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デンジャー試験開始

俺たちは、エルドラールへと来ていた。


みたまの話によればこの世界は、生前の世界と、あのハンターの子供が大活躍する漫画の世界を合わせたような感じらしい。

だからファンタジー世界というよりは、俺たちの感覚では現実世界に近いみたいだ。

ただし魔力や魔法は存在する。

概ね超常的現象に必要なエネルギーは魔力であるけれど、魔法というよりは能力と言った感じのものが一般的とか。

つまり『妖精』とか『精霊』、或いは『神』や『暗黒神』と言ったような概念は共通認識にはない。

とは言え全く無い訳でもなく、そこは個人による所で決まるようだった。

使うエネルギーも魔力ではなく念力に比重が置かれ、一定の能力レベル以上の者だけが魔力を使えるといった感じのようだ。

世界地図は概ね地球に近い。

ただ、みたまが生前の地理を全て知っていた訳もなく、誤差にとどまらないくらい色々と違っている。

国の名前だって探せば間違いも出てくるだろう。

だから全ては参考程度とし、この世界でこれから調べていく必要がありそうだ。

さて俺たちは現在、森の中にいた。

それは転移、或いは転生した先が森の中だったという事。

到着してまずは、瞬間移動とか異次元収納などの主要魔法と、闇の家とバグ世界へ行けるかどうかの確認をした。

闇の家とバグ世界に関しては、どちらも問題なく行く事が確認できた。

これは大いに助かる。

尤もこれは、既に俺の能力として昇華しているようで、実は使えない事の方が少ないとは思っていたけれどね。

あと異次元収納魔法は問題なく使えるようだったけれど、瞬間移動魔法に関してはやはり制限があるようだった。

全てを確認する事はできないけれど、とりあえずこの場でできたのは、セーブポイントへの瞬間移動と、五百メートルくらいの短い距離でのテレポテーション。

超短距離を瞬時に移動する時空飛びと、時空移動も妖精界へは入れるようだった。

長い距離での瞬間移動魔法は、とりあえず数キロ離れた位置まで行って試してみたけれど、どうやらこの世界でも使えなかった。

つまりこの魔法はアルカディア特有か、思ったよりもレアな部類に入るのかもしれない。

で、次は‥‥。

「俺たちはとりあえず何をすればいいのだろうか?」

「みたまちんの話だとぉ~、まずは世界の住民権を手に入れないとぉ~、何をするにも不便らしいわぁ~」

「で、それはどうやって手に入れる?」

転生してきた俺たちには、おそらく国籍もなければ身分を証明するものもない。

だから今いる国から出る事すら合法的には不可能なのだろう。

単純に出るだけなら、飛ぶなり走るなりで可能ではあるけれど、この世界の事をちゃんと理解する前に目立つ行動は避けたい。

「国籍を手に入れる事は難しそうねぇ~。それで可能性があるのわぁ~、ハン、じゃなくてデンジャー試験に合格してぇ~、プロのデンジャーになってデンジャー証を手に入れるのが最も良さそうよぉ~」

おい今、ハンターと言いそうになっていなかったか?

「プロのデンジャーなの?‥‥」

「そうよぉ~。この世界でわぁ~、特殊な能力を高いレベルで使いこなせる人達を『デンジャー』と言うらしいわぁ~」

「それでデンジャー協会に所属している者たちがプロのデンジャーって訳だ」

「その通りよぉ~」

まんまパクリじゃねぇかよ。

その方が分かりやすいから、俺としては良かったんだけれど、著作権違反にはならないだろうな。

「その試験は何時何処であるの?‥‥」

それすらも見つけるのが、プロのデンジャー試験の一環です。

「‥‥」

「そういう事よぉ~」

みたまのヤツ、あまりのパクリに恥ずかしくなったようだな。

まあでも大体分かった。

デンジャー証があれば、国籍関係なく何処の国でも入れるし、どんな国でもだいたい市民権を得られる。

とにかく試験会場を見つければいいだけだ。

ならば俺たちには余裕のよっちゃん。

アレだけ急がされてエルドラールへやってきたんだ。

おそらくこの時にここに来るのが一番良いって判断だろうし。

それよりも気になるのは、この世界の神の事。

どんな悪さをして討たれる事になっているのか。

やっぱりその辺り、モチベーションにも関わるから聞いておきたいよね。

「それでみたま、じゃなくて天冉。この世界の神はどんな悪さをしているんだ?討たれるのには理由があるんだろ?」

「別に悪い事はしていないようよぉ~」

「えっ?だったらなんで俺はこの世界に送られたんだ?」

「どうやらぁ~、これから悪い事をするみたいなのぉ~」

‥‥。

「だったら、悪い事をする前に止めれば良くね?」

「まだ生まれてもいないからぁ~、止められないんだってぇ~」

‥‥。

「なんで生まれたら悪い事をするって決まってんだ?」

「そういう設定よぉ~」

‥‥。

「で、何時生まれるんだ?」

「分からないわぁ~。明日生まれるかもしれないしぃ~、五十年後かもしれないしぃ~。百年以内には生まれるらしいけれどぉ~」

‥‥。

なるほどな。

こんな事を俺が出発前に知っていたら、絶対に『生まれてからでいいじゃねぇか!』って言ったはずだ。

だからちゃんと説明してくれなかったのね。

それでもこの時を選んだのは、俺をこの世界に早く来させる必要があったからのだろうか。

天冉の顔を見ると、気持ち悪いくらいにニコニコしていた。

ん~‥‥。

みたまがそうしたいと思ったから?

なんとなくそんな風に感じた。

まっ、いっか。

みたまと一緒に何かをするなんて、生前も含めて正直今までほとんどなかったし。

少なくともそんな記憶はない。

親子水入らず、って訳にはいかないけれど、娘を連れて冒険の旅も悪くないか。

果たしてこの世界で期待通りの何かができるかどうかは分からないけれど、せっかくだから楽しまないとな。

俺は笑顔を天冉に返した。

「よし、『最高の選択』と『当意即妙』でハンター、じゃなかった、デンジャー試験会場まで行くぞ」

最高の選択とは、今行うべき行動を告げる魔法で、当意即妙は最高の行動をする魔法。

この二つを使えば、俺たちはきっとデンジャー試験会場に行ける。

正直あまり使いたくはない能力だけれど、偶にはいいよね。

あまり能力に頼って判断を任せると、いずれ行き詰まって取り返しのつかない事になるんだ。

四十八願(よいなら)は、国を守る事はできたけれど目的をなし得なかった。

あんな事にはならないようにしないと。

俺たちは森の中を走り出した。


程なくして、デンジャー試験会場には到着した。

割と近い所にあったな。

ご都合主義もここまでくるとやり過ぎだろう。

そう思ったけれど、みたまの作った世界なのだからと納得はできた。

会場には、割と多くの人が集まっている。

半分以上はおっさんだけれど、若い人も多く女性もいた。

ここに集まっているのだから、みんな何かしらの達人に違いない。

そんな雰囲気は感じられた。

「おいおい、こんな所にちっちゃい女の子が迷い混んでるぜ」

「ほんとだ。お嬢ちゃん、迷子でちゅかー?」

「ブッー!」

思わず吹いちまったじゃねぇか。

ガタイの大きなおっさんが話しかけているのは、狛里だった。

おいやめろ!

お前たちいきなり死にたいのか?!

冒険者ギルドの定番イベントじゃないんだから、そういうのはやめてよね。

「別に迷ってないの‥‥。プロのデンジャーになりに来たの‥‥」

「ははは!こんな女の子がデンジャーになれるわけがないだろ!」

「冗談はよしこちゃん。飴ちゃん上げるからさっさと帰りな」

あまり狛里をバカにして怒らせるなよ。

下手したらお前の命どころか、この世界が吹き飛んでもおかしくないんだからな。

俺はドキドキしながら、どうしようかと様子を見ていた。

天冉も、他人のフリってほどではないけれど、我感せずといった感じ。

おまえ、完全に何かが起こるのを期待しているだろ。

するとそこへ、一人の子供が近づいてきた。

「ブッー!」

俺はまた吹いてしまった。

「おじさん、子供だからって侮らない方がいいと思うよ。多分だけど、その子おじさんよりも強いから」

そう言うのは、まさにあの漫画の主人公のような少年だった。

俺が天冉を見ると、少し小さくなっているような気がする。

みたまも流石に自覚しているようだな。

パクリすぎだよ。

でもまあ、分かりやすいから良いけどさ。

多分あの少年は、この先メチャメチャ強くなる。

とは言え、神候補なのかと言えば違う気もするな。

まだ神は生まれてもいないし、いきなり神候補と出会うとも思えないしさ。

神は生まれていないけれど、産まれていないって意味じゃないよ。

まだ神として覚醒していないだけっていうか、悪い本当の神様ではないっていうか、存在自体はもうこの世界にはあるはずなのだ。

とにかく今の状況では、俺が神候補に出会うのは必然ではないって話。

「なんだてめぇ?お前のようなガキの来る場所じゃねぇんだよ!」

「そうなの?デンジャーとしての力があれば、誰でもデンジャーになれるって聞いたんだけどな」

「てめぇにその力があるってのか?これだけのメンバーが集まっても、毎年十人も合格しねぇんだ。だから子供には無理だって言ってんだよ」

試験は年に一度か。

だから俺は慌てて仕事にくる必要があった。

この試験を受けて合格しないと、この世界では自由に活動できない。

「それ、俺が合格できない理由にはならないよね」

流石はゴ‥‥、主人公っぽい少年だ。

その通りだよ。

「てめぇ!ここでぶちのめして無理だって事を教えてやるよ!」

「しょうがないなぁ」

主人公っぽい少年とおっさん二人は戦闘態勢に入った。

あーあ。

あのおっさん達、恥かくぞ。

「ちょっと待ってほしいの‥‥。私の為に争わないでほしいの‥‥」

‥‥。

いや別に、狛里の為に争っている訳じゃないぞ。

そういう言い方すると、モテない男が幼女を取り合っているみたいじゃないか。

「ああ?てめぇも一緒にいてまうぞ!」

なんでこんなおっさんがここまで来られたのかなぁ。

相応しくないモブキャラがいるのってアルアルだよね。

偶々ここまで運が良かったって事なんだろうけど。

「おじさん!おじさんの相手は俺だよ!」

そういって主人公っぽい少年は、おっさんに向かってゆく。

するともう一人のモブおっさんが、横から少年に殴りかかっていった。

「俺もいるんだぜ!」

全く。

こりゃヤバいな。

「二対一は卑怯なの‥‥」

そう言って狛里は、殴りかかっていった方のおっさんをぶん殴っていた。

死んでないだろうな。

「ありがとう!」

少年はそう言いながら、正面のおっさんの腹に蹴りを入れた。

「うごっ!」

まあまあ重そうな蹴りだ。

でもまだこの時のゴ‥‥、主人公っぽい少年は普通の人だ。

魔力の使える世界だし、それが隠されてはいないから、既に能力者としての強さも感じる。

だけれど、今の俺たちから見れば、せいぜい中級冒険者と言った所だった。

それにしても、狛里は力のコントロールが上手くなったなぁ。

殴られたおっさん、死んでないし。

感情さえ抑えられれば、これくらい軽い戦いだとちゃんと思い通りに調整できている。

おいちゃん感動で目頭が熱くなるよ。

「くそ、てめぇ‥‥」

「‥‥」

主人公っぽい少年に殴られたおっさんは腹を抑えながら苦しそうだ。

そして狛里に殴られた方は、完全に気絶して倒れている。

もうコレ以上はおっさんも戦えないだろう。

そう思った時、一人の男がみんなの前に現れた。

この人は‥‥、試験官だな。

俺はひと目で分かってしまった。

強そうだから?

違う違う。

みたま、パクリすぎだよ。

「皆様おまたせしました。デンジャー試験にようこそ。私が皆様の第一次試験を担当する、一つ星デンジャーの三凸(さんとつ)と申します」

名前も際どい!

でも三凸なら、三つ星デンジャーくらいまでは行けそうだな。

「何やら騒いでいたようですが‥‥。受験者同士の争いはご法度です。今後試験以外の所で暴力をふるった人は、即失格とさせていただきますからご注意ください」

試験以外の所で暴力は禁止か。

それってつまり、試験中は暴力もアリって事なのだろうか。

いや、暴力が必要な試験もあるって所だろうね。

「では第一次試験の説明をさせて‥‥、おっと!」

「ん?」

三凸が試験の説明をしようとした時、誰かが何かのウンコを投げつけていた。

「ゴメンゴメン。手が滑っちゃったよ」

いや流石に手が滑ってウンコは投げないだろ。

つかこのピエロのようなヤツは‥‥。

「今後、試験官への攻撃も即失格としますからご注意ください」

「手が滑っただけなんだけどね。分かったよ」

あの漫画の人とはかなりビジュアルが違うけれど、おそらくあの人はかなりヤバい人なんだろうなぁ。

って狛里が何故かそのピエロと関わろうとしてるー!

「手が滑って落としたの‥‥。拾ってきてあげたの‥‥」

流石に素手では持っていないけれど、スカーフで包むようにウンコを持ってピエロに渡そうとしていた。

冗談にしては笑えないよ狛里。

本気でそんな行動をしているとは思えないけれど、狛里だからなぁ。

俺は素早くウンコを取り上げ、地面に置く。

「ここに置いておきますから」

俺はそう言って狛里を抱え、その場から退散した。

あのピエロはヤバいんだよ。

おそらくこの世界では十本の指に入るくらいに強いはずだ。

それでも俺達の敵にはなり得ないんだけれど、下手に関わりたくない。

「どうしたの?‥‥策也ちゃん‥‥」

「狛里、この試験で出会う人とはなるべく関わらないで行こう」

「どうしてなの?‥‥。あの人手が滑って困っていたの‥‥」

困っていたのは俺だよ。

狛里には全く困ったもんだ。

尤も、何も知らなければ俺もこんな対応はしないのだろうな。

ただやはりあの漫画を読んでいたから、どうしても警戒してしまう訳で。

「どうもありがとうお嬢ちゃん」

まだ向こうから喋りかけて来るよ。

って、ウンコを持ってニッコリ笑うピエロ、マジでこえぇ!

「どういたしましてなの‥‥」

もう良いよ。

どうにでもなれだ。

つか流石の狛里でもボケすぎだろコレ。

ちゃんとキャラは守ってくれよ。

何にしても、ピエロはこれ以上こちらに関わってくる様子はなかった。

良かった良かった。

「第一次試験は、とにかく私についてくる事です。これから私は、ある目的地まで移動します。とにかくついて来てください。私が目的地についた十分後までに目的地に到着していた人を合格とします」

もう知ってたよ。

「質問いいー?」

声を上げたのは、先ほど狛里の助けに入った主人公っぽい少年だった。

「はい、なんでしょうか?」

「乗り物とか、何か道具は使ってもいいの?」

「そうですね。可能なら構いませんよ」

「了解でーす!」

道具は何を使ってもオッケーか。

だからと言って、自動車を持ってきているヤツなんていないし、道具でどうこうなるような試験じゃないだろう。

「ボクもいいかな?」

「どうぞ」

今度はあのピエロか。

「試験中なら人を攻撃しても構わないよね?」

「‥‥。そうですね。この試験は命がけのものだという事は、みんな知っていると思います」

知らねぇよ。

「だけど、私が見ている所での攻撃は無しとします。つまり私に攻撃している所を見られたら失格とします」

面白いかもな。

死にたくなければ、常にこの三凸の目の届く所にいればいい。

逆に戦闘を好むなら、隠れて見つからないようにやる。

「他に質問はありませんね。後は自分たちで考えて行動してください。それでは、試験を開始します」

そう言って三凸は、ゆっくりと歩き出した。

おそらく徐々に歩くスピードは上がり、最終的にはめちゃくちゃ速く走る事になるのだろう。

余裕だけど、ちょっと面倒だなぁ。

「面倒な試験ねぇ~。私達はバグ世界に行ってるからぁ~」

「寝てるから着いたら起こしてほしいの‥‥」

「‥‥」

みたまはお父さんと一緒に冒険を楽しみたいんじゃなかったのか?

つかお前の大好きな漫画のパクリ世界なんだぞ。

デンジャー試験を楽しみたいと思わないのか?

‥‥走るだけだしな。

狛里と天冉は、人目がない所に移動すると、直ぐにその場から姿を消した。

全く、しょうがない。

俺はみたまの作った世界がどんなパクリなのか、楽しませてもらうとするか。

実はあの漫画、俺も大好きだったんだよね。

それがどうアレンジして組み込まれているのか。

俄然興味はある。

俺はデンジャー受験者の中に入って、みんなを観察しながら走った。


三凸の歩くスピードは徐々に速くなり、今はマラソンランナーが走るスピードくらいにまで速度を上げていた。

普通の人ならもうついてはこられない。

魔力で体を強化できたり、マラソンランナーとしてトレーニングをしている人のみがついて行ける。

いや、マラソンランナーでも、この荒れた地面の上を走ってついていくのは無理だろう。

今も三凸が見える位置にいるのは、百人そこそこか。

確か最初は千人以上いたはずだ。

三凸が見えない位置にいても、おそらく最終的にはもっと人が集まるだろう。

戦闘好きがそれだけいるって事だろうね。

あのピエロもここにはいないし。

しかし、パクリキャラと思われる人が何人もいる。

名前とか一々覚えていないけれど、主人公の少年の相棒は、既に一緒に走っているな。

俺は範囲を広げて気配を探る。

うわぁ~‥‥、思った以上に死んでる人が多そうだぞ。

この辺り、おそらく魔物が沢山いるのだろう。

人が入っていい場所じゃない。

デンジャーだけが入れるエリアになってるんじゃないだろうか。

ファンタジー世界で言えば冒険者。

でもこの程度で殺られるのか。

思ったよりも上下の差は激しいのかもしれない。

おっ!また三凸は速度を上げたか。

俺は楽勝どころか、寝ていてもついて行けるレベルだけれど、思った以上に脱落していく者が多い。

この世界、日頃の魔力で強さを判断できないんだよね。

誰を見ても基本は普通の人。

戦闘時など魔力を高めるまで強さが見えない。

みんな雰囲気は持っていたのに、実はここまで弱いのか。

となると、神を倒す神候補を見つけるのは難しそうだ。

ならばピエロに倒してもらえばどうだろうか。

あいつ、強いヤツと戦うのを生きがいにしているキャラだし、上手く乗せれば神にだって挑んでくれるはずだ。

おっ?!戻ってきているか?

「もうあんな事しちゃ駄目だよ」

「わ、分かったよ‥‥」

‥‥。

主人公の少年に、ボコボコにされたであろうピエロ‥‥。

弱すぎるやろ!

逆に、あの少年が強すぎるのか?

みたまはもしかしたらゴ‥‥、主人公の少年が好きだったのかもしれん。

まだ神候補を決めるのは時期尚早だけれど、主人公の少年は一応候補リストに入れておこう。


さてもう五時間近くは走っただろうか。

俺の記憶が正しければ、広大なエリアではあるけれど、その中をグルグルと移動している。

だけれど一箇所だけ、ポッカリと行っていない場所があるんだよな。

おそらくそこがゴール地点だろう。

ついてきているのは百人もいないと思うけれど、先回りしている可能性があるな。

「はい、みなさん着きましたよ。ココがゴールです!」

おいおい、ここはスタート地点じゃねぇか。

当然走ってついてこられた者以外には誰もいない。

騙されたか?

それに、ついてきた者たちも半分以上はヘトヘトのご様子。

やはりこの世界には、大して強い者はいないのかもしれない。

尤も、この世界には八十億の人が住んでいるのだから、ちゃんと探せば沢山いるんだろうけどさ。

『狛里、天冉、戻ってきていいぞ。スタート地点がゴールみたいだ』

『やっぱりねぇ~』

『寝てて正解だったの‥‥』

もしかして、天冉は最初から知っていたのだろうか。

みたまが創造した世界だからな。

でも未来で起こる事象までは分からないはずなんだよね。

神が悪い神として現れる時も分からないんだからさ‥‥。

あまり深くは考えない事にしよう。

いつの間にか横には狛里と天冉が立っていた。

「結局ずっと走っていたのぉ~?」

「まあな。一応将来の神候補になりそうな人を探してはいたけれど‥‥。正直コレだけじゃなんとも言えないな」

というか今から探しても無駄になりそうだし。

三凸はしばらく受験者が来るのを待っていた。

しかしその後現れたのは、帰ろうとして戻ってきた受験者三人だけだった。

合計八十八名か。

思った以上に不作だ。

あの漫画だと、この年は豊作だったはず。

当然、漫画の世界に来た訳じゃないから、違って当たり前なんだけどね。

とりあえずこうして俺たちは、デンジャーになる為の第一次試験に合格したのだった。

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