中だっ。…まぁいいや、で?

“200年前に倒されたのですが…知っていますか?”

  …うーん。聞いた事あるようなないような……。

“――………はぁ………。”

  …だからっ。た、ため息とか吐くなぁっ…知らないものは知らないのっ。

“――…仕方がありませんね。いいでしょう……よく、お聞きなさい――。

ただ、封印の方法が一つ欠け、たったの100年しか持ちませんでした。

一度倒された大魔神ザロクサスは、

『力を貸す精霊さえいなければ負ける事はなかった』

と考えました――。

復活して、一番初めに全勢力を精霊界に攻め入り……そして封印しました。

それにより、あなたたちが現在使っている魔法も――本来の力を失っています。

何故なら――、精霊界が封印され、滅んだということは…、精霊が精霊としてではなく…、

精霊の魂となって存在することとななったために…

その分貸すことの出来る力も弱くなったというわけです。”

  …ふぅん。でも、精霊に力を借りてるのに精霊が滅んでるなら、もう誰も倒せないじゃん。

“――だから、あなたに関係があるのです。”

  …え? わ、私――? 

“――精霊の力を強く借りる事の出来る資質を秘めたる者が、

200年前に倒した筈の大魔神ザロクサスは、精霊界を滅ぼすために、

精霊界のある場所四方を“魔石鏡の塔”で囲みました――。”

  …何それ…? 囲まれると力が弱くなるとか?

“――そうです。圧倒的に差は歴然となり、封印され…、幽閉されました。

しかし――。全て封印されて滅ぶのならば、

滅ぶ前にひとつだけでも救う手立てを残そうとしました。

大魔神ザロクサスを倒す真の精霊の力を残し――、

大魔神ザロクサスの手によって死した精霊の魂と、

それ以外の封印されて幽閉された精霊達を救って貰うため――。

――それは最後の望みでした。

私達は、とある生命の誕生を凍結し、違う種族に転生させようと考えました。

この精霊の世界が滅ぶほんの寸前の判断――…

刻一刻と魔族の侵入を許す中、

――生命樹の下でその木に語りかけ、転生先を探し……、

上手く適合する者がいなければそれも叶わなかったでしょう――。

――適合する者は――同じ様にまだ誕生していませんが、

人間のとある生命のかけらに見つかったのです。”


  …?



“――レティシア…それが、―――“あなた”なのです……。”



  …――――――え―――――――……?


 ――――…


 …………。


 視界が眩しい光に奪われたかと思うと、次に目をうっすらと開けた時には――。

 淡いピンク色の髪の毛のミグの後ろ頭が見えた――。


 ――変な夢を見ていたみたいな気がするけど、イマイチ覚えていない。

 ぼんやりとして、何だか意識がはっきりとしない。

 上を見上げてゆっくりと起き上がっても、そこには、――知らない天上、知らない部屋。

 思い出そうとするけど、泉に落ちたということしか何も覚えていない。

 それも夢だった――? じゃあどうやってここまで来たのか…全く解からなかった。

 途方にくれながらトイレにでも行こうかと思い、足をベッドから降ろそうとして勢いをつけて踏み出したが、いつも足が地に着くタイミングどころの騒ぎではなくバランスを崩し、私は落ちる様にベッドから降りた――。

「わぁぁあぁっっ!」

 実際、かっこ悪いので書きたくはなかっただけだが、私はドシンという低い衝撃音を立てて派手に落ちた。おまけに、床にうつ伏せに倒れてしまった私にミグが気付いた様で、慌てて飛び起きて声をかけてきた。

「び、びっくりしたぁ…って、お前やっと目覚ましたのかっ?ったく心配かけやがっ―――」

 言いかけて途中で口を紡いだミグに、床から視線だけ送っていた私は、ミグのその表情を見てゆっくりと起き上がり立ち上がってみると、いつもと視界が違うことに気付いた。

 何ていうか、ミグが少し大きいというか、ベッドの高さもいつもより少し高いような…。

 というより、いつもの視界より自分の見る物全て高かったのだった――。

 ミグがゆっくりと恐る恐るベッドの脇に近づいて来て、珍しいものでも見るかの様に私をじろじろと見ている。

「…いや、俺……、寝ぼけてるみたいだ。――寝る…かなぁ…ははは」

 そう言ってミグは後ろを向いて横になったが、すぐにばっとベッドから起き上がり床に足をつけて並んで立った。

 異変に私はその時気付いたが、確信したのは次の行動だったと思う。


 次にミグは薄ら笑いを浮かべながら、上から私の頭をよしよしと撫でたのだった――。

 ………

 ――――…

つづく。

ふぅ…今回はかなり時間がかかりました。

一体何なんでしょうかねぇ。

不思議な事もあるもんですね。

でゎ次をお楽しみに。

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