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トラック~生まれ変わったら人間だった~

‥‥。

僕はトラック。

ご主人のおやっさんからは、ダンプくんと呼ばれている。

そう呼ばれているのだから、おそらく僕は男なのだろう。

体もゴツいし、疑う余地はない。

だけど‥‥。

僕はおやっさんが大好きなんだよね。

これは多分最近流行りの、体は男だけれど心は女ってヤツなんだと思う。


今日も僕はおやっさんに運転されて、長距離輸送デートを楽しんでいた。

おやっさんはいつも安全運転を心がけてくれている。

理由は、僕を悪者にしない為だ。

『全く最近の転生ものときたら、常にトラックを悪ものにしやがる。轢かれるのは猫を助けようする人間で、殺しちまうのはいつもトラックだ。納得いかねぇよな?』

僕は喋る事はできないけれど、そう言うおやっさんの愚痴に、いつも心では頷いていた。

ある日の事、とあるサービスエリア。

おやっさんが休憩に行っている間、僕は駐車場でのんびりと日向ぼっこをしていた。

この時間は、いつも少し寂しい。

早く帰ってきてと願いながら、僕はただその場で待っていた。

そんな時、あちらから何かが猛スピードで向かってくる。

最初は何か分からなかったけれど、近づいてくるにつれ徐々に姿がハッキリしてきた。

どうやら猫耳を付けた女の子のようだ。

「キーン!」

そんな声を上げながら、真っ直ぐこちらに向かってくる。

ちょっと、そのままだと僕にぶつかっちゃうよ。

そう思ったのも束の間、次の瞬間僕は女の子にはねられていた。

体が宙に浮く。

僕、もしかして死んじゃうのかな?

まさかトラックが女の子にはねられて死ぬなんて。

永遠の眠りはやだなぁ‥‥。

もうおやっさんに会えなくなる。

デートももうできない。

いやだいやだいやだ!

僕の体は重力に引かれ、そして地面に叩きつけられたようだった。

その後どうなったのかは、今の僕の記憶にはない‥‥。


気がついたら、僕は荒野にいた。

ここは何処?

一体どうなったの?

アレ?

見ると僕は、人間の女の子になっていた。

「ははは‥‥」

どうしてこうなったのかよく分からないけれど、これはきっと転生ってヤツだとすぐに理解した。

おやっさんがよく異世界転生の話をしてくれていたからね。

となると、ここは異世界なのだろうか。

それとも元の世界だろうか。

せっかく女の子になったのだから、元の世界ならおやっさんに会いに行きたい。

でもおやっさんには、いつも同じ女性が一緒にいる。

会わない方がいいのだろうか。

よく分からない。

今はそこまで考えても仕方がないかな。

とにかくこれからどうすればいいのか、目先の事を考えなくては。

僕はずっとトラックだったのだから、人間としてどうやって生きていけばいいのか今一よく分かっていない。

まずはおやっさんの話を思い出し、人間として生きていかないと。

僕は町に行って、お金を稼ごうと思った。

だけれど僕は、どうやらこの国の人間ではないようで、誰も雇ってはくれないみたいだ。

『身分証』とやらが必要らしい。

そんなものを、僕が持ってる訳がないんだ。

結局僕は近くの森でサバイバル生活を強いられ、その中でなんとか情報収集しながら生きていた。

そんな生活を続けていたある日、見つけたのがデンジャー試験だった。

これに合格すれば、デンジャー証が貰えるらしい。

それは身分証になるのだそうだ。

僕は早速その試験に挑むべく訓練と情報収集を始めた。

それからの生活は更に過酷だったけれど、僕は夢の中で会える芳野(よしの)という人に色々と教えてもらって強くなっていった。

そして半年後、とうとう試験に挑戦する事になる。

最初に名前の登録が必要だった。

だけど僕には名前がない。

前世ではダンプくんと呼ばれてはいたけれど、今の僕は女の子なんだ。

もっとふさわしい名前にしよう。

芳野さんには『キミはミラクルに輝いているから、ヤンって呼ぶぞ』と言われ、ずっとそう呼ばれてはいた。

でもそれはただのあだ名だよね。

名前にしちゃっていいかな?

苗字と名前か。

苗字はやっぱり、大好きなおやっさんと一緒がいいな。

なんて言ったかな?

そう言えば一緒にいた女性は、いつもおやっさんの事を『あんさん』と呼んでいた。

きっと『(あん)』って言うんだ。

だったら苗字は『安』で、名前を『(ヤン)』にしよう。

僕はそれで登録し、デンジャー試験に挑んだ。

見事試験には合格し、僕はようやくこの世界で生きていく為に必要な身分証を手に入れたのだった。


そこから始まる安楊(アーニャン)のストーリー‥‥。


プロのデンジャーになってからは、おやっさんのいる日本を目指した。

そして日本に来てからは、おやっさんを探す為に警察関係の仕事にも就いた。

でもやがて知る事になる。

やはりこの世界は異世界で、おやっさんはいないのだと。

生きる希望を失いそうになった。

でも‥‥。

気がつけば僕の周りには共に働く仲間が沢山いた。

これからはプロのデンジャーとして、そして警察関係者として生きていこう。

そしてトラックにはねられて死ぬ人がいないように、できるかぎりの事はしようと思った。

‥‥。


今日は恵美の副幕僚長就任を祝う為に、狐撲暁隊のメンバーが萬屋に集まっていた。

そこで俺はなんとなくアーニャンに聞いてみた。

「それでアーニャンは、西暦何年にこっちに転生してきたんだ?」

せっかく転生前の世界について話せる人がいるのだから、やっぱり少しは話しておくべきだよね。

もしも最近だったら、俺が死んだ後の話も聞ける訳だし。

猫蓮(にゃんぱす)とは話さないけどね。

ちなみに猫蓮とは、イスカンデルに住む転生者の友人だ。

滅多に会う事はないけれど、偶に闇の家で顔を合わせる事がある。

顔は超絶イケメンだけれど‥‥。

これ以上は言うまい。

「西暦?僕が前世で死んだ日は、確か宇宙暦三千三年だったかしら?」

宇宙暦って、同じ世界じゃなかったんかーい!

そりゃそうか。

日本っつっても、この世界にもあるんだからな。

似たような世界は沢山ある訳で。

もしかしたらアーニャンがいた世界は、地球の転生者が創った世界なのかもな。

或いは逆も考えられるけれど。

「俺の世界とは違うみたいだな。だけど共通点もある。例えばアーニャンが使う普通の魔法。魔法の名前はアーニャンのオリジナルじゃないよな?」

「えっ?うん。僕の大好きなおやっさんが読んでた漫画『ファイナルクエスト』の主人公が使ってた魔法だよ」

ファイナルクエストかーい。

これは確実に、どちらかの世界の転生者が、どちらかの世界を創ったんだろう。

さて‥‥。

もっと話をして違いを見つけるのも面白そうだけれど、どうもアーニャンには想い関心が感じられないんだよね。

自分が生きてきた世界に執着しないというか、どうでもいいというか。

ぶっちゃけると、知識を除けば転生者っぽくない。

その知識も、何処か自分のものではない気がする。

例えるなら、みたまが憑依した天冉と前世について語るような。

興味を持って話さない辺り、もしかしたらあまり触れられたくないのかも‥‥。

そうは見えないけれどね。

結局俺は、アーニャンと前世についてこれ以上語る事はしなかった。


しばらくして、誰かが階段を上ってくる気配がした。

ようやく今日の主役の登場か。

そう思ったけれど、どうも気配は違う。

しかも一人じゃない。

これはもしかして‥‥。

「今日は恵美ちゃんの就任祝だって?おばちゃんたちも混ぜとくれよ」

「そうそう。お酒も持ってきたよ。料理も作ってきたからさ」

「花はこの辺に飾っておくよ。いやぁ~、うちの町から有名人が誕生なんて、実にメデタイわねー!」

‥‥。

近所のおばちゃんたちが乱入してきた。

あのテレビ出演以来、我が萬屋も有名になった訳で。

野次馬の如く近所の人たちが入れ代わり立ち代わりやってきた。

ぶっちゃけ野次馬なんだけどさ。

買い物もせず、ただ狛里や天冉と話がしたいだけ。

まあでも、狛里も天冉も特に嫌がっている様子はない。

むしろおばちゃんとの会話を楽しんでいるように見える。

それにおばちゃんってさ、たとえ迷惑な事をしたとしても憎めないんだよね。

誰かの母親なんだって思うと、何処か負けた気がするっていうか。

生前も『電車の椅子の隙間に無理やり座る』とか『男子トイレに平気で入ってくる』とか迷惑なおばちゃんはいたよ。

だけれど、誰かの母親なら仕方がないってそう思えてしまう。

お母さんって、やっぱり特別な存在なのだろうな。

「狛里ちゃんはそんなに可愛いのに強いのかい?」

「強いの‥‥。世界一なの‥‥」

「あらまあ。じゃあおばちゃんが誰かに襲われた時は助けてね」

いやおばちゃん。

貴方が襲われる事は多分ないよ。

メッチャ強そうに見えるから。

「もちろんなの‥‥」

「天冉ちゃんも美人よねぇ」

「私ぃ~?異世界のプリンセスだからねぇ~」

本当の事だけど、その辺りは内緒にしておいた方が良いんじゃないか?

尤も本気で信じる人はいないだろうし、なんとか星からやってきたアイドルと同列に見られる程度だろうけれど。

「あらまあ。差し当たり魔法のプリンセスミンキー天冉って所かしら?」

おいおい、確かに魔法が使えて魔法が使える世界のプリンセスではあるけれど、ミンキーまでどうして入ってくるんだよ。

髪の色が同じだからか?

ならばピンクの髪の萌えキャラは、これからはミンキーと名付けよう。

つかこの世界はみたまが創った訳だけれど、あのアニメ見た事ないよな?

二作品目が放送されていた頃もまだ生まれていなかったはずだ。

何処かで知っていてもおかしくはないけどさ。

そんな感じでおばちゃんとの会話に花を咲かせていたら、ようやく本日の主役がやってきた。

「やっときたか」

階段を上る足音の後、恵美が顔を出した。

皆は一斉にクラッカーを鳴らす。

「副幕僚長おめでとう!」

こうやって祝って良いものかどうか疑問もあったけれど、楽しいイベントを積極的にやるのはきっと良い事だ。

準備は狛里たちがやると言ったし、俺は好きにさせた。

「あ、ありがとうだし。でもただ就職が決まっただけだし」

確かにその通りではあるけれど、就職祝と言われればむしろ有りなんじゃないかと思えた。

「あらまあ。こんなに可愛らしい子がデンジャー部隊の副隊長なの?」

「あら奥さん。可愛いは正義なのよ。可愛いからこその抜擢よ」

「ほら見てよ。グレートアイランドをクリアした五人は、みんな可愛らしいわよ」

俺まで可愛らしい仲間なのか。

確かに見た目女っぽいけれど、流石にそれはないわ。

でもおばちゃんから見れば、そういう風に見えるのかねぇ。

「ただ自衛隊って、心配よねぇ。命がけの仕事もあるんでしょ?」

そうだ。

そこなんだ。

今回お祝いしても良いものなのか、ここだけは少し考えさせられた。

戦中赤紙がくれば正直喜べたものではなかっただろう。

尤も当時の人たちは名誉を感じていたのかもしれないけれど、平和な現代社会では名誉よりも命と考える人が多い。

まあ恵美は、それなりに名誉を重んじる所があるから、喜んでいるのかもしれないけれどね。

「基本的にはそんなに危険はないし。ただ‥‥」

「ただ?」

「いきなり海外での仕事になりそうだし」

「あら、大丈夫なの?」

そうなのか。

自衛隊は基本的に専守防衛だ。

だから国を離れる事は滅多にない。

だけれど国際協力ってのも必要で、時に危険な所へ行く事もある。

「多分大丈夫だし。詳しくは言えないけれど、戦う為に行く訳じゃないし」

詳しくは言えないか。

自衛隊に入れば、機密情報に触れる機会は山程あるんだろうな。

副幕僚長な訳だし、機密を守らせる側でもある。

ただ、仲間が話せない情報を持っているってのも、なんとなく寂しい気がするよ。

「そうなのねぇ。それなら良かったわぁ」

その後も、恵美に対してはおばちゃんから色々な質問が浴びせられた。

副幕僚長就任祝は、恵美への質問の会みたいになっていた。

それでも質問がなくなってくると、後は楽しいドンチャン騒ぎに変わってゆく。

酒も入り、みんなそれぞれに充実した時間を過ごした。


楽しい時間はあっという間で、夕方には恵美が席を立った。

「そろそろ帰るし。明日から任務だし」

「そうなの?大変ねぇ」

「それじゃあおばちゃんたちもそろそろお(いとま)しようかね」

おばちゃんたちも恵美に続き、帰る準備を始めた。

萬屋のお祝い会場は祭りの後といった感じで、ハロウィン後の渋谷のようだった。

つまりゴミが散乱して無茶苦茶です。

何故か少し笑みがこぼれた。

どうやら俺は嬉しいようだな。

それだけここで楽しい事が有ったって話か。

「片付け、手伝わなくて平気かい?」

おばちゃんの一人が気を使って声を掛けてきた。

手伝う気があったら既に片付けに入ってるでしょ。

全くおばちゃんは。

「大丈夫だよ。俺たちが本気で片付けたら、これなら五分で終わるから」

本当は一分もかからないけれどね。

つまりおばちゃんが手伝ってくれない方が早いので、これでいいのです。

「そうかい。それじゃ片付けよろしくね」

完全にこういう返事をすると分かっていたような感じだよ。

いいんだけどね。

「それじゃ僕はおばちゃんたちを送っていこうかしら」

「送る?一緒に帰るんじゃないのか?」

「そうだねー。それじゃ送ってそのまま帰るわ」

なんかアーニャンの言い方には違和感を覚えるな。

アーニャンって車で来てる?

つか酒も飲んでたよね。

警察のお偉いさんが飲酒運転で捕まったりしたらシャレにならんだろ。

「それじゃみんなバイバイなの‥‥」

「また何かあったらおばちゃんたち遊びにくるからね」

「今日はありがとうだし」

「それじゃーね!」

「またねぇ~」

「じゃあな!」

俺たちは手を振り合い、そしてみんなは萬屋から出ていった。

俺はみんなが帰る所を見送る為に、窓を開けて外を見下ろした。

階段を降りた面々が道に出て来る。

そして俺に気がついた者は手を振ってくれていた。

そんな中、アーニャンがみんなに声を掛けていた。

「それじゃみんなを送るわね」

見ると前の道路には自動車が二台止まっていた。

一台はセバスクンの姿が見えるので、恵美を迎えに来たんだろう。

もう一台は‥‥。

んん?屋根に赤色灯の跡がある。

覆面パトカー?

アーニャンがその自動車に近づく。

「良いわよ送ってもらわなくても」

「歩いて十五分くらいよ。日本でそうそう襲われたりはしないわ」

おばちゃんたちは遠慮していたが、アーニャンは送る気満々だった。

「大丈夫よ」

アーニャンはそう言って後部座席のドアに手をかけ、そして開けていた。

「えっ?」

酒は大丈夫なのか?

いや、そもそもそこは駐車違反ではないのだろうか。

職権乱用じゃね?

‥‥。

みんな驚いている。

俺も驚いた。

一緒に外を覗き見ていた狛里と天冉も驚いている。

通りすがりのおっさんも、近くにいた鳩も、全米も驚いていた。

「駐車違反もツッコミ所だけれど、飲酒運転になるんじゃないのか?」

俺の疑問は、おばちゃんたちがそのままアーニャンにぶつけていた。

「お酒飲んだら車は運転しちゃ駄目よー」

「それにこれ、クロパトよねぇ。私用に使っていいの?」

「覆面パトカーに乗ってみたい気持ちはあるけれど‥‥アーニャンちゃん、クビになっちゃうわよ」

そうそう、ここはしっかり止めてあげないと。

「大丈夫よ。萬屋との付き合いは仕事として最重要だから。それと僕にとってアルコールなんて、青汁と同じなのよ」

確かに警察側からみれば、俺たちの協力は是が非にも欲しいものだろう。

だからそこには超法規的対応も有りなのかもしれない。

つか何故青汁?

アーニャンは自動車からアルコール検知器を取り出すと、それを自ら使って数値をみんなに見せた。

ここからでも数値は確認できた。

確かにアルコールを全く検知していない。

どういう体をしているのだろうか。

俺のように魔法で消したかな。

ファンタジー世界に行っていた訳だし、状態異常耐性があっても不思議じゃない。

それでもアルコールは消える訳じゃないはずなんだけど。

ちなみに俺は、あえてアルコールだけは状態異常耐性を解除しているんだけれどね。

そんな訳でおばちゃんたちは、なんとなくクロパトに乗せられていた。

しばらくして自動車が走りだす。

中のおばちゃんたちの声が聞こえる。

調子にのって『サイレンはならさないの?』とか言っていたら、アーニャンは素直にリクエストに応えていた。

『ウー』と音が鳴り、赤色灯が回り始める。

かと思ったら車は急発進して、ドリフトをかましながら角を曲がり直ぐに見えなくなった。

アーニャンの運転テクニックやべぇ。

俺たちはただ、それが走り去るのを見送った。


祭りの後の片付けは一瞬で終わり、俺たちは部屋でテレビを見ていた。

ゲリゲロに『世界情勢くらいは知っておけ』と言われた訳だし、一応ニュースを見ておこうかと思ったのだけれど‥‥。

なんだかボーッとして、何も耳には入って来なかった。

だから重要なニュースを見逃していたみたいなんだよね。

『丁度一ヶ月前、ブラジルをはじめとする国々が、アマゾンのジャングルを立ち入り禁止区域としましたよね?その理由について色々と言われてきました』

『そうですね。その理由の一つに『未知の蜂が見つかった』というのがありましたが、本日それが明らかになりました。禁止区域に入って、それを持ち帰った方がおられます』

『ファーブルさんどうぞ!』

『こちらが今回、蜂を持ち帰ったファーブルさんです』

『どうも』

『今日はその蜂の死体ですが、お持ちいただけているそうですね。早速その蜂を見せていただけますか?』

『はい。これがその蜂です』

『これは‥‥。日本のスズメバチに似ていますね』

『はい。ですがこの蜂は針を持たず刺したりはしません。当然毒もないんですよ』

『ほう。ではそんなに危険な蜂ではなかったと?』

『そうです。日本のスズメバチの方がよっぽど危険だと思いますよ。ただ‥‥』

『ただ、なんですか?』

『人間の肉まで喰らおうとするんですよ。ほら、僕の腕。何ヶ所か食われちゃいました』

『カメラさん、アップにしてください。‥‥。少しですが、肉が削られているようです』

『でもこれくらいなんで、もしもこれの為に立ち入りが禁止にされていたとしたらやり過ぎですよ。日本にはスズメバチがいますが、立ち入り禁止にはなっていません。はははは!』

『そうですね。この蜂の為に立ち入り禁止にしていたのだとしたら、すぐに解除される事でしょう』

テレビからはそんな声が聞こえていたけれど、俺の意識はどこか夢の中のようだった。

酒は飲んでも呑まれるな。

世界を揺るがすかもしれない大きな波が、今ゆっくりと動き出していた事に俺はまだ気が付かなかった。

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