ep.3
隣に立っている小さな男の子は、青い髪で緑の目で、エドワードと呼ばれていた優しそうな男性に瓜二つだった。その男の子の顔を見た瞬間、私は時が止まってしまったように固まってしまった。いや、なんで、最初にという男性を見たときに気づかなかったのだろう。あの人にそっくりなのに。
その男の子の顔はよく知った顔だった。彼はギルバート・グレイ。通称ギル、いわゆる私の妹の最推しというやつだ。妹の部屋は彼のグッズで溢れていて、私もよく妹に連れられて彼のグッズを買いに行ったものだった。彼女はギルバートのことをギル様と呼んで慕っており、ギル様を自引きしたときの妹は本当に恋をした女の子みたいで可愛かったなあ、そう、何を隠そう私は自他共に認めるシスコンなのである。だから、妹の頼みなら叶えてあげたいと思うし、妹の話ならきちんと聞く、それがシスコンたる正義なのである。だから、ギル様をみて一瞬でギル様だと見抜くことができたのだ。そんなギル様がなぜ私の目の前にいるのか。私はその答えを一つしか知らない。
「あああ、おえ、いえあいえうえいうえあうぅぅぅぅ!?」
(まさか、これ、異世界転生ってやつぅぅぅぅ!?)
「おお、今日もアリシアは元気だなあ!いいことだ!」
「何かあったのですか、エドワード?あら、ギルバートも一緒なのね」
「ギルバートをアリシアに紹介しようと思ってなあ、さあ、ギルバート、自己紹介しなさい」
すると、ギル様は私の前までやってきてこう言った。
「はじめまして、君の兄のギルバートです。これからよろしくね」
このときの、ギル様の笑顔を私は一生忘れることはできないだろう。そう思えるほどに裏のない純粋な笑顔だった。
しかし、誰も想像しないだろう、こんな可愛らしいギル様は私が知る限り、闇落ちして、主人公の恋を邪魔する悪役キャラだなんて。