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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第3章:友愛の楽譜編
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楽譜42.旅路 カルイザワの出会い2

 シナヴリアさんにことの次第を伝えた後、私は痛む身体を必死に動かしていた。正直立っているだけで倒れそうだ。


「イロハ歩ける?」


「なんとか、シナヴリアさん達には、連絡したから大丈夫だと思うけど」


 痛みを感じるたびに、私は自分の弱さを呪った。でも、ここで倒れては誰も救えない。その思いだけが、私を動かしていた。


 音楽を愛する人を私は、守りたい。自分勝手が良すぎる。それでも、自分一人で未来の音楽文化が広がるなら、私はどうだって良い。


「皆なら大丈夫、まずは俺たちが出来ることをしよう


「そうだね、会場の人たちが心配だから急ごう」


 壁を伝って一歩、一歩踏み出す。すると、静寂な廊下から、この状況に似合わない、とても心が穏やかな演奏が響いた。


「この曲って」


「[旅路・カルイザワの出会い]だよ、カルイザワに住んでいる人なら、一度は演奏したことのある曲だよ」


 初めて聴く曲だ。曲名をイメージするように緑溢れるカルイザワにピッタリな演奏だ。


「素敵な曲ね、この状況じゃなかったら、ゆっくり聴きたいぐらい」


「そうだね、俺も聴きたかった」


 演奏が続く中、城内が上下に揺れ始める。地震のようにカタカタと揺れてた。音の根源は、演奏が聞こえる場所だ。


「また揺れている」


「演奏が聞こえてる!皆あの中に閉じ込められているんだ」


 急ぎたいのに身体が、思うように動かない。何やってんの!こういう時に動かないで、私は何のために来たの!


 自分の身体が動かない苛立ちで、沸々と溢れる中、通信機から私を呼ぶ声が聞こえた。


「イロハ!イロハ」


 通信機の相手はヘードネだった。曲の根源は、舞踏会の会場のようだ。なぜ演奏をしているのか、その理由は城の仕掛けを解除するためらしい。


「ディアリマとセレナーデさん達が、解除しているんだね」


「だから、大丈夫」


 ヘードネの声色から、心配するような事はない。しかし、爆発の影響でいつ城が燃え広がるのも時間の問題だ。


「火元が近づいてる…私達は消防隊とか呼んでいるからね!」


 私達にもやれる事をやろう。仮に仕掛けを解除したとしても、城から脱出できるとは限らない。まずは被害を最小限に減らす行動だ。


「外へ行こうテトラ」


 必ず城から脱出してくれるとディアリマ達を信じて、私はまた足を動かす。


 ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー


 仕掛け解除のために演奏と踊りが始まって、早数秒後、ここまでなんと私とセレナーデさんは一度もミスがない。


 先程までドタバタと動かしていた身体は、演奏があるだけで、今は嘘のように軽やかに踊れているのだ。


『なんて楽しいの』


 故郷の曲に合わせて踊るのが、こんなにも楽しいなんて、思いもしなかった。何処で足を動かせば良いか、全て分かるわ。


「この場にいる人が、私達の背中を押しているように感じるわ」


 演奏している人の顔をチラリと見ると、全員が頬を緩ませて、楽器を弾いていた。それはいつかを思い出しているように見えた。


 コンクールのような緊張感は無く、会場にいる人々の表情が柔らかくなり、手を取り合う姿が見られた。まるで曲が心を繋いでいるかのようだった。


『タイミングもピッタリ』


 部屋を回転する歯車も、音楽に合わせている。演奏の一部のように組み込まれている。この城を作った人は、カルイザワを心から愛しているからだわ。


『皆の心を一体にしないと、動かないしろ』


 こんなに素晴らしい物が、隠れていたなんて、私もまだまだ知らない世界が多いわ。


 街を出て行く人も、残る人も生まれは皆一緒。この曲があれば必ず、故郷を思い出せるから、音楽はやっぱり自由じゃないと!


『私はこの街の人の自由な音楽を守るため、自分のために戦う』


 そして、仕掛けが正常に作動し始めて、緩やかに部屋は動き始める。カタカタと歯車の動きに合わせて、くるりと私も回転する。


『外の景色が見えてきたわ』


 閉じ込められた空間から、部屋の動きによって、外の景色が見えてきた。会場の人たちも窓からの景色に安堵していた。最後の踊りも気を抜かずに丁寧に、足、手、身体を動かす。


 ガタンと大きな音が鳴り響いた時、部屋の回転は終わった。曲の演奏もぴったりと終わった。



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