第七話 「理性の扉を開けて」
田中一郎は、湖の試練を乗り越え、心に新たな力と覚悟を宿していた。しかし、エリスが言うように、試練は終わったわけではない。二人は再び歩き始め、山道を進んでいった。
「次の試練は、あなたの理性を試すものです。」エリスが静かに告げる。
「理性って、また難しそうな話だな。」田中は笑いながら言ったが、どこか不安そうに眉をひそめていた。
エリスは優しく頷いた。「この試練では、あなたが心の中で抱える矛盾と向き合うことになります。それを乗り越えることで、神の力を手に入れることができるのです。」
二人はしばらく歩き、急な坂道を登りながら、田中は心の中で考えていた。自分がこれまで無視してきた感情や、理性を保つために押し込めてきた欲望。どんな形でその試練が訪れるのか、予想がつかなかった。
「ここです。」エリスの言葉に、田中は足を止めた。
目の前には、古びた大門が現れた。その向こうには一つの部屋が見え、その中に無数の扉が並んでいる。
「この扉を開けることが試練です。」エリスが説明する。「それぞれの扉には、あなたの心に眠る欲望や恐れが具現化したものが待ち構えています。どれを開け、どれを開けないかを選ぶことが、あなたの理性を試すことになります。」
田中は深呼吸をし、部屋の中に足を踏み入れた。無数の扉が並んでいる。その一つ一つには、彼の過去や心の中で未解決の問題が隠れている気がした。
「どれを開けるべきか……。」田中は一つの扉に手をかけたが、すぐに引っ込めた。恐れる自分がそこにいた。
「自分が怖いのか?」エリスが少し離れたところから声をかけた。「その恐れを無視してはいけません。正面から向き合うことで、理性を試すことができるのです。」
田中はエリスの言葉を胸に刻み、再び一つの扉に手をかけた。それは、彼が一番避けてきたものだった。失敗への恐れ、周囲の期待に応えられなかった過去、それが具現化したものが彼の目の前に現れた。
恐れと不安が一気に押し寄せてきた。しかし、田中はその感情を飲み込み、扉を開けた。
「恐れを乗り越えたのですね。」エリスの声が静かに響く。
その扉の向こうには、まばゆい光が広がり、田中の心の中にあった重荷が解けるように感じた。過去の恐れは消え、彼の中にあった理性と勇気が目覚めていく。
「これで、あなたの理性も試練を越えました。」エリスが近づいてきた。「残りの試練も、もうすぐ終わります。」
田中は深く息をつき、ほっと一息ついた。「これで終わりじゃないんだろう?」
エリスは微笑みながら頷いた。「はい、あなたの旅路は続きます。しかし、確実にあなたは強くなっています。」
田中は再び前を向き、力強く歩き始めた。次の試練が待っていることを確信しながら、彼は神の力に一歩ずつ近づいていく。
「よし、次も乗り越えてみせる!」田中は心の中で決意を固め、歩みを続けた。