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第一話「運命の通知」

平凡な朝だった。

田中一郎たなか いちろうは目覚ましの音に起こされ、布団から重い体を引きずり出した。少し冷えた空気が肌を刺すが、彼にとってはいつもの冬の朝だ。リビングに行き、インスタントコーヒーを淹れながら、スマホを確認する。


通知が一件。特に珍しいことではない。


「100日後に神になる。」


画面に表示されたそのメッセージに、田中は思わず目をこする。


「......なんだこれ?」


メッセージを開こうとしたが、リンクも差出人も記載がない。不審に思いながらも、「新手のスパムか」と気に留めず、いつものように通勤準備を始めた。


会社へ向かう電車の中でも、田中の頭には先ほどの通知がぼんやりと浮かんでいた。なぜこんな意味不明なメッセージが届いたのか。特に怪しいサイトにアクセスした覚えもない。やがてスマホの画面を見つめるのも飽き、車窓に目を向けた。


そんな彼に、最初の"異変"が訪れる。


「次は、運命駅です。」


車内アナウンスが流れる。田中は耳を疑った。


「運命駅? そんな駅、あったか?」


周りの乗客は特に気にする様子もなく、田中の違和感はますます強まる。電車が停車すると、車内の全員が一斉に彼を振り返った。


「田中一郎様、こちらへ。」


誰とも知れぬ声がそう告げた。驚いた田中は思わず席を立つ。降りるべきか迷いながらも、気づけば足が勝手に動いていた。見知らぬホームに降り立つと、古びた看板にこう書かれていた。


「運命駅 田中一郎専用」


「専用......?」


呆然とする田中の目の前に、突然、白い光が渦を巻いて現れる。その中から現れたのは、神々しい装束をまとった少女だった。彼女は静かに微笑み、田中に向かって一歩近づく。


「田中一郎様、おめでとうございます。あなたは100日後、神になる運命です。」


「は?」


田中の頭は混乱の極みに達していた。突然の出来事に現実感が追いつかない。だが、少女は構わず続ける。


「私の名前はアリア。あなたの成長を見守るためにここへ参りました。これから100日間、あなたは数々の試練に直面するでしょう。それを乗り越えた先に、神としての資格が得られるのです。」


「いやいや、ちょっと待ってくれ。俺はただのサラリーマンだぞ? 神なんて興味もないし、そんなの無理だ!」


田中は大げさに手を振って否定したが、アリアは微笑んだままだ。


「全ては運命です。あなたが望もうと望むまいと、カウントダウンは既に始まっています。」


そう言うと、アリアは田中の手に古びた砂時計を握らせた。砂が音を立てて落ち始める。


「さあ、田中一郎様。運命を受け入れましょう。今日から100日間、あなたの人生は大きく変わります。」


その瞬間、田中は眩い光に包まれ、再び電車の中に戻っていた。まるで何事もなかったかのように、乗客たちはスマホを見たり眠ったりしている。


「なんだったんだ、今のは......」


田中は手の中に残る砂時計を見つめ、ただ呆然と立ち尽くしていた。

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