ラッキーダイス
より良い大学に行くメリットは、別に良い会社に就職できるからだけじゃない。
良い大学を目指すのは、能力のある者と出会うが為だ。
人生で出会う友人は、結局自分の能力の高さに近い者が多い。
そして勝ち組になる為には、いかに能力の高い仲間と出会えるかにかかっている。
それは人生を幸せに送る為には大切な事。
だから人はがむしゃらに自分を高める。
俺が狛里や天冉、或いは恵美と出会って行動を共にしているのは、皆が高いレベルにあるからだ。
アメリカ大統領と繋がりができたのも、俺の能力が高いが為。
但し能力とは勉強だけではないよ。
名ばかり賢者の俺を見ていれば分かるよね。
朝から北東へ向けて走り出していた。
目的地は兎山の麓。
ここでトビウサギカードを手に入れる。
何時空きが出るのかは分からないけれど、とにかく一枚手に入れる必要があるのだ。
到着予定は夕方。
途中一度だけ町で休憩し、できればクエストもやっておきたい。
「なんだか走るのもなれてきたし。初日ほど疲れないし」
普通は筋肉痛で死にそうになるのかもしれないけれど、流石は若さか。
いや、カード魔術にも慣れてきて、魔力を使うのも上手くなっている。
俺も魔法発動の時、マナから魔力を集める研究をしているのだけれど、これが滅法チートなのだ。
上手く魔力を集められるようになってきている恵美は、この世界の常識を逸脱した強さを手に入れつつあった。
まあ一言で言うと『レベル不相応な強さ』を持ちつつある訳だね。
これがこのグレートアイランドだけに留まるのかは分からないけれど、おそらく現実世界に戻っても同じだろう。
一度戻って試したい気持ちもあるし、とにかく今はトビウサギカードを手に入れないとな。
いやマジでグレートアイランドをプレイしたのは正解だったわ。
俺は目一杯ゲームを別の意味で楽しんでいた。
予定していた町に近づくと、どうやらプレイヤーが一人いるみたいで警戒を高める。
「この町にはプレイヤーが一人滞在しているな。クエストのある町でもあるし、今まで会わなかった方が不思議か」
「あまり気にする必要は無いし」
「何かしてきたらぶっ飛ばせばいいの‥‥」
相変わらずこの二人は警戒心まるで無しか。
「町にいるプレイヤーは割と上位に感じる。今一度、プレイヤーに遭遇した時の行動を確認しておくぞ!」
俺たちは町の外で一旦足を止め確認をした。
「まずプレイヤーに出会って何もしてこなければ、こちらも特に何かする必要はない。しかしカードファイルを出してくるヤツがいたら、それは敵意の表れと受け取っていいだろう」
カードによるバトルは、ファイルを出しておかないとできないからね。
例えばトラップカードも、ファイルを出していないと効果を発揮しないものが多い。
だから相手がファイルを出したら、こちらもファイルを出すのは基本だ。
「そしてカードでこちらを攻撃してくる場合は、こちらもカードで反撃し対処する。しかし物理的攻撃や魔法を使ってくる者がいたら、こちらも遠慮せず対応する事にしよう」
「分かったし」
「頑張るの‥‥」
そうは言っても、普通のデンジャーは能力も使ってくるんだろうけれどね。
「よし!じゃあ町に入るか」
そう言った所で、町にいた一人のプレイヤーの気配が消えていた。
おそらく町の逆側から出て行ったのだろう。
とりあえず一安心だな。
そう思って俺は町へと入っていった。
町に入ると、まずはカードショップを探す。
これはいつものルーティーンだ。
カードショップを見つけると、とりあえず中に入ってどんなカードがあるのかを確認する。
カードを知らないと対応すらできないからね。
「凄いカード売ってるし!ナンバー四のカードだし!」
ほう、マジか。
どれどれ‥‥。
『治癒の神風』ねぇ。
効果は、死んでいない限りどんな体の状態からでも完治させられる。
俺たちにとっては大した事が無い効果。
だけれど、この世界じゃ割と凄いカードなんだろう。
グレートアイランドのクリア報酬が、好きなカードを一枚持ち帰れるとするならば、これを選ぶ者もいるに違いない。
「それにしても高いわねぇ~。私たちのお金を全部集めても買えそうにないわぁ~」
確かに。
桁を二つくらい間違えているんじゃないかと思うくらい。
だけれど、どんな怪我も病気も治せるのだとしたら、全財産をかけても欲しい人はいるだろう。
「現存数は六なの‥‥。これ以上は増やせないの‥‥」
「つまりこれを買っておかないと、手に入れるチャンスはなかなかないかもしれないし」
ふむ。
そうは言っても金が無ければ買えないし。
おそらくだけれど、そのうちゴルゴたちが使う事になるんじゃないだろうか。
「金が無いからこれは諦めよう。六枚もあるなら、一枚はゲリゲロが持ってる可能性も高いよ」
組織で数ヶ月前からカード集めしてるだろうからなぁ。
「でも欲しいし。これがあると安心だし」
「いや、これくらいの魔法なら俺が使えるから」
「‥‥。そうだったし」
恵美は俺の力に驚く事はあまりない。
だけれど常識が邪魔をして、時々忘れるようだな。
まあでも俺たちの力が常識外だと自覚しなければならないのは、俺たちの方なのかもしれない。
色々な意味で気をつけなければならないと思った。
カードショップ内を一通り確認して、必要なカードを購入してから、俺たちはクエストのある場所を探して町の中をウロウロしていた。
すると徐々に人気のない所へと移動する。
それに伴い、何か嫌な臭いが漂ってきていた。
これは血の臭いか。
それに誘われるように、俺たちは墓地のような所に出た。
そこには三人の死体が転がっていた。
血は飛び散り、顔以外は体の原型をとどめていないものばかり。
「死体だし!」
「魂は既に無いの‥‥」
「そうみたいねぇ~。死んでから既に三十分以上は経過しているわぁ~」
天冉の言う通りだけれど、まだ死んでからそれほど経ってはいない。
おそらく俺たちが町に入るくらいに死んだと思われる。
そういえば町に入る前、一人だけプレイヤーの気配を感じていた。
アイツが殺ったのか?
そしてこの死に方。
体が爆発したような。
もしかしてブーマーと呼ばれるバンスルー。
奴かもしれない。
「策也!これは治せないのか?」
「ああ。さっき狛里が言ったように、魂はもうここにはない。少し遅かったな」
「そうか‥‥」
恵美にこういうのを見せても良かったのだろうか。
でも割と平気、というか、動じないんだな。
もしかしたらそれなりの世界で生きてきたのかもしれないと思った。
俺はとりあえず、死体を念力で集めてから燃やした。
そして遺灰を近くにあった木の根元に埋める。
命がけのゲームだから仕方がない。
でも死人が出るゲームを、どうしてキルリアの父親は作ったのだろうか。
命がけでも守らなければならないものはあるけれど、正直俺はこのゲームに命を掛けたいとは思わないな。
なんとなく気分が乗らないけれど、俺たちはクエストの為に墓地を後にした。
町の人に聞きながら、ようやくたどり着いたクエストは、かなり難解なものだった。
「これ、普通の人がチャレンジできるものなのか?」
「おそらくカードを揃えれば可能なのでしょうねぇ~」
まだ俺たちには知らないカードがある。
多分このクエストに挑むにあたって、用意しておいた方がいいカードがあるのだろうな。
例えば先程のカードショップで見つけた治癒の神風とか。
魔力で体を強化すれば、心臓以外なら即死は免れるだろうし。
このクエストは、カードを手に入れるだけなら簡単である。
サイコロを振るだけだから。
但しそのサイコロが厄介だ。
名前を『ラッキーダイス』と言う。
六面の目の内五つはハズレとなっていて、その目が出た場合書かれている臓器が爆発する仕様だ。
『心臓』『腎臓』『肝臓』『脾臓』『膵臓』の五つ。
五臓六腑の五臓とは違い、肺ではなく膵臓となっている。
そしてサイコロの出目で唯一助かる目には、四十一から百の数字がランダムで表示され、その番号のカードが追加で貰えるようだ。
その時、存在可能枚数をオーバーしても問題はない。
「こんなクエストは、流石に策也でも今は無理だし」
「いや、余裕だぞ?」
この『臓器爆発』が『死』と断定されていたら、いくら不老不死の俺でも躊躇せざるを得なかっただろう。
エルドラールの理に俺の不老不死能力が勝てる保証はないからだ。
しかし爆発なら話は簡単で、俺に限らず狛里でも天冉でも何も問題はない。
ただちょっとグロいシーンが展開されるけれどね。
「そうなの?ならサクッと手に入れるし」
恵美は本当に驚かないな。
奇乃子たちが驚いてくれていたウインバリアが懐かしいよ。
「じゃあとりあえず俺がやる」
「頼むの‥‥」
「私は嫌よぉ~」
そりゃいくら不老不死とはいえやりたくないよな。
俺はクエスト管理担当者からラッキーダイスを受け取り、迷う事なく転がした。
「お!当たりだし!」
「そういや俺、運がいいんだった」
更に運が良い事に、出た目には四十一と書かれていた。
「トビウサギカードゲットなの‥‥」
狛里がダイスの上空に現れたカードを手に取った。
「流石策也ちんねぇ~」
「おめでとうございます。それではこちらがクエスト報酬のラッキーダイスのアイテムカードとなります」
俺はクエスト管理担当者からカードを受け取った。
これは良いものを手に入れてしまったな。
これ一つで、四十一番までのカードを全て手に入れたようなものだぞ。
俺たちならね。
でも一人で何度も振るのは面倒だな。
複数個同時に振れば早く手に入れられる。
俺はそう思って聞いてみた。
「このクエスト、同じ人が何度も挑戦してもいいのか?」
「残念ながら、一人一回となります」
そう簡単には行かないよね。
狛里と天冉を見る。
目を逸らす。
天冉の目は見えないけれどね。
「じゃあこれならどうだ?」
俺は妖凛と冥凛を分裂させた。
「おお!可愛いし!誰だし?」
「この子たちは俺の娘だ」
嘘だけど。
「おお!それはビックリだし!」
「実は私も策也ちんの娘なのよねぇ~」
これこれ天冉や、ある意味本当の事を言うんじゃありません。
「おお!!それもビックリだし!!」
「実は私が嫁なの‥‥」
これこれ狛里や、ある意味本当の事を言うんじゃありません。
「おおお!!!全然見えないし!!」
おい恵美、そんな事を言ったら殺されるぞ。
それはないけど。
「お似合い過ぎて見えにくいだけなの‥‥」
そうだったんだ。
「本当に驚いたし」
ようやくマジで恵美を驚かせる事ができたな。
良かった良かった。
「それでどうだ?この子たちにダイスを振らせても大丈夫なのか?」
「‥‥構いません。別人と判断いたしました」
よっしゃー!
「じゃあ妖凛・冥凛、ダイスを振ってくれ」
「コクコク」
「ん‥‥」
二人は管理担当者からダイスを受け取ると、迷わず転がした。
どちらの出目もナンバーだった。
この子たちは俺自身でもあるからな。
運は良い。
「これでラッキーダイスは三つになったな。じゃあ次はこれならどうだ!」
俺は更に分身を七人召喚した。
等身大でね。
「こいつらにダイスを振らせてもいいか?」
「‥‥‥‥大丈夫です。別人と判断しました」
俺のコピーだけれど、姿が違うから遺伝子レベルでは別なんだろうな。
魂は知らんけどw
分身は順番にダイスを受け取った。
少し嫌な予感もするな。
「ちょっと離れていよう」
俺たちは七人の分身から離れ、分身も少し向こうへと歩いてからダイスを振った。
確率は収束します。
全員爆発した。
特に不老不死である所を見せる必要もないので、俺はそのまま分身を回収した。
「はいこれで合計十個ゲットだぜ!」
「それでいいの!?」
「大丈夫なの‥‥」
「私たちは爆発してないしぃ~、問題ないわよねぇ~」
「コクコク」
「ん‥‥」
管理担当者様、ちょっと呆れたような顔をしておりますな。
この世界のNPCってさ、多分実際の人だよね。
能力を結構見せちゃったけれど、今更気がついてももう遅い。
変に情報が広がらない事を祈ろう。
そんな訳でラッキーダイスを十個手に入れた俺たちは、町の外へ出て誰もいない荒野へと移動した。
「よし、この辺りでいいだろう。みんな爆発に巻き込まれないように離れておいてくれ。妖凛・冥凛は恵美を頼む」
「コクコク」
「ん‥‥」
さあこれから、オリハルコンアメーバの花火の時間だ。
俺は一気にダイスを振った。
当然全ての出目がナンバーな訳もなく、俺は爆発する。
オリハルコンとなった俺の体は、あちこちに飛び散った。
しかし直ぐに蘇生効果が発動し、元の体へと戻る。
「なんなの今の?」
「策也ちんはオリハルコンアメーバ人間なのよぉ~」
「つまり人間じゃないの‥‥」
「そうなんだ」
アッサリ信じて受け入れるのね。
いや本当の事だけれど、恵美の驚きポイントが分からんよ。
とにかく俺は、何度もコレを繰り返した。
一回に大体数字が一個か二個は出る。
三十六回繰り返せば、期待値的にはナンバーカードを六十枚手に入れる事ができる訳だけれど、当然これで全てが揃う訳もない。
何度も何度も振り続け、なんとか全てのナンバーカードが揃った時には、既に夕方になっていた。
「なんとか四十一よりも大きな数字は全て揃ったぞ」
「本当はこれだけ揃えるのに一ヶ月は掛かりそうだし」
「それを一日で揃えられたのは上出来ねぇ~」
「それにトビウサギのカードが三枚も手に入ったの‥‥」
つまりもう兎山へ行く必要はなくなった訳か。
「とりあえず疲れたし、今日はここらで休むか」
疲れたの俺だけだけれど。
つか別に疲れたってほどでもないんだけれどさ。
俺は人目に付かない所にみんなの家を出し、とりあえずみんな休むのだった。
次の日、もう兎山へ行く必要がなくなった俺たちは、最初の町に戻る為に南東の方角へと走り出した。
おそらく昼までには到着するので、途中寄り道はしない。
モンスターが出てくれば対処はするけれど、最初の町辺りにはモンスターもいないから、予定通り昼前には到着した。
流石にこれだけ早くに戻ってくれば、奴らも喜ぶだろう。
そう思っていたのだけれど、町にプレイヤーの気配が少ない。
三十二名のあいつらがいるはずなのに、プレイヤーは六名ほどしか俺には把握できなかった。
とにかく俺たちは町に入った。
「あいつら何処にいるんだろうな。プレイヤーの気配は六人ほどしか感じられない」
「何処かに隠れているのかしらねぇ~」
「ブーマーらしき者は北へと向かったはずだし、隠れる必要もなさそうだけれどな」
まあ仲間とかいるだろうから、そういう奴らが来る可能性もある。
隠れていないと不安だったのかもしれない。
「とにかく聞いてみるし」
「分かったの‥‥。そこのおじさん、見た目悪党で馬鹿っぽく弱そうな三十人以上の人たち、知ってたら教えてほしいの‥‥」
いやいや狛里、確かにその通りの奴らだけれど、もう少しマシな感じで聞いてやれよ。
「あんた、あの人たちの仲間なのかい?残念だけど‥‥。とにかく、鎮座石の所に行ってみれば分かるよ‥‥」
おじさんはそれ以上語らず、そそくさとその場から立ち去っていった。
何かあったか?
俺たちは顔を見合わせ、急いで鎮座石のあった場所へと向かった。
到着すれば、確かにおじさんの言った事が分かった。
町の人々が取り囲む中に、あの町で三人のプレイヤーが爆死していたのと同じような光景がここにあった。
「ブーマーがここに来たのか?」
「そうではなさそうよぉ~。こっちで死んでる六人わぁ~、爆死した訳ではなさそうだしぃ~。それにこの死に方わぁ~、ラッキーダイスでやられたような気がしない~?」
確かに天冉の言う通り、六人以外は内蔵破裂で死んでいる。
ん?誰かプレイヤーが近づいてくるぞ?
俺は警戒して振り返った。
するとそこにはよく知るアイツが立っていた。
「そうよ。その人たちはラッキーダイスを振らされて死んだんでしょうね」
「アーニャン?!」
「ハロハロー」
まさかこんな所で会うなんてね。
「あらぁ~、こんな所で会うなんてねぇ~」
俺も天冉と同じ事を思っていました。
「楊ちゃんこんにちはなの‥‥」
「誰なの?」
そう言えば恵美は会った事なかったな。
「この子は、まあ俺たちの友達みたいなもんだな。名前は‥‥」
「アーニャンだよ。はじめまして」
警察では安さんって呼ばれていたけれど、アーニャン推しはココでも変わらない。
「えっと、かずみだし」
あら、ゲーム内だから『かずみ』で行くのね。
アーニャンももしかしたらそう登録しているのだろうか。
「かずみちゃんでいいのかしら?可愛いわね」
「ありがとうだし」
恵美は年齢よりも更に子供に見えるからな。
でもかずみちゃん可愛いと言われてまんざらでもなさそうだ。
女の子は何歳になっても『丸々ちゃん可愛い』と言われれば嬉しいものなのかもしれない。
まだ実年齢十六歳くらいだから普通なのか。
「それでアーニャン、どうしてココにいるんだ?ラッキーダイスで殺されたみたいだけど、犯人を知っているとか?」
アーニャンは警察で特別顧問とか云われていたし、もしかしたら‥‥。
「うん。実はこの世界にね、世界から指名手配されている極悪デンジャーが逃げてきているって情報を得たのよ。僕はその人を追ってこの世界に来てるって訳ねー。それでその人が、この世界でも無茶やってるって話を聞いて、調べている内にココにたどり着いたのよ」
「つまりこの惨状は、そのデンジャーがラッキーダイスを強制的に振らせた結果だと?」
手に入れた時は正にラッキーなダイスだとしか思えなかったけれど、普通は確実な準備をしておかないと振れないダイス。
そして『誰かに振らせてカードを集める』なんて事もできるヤバいアイテムだった訳か。
おそらく殺されそうな状況を作られ、『このダイスを振ってカードを手に入れる事ができれば見逃してやる』なんて言われたのだろうな。
爆死死体が二十六体。
それ以外で殺されたような死体が六体。
確率的にもだいたい合っている。
「そういう事ね。それで策也、犯人が何処に行ったか知らないかしら?何か情報があれば教えてほしいの」
犯人か。
「それってブーマー、バンスルーって奴だろ?きっと放って置いても捕まると思うぜ」
ゴルゴたちがきっと倒して、ゲーム運営側からリアル警察に引き渡されるはずだ。
「ん?バンスルー?違うわよ。僕が追ってるのは『郡アグネス』って男だよ」
「アグネスくん?」
‥‥。
バンスルーじゃなかったのか。
いや、この爆発がラッキーダイスによるものなら、犯人予想は全くの白紙で考えないとダメだった。
「そうよ。確かバンスルーってのは、郡の舎弟だったんじゃないかしら」
つまり、バンスルーよりも強いのがこの世界に来ている訳か。
「アーニャンはそれを追って、一人で来てるのか?」
「日本の警視庁は無茶なのよねぇ。こんな可愛い女の子を一人で行かせるなんて、嫌になっちゃうよ」
この世界の魔法というか能力は侮れない。
なのに世界から指名手配される極悪デンジャーをアーニャン一人に任せるのか。
ちょっと不安だ。
ナンバーカードは既に一週間で半分以上が埋まっている。
手伝うか?
「策也ちゃん、楊ちゃんを手伝うの‥‥」
「そうだし。そんな極悪デンジャー、策也がやっちゃってほしいし」
他力本願、俺任せかよ!
「でもしばらく特訓ができないかもしれないぞ?」
「もうかなり強くなったし!足手まといにはならないし」
いや絶対足手まといなんだけれどね。
俺はいつもと逆に天冉を見た。
天冉は普通に笑顔だった。
「アーニャン、みんなそう言っている。手伝おうか?」
「本当に?助かるわ」
まあアーニャンと出会った時から、こんな事もあるとは思っていたけどさ。
「そういう訳で、しばらく俺たちはアグネスくんを捕まえるのに協力する」
「おー!」
「おお?‥‥」
「は~い!」
「ありがとうねぇ」
こうして俺たちはグレートアイランド攻略を一時中断して、リアル世界の大悪党を追う事になったのだった。




