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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第3章:友愛の楽譜編
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楽譜45.言葉の向こう3


 講堂に静寂が訪れる中、オルガノさんはゆっくりと口を開いた。その表情には覚悟と苦悩が滲んでいる。


「私は今回の件で、皆様を危険な目に合わせました」


 彼女の声が響き渡り、その重みが場の緊張感をさらに高める。あの状況で最善策とされた作戦が、多くの人を巻き込む大規模なものだったことは明らかだった。


「私は皆様の命よりも、レシタル様の命を選びました」


 結果として客人たちは無事だったものの、発案者であるオルガノさんには独断で作戦を決行した罪悪感があふれていた。


「オルガノさん、教えてください。なぜ私たちに作戦を共有しなかったのですか?」


 作戦が決行されたとしても、客人を危険にさらすのは到底許せることではなかった。その理由を、彼女の口から聞きたかった。


「作戦の全貌を明かせば、敵側に私の動きが察知される可能性が高まると判断しました。私の持っているセラピア(癒し)の楽譜の影響で、レシタル様の命を失う事に恐れてしまったのです」


 彼女の手はわずかに震えている。オルガノさんはゆっくりと自身を語り始めた。


「私の家族は音楽の名家であり、癒しの楽譜を生み出しました。同時に、私達一家は政府命を狙わる存在になりました」


 並べられる言葉は私の想像を超えるものだった。楽譜が政府に狙われる存在なのは知っていた。しかし、意図的に作った楽譜じゃないとしても、政府が命を奪う行為に私は、「またか」と思った。


「そして命からがら逃げる中で、私はレシタル様と出会いました」


 政府は自由な音楽を徹底的に管理する。私たちは政府とは話では絶対に分かり合えない。オルガノさんは自分の命が狙われる日々でそれを経験した。オルガノさんにとってレシタルさんは、希望だったのだろう。


「しかし、私と共に暮らした生活は、自由はなく政府は、レシタル様の巨額の富を利用していたのです。その姿を見るたびに、私はひどく心が痛みました」


 命が助かっても、恩人のレシタルさんが政府に利用される日々。自分の命か、恩人を選ぶかその板挟みは相当の心労だったのだろう。オルガノさんは声を必死に紡ぐ。


「そして私は…楽譜が燃えたと伝えれば、もう恩人が政府利用されずに済むと考えてしまったのです」


 オルガノさんの言葉が終わった瞬間、講堂にさらに深い沈黙が訪れる。しかし、その静寂を破ったのはレシタルさんの声だった。


「オルガノ…お前はずっと、そう思っていたんだな」


 レシタルさんは、オノガノさんの言葉を受け止めて彼女の元へ歩み寄った。決して怒ることなく優しく語りかけた。


「資金援助をしていたのも、音楽を愛するオルガノを救うため、共に音楽で溢れる生活をしたかったんだ。楽器を使う人々のために考える時間は毎日楽しかった」


 事実上政府には、資金援助をしてなんとか楽譜を守り続けていた。しかし、レシタルさんは限られた行動の中で「楽しさ」を見つけた。その思いから今では、誰もが知る大企業へと成長したのだ。


「だが、会社が大きくなるにつれて守る人が増えすぎてしまった。私の力だけでは、いつ崩壊しても可笑しくない、だからこの会社を畳もうとしていた」


 二人の考えの入れ違い、話を聞いてこの時代はなんとも悲しく切ないのだろうと、私の胸を締め付けられた。ただ好きに音楽を楽しみたい、ただそれだけなのに…


こちらのお話で一度完結です。

最後まで、観ていただきありがとうございました。

二章も気長に待っていただけますと嬉しいです。

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