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名探偵策也

真実はいつも一つ!

だけれどその真実も、超常現象の前では隠れてしまう。

或いは書き換えられる事になる。

ならばどうするのか?

超常現象によって、事実を白日のもとに晒すしかない。

デンジャーが犯罪者となれば、それを普通の人が取り締まるのは難しい。

デンジャーにはデンジャーを。

能力者の犯罪を取り締まれるのは、それ以上の能力者だけなんだよね。


現実世界に戻った俺たちは、四つ星グループ本社の地下訓練場へと来ていた。

色々と確認する為にね。

戻ってきてそうそう、狛里は既に『食事の夢』のアイテム化をしている。

何も問題なく、使えば食事が目の前に現れた。

「じゃあ私わぁ~、財宝をアイテム化するわねぇ~。パラリン!」

呪文を唱えると、カードは一瞬にして山のような財宝に変わった。

これは凄いな。

ゲームクリアするだけで大金持ちになれる。

尤も俺たちなら、実際の盗賊から奪う事も容易い訳だけれどね。

ただなんとなく、近代的なこの世界で手に入れられた事が凄いと思えた。

「俺のカードは何が起こるか分からないし、時期を見て今後何処かで使う事にするよ」

具体的には、神の仕事を終えてアルカディアに戻る時かな。

このカードで戻れるような事があれば、俺ならきっと何時でも使えるようになるはずだ。

或いは戻った後に使っても面白そうだけれど、その場合おそらくこの世界に戻って来る事になる。

そう簡単にできるものではないけれど、万一そうなったら百年以内にアルカディアに戻る方法を考えなければならない。

その時グレートアイランドが存在すれば、もう一度同じカードを手に入れるって手は試せるけれどね。

とは言えリスクはなるべく回避して使わないと。

「それじゃぁ~、いよいよ恵美ちんの番ねぇ~」

「緊張するし」

恵美の番。

別に貰ったカードを使おうって意味じゃない。

どう使えるのかも分からないからね。

それよりも恵美の場合は、仕様をグレートアイランドのものに変えた読書モードの本を確かめるって話。

元の本に戻っているのか。

それともカード魔術仕様のままなのか。

或いはグレートアイランドの仕様は何処まで残っているのか。

既にハートのブレスレットは腕にはない。

クリアしていなければ、リアル世界に戻ってもブレスレットは残っていたはずだ。

しかしクリアした事で、装備の(たぐい)は全てリセットされている。

さて、ファイルは現れるのか。

恵美は左手を出して魔法を唱えた。

「プリット!」

すると左手には、分厚い恵美仕様でグレートアイランド仕様のファイルが現れた。

「おっ!カード魔術はそのまま使えそうな気配だな」

「まだ中を見ていないのでなんとも言えないし」

恵美は表紙をめくった。

するとそこには、かずみの魔法カードがズラリと並んでいた。

「どうやらかずみの魔法に関しては、カード魔術として使えるみたいねぇ~」

「まあこれはゲーム関係なく恵美の力だからな。あくまでアイデアを拝借したに過ぎない」

後は持ち帰ったドラゴンカードがどうなっているのか。

カードポケットに挿したまま戻ってきたんだよね。

普通に考えればドラゴンカード以外は何も無いはずだし、ゲーム内で必要なポケット自体が存在しないはず。

その部分はあくまでゲームだから。

しかしファイルの分厚さから見るに、何かしらページは残されていると思われるし、ドラゴンカード用のポケットはあるはずだ。

ページをめくっていった。

するとナンバーポケット全てがそのまま残されていた。

しかもほとんどのカードがポケットに入っている。

「これは‥‥」

「ほとんどのカードがそのまま残ってるし」

「貰ったのは一枚のはずよねぇ~」

「沢山は貰えないはずなの‥‥」

抜けているのは、恵美以外がカードを抜き取り貰った所だ。

もしかしたらそれ以外全てのナンバーカードが、恵美の魔法として昇華されたという事なのかもしれない。

しかしかずみの魔法と違って、カードが無限にある訳ではなさそうだ。

「使ってみないとどうなるか分からないな」

「とりあえずぅ~、勇者の剣をアイテムに戻してみればぁ~?」

「分かったし。試してみる」

恵美はそう言って、勇者の剣のカードを取り出した。

この剣は、ゲーム内で恵美が使っていた。

こちらに戻ってくる事でそれは消えてしまっていたけれど、カードが使えるのならこちらの世界でも剣が使える。

「パラリン」

恵美がそう唱えると、カードは普通に勇者の剣へと変わった。

「ほう。カードは全部使えそうだな」

それでも使ったカードは消えて失くなる。

全て一回だけ使えるって所か。

「ファイルポケットの所に何かが出てきたの‥‥」

ファイルを後ろから覗き込んでいた狛里が、何かに気がついた様子だ。

俺と天冉も恵美の後ろに回ってファイルを覗き込む。

すると勇者の剣が入っていた八十八番のポケットの所に、二十三時間五十九分と表示がされていた。

「これはもしかしてだし」

「間違いないな。使ったカードは二十四時間でまた復活するって事だろう」

これはかなりいい感じに仕様を継承できたな。

俺たちが選んだカードも良かったと言える。

盗賊の財宝が何度も使えるとは思えないし、食事の夢は有れば有ったで便利だけれど、カード魔法となるとそのままの効果になるかは疑問だ。

トビウサギカードの効果も使用が難しいだろうし、通行証もほぼゲーム内だけの効果に留まりそう。

恵美にとっていらないものを選べたのは、大正解だったと言える。

それにドラゴンカードによって、その辺りももしかしたらカバーできるのではないだろうか。

「ドラゴンカードも試してみるか?」

いざって時の為に置いておく方が良いかもしれないけれど、これも二十四時間で繰り返し使えるのなら、最高二回までどのカードも使える事になる。

「一回しか使えなくても問題ないし。試してみるし」

恵美はそう言って、一番のポケットからドラゴンカードを抜き出した。

そしてそれを、本来盗賊の財宝カードを入れる三番のポケットへと挿してみる。

しかし何も起こらなかった。

「三番は無理そうねぇ~」

「元々なかったカードはコピーできないの‥‥」

「それじゃ」

恵美はドラゴンカードを抜き出し、今度は八十八番のポケットにカードを挿した。

するとカードは変化し、アイテムカード勇者の剣になった。

それを抜き出し、恵美は使ってみる。

「パラリン」

すると勇者の剣は先程と同じように実体化した。

「一番のカードも二十四時間で復活するみたいなの‥‥」

「だいたい使い方は分かってきたな」

「そしたらあとわぁ~、明日ちゃんとカードが戻るか確認ねぇ~」

「なんだか私だけ得した気分だし」

実際得してるな。

選んだのは一番のカードだけだったけれど、他のカードも一緒にファイルに入れておいた。

本来このファイル自体こちらで使う事は不可能だったけれど、ゲーム内の魔法は既に恵美の魔法として確立していたんだ。

いや、最後の最後に確立したのか。

だから全てが使えるままになったと。

その後のページも、カードこそなかったけれど、フリーポケットやトラップポケットもそのまま残されていた。


そんな訳で次の日の同じ時間、俺たちは再び集まって確認した。

「剣が消えたし」

「つまりアイテムカードで出したアイテムは、二十四時間しか持たない訳か」

盗賊の財宝とか、逆に使えなくて良かったかもな。

財宝を売ったり使ったりすれば、後で消えて問題が生じる事になる。

ちなみに天冉の手に入れた財宝は消えたりはしない。

正規で持ち帰ったものだからね。

結局使用した他のカードは全て二十四時間で元に戻っているし、これでほとんどのカードが二回までなら使える事になる。

コピーカードでコピーできるナンバーなら三回だ。

ぶっちゃけグレートアイランド内でしか使えないカードも多いけれど、『治癒の神風』なんかが使えるようになっただけでもかなり儲けものか。

恵美は『かずみの使える魔法』は使えるけれど、それ以外の登場人物の魔法は今の所使えていない。

だから治癒系の魔法があまり得意ではなかった。

怪我を直したり、状態異常を正常に戻したりくらいはできたけれどね。

「試せる事はこれくらいかな?」

「フリーポケットが残っているのはどういう事かしらぁ~?トラップポケットはトラップカードが使えそうだけれどぉ~」

確かにフリーポケットは気になるな。

俺は異次元収納から一つ宝石を取り出し、それを恵美に投げ渡した。

「なんだし?」

「それ、パラリンでカード化できないか?」

フリーポケットにも何かしら使い方があるはずだ。

ならばこの世界でもカード化魔法が使える可能性がある。

恵美は宝石を持って魔法を唱えた。

「パラリン」

すると宝石は瞬時にカード化された。

「おお!」

「この世界でもできるの‥‥」

「完全にゲーム仕様をものにしているわねぇ~」

仕様をものに。

つまり一回きりだけれどカード化が可能。

となると、フリーポケットは余ったナンバーカードの保存場所でもあった訳だから‥‥。

「じゃあナンバーカードをフリーポケットに入れてみたらどうなる?」

恵美は無言でそれを試した。

ドラゴンカードをフリーポケットに入れると、そのカードはそのままに、カード復活までのタイマーが動き出した。

「凄いし!カードを使った事になってるし」

「この機能を使えば、重要カードを大量にストックしておく事も可能になるのか」

「カード化を使えば、大きな物をカードにして持ち運びもできるのねぇ~」

異次元収納が使えない恵美にとって、これはありがたい機能になるだろう。

その後、フリーポケットに入れたカードをいくつか試し、使える事を確認して検証は終わった。

これで本当に俺たちのグレートアイランドは終了だ。

「じゃあな恵美。俺たちは元の生活に戻るよ」

「うう‥‥。なんだか寂しいし。もっと冒険したかったし」

こういう世界で暮らしていたら、冒険って本当に良いよな。

もちろん弱くて困難ばかりだとやりたくないけれど、ある程度の強さがあれば絶対に楽しい。

恵美にとってはおそらく、今が最もそういう気持ちが湧き上がる時期だろう。

俺もチートの能力を手に入れた時は‥‥。

黒歴史を思い出すのはやめよう。

しかしこれからの俺たちには、おそらく恵美が付いてこられないくらいに過酷な未来が待っている。

漫画の原作はハッキリとは覚えていないけれど、確かこの後はキメラの話だったはずだ。

恵美には危険過ぎる展開も考えられる。

そして更にその先には、俺たちの目的である神との戦いがやってくるのだ。

恵美は女の子だから、次期神様にはなり得ない。

奇乃子の例もあるけれど、アレは例外だ。

これ以上俺たちに付き合わせる必要もないだろう。

天冉が言うように、本当に天冉を超える強さになるなら、もしかしたら手を借りる事もあるかもしれないけれどね。

「じゃあな恵美!」

「バイバイなの‥‥」

「またねぇ~」

「またいつか、一緒に冒険したいし!」

俺たちはそう言って、手を振って別れた。

というか、四つ星グループ本社から去った。


金持ちになっていた俺たちは、タクシーを使って家路に就いた。

それで萬屋に戻って来た訳だけれど、タクシーを降りた店の前にはアーニャンが立っていた。

「あれ?アーニャン?」

「先日はおつかれぇ~」

「どうしたの?‥‥。寂しくなって会いにきたの‥‥」

いや流石にこいつにそんな感情は無いと思うけど。

「先日はどうもー。戻ってきていきなり仕事に出かけていたのかしら?」

「いや、恵美の能力がこっちに戻ってきてどう変化しているのか、最後の確認をしてきた所だ」

寂しくて会いにきた訳じゃないだろうから、おそらくは新たな仕事の依頼かな。

確かアーニャンは警察で特別顧問と言われていた。

いよいよ俺たちはシティーデンジャーデビューするのかもしれない。

「そうなんだー。じゃあ今は暇って事でいいのかしら?」

「暇だけどぉ~、後何日かはゆっくり休みたいわねぇ~」

「グータラ生活してみたいの‥‥」

いやいやお前たち、大抵毎日グータラしているじゃないか。

家では完全に俺をこき使い、セレブ三昧なんだからさ。

「んー‥‥。そうなのね。謎事件があったから、是非犯人探しに協力してもらいたいと思っていたんだけど‥‥」

「何?!ちょっと待て!」

これはアレか。

この作品の初代タイトルの元ネタとなったあの作品的展開がとうとう来たのか?

ちなみに初代タイトルの予定は、『見た目は一寸、中身は神、仲間は七人』で、『一寸』『神』『七人』全てを『チート』と読む感じだった。

しかし七人の仲間では収まりきらないのでそれを外し、某人気漫画のキャッチコピーみたいなタイトルになったのだ。

実際、見た目は子供、頭脳は大人な訳で丸パクリっぽいけどw

今になってようやくその流れが来たのか。

但し、現在俺の見た目は子供じゃないけれどね。

「面白そうねぇ~」

「余裕で犯人を見つけるの‥‥。大人な私には余裕なの‥‥」

いやいや、流石に狛里の頭脳には期待できなよ。

ただこの二人、勘が鋭いからなぁ。

おそらく犯人を見つけるのは容易いだろう。

問題は、それを証明できるかどうか。

そこは賢者である俺が頑張るしかないのだろうな。

オラ、ワクワクしてきたぞ。

つかなんでうちの嫁隊はこんなにやる気なんだ?

とにかくそんな訳で落ち着く間もなく、俺たちはアーニャンに連行され事件現場へと赴くのであった。


到着したのは、既に空が赤く色づく夕方だった。

解決までに何日もかけたくないし、タイムリミットはかなり短そうだ。

「それで事件は何時起こったんだ?」

「警部の話だと、丁度今日の昼頃の犯行みたいよ」

となると、俺たちが四つ星グループ本社についた辺りか。

連れられた場所は、その四つ星グループ本社が見えるオフィスビルの一室。

もしかしたら犯人と道ですれ違ったりしていた可能性もある。

「一応容疑者を十人ほど、身柄は確保してあるわ」

「手際がいいな」

つか、容疑者くらい用意しておいてもらわないと、俺たちに犯人を見つける手段なんてそうそうない。

「どうする?話を聞いてみる?」

「そりゃ、話を聞いてみない事にはなんとも言えない」

「分かった。社長室に待機してもらっているから、どうぞ」

なんか凄く適当な展開だけれど、本当に俺たちが関わっても良かったのだろうか。

今更場違いな気がしないでもないぞ。

俺たちはアーニャンと共に、順番に部屋へと入っていった。

「ご苦労様です!」

捜査を担当していると思われる男が、アーニャンに対して敬礼と挨拶をしていた。

それに対し、アーニャンは軽くお辞儀を返した。

「ご苦労さまー。後は引き継ぐから部屋の外で待っててね」

なんかやっぱりアーニャンって偉いんだろうな。

特別顧問って言っていたけれど、警察庁長官右腕の顧問とか、警視総監代理とか、それくらいの地位にあるように見える。

実質ナンバーワンかもしれない。

いくら日本がデンジャーを優遇しない国とは言え、能力で選べば自ずと上に立つ事になる訳で。

まあアーニャンが警察としてそこまで有能には見えないけれどね。

あくまで戦闘力か。

それとも、人を操作する系能力を持っているからか。

つかアーニャンなら簡単に犯行を暴露させられそうなんだけどな。

少なくともおっさんが犯人なら、捜査協力させれば終わり‥‥。

「とりあえず僕がもう一度ニコポンで聞いてみようかしら?」

ニコポンね。

お願いされたら狛里でも断りづらくなるあの能力か。

だけれど流石に犯行を暴露するくらいの事となると、能力の条件が厳しくて難しい気がする。

そんな風に思っていると、狛里がいきなりとんでもない事を言い出した。

「犯人は貴方なの!‥‥」

ドーン!

そんな文字が狛里の後ろに一瞬見えたぞ。

指差したのは容疑者十人の内の一人。

仕事ができそうに見える女性だった。

少し目を見開いて、何も言えないって表情をしている。

そりゃいきなり犯人扱いされても困るし驚くよね。

「私もそう思うわぁ~」

「えっ?天冉も?」

まだ何も聞いていないし証拠も掴めていないのに、天冉までもがこの人が犯人だと言う。

仮に本当に犯人だったとしても、言い当てた所で解決には繋がらないだろ。

「何よいきなり。私は犯人じゃないって言ってるわよね?アリバイもあるし納得してくれていたんじゃないのかしら?」

‥‥。

こいつ犯人だ。

俺、嘘はなんとなく分かってしまう。

「この人は?」

「殺された社長の秘書の方だよ」

流石は狛里と天冉。

名探偵かもしれない。

「狛里、天冉。どうしてこの人が犯人だって思ったんだ?」

何かしら理由があるだろう。

「勘なの‥‥」

「そうねぇ~。犯人だから犯人って言っただけよねぇ~」

それじゃ逮捕できないよ。

日本に限らず法治国家では『疑わしきは罰せず』なのだ。

犯人ではない可能性があれば、それはもう犯人としてはいけない。

冤罪を防ぐ為にもそれは大原則。

まあこの世界の中国なら、デンジャーの能力を優先するだろうから、これで犯人は確定されるのだろうけれど。

どちらが良いかは考え方次第だけれど、今回ばかりはこれで終わらないのが面倒だ。

「とりあえず一人ずつ、やったかどうかの質問をしていってくれ」

俺はアーニャンにそう頼んだ。

「分かったわ」

アーニャンは俺たちの前に出て、座っている容疑者十人に一人ずつ尋ねていった。

どれも嘘を言っている感じはないし、犯人とも思えない。

狛里と天冉も他は違うと首を振っている。

狛里の指差した女性秘書による、単独犯行が一番疑わしいと感じた。

「分かった。とりあえずこの女性以外の全ての人は帰していいよ」

後はどうやって証拠を得るか。

或いは自白させるか。

俺の能力を使えば、いくつも方法は考えられるけれど、記憶を覗き見たり洗脳したりはやりたくない。

まずは状況から確認していこう。

密室殺人事件としか聞いていないからな。

「アーニャン。もう一度詳しく状況を説明してくれ」

「分かったわ。まずこの事件は、密室となった部屋で社長が殺されたものよ。部屋には窓が二つと入口は一つ」

アーニャンが指を指して一つずつ確認するように説明する。

この社長室が殺人現場って事か。

「入口のドアは、外から鍵を掛けるには専用の鍵が必要で、鍵を持っているのは社長とこの女性秘書だけよ」

「めちゃめちゃ怪しいじゃん!」

「ただ秘書は鍵を部屋の中に忘れていて、外から閉める事はできない状況だったの。更に殺人事件があったとされる時間、別の場所にいたアリバイがあるし、この辺りの警備用カメラには一切映っていなかったわ」

なるほどねぇ。

「鍵をコピーした可能性は?」

「特別な鍵で作るのに色々と制約があるの。コピーキーの存在は除外していいわよ」

「ほうほう。アリバイというのは?」

「犯行が有ったとされる時間辺りに、自宅のPCからSNSに投稿した形跡がいくつかあるの。IPアドレスの確認は現在やってるけど、少なくとも持っている携帯から投稿された形跡は無いわね」

携帯からSNSに投稿ってのは、この世界じゃあまり考えられない。

スマホなら当たり前だったけれど、この世界ガラケーだからなぁ。

でもメール投稿って機能はあったよな。

何にしても形跡が無いなら、携帯からの投稿は無いとするしかない。

ただPCなら、予約投稿とか投稿マクロを組む事くらいはできるんじゃないだろうか。

PCを押収して調べれば分かるかもしれないけれど、時間がかかるな。

もう犯人は分かっているのだし、もっと簡単に決めてしまいたい所だ。

と、そうこうしている間に別の思考で魔法記憶を検索していたんだけれど、この女性、俺たちが四つ星グループ本社ビルに到着した時に視界に入っているじゃないか。

おそらくその時に乗ってきたタクシーのドライブレコーダーにも記録されている可能性はあるけれど‥‥。

「監視カメラやなんかには映ってなかったのか?」

「えっ?うん。この辺りの監視カメラ百台以上、その時間この辺りを通った自動車のドライブレコーダー、全てを検索したわ」

「俺たち実はその時間、この前の道をタクシーで通ったんだけれど、そのドライブレコーダーも?」

「詳しくは言えないけれど、そういったのをチェックできるデンジャーもいるのよね」

当然そういうデンジャーがいてもおかしくはないか。

だからこそ、この女性がこの辺りにいなかったと断言している。

でもそういう事ができるデンジャーがいるなら、その逆ができるデンジャーもきっといるはずだ。

この女性がそうなのか、仲間や協力者にそういうデンジャーがいるのかは分からないけれど、俺の魔法記憶まではどうにもならないよね。

俺は女性容疑者の前に移動した。

「何よ?早く帰らせてくれないかしら?アリバイもあるし、何より証拠も何もないんでしょ?」

「貴方の言っている事が全て本当なら帰してもいい。貴方は本当に犯行があったとされる十二時頃、自宅にいてこの辺りにはいなかったと断言できますか?」

「何度も言ってるじゃない。その通り、私は自宅にいたわ」

「それは嘘だな」

「何を証拠に?」

「だって、その時間に撮った映像に、貴方が映っていたんだよ」

「そんなはずは‥‥。あ、えっと、私はこの辺りにはいなかったんだし、AIか何かで作られた映像じゃないの?」

俺はそれっぽく見せる為に、透明化させたあの漫画のスカウターのようなものを具現化させた。

そしてそれを目の前で見えるようにする。

「俺は常にこれで見たもの全てを録画しているんだ。丁度昼頃、俺たちはこの辺りに来ていた。そこに貴方が映っているんだよ」

俺はそう行って、スカウターに映る映像を女性に見せた。

映像は記憶を映像化したものね。

「私の映像記録はできなくなっていたはずよ!」

「ん?映像記録ができなくなっていた?」

そういう能力を持ったデンジャーもいるんだな。

こんな犯罪にしか使えなさそうだけれど。

「やっぱり犯人なの‥‥」

「私は最初からそう言っていたわよぉ~」

はいはい凄い凄い。

「そ、そうよ。私は確かにこの近くに来ていたわ。そしてそれを隠してもいた。だけれどそれが証拠にはならないわよね。部屋は密室で、自殺以外には考えられないのだから」

開き直ったか。

確かにそれがその通りなら自殺以外に考えられない。

でも都合よく鍵を室内に忘れるなんて怪しすぎるにも程がある。

なんて思っていると、部屋が揺れるような爆発音がした。

いきなり狛里が天井に穴を開けたのだ。

「ちょっ!」

「天井に抜け穴があるの‥‥。密室じゃないの‥‥」

いや今お前が開けたんだろうがー!

「‥‥あ、貴方が今開けたわよね?」

「んー‥‥、バレたの‥‥」

バレバレだから。

つか捜査を余計ややこしくしてどうするんだ。

なんて思っていると、辺りに再び爆発音が響く。

今度は天冉が床に穴を開けた。

「床に穴があるわよぉ~。密室じゃなさそうねぇ~」

天冉ももう面倒になってきているな。

目の前に犯人がいて、それをとっ捕まえられないんだから仕方がないか。

「何を言ってるの?そ、そもそも犯行現場は隣の部屋よね?この部屋に抜け穴があったとしても関係ないじゃない!」

「ん?この社長室が殺人現場じゃないの?」

「僕はそんな事、一言も言ってないわよ」

‥‥。

「えっ?そうだったかしら?」

よく考えたら、殺人現場に容疑の固まっていない被疑者を待機させているって、普通は無いのかもしれない。

窓が二つ、入口が一つ。

構造が全く同じ部屋を見せる事で、アーニャンは俺たちを騙したのか。

そしてまんまと俺たちはこの部屋が犯行現場だと思い込んだ。

しかし犯人だけは知っている。

アーニャンの作戦か。

「勘違いしただけよ。全く同じ構造の部屋だし、さっきの説明で勘違いもあり得るわよね」

今更言い訳が酷いな。

いくら同じ構造の部屋でも置いてあるものは違うだろうし、何よりアーニャンはいかにもこの部屋だと云わんばかりの説明をしていた。

秘書ならそんな勘違いはしない。

だからといって否定し続けられると、逮捕までには時間がかかりそうだ。

密室の謎さえ解ければ、おそらく納得せざるを得ないんだけれどなぁ。

「この人がデンジャーで、密室を作り出せる能力者って事はないかしら?」

「十分にあるな」

「わ、私は大した事はできないわよ。デンジャーじゃないわ」

とはいえ、監視カメラの操作っぽい事も行われていたし、この人の能力を確認しておくくらいは必要かもしれない。

場合によっては仲間か、或いは手伝った者もいる訳で。

俺はアーニャンを真似てニコポンをした。

既にコピーさせてもらっているよ。

アーニャンの能力は女性用で、対象を男性に限定したものが多いけれど、どうやらこの念術は俺にも使えそうだ。

「密室殺人の謎が解ければ、犯行を認めるな?」

「何度も言うけれど私じゃないわよ。でもそうね。密室の方法が分かるのなら犯人になってあげてもいいわよ」

おおっ!

完全否定されるかと思っていたけれど、ニコポンで少しだけ妥協させる事ができたぞ。

地味な能力だけれど、ほんの少しが求められる場面でならコレは使えそうだ。

そして俺は、触れた相手の能力を盗む能力を持っている訳で。

それは即ち、相手がどんな能力を持っているのかが分かってしまうって事。

なるほど、扉の鍵を自由に開け閉めできるのか。

さっき言ってた録画操作みたいな能力はないから、別に協力者がいる事も確定。

「この女性秘書はデンジャーだ。能力は鍵の開け閉めを自由にできる能力」

「えっ?どうしてそれを?いや、そんな事は‥‥」

今更ながらに思うけれど、デンジャーの能力が犯罪に使われれば、完全犯罪なんていくらでもできてしまう。

それを止めたり暴いたりできるのは、きっとデンジャーだけなんだ。

「彼らも僕もデンジャーなのよ。そして彼には、デンジャーの能力を見破る力があるの。貴方が犯人である事は確定しているし、このまま認めなければ、もっと僕たちの力を使って証明するだけよ」

落ちたな。

女性は俯き、そして一度頷いた。

「それじゃ、後で共犯者や協力者についても話してもらうから」

アーニャンはそう言って、外で待っていた警察を呼び警察へと連行させた。

一応、役にはたったのだろうか。

アーニャンなら多分自分だけでも解決できた気がする。

「ありがとう。お陰ですんなり解決しそうだよ」

「俺たち必要だったか?」

「当然だよ。僕は男相手なら割と簡単に解決できるんだけど、女性が相手だと能力に限界があるのよね」

まあその辺りは知ってるけどさ。

「でもこの程度でギャラを貰うのも気が引けるな」

「それはちゃんと払うわよ。どうせ僕の金でもないし。あ、だけど天井と床の穴、それだけは直していってね」

見ると上下階に突き抜けてはいないけれど、盛大に開けられた穴がそこにはあった。

全くうちの嫁隊は‥‥。

俺は魔法でサクッと元に戻した。

「相変わらず何でもありよね、策也は」

「一応神だからな」

神と言っても別世界のだけれどね。

「また何かあったらお願いしていいわよね?」

「ああ。でもこういうのは場違いな感じがしたよ。やるならなるべく武力が必要なものにしてくれ」

あまり力を見せるのも嫌だけれど、こういう仕事は仕事をした気になれない。

狛里や天冉も退屈そうだしな。

「それはもちろんだけど‥‥。デンジャーが証拠隠しをするような事件こそ策也の力が欲しいのよね」

「どうしてもって時は、俺だけでやるよ」

「分かったわ」

そんな訳で、名探偵策也はほんの一時間ほどで終わった。

僕はもう疲れたよ、パトラ‥‥。

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