楽譜39.ヘルター・スパイダー4
メガロス城の戦闘が始まった数分前、ディアリマは計画通りに、セレナーデと共に踊っていた。
『何も起きないわ』
舞踏会が始まったが、驚くほどに何も起きない。愉快な演奏が響く会場で、怪しい人間が居ないのか、探っていた。
「おい、周りを見るな怪しまれる」
「悪いわ、集中する」
いけないわ、踊りに集中出来てなかった。警戒も大事だけど、私達の作戦が、バレるとこの計画はおじゃんだ。
『このまま、平和に終わればいいけど』
しかし、セレナーデは踊りが上手だわ。ステップや私をリードする姿は、踊りの経験が豊富な証拠だわ。現に周りの人達は、私達の踊りを見ているわ。
『護衛と言うことを忘れてしまいそうだわ』
セレナーデと息を合わせ、手を取り合いながら旋回する。靴音がカツカツとリズム良く、床に響く。ピッタリと息が合う時、踊りはやっぱり楽しいことを実感する。
そして、今度は大きく回って旋回。この時ドレスがふんわりと広げられ、見ている人を魅了するだろう。
右足を軸に回ろうとした瞬間、会場内から大きな轟音が響く、その衝撃で全員が動きを止めた。
「なに!?」
「すごい音がした」
華やかな演奏が一瞬にして、無に帰る。すると床したから、カチカチと一定の音が鳴る。突然の出来事に皆んな動かずに居た。
「皆頭を低い体制にしろ!」
レシタルさんが、声を荒げて反射的に全員がしゃがんだ体制になると、まるで、遊園地のアトラクションのように、視界が周り始める。
「部屋が回っている!?」
カチカチと床下の音を鳴らす。窓を見ると、外の景色がどんどん見えなくなってきた。床下からの音が止むと、ようやく動けるようになった。
「レシタルこれは一体」
「こんなの、初めてだ。先程の巨大な音も気掛かりだ。まずは避難しよう」
警備員達が出入り口のドアノブに手を掛けたが、なんと、扉は開かなかった。窓は先程の回転で入り口が塞がった。私たちは会場に閉じ込められたのだ。
「私達出られないの」
「なんで俺たちはただ、記念祭を楽しんでたはずだ!」
人々は閉じ込められた空間に戸惑いの声を上げる。しかし、現実は甘くなく何も変わらない。
「城の防衛が作動したのでしょう」
だが、この場にただ一人、冷静な人物が居た。レシタルの秘書オルガノだ。発言から彼女はこの騒動の原因をわかっているようだ。
「この城内で誰かが、コードを使ったのでしょう」
「イロハか敵が使ったのか」
「ええ、この機械は楽譜を守る要塞でも、あるのです」
確かにこの空間は、出入り口が塞がっている。今から会場へ入ることは、困難だ。だが、コードとは一体何?
機械を作動させるものがあるなら、止めるものが必ずあるはずだ。ぐるりと周りを見ると会場は出入りが、塞がっている以外変わってない。
カチカチカチ
『この音は一体?』
部屋が動いた時とは少し小さな音だ。耳を澄ませると、私の足元から聞こえる。床をじーっと見つめて、根源を探る。
『床がへこんでいる』
音に合わせて、会場の床が不規則に下へ凹んでいる。これはこの部屋から脱出する手がかりなのだろうか?
「イロハ、聞こえているか」
『シナヴリアさん聞こえています。大変なんです!』
通信機を手に取ったシナヴリアさんは、イロハに連絡する。通信機の声からは、慌てた様子が伺えた。
『この城爆弾が起動したんです』
「それは本当なのか?イロハ」
「はい!恐らく政府が、楽譜と私達の殺害が目的なんです。早く脱出を!』
なんてこと!?城の防衛機械がまさか、こんな使われ方をするなんて、政府の人間はこの機械を知っていたんだ。
「爆弾!?私達しんでしまうの?」
不安の波は多くの人を巻き込んでいく。マズイこのままでは不安が大きくなって、何をするのか分からない。
「皆!大丈夫だ!この場の人間の命は、私が守る!」
胸を張って宣言する彼女の姿に、全員が注目する。不安の中で彼女の声は会場の皆に勇気を与える。




