ep.8
私の方を見つめているギル様の目はとても冷たかった。
「なんで、ここに来んだ」
「おやちきを、探検ちようと思って、ごめんなちゃい!許ちて、ギルちゃま!」
私はギル様に一生懸命謝った。ムリムリムリ!ギル様に勝てるわけもないのに、殴られちゃったらどうしよう。思いっきり殴られちゃったら、顔の形が変形しちゃうかな、とか、、最悪な事態に備えて、脳みそをフル回転させていると、
「用がないなら、早く出て行け!」
と、ギル様は扉の方を指差しながら、私に向かってそう声を張り上げて言った。
「ぴええええ、ごめんなちゃい!!」
そう言って私は一目散にこの部屋から逃げ出し、自分の部屋にこもり、ギル様について考えた。
(うーん、なんでギル様はあんなに怖くなっていたのだろう)
実はギル様の幼少期ストーリーが全くなかったわけではない。「ロマンス・マジックボイス」は人気作品であったため、ゲームだけでなく、本編と番外編を含めた小説版にギル様の幼少期ストーリーがあったはずだ。妹によると、この幼少期にギル様が悪役キャラになる理由が詰め込まれてて、そこがいいのだとか、どうとか。それなら、このストーリーめちゃくちゃ大事じゃん!?思い出すのよ、私!なんで、ギル様があんなになってしまったのかを。あれを買ったのは、何年前かの夏で、確か、、
「お姉ちゃん!昨日ね、ギル様の幼少期ストーリーが入った小説が発売されてね!」
「へぇー、そんで、今回ギル様はどうなっちゃってるの?」
「それがね!ギル様はーーーーーーでね、それがーーーーしちゃう原因っぽいんだよね!」
「ふぅん、ギル様は頑張りすぎってことなんだね」
やばい、ギル様が頑張り屋さんだということしかわからなかった。でも、ここでギル様を見放して進んだとして、ギル様が闇落ちをして、世界を滅ぼしちゃったらどうしよう。私はギル様が闇落ちをしたときに、どんな行動を取るかは知らないし、あの雰囲気だと、世界を滅ぼす可能性だってあるよね。世界を滅ぼされたら、私の可愛い女の子とのイチャイチャエンドがなくなっちゃうじゃん!それなら、助ける以外の道はない、よね。よし、そうとなれば、ギル様救出作戦を実行するぞ!