急展開!迫る別れの時?
初代天皇神武が今の日本を建国した時、全ての国民が家族のような国にしたいと願った。
そしてその思いは、今では現実となっている。
ほぼ全ての日本人の体には、神武天皇の血が流れているのだから。
思いが成されたからこそ日本は二千年以上続いたし、お互いを思いやれる国民となったと言っても過言ではない。
もしも俺が建国の父となるような事があるなら、そんな世界を作りたい。
心からそう思う。
『狛里、今世界で何かが起こっているな?そっちで何かあったのか?』
『よく分からないの‥‥私たちは何もしていないの‥‥』
『でも近くで何かがあったように感じるわねぇ~。いくつかのグループに分かれて調査していたからぁ~、他で何かがあった可能性はあるわぁ~』
これはただ事ではない。
おそらく神が死んだのだからな。
アマゾンで広がった何か生命エネルギーのようなものは、今北方へ向かっているように感じる。
ここから北といえば‥‥『日本』か。
俺は直ぐに萬屋のセーブポイントへと戻った。
力が日本に満ちている。
間違いない。
日本で新たな神が生まれているんだ。
アマゾンで何かが有った訳ではなくて、アマゾンに残っていたエネルギーが新たな神に流れているのかもしれない。
『今日本に戻ってきた。おそらく日本で新たな神が誕生するぞ』
『つまり日本で今までの神が倒されたって事ぉ~?』
『おそらくな』
それが何故アマゾンと繋がるのかは分からないけれど、今なら新たな神を見つけられるかもしれない。
おそらくそれが俺のターゲット、倒すべき神となるのだ。
神となっていきなり倒して良いのかも分からないけれど、とにかく今は見つける事を優先させる。
リビングに行くとアーニャンがテレビを見ていた。
「策也!これは一体?」
アーニャンはテレビを指差しながら、俺に訴えかける。
見ると町で暴れる道着姿の男が映し出されていた。
「新たな神の誕生だ」
俺が答えるのと同時に、モニターに映る男も声を荒らげて訴えていた。
『新たな神の誕生だ!ははははは!俺は世界最強となったのだ!』
自分が神であると自覚している。
これはもう間違いないだろう。
『俺が神となったからには、一度世界を破壊し尽くしてやる!そこに強さこそ正義の国をつくってやるのだ!』
なんとかの拳みたいな世界でもつくる気かよ。
日本人なら神武天皇の志を持って、最高の国をつくってもらいたいものだ。
「どうするの策也?」
「とりあえず本人を確認してくる。神なら会えばハッキリとするはずだ」
場所は東京駅辺りか。
自動車に乗ってちんたらしていたらいなくなる可能性があるな。
俺は迷わず走りだした。
普通に走っても八分くらいで到着する。
だけれどもう少し速くても問題はないだろう。
グレートアイランドで色々なデンジャーを見てきて、もっと速く走る奴が結構いる事を知ったからね。
俺はおそらく、既に三つ星デンジャー確定だからなぁ。
全ての力を隠していても仕方がない。
『策也ちん、そっちはどうなのぉ~?』
おっとこっちとも話している最中だったな。
『今日本に戻って、神を名乗りながら暴れている奴を見に向かっている所だ』
『そんな人がいるのねぇ~。こっちはとりあえずみんなが集まって情報交換している所よぉ~。特に情報はなさそうねぇ~』
『ただゴルゴとキルリアが何かを隠している気がするの‥‥』
『隠している?』
ゴルゴとキルリアねぇ。
この世界の主人公様だからな。
何かしらに関わっていても不思議ではない。
『そうねぇ~。でも二人からは何も感じないわねぇ~』
アマゾンから生命エネルギーのようなものが新たな神へと流れている。
そのきっかけに関わっている可能性はあるけれど、特に二人に何かがあった訳ではないって所か。
『それでこの捜索も終わりそうなの‥‥』
『そうなのか?』
『アマゾンに残っていた何かがぁ~、もう感じられなくなったようよぉ~』
新たな神の誕生で、アマゾンは役割を終えたのかもしれない。
それが何かは分からないけれど、テヘペロ会長はそう判断したという事か。
もしかしたらその辺り、俺がキマイラB問題を解決した事に関係があるのかも。
『おっと。そうそうテヘペロ会長に伝えておいてくれ。新女王は発見し、駆除は完了したってね』
『そうなのねぇ~。おつかれ様ぁ~。もしかしたらそれが何か世界に影響したのかもねぇ~。相当強かったんでしょ~?』
『まあな。レベルは俺よりも上だった。詳しくは萬屋に戻ってから話すよ。そろそろ新たな神が見られそうだからな』
『は~い』
感じる。
これは神の気配だ。
間違い無かったか。
しかしこのまま倒す事は不可能なんだよなぁ。
この世界の新たな神候補がまだ見つかっていない。
俺には倒せないのだ。
それでもとりあえず一度見ておけば、決戦の時に見つけやすくなる。
テレビがアナログだったら、既に条件を達成していたかもしれないのに。
どちらにしても俺はここに来ていただろうけれどね。
見えた!
神を名乗る男は、自衛隊に囲まれている。
普通国内は警察の管轄だけれど、この男の対処は難しいか。
国家存亡の危機。
政府がそう判断したという事だ。
アーニャンが萬屋にいた事から、直ぐに動けるこちらを優先したとも思えるけれど。
取り囲む中には恵美の姿もあった。
恵美が来ているなら、もしかしたらここでこの男をなんとかする事ができるかもしれない。
おそらく神だとしても、ダメージを通せるはずだ。
そして手頃な男にトドメを刺してもらえばいい。
ほら、あそこにいる両津さん辺りにやってもらえば万事オッケー。
どういう役職なのかは知らないけれど、今では警察の中でもかなり上だよな。
そういう人なら神になっても大丈夫だろう。
知らんけど。
「神を名乗るお前!完全に包囲されている!大人しく捕まれ!」
恵美が普通のキャラで男に訴えかけていた。
ん~‥‥。
捕まえるよりも、殺す必要があるんだよなぁ。
だから向かって来てもらわないと。
よくよく考えると、悪い神だからって殺すのもどうかと思わなくもないけれど。
「なんだガキが?俺は神となった男だぞ?これからこの世界では俺が法だ!お前には死刑を言い渡す」
なんでこんな奴が神になれるんだ?
しかし確かに神の気配は感じる。
とは言え何か違和感も覚えるんだよなぁ。
強さが見えない世界だから、今までと少し感覚が違っているのかも知れないけれど。
俺はとりあえず一寸神を召喚した。
そして一寸神の俺は姿を消して恵美の耳元へと移動する。
「おい恵美。策也だ。今横に一寸神として来てるんだけれど、あの男は殺してしまっていい奴なのか?」
「おお!策也だし。抵抗するようなら殺してしまって構わないと言われているし。既に何人も人を殺していて、とても危険なデンジャーテロリストとされているし」
デンジャーテロリストか。
そりゃ神だとは思わないよな。
「殺された人ってのはどういう人なんだ?」
「話によると、この辺りで黒人男性とストリートファイトをしていて、それであの男が黒人男性を殺したらしいし。そしたらその後、何も喋らず通行人を次々と殺していったみたいだし」
もしかしたらその黒人男性が神だったか。
日本人とは違うとしたら、もしかしたらアマゾンからやってきた?
そこに神の領域があって、何かしらの理由でその力が今、あの男に吸収されている。
完全に俺の憶測だけれど、当たらずとも遠からずって感じはするんだよなぁ。
そして今、まだ目の前の新しい神は完全体ではない。
神の領域だって構築されてはいない。
倒せるなら今の内にやっておくに限るんだよ。
「それは凶悪犯罪者だな。しかも相手は魔法を使うデンジャー。倒しておくしかないだろう。恵美、俺が協力するからやってみるか?」
「そのつもりで来たし。策也がいてくれると心強いし」
そうだな。
自衛隊が出張るくらいだ。
倒すために来たのは当然か。
「それじゃあ頼むぞ」
「分かったし」
但し神なら恵美には倒せない。
もちろん俺も傷一つ負わせる事はできないだろう。
状況を見つつ両津さんに動いてもらわないと。
しかしまさか、いきなり神との戦いに突入するとは思わなかったな。
これが終わればみたまとはサヨナラか。
もう少し‥‥、何かできれば良かったよ。
「それでは実力行使させてもらう!私は自衛隊デンジャー部隊副隊長、押勝恵美だ!勝負!」
ここも普通に喋るのね。
まあ当然か。
「ははははは!神となった俺に並のデンジャー風情が勝てると思っているのか?!」
「これだけ人を殺す者が神である訳ないし!」
そこはナチュラルにかずみキャラを入れてくるのね。
何にしてもそう言って、恵美は向かっていった。
まずは推し活モードで万全を期す。
恵美の手刀が男の首を捉えた。
吹き飛ばされる男。
思った以上に弱いかもしれない。
神の領域も無いし、本人も完全体になっていないとはいえ‥‥。
今がチャンスだよな。
しかし弱すぎると捕らえる事もできてしまう訳で、もう少し頑張ってくれないと困るよ。
「その程度か。全く効かないぞ?」
ほう‥‥。
耐久力は高そうだ。
実際ダメージを受けているようには見えないし、期待通り頑張ってくれるかもしれない。
「こっちもまだ本気じゃないし!」
だんだんかずみが入ってきてるな。
行けっ!恵美!
恵美は再び男に向かってゆく。
しかし今度はそれ以上のスピードで男が仕掛けてきた。
これはマズイ攻撃だ。
流石は神と言った所か。
俺は恵美を庇うように、一寸神でガードした。
全くこちらに何も伝わって来ない。
すり抜ける?
俺は咄嗟にマジックシールドを展開して恵美を守った。
これで完全に断言できるな。
この男は神だ。
おそらく俺が攻撃しても全てすり抜けるのだろう。
幸い守る為の魔法は機能しているから、何もできないって状況ではなさそうだ。
その辺りは助かったな。
もちろん、『まだ完全体じゃないからって可能性』も無いとは言えないけれどね。
その可能性を考えるなら、素早く倒してしまわなければならない。
「恵美。この相手は俺の攻撃や防御が通用しない相手のようだ。死んだ場合は蘇生してやれるけれど、それでも戦えるか?」
「不安はあるけど、副隊長だからやるしかないし!」
そうだったな。
これは神との戦いではなく、恵美にとっては日本防衛という仕事なんだ。
恵美だけじゃなく、他のデンジャー部隊隊員も戦闘に参加する。
しかしそっちまでは手を貸せないぞ?
と思っても、助けてしまうのだろうけれど‥‥。
俺はテリトリーを展開する。
そして恵美やデンジャー部隊の隊員を強化。
これでなんとか倒してくれ。
でもそうなると、隊員の誰かが次期神になりそうだな。
一応狛里たちにも伝えておこう。
神を倒したらアルカディアに戻る事になるのだから。
『狛里、天冉。間違いなく新しい神のようだよ。こいつが倒すべき神なのかは分からないけれど、そうなら俺たちはアルカディアに戻る事になる。なるべく早く東京駅まで来てくれ』
『こっちの仕事は終わらせたわぁ~。既に萬屋に戻ってそちらに向かっているわよぉ~』
『そうなのか。なら問題ないな』
ちなみに俺へのセーブポイントの移動は、あまり見られたく無いから最終手段ね。
もう帰る時なら見られてもいいけれどさ。
『でもまだ気になる事があるの‥‥』
『そうなのか?』
気になる事ねぇ。
『そうねぇ~。神はまだ本当の意味では誕生していないようなのよぉ~』
『ふむ』
確かにこの神を名乗る男は完全体とは言い難い。
神にしては弱すぎる。
神の領域展開もできていない。
『アマゾンではまだエネルギーが広がり続けているの‥‥』
『そうなのか?』
『そうなのよねぇ~。ゴルゴちんの話だと、風で木が折れた後にそれが起こったみたいなんだけどぉ~、もしかしたらアマゾンの大自然そのものが神だったんじゃないかしらぁ~』
その可能性は俺も想像していた。
だったらどうなるんだ?
殺された黒人が神だったようにも思うんだけれど。
大自然が人化した者なのかも。
それがどうして日本に来ていたのかは分からないけれど、核攻撃によって死にかけた神が、次の神となる者を探していたのかもしれないな。
なんとなく神にふさわしい者は日本にいそうだし。
神武王朝だし、みたまの世界なのだから。
『まあ全ては倒した後に分かるはずだ。今は恵美たちが戦っていて押している。間もなく倒せるだろう』
流石に神を名乗る男だけあって強いのは間違いない。
だけれど、俺がパワーアップしている恵美たち相手だと殺られるのは時間の問題に見えた。
だからこそだろうか。
恵美の動きが少し変わってきていた。
手を抜いているというか、倒す算段はできたから、今度は捕らえる隙を伺っているような。
それだと神を倒すという俺の目的は達成されない。
やはり殺してしまうという所は、日本人にとっては大きいのかもしれない。
殺人への抵抗は世界一だろうから。
しかし仮に捕らえる事ができたとしても、益々強くなってゆくこの男は直ぐに逃げるだろう。
簡単に殺ってしまえる今が最初で最後のチャンスなのではないか。
デンジャーなら多少の事は許されるし、俺が殺ってしまえれば良いんだけれど神は殺せないし。
テヘペロ会長が突然やってきて殺っちゃってくれないかなぁ。
でもそうすると、本当にみたまとはお別れになるのかもしれない。
そしてこの世界で知り合った恵美とも。
アーニャンはまあ、リセットワールドでも会う事はあるだろうけれど‥‥。
思ったよりも早く別れが来てしまうのか。
ちと辛いな。
俺がそんな事を考えていると、突然俺を追い越して神の男に向かっていく影があった。
その影は一瞬で男に近づくと、大きな武器で男を一刀両断にして見せた。
武器がハープ。
アーニャンが来たのか。
「警察からも僕に要請が入ったのよねぇ。だから全力で対処させてもらったわよ」
ナイスだ。
しかしアーニャンが女性である以上、神は倒せないはずだ。
「アレレ?」
神を名乗っていた男は、完全に死んでいるように見えた。
男に集まっていた生命エネルギーと言える念力が拡散してゆく。
終わったのか?
でもアーニャンは女だぞ?
前世では男だったらしいから、魂はまだ男だったのだろうか。
「違うわねぇ~」
いつの間にか後ろに来ていた天冉がそう言った。
一緒に来ていたか。
「違う?」
「神じゃないわぁ~。正確には、まだ神に成り切れていなかったって所かしらぁ~」
「そうなの‥‥。今までと違うの‥‥」
言われてみれば確かにそうだ。
仕事を達成した時のような感覚がない。
「倒せちゃったわよ?」
アーニャンも驚いていた。
「アーニャン!殺っちまったし!捕らえられたかも知れないし!」
アーニャンは殺せないと思って攻撃したみたいだな。
そして恵美は、殺すよりも捕らえようとしていた所に横槍を入れられ水泡と帰した感じか。
皆少し混乱していた。
ふむ‥‥、この男が神ではないなら、蘇生して捕らえればいいだろう。
いや、神となる前に殺されてしまったのだから、もう神にはなり得ないはずだ。
俺は蘇生魔法で男を蘇らせた。
「恵美、捕らえてくれ!」
「えっ?死んで無かったし!」
蘇生したんだけれどね。
分かってないならそれでいいだろう。
「なんだ?俺はどうしちまった?神を殺して俺が神になったんじゃないのか?あれ?力が‥‥、力が失われているー!」
神を自称していた男が大きな声で叫んでいた。
やはりこの男、神を倒して神になれる事を知っている。
おそらく今までの神に後を託されたのだろうな。
しかし神になる前に、俺たちが倒してしまった訳か。
俺には倒せなかったけれど、女であるアーニャンでも倒せたのはその為‥‥、だと思う。
「拘束カード発動だし!」
恵美の魔法が男の手足を縛り上げる。
それを警察やらデンジャー部隊やらが取り押さえ、無事騒動は収まった。
それは良かったのだけれど、この後一体どうなるんだ?
誰が神を引き継ぐ事になるんだ?
倒したのはアーニャンだから、アーニャンが神になる?
それを俺が倒さなければならないのだろうか。
「楊ちゃんは違うと思うの‥‥」
「どう見ても女の子よねぇ~。それにぃ~、霧散したエネルギーわぁ~、何処か遠くに向かったみたいよぉ~」
「ああ、確かに」
もしもアーニャンが次期神だとしたら、このエネルギーはアーニャンへと向かうはずだ。
でもこの辺りからは既に消え、何処か遠くに行ったみたいだった。
神になる者はおそらく、この近くにはいない。
俺は少し気が抜けた。
いきなりみたまとの別れを覚悟させられ、しかしそれがとりあえず失くなった訳で。
仕事の達成感に似た感覚だけれど、少し違う安心感が俺を包んでいた。
ただ言えるのは、ようやく俺の倒すべき神が間もなくこの世界に降臨するはずだ、という事。
それが誰なのかは全く分からないし想像もできないけれどね。
神を倒した男が、神になりきる前に女性に倒されるという、おそらく前例の無い出来事が起こってしまったのだから。
結局、道着姿の神を名乗った男は、その後強い力を発揮して脱走するような事はなかった。
日本で柔術道場の師範をやっていた男だったらしい。
その男が殺した黒人男性は、結局身元が分からなかった。
デンジャー証を持っていたけれど、当然デンジャー協会にも名前以外に情報は無く。
飛行機でブラジルから日本にやってきた事くらいしか分からない。
ただブラジルという辺り、やはりアマゾンのエネルギーと関係しているのだとは思うし、おそらく神だったのは間違いないだろう。
これで全ては振り出しに戻ってしまった訳だけれど、俺は少しホッとしていた。
いきなりの急展開で、大切な人との別れを迎えるのはもう体験したくないからね。
できれば心の準備ができる展開をお願いしますw




