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依頼は終了?みたま参戦

既婚女性の事を『奥さん』と呼ぶと、それは差別だという人がいる。

俺は正直言葉の意味なんて大して意識はしていないけれど、それが差別だという意味がよくわからない。

『奥さん』と呼ぶ事に対しての批判は、三つの点で間違えていると思う。

一つは、関係は夫婦それぞれだろうけれど、古くから最も心地良い関係ってのはあるという事。

外では旦那が前に出て家族を引っ張り、家では妻が仕切って家族を守る関係って別に悪くはないのではないか。

二つ目は、言葉の元々の意味通りに『奥方』と使っている人はほぼいないという事。

『倭国』は中国が付けた日本の蔑称だけれど、古代日本を表す言葉として定着しているのと同じだと思う。

時は流れ、言葉にはもうそこにあった意味が残っていない訳だ。

そして最も重要なのは、『妻』だろうと『嫁』だろうと『奥さん』だろうと、ある意味どれも話の中で使うのには適していないという事。

今は子供を産まない夫婦もいるから必ずしもそうとは言えない所もあるけれど、やはり呼ぶなら、『お父ちゃん』『お母ちゃん』と呼ぶべきではないだろうか。

子供目線で語るのが、世界のあり方として最も正しいと思うから。

ぶっちゃけ言葉なんて常に同じ意味とも限らないし、使う側に悪意が無ければ正直なんだって良いと思うんだけれどね。

『うんこ』と呼ぶ?

どう考えても悪意があるだろw

というか外国人の名前で、偶に呼びづらいのない?

そっちの方が正直辛いから‥‥。

ちなみに俺の感覚だと、『妻』や『嫁』よりも『奥さん』の方が高貴に感じるけれどね。


『アグネスくんを捕まえるのに協力する』

そう決めた訳だけれど、俺たちはさて何をすればいいのだろうか。

死体の状況から、数時間前にこの町に来ていた可能性がある。

本人が来ていたかどうかは分からないけれど、少なくともこのやり方にはアグネスくんが関わっているだろうとの事だった。

「本人かどうかは分からないけれど、この辺りを探索してみようか?まだそんなに遠くへは行けないだろ?」

「そうでもないのよねぇ。この世界のカード、組み合わせると町から町に瞬時に移動も可能だからさ」

そうか。

昨日感じた犯人は北に向かったと思っていたけれど、瞬間移動で別の町に行ったのならこの町に来ていても納得できる。

「その瞬間移動に必要なカードってなんだ?」

「ハネウサギのカードは知ってるかしら?」

「ああ、結構沢山集めたぞ。百八十九枚持っている」

ハネウサギのカードは、行った事の無い一番近くの町に瞬間移動ができるカードだ。

恵美の特訓がてらに集めたんだよね。

「やっぱり貴方たちチートよねぇ。と言うか、そのカードって上限二百枚だったはずでしょ?どうやってそんなに集めたのよ!?」

もしかして難しい事だったのだろうか。

普通に大量に湧いてたんだけれど。

「コピーカードを集めたくてな。巨大岩の所にしばらくいたんだけれど、そこにハネウサギがいっぱいいたぞ?」

「なるほどねぇ。偶々湧きモンスターがハネウサギの移動にハマった訳ね」

「移動にハマった?」

「この世界のモンスターは、湧きモンスターと単体モンスターと群れモンスターに別れていてね。それぞれのモンスターはそれぞれの法則によって出現するのよ」

「巨大岩の前に出るのは湧きモンスターで、それが偶々ハネウサギのタイミングだった訳か」

この世界はゲームだからな。

ゲームの常識で考えないと。

「何にしてもそれだけハネウサギカードを独占していれば‥‥。向こうから奪いにやってくる可能性もありそうね。数枚ならレアなカードじゃないし、みんながよく使うカードだから、今頃慌てている人も多いと思うわよ」

これがよく使われるカードだとしたら、確かに誰かが独占すれば困る人も大勢いるだろう。

必ず使うカード、例えば『トビウサギカード』だって、独占されてみんな困っている訳だし。

企業の独占とは少し意味が違うかもしれないけれど、独占禁止法だってそもそもの考えはそこから来ている。

必ず必要とされる物を誰かが買い占めたら、当然そこには殺し合いの奪い合いが起こってしまう訳で。

そこまででは無いにしても、俺たちが独占しているカードを奪おうとする輩はおそらくいるだろうな。

「じゃあ待っていればいいのか?」

「んー‥‥。僕は引き続き情報を集めつつ追うわ。それで貴方たちは、誰が中心にカードを集めているの?」

「この子。恵美にナンバーカードは全て任せているけど?」

「そう。なら策也は私と一緒に付いてきてきてもらっていいかしら?狛里と天冉がいれば大丈夫でしょ?」

「それは難しいな。恵美は今修行中で、俺はそれを見なければいけないんだ」

「策也がいなくなるのは駄目なんだし」

「だったら‥‥」

アーニャンは狛里と天冉を交互に見た。

どうやら決めかねているようだな。

狛里と天冉、どちらを連れて行くのが良いのか。

アグネスくんがどれくらい強いのか知らないけれど、おそらくどちらでも問題はないと思う。

だけれどこの世界の能力は油断ならない。

それに‥‥。

「狛里、行ってくれるか?」

「うん、分かったの‥‥」

「狛里ならどんな奴が相手でもまず負けない」

「分かったわ。狛里ありがとう」

「どういたしましてなの‥‥」

狛里には悪いけれど、俺、今はみたまと一緒に冒険がしたいんだ。

この世界での仕事が終われば、もしかするとみたまは神となって天界へと行ってしまう。

いや、きっとそうなるんだよ。

「一寸神も付けるし、俺たちはそれぞれのいる場所へはすぐに行く事ができるだろ?そっちに何かがあればすぐに駆けつけるよ」

「そうだったわね。忘れていたわ」

そういう意味では、別々の行動は割と理に適っているか。

どちらが敵と遭遇しても、恵美以外はすぐにまとまれる訳だし。

「それじゃ、僕と狛里で郡を追うから、策也はカード集めをお願いできるかしら。そしたら近い内にどちらかが郡と遭遇する事になるわ」

「了解。尤も俺たちは端っからそのつもりだったけれどね」

協力すると言わなくても、いずれは自然と協力する事になったんだろうな。

そんな訳で俺たちは、アグネスくんを捕まえる為に二手に別れた。

「狛里が抜けると、私が子供で策也と天冉は若夫婦に見えるし」

「ちょっ!おまっ!」

いきなり何を言い出すんだこの子は。

天冉が奥さんだと?!

そんなに良いものじゃない。

鬼嫁じゃないか。

天冉を見ると、なんだかニコニコとしているように見えた。

いつもと同じ顔だけれどね。


さてしかし、思惑通り近い内に奴らと遭遇する事にはならなかった。

ただゲームを攻略する日々が続く。

気がつけば狛里たちと別れてから一ヶ月が過ぎ、その間俺たちは順調にカードを集めていた。

ただし、四十一番以下のナンバーカードは全て持ってはいるものの、それが何処で本来手に入れらるのか知らない為、同じものを集める事にもなってしまっていた。

「これも既に持っているカードだったな」

「サイコロで簡単に集めてしまっていたし」

「結局全部普通に揃えちゃうのかもねぇ~」

「まったくだ」

それでもナンバーカード以外のカードも揃っていく訳で、カードコンボなんかも見えてきていた。

ハネウサギカードとのコンボで、自由に町を移動していた方法も分かったよ。

リセットカードってのがあって、本来これは『一度クリアしたクエストをクリアしていない事にする』のがメイン効果だ。

これはカードを奪われた場合、もう一度カードを入手する為の手段として作られたものだろう。

しかしそれを使ってクエストをリセットすれば、行った町にすら行っていない事になる。

町に行く事自体がクエストのフラグになっているから。

尤もこのコンボを使う為には、まず先にほとんどの町に行っておく必要があるかもしれないけれどね。

俺が本気になれば大した時間もかからないだろうけれど、普通はどんなに早くても一ヶ月以上かかるのではないだろうか。

そしてこのリセットカードによって、欲しいカードを手に入れる為にはどの町に行く必要があるのかが分かる。

ほとんどのクエストは、町で情報を集める所から始まる事が多いからさ。

そうでないものもあるけれど、偶然見つけるクエストなんてものは見つかりやすくないとゲームにならないし、カードナンバーも大した事がない。

とはいえ俺たちは真面目に町を巡って来た訳で、普通に行っていない町に何かがあるのは分かりきっていた。

地図にも書いてあるしね。

「あと行ってない町は数えるほどしかなくなったし」

「残すは遠い町ばかりだからな。そろそろ一桁ナンバーのカードが手に入るだろう」

町だけじゃなく、この辺りなら道すがら何かがあるかもしれない。

険しい山道などもあり、通る道は限られているから。

そして結局ここまで出会う事がなかったバンスルーやアグネスくんにも、出会う確率は高まると思われる。

まあでも、今となってはアーニャンの為と言うよりも、恵美の為に出会いたい気分だ。

流石にこの世界で一ヶ月サバイバル生活をしてきたら、それなりに強くなっているんだよね。

カードを奪いにやってくるプレイヤーは沢山いたけれど、それらにもなんだかんだ対処できている。

元々センスはあるし、本当に勇者かずみって感じが板についてきたかもしれない。

原作は知らんけどw


そんな訳で南に向かい谷間の道をしばらく進むと、道を遮るように大きな建物が立っていた。

ここで少し豆知識。

既にある建物の場合、『立っている』が正しい漢字だけれど、『建っている』が現在は主流になりつつあるらしいね。

で、防壁に遮られた要塞のような関所砦か。

ここを通らないと、更に南に進むには、危険な崖を越えるか回り道をしなければならない。

或いはハネウサギのカードを使う手もあるけれどね。

しかし当然そんな事はしない。

おそらくここでカードを手に入れられるはずだから

そう思った時、突然俺に通信が入った。

「みんな、ちょっと待ってくれ。ゲリゲロから通信が入った」

俺はそう言って足を止めた。

『ゲリゲロだ。すまないが残念な知らせがある』

そしていきなりそう伝えてきた。

『残念な知らせ?』

『ああ。この仕事、ここまでとなった』

なんですとー?

『一体どういう事ですか?』

おいおい、ここまでやらせておいてそれはないだろう。

原作にそんな話あったかな。

もう忘れているからなんとも言えないけれど。

『説明はさせてもらう。そして違約金も契約通りに支払う』

ゲリゲロはそう言ってから、一通りの説明をしてくれた。

簡単に言うと、そもそもこの仕事の依頼理由は、植物人間となった婚約者を助ける為だったとか。

このゲームのクリア報酬は、好きなカードを現実世界に持ち帰れる事。

つまり『治癒の神風』を持ち帰りたかった訳だね。

しかしその前に婚約者は死んでしまった。

だからもう必要がなくなったらしい。

原作にそのような話があったのかは思い出せないけれど、なるほどねぇ。

どっちにしても仕事はここまでで仕方がないな。

違約金は報酬の六割程度は出るらしいし、契約だから納得せざるを得ない。

それにしても、それなら最初から言ってくれれば、俺は‥‥。

あまりにとんでもない事をすると目立ってしまうよな。

だけれど俺は治癒を得意とするデンジャーとして売り出し中。

上手くいかないもんだ。

『分かりました』

『それでなんだが、現在集めているカードの枚数などによって違約金は決定される。一度最初の町に戻ってきてもらいたいのだが』

おいおいこれから砦攻略だったのに。

まあ仕方ないか。

金はしっかりといただかないと、一ヶ月が無駄になってしまう。

『結構遠くにいるので十時間後くらいには』

『トビウサギのカードを独占しているのはお前たちじゃなかったか?』

『残念ながら、まだ行った事の無い町もありまして、そっちの方が現在近いんですよ』

『そうか。では十時間後に最初の町の広場で待ち合わせだ』

『了解しました』

これでこのゲームも終わりか。

中途半端でやめるのも‥‥。

アレ?そういえばアーニャンの仕事を手伝っているんだったよ。

せっかくだからクリアするか。

俺はなんとなくそうしようと思った。


一度最初の町へと戻り、ゲリゲロに所持カードを見せたら、割と違約金は多く貰えそうだと分かった。

ナンバー壱のドラゴンカードを持っていた事が大きい。

これ、未だに誰も手に入れていないみたいなんだよね。

そんな訳で俺は、ウキウキ気分で再び砦のような関所のような所へと戻ってきた。

そして門番らしき者に話しかける。

「ここを通りたいのだけれど」

「通行には条件があります。お聞きになりますか?」

そりゃ当然聞くだろ?

よくよく考えたら、ゲームって不自然な所が多いよね。

「ああ、よろしく」

「分かりました。この門から入って向こう側から抜けるには、競技に参加できる人を合計十五人集める必要があります。そして入った所にある競技場にてスポーツ対決をしていただきます。それに勝てれば、全員の通行許可証を発行させていただきます」

これに似た展開は、確か原作にもあったような気がするな。

ほとんど覚えていないけれど。

「分かった。ありがとう。では人数を集めてからまた来るよ」

「はい。お待ちしております」

という事で、俺たちは一旦そこから離れた。

「という訳だ」

「十五人も集めるなんて面倒ねぇ~」

「正直この世界に友達なんていないし。ゲリゲロに会う前にこれを知っていたら、もしかしたら誘えたかもしれないし」

そうなんだよなぁ。

タイミングが悪いというかなんというか。

でも‥‥。

「でもおそらく、これってプレイヤーじゃなくてもいけたはずなんだよね。パーティーメンバーを集める訳じゃないからさ。つまり‥‥」

俺はそう言って妖凛や冥凛と分裂した。

「この子たちでも大丈夫なのねぇ~」

「おそらくな。そして‥‥」

俺は分身を六人召喚した。

一人は一寸神として狛里に付けているから合計七人だ。

「おお!これはなんだし?」

「俺の分身だ。一寸神はそもそも俺の分身を小さくしたもので、こっちがオリジナルなんだよ」

一寸神は隠密行動というか、忍ばせておくのがメインだから小さくしているだけで、本来はあくまでも顔の違う俺の分身。

それを小さくして七変化効果でパワーアップさせてある。

「これで狛里ちんと楊ちんを呼べば、合計十四人ねぇ~」

「でもまだ一人足りないのか」

ならば久しぶりにエアゴーレムでも作るか。

魔王に体を乗っ取られてから徐々に使うのは控えていて、最近は使っていなかったけれど‥‥。

俺はそんな事を考えながらエアゴーレムを作ろうとした。

すると天冉がそれを止めてきた。

「ちょっとまってぇ~。みたまちんがやるってさぁ~」

おいマジかよ。

そう思っている間に、みたまが姿を現した。

前よりも少し大きくなっているかな。

「よう!」

「せっかくだから、私も自分でちょっとは楽しみたいと思っていたのよ」

「うん。いいんじゃないか」

異世界でみたまに会うってのも、なんだか不思議な気分だよ。

つか実体化できるなら、ずっとそうしてても良くないか?

まあ何か問題があるんだろうけれどね。

「誰だし?」

「こんにちは。私はこの策也の娘、みたまよ。よろしくね」

「おお!娘だし!よろしくだし!」

恵美は相変わらず素直に受け入れるのね。

この大きさだと、本当にみたまがこのくらいの年齢だった頃を思い出す。

見た目は恵美や冥凛と同じくらいの年に見えるな。

年相応はみたまだけなんだけれどね。

いや、中身は違うけれど。

しかしお子様大集合みたいになってしまった。

これで本当にスポーツ対戦に挑むとか、端から見れば信じられないだろう。

とにかく狛里たちも呼び寄せよう。

俺はすぐに狛里たちも呼び寄せた。

「面白そうなの‥‥」

「今は特に手がかりも切れてるのよね。カードを集めて向こうから来るのを待つ方が良さ気かしら」

正直アーニャンたちの方はあまり情報が得られていないようだった。

向こうも追われている事をなんとなく察知しているのだろう。

足取りを残さなくなっているとか。

とはいえクリアを目指しているのなら、いずれはぶつかる事になるはずだ。

雑魚プレイヤーをよこして、既に何度も奪いには来ているしね。

俺たちはドラゴンカードを持っているから。

「とにかくみんな頼むぞ」

「おー!」

こうして俺たちは十五人となって、スポーツ対戦クエストに挑むのだった。

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