第二話「試練の始まり」
田中一郎の日常は、あの"運命駅"での出来事を境に微妙に変化し始めていた。
最初は些細なことだった。電車の混雑がいつもより少なかったり、欲しかった商品が偶然セールになっていたり。しかし、次第にその変化は大きくなり、周囲の人々が彼の考えを先読みして行動しているように感じるようになった。
例えば、昼食に何を食べようか迷っていると、同僚が「今日は田中さん、カレーの気分でしょ?」と声をかけてくる。まさにその通りだった。小さな奇跡が続く日々に、田中は徐々に不安を募らせていた。
そんなある日、スマホが突然振動し、画面にまたしても不思議な通知が現れた。
「第一の試練:選ばれし導き手を見つけよ」
「導き手? 試練って、これか......」
田中は頭を抱えたが、考えていても始まらない。通勤途中に立ち寄る公園でコーヒーを飲みながら、周囲を見回した。特に変わったことはない。ただ、どこか緊張感が漂う。
「導き手って、どうやって見つければいいんだ?」
そのとき、目の前に白いハトが降り立った。ハトは不自然に田中を見つめ、足元に小さな封筒を置くと飛び去っていった。
「なんだこれ......手紙?」
封筒を拾い、中を開けると、丁寧な筆跡でこう書かれていた。
「田中一郎様、導き手はすでにあなたの近くにいます。心の目で見極めてください。アリアより」
「心の目って何だよ......」
困惑しながらも、田中は会社へ向かった。仕事中も手紙の内容が頭を離れない。彼の視線が同僚や上司、取引先の人々を何度も行き来する。
昼休み、ふと窓の外を眺めていると、一人の女性が目に入った。白いスーツに身を包み、どこか気品のある立ち振る舞いをしている。彼女の姿に、田中は奇妙な既視感を覚えた。
「もしかして、あの人が......導き手?」
意を決して田中は彼女のもとへ向かった。すると、彼女はこちらを振り返り、柔らかな微笑みを浮かべた。
「お待ちしておりました、田中一郎様。」
「やっぱり、あんたも関係者か!」
彼女は静かにうなずき、名刺を差し出した。名刺には"天界補佐官 エリス"と書かれている。
「私はエリス。あなたが試練を乗り越えられるようサポートするために遣わされました。これから共に歩んでいきましょう。」
田中はエリスの手を取ると、再び運命が大きく動き出す予感に包まれた。
試練の幕開けに、田中の胸は高鳴っていた。