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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第3章:友愛の楽譜編
38/45

楽譜38.へルター・スパイダー3


「グッ!」


 背中を切られて、立つことが出来ずに床に倒れ込んだ。このままでは、マーチにまた攻撃されて終わりだ。身体を動かそうとしても間に合わない。


「イロハに手を出さないで!」


 声を荒げたテトラは、拳銃をマーチに向かって発砲した。弾丸はマーチの横を通り抜けた。廊下の奥へ弾丸は消えていった。


 痛みで身体が悲鳴を上げているが、テトラが稼いだ時間を無駄にはしない。身体に鞭を打ってテトラの元へ走る。


「テトラ!」


 ようやくテトラの手が届いた。すかさず楽譜をドレスのポケットから楽譜を取り出す。丸めていた部分を広げて、オン源ミュートを外す。


「「ハラ・アルモニア(喜びの曲)」」


 換装の詠唱をすると、周り一帯が眩い光に包まれる。光の中でボロボロのドレスから、ドレスコードに換装する。


「イロハ大丈夫?」


「うん、ドレスコード血で汚れちゃうね。早く決着つけないと」


 ドレスコードに換装したからと言って、怪我が治る訳ではない。だが、テトラの声が聞こえる安心感に痛みは、僅かながら引いている気がした。


 テトラが楽譜の音を創造し始めると、楽器達の音色が響き合う。演奏をリードするヴァイオリンの音はまるで私に勇気を与えているようだ。


「行こう!テトラ」


「うん」


 マーチが反撃する前にまずは、こっちが先手を取る。全速力で走り出し、サーベルを構える。先ほどまでの恐怖が嘘のように身体が動く。


「ただ、こちら攻撃を受けるとでも?」


「そんなことないでしょ?」


 敵が簡単に攻撃を受ける訳がない。なら、こっちも準備を整えてから、攻撃に入るとしよう。創造された演奏と私の身体の動きが合わさる時、コードが生まれる。


「「ハラ•プロト(喜びの一番目)」」


 マーチの鋭一閃は、はらプロトンのおかげで、軽々と高く舞い上がり攻撃は避けられる。戦いが激化すると予想していた私だが、マーチはなんと攻撃をせず、その場で棒立ちをしていた。


「やはり、貴方には法則性がありませんね。ただ暴力を与えるコードじゃない」


「お褒めありがとう、なら、帰ってもいいんじゃない?」


 さっきまで攻撃の手をやめなかったマーチが、何故急に止まった。これもなにかの作戦なのか、正解を探る私にマーチは淡々と答えた。


「えぇ、本当は楽譜をこちらでもらいたかったのですが…仕方ないですね。此処でひきます」


「何言ってるの!?」


 まだ何も始まってすらいないのに、撤退を宣言したマーチに答えを求めるが、彼女は私に背を向けた。すると、城内で巨大な轟音と共に床がわずかに震え、遠くから悲鳴のような声が聞こえてきた。


「何の音?」


「コードの使用によって爆弾が起動したのですよ」


 爆弾?なんでそんな事をする意味がある?マーチがコードをしなかった理由は爆弾を起動させないため?だが、何故自分たちの首を絞めるのか。


「これが正しい選択だとは、私も思えませんがね」


 首を横に振って、この起爆は仕方ない。そんな素振りをするマーチに私は怒りのあまり、拳を強く握った。


「アンタ達、関係ない人を巻き込んで、そんなこと言えるわね!やってることは無差別殺人と同じよ!」


 過激なコーキノス隊、穏健なプラーシノス隊など、関係ない。やっていることは人の命を簡単に選別することだ。何も違いなどない。


「では、貴方が助ければ良いでしょう?」


「私に押し付けるのね」


「さぁどうでしょね」


 最初は物腰が柔らかくて、少しは話し合える相手だと思ったが、論外だ。これなら、まだソナタの方が分かり合えそうだ。城内は爆破の影響で火薬の匂いが空気中に漂う。


「イロハ、会場の人が心配。急ごう」


 政府人間が関係のない人を巻き込むとは、全く予想しなかった。私がコードを使用したからだ。会場の皆を早く避難させないと。


「アンタ、ソナタよりも悪い人間よ、次あったら覚悟しなさいよ」


 マーチへビッシと指を向けて、宣言する。絶対に許さない、その意味を込めて強く言葉に発する。一方のマーチは薄ら笑いを浮かべた後、スタスタとこの場から去る。


「楽しみにしております。生きて帰れると良いですね」


今回も観ていただきありがとうございました!

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