ep.4
妹はいわゆる悪役というものに恋に落ちるタイプだった。その中でもギルバート・グレイのことが特に好きならしく、妹の部屋を訪れると、どこをみてもギル様と目があったものだった。ただ、私が知ってる限りでのギルバート・グレイは闇落ちをしており、本編じゃ攻略対象にはならない、いわゆる隠しキャラというやつだった。
妹がプレイしていた乙女ゲーム「ロマンス・マジックボイス」は恋と魔法と歌がテーマになった乙女ゲームで魔法が主流の世界で特殊な声質を持ったヒロインが不思議な歌を歌って攻略対象を助けていき、恋に落ちるというストーリーだ。
このゲームの醍醐味は全員を攻略した後に隠しエンドが解放されるという点だ。その隠しエンドというのがこのギル様初め、悪役キャラ達なのだ。しかも、悪役キャラの隠しエンドは悪役キャラの好感度を満遍なく高くすることで迎えられるハーレムエンドしかなく、乙女ゲーム通のなかでも、攻略難易度が難しいと言われていた。
そんな攻略するのが難しいのに妹がなぜ、悪役のギル様が好きなのかというと、妹曰く、悪役なのにも理由があって、その理由のために戦うところがかっこいいのだとか。まあ、わからなくもないが、私は悪役よりも、可愛い女の子の方が好きである。できればいつまでも、可愛い女の子に囲まれてキャッキャしてたい、、
そういえば、ここは何を隠そう異世界である。それなら、可愛い女の子がいっぱいいるはずだ!今出会った人だけでも、オリビアと呼ばれている人はとてつもなく美人で、ソフィアはほんわかとした雰囲気で歳老いているはずなのに、若い頃が美人だったとわかるほど美形ばかりではないか!私、異世界に転生してよかったかも!そう、考えていると、エドワードが私に顔を近づけて話し出した。
「アリシア、これがお兄ちゃんのギルバートだ。どうか、ギルバートと仲良くしてやってくれ」
「きっと大丈夫よ、エドワード。この子なら、ギルバートと仲良くやってくれるわよ」
「そうですわ、エドワード様」
そう言ったオリビアと、うんうんと頷くソフィア。平和だなーなんて考えていると、ふと、私は重大なことに気づいた。異世界に転生した衝撃で忘れていたが、そういえば、さっきギル様はなんて言った?お兄ちゃん?誰の、、、?
「いうあーおあああいおおいいいあう!?」
(ギルバートが私のお兄ちゃん!?)