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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第3章:友愛の楽譜編
37/45

楽譜37.へルター・スパイダー2

「コード出さないの?」


「お答えいたしかねます」


 マーチは無機質な返答をして、三度私に刃を向ける。避けているだけじゃ、私に勝機はない。幸いにもテトラの攻撃はないことが、救いだ。


「全くどうするか…」


 少ない情報の中で、私は必死に勝利の道を考える。 楽器の演奏方法に癖があるように攻撃も必ず法則性があるはず。観察するんだ。攻撃を避けながら、私は手元、足元を目を凝らして見る。


『上、左、下、右、上…上、左、下、右、上…』


 相手の動きに合わせて、刃の方向を口ずさむ。念仏を唱えるように何度も、何度も動きを見る。刀が空を裂き、扇状に描かれる軌跡が視界をかすめる。


 だが、法則性があるからと言って、無暗に前へ出るのは、危険だ。私を誘っている?これは罠?


 私が攻撃に転じない理由は、ホッカイドウの出来事の影響だ。


『相手を考える。ホッカイドウの二の舞にはならない』


 知識が無かったからでは、済まない。オン源カタストロフィで痛い目を見た。戦闘も同じだ。ソナタの実力に屈していたのは、私は未知の物に恐怖していたからだ。物事を冷静に考えるのよ、イロハ。


『動きは同じで間違いない』


 刀で攻撃するなら、袈裟斬りや一文字斬と真っすぐに刃が向く。


『でも、真上からの攻撃なら、そのまま振りかざせば良い』


 刀はスピートや重い一撃をイメージしているのにだが、マーチはそのスピードを殺す動作をしている。


『やっぱりそうだ。直線に振り降ろさず、わざわざ扇状に振り降ろしている』


 そして、左に側に振り下ろさず、横一文字でもすれば良いのに、これもまた扇状に描いている。その繰り返しだ。


『マーチが剣術が下手にはとても思えない』


 最初の攻撃をテトラが助けてくれなかったら、確実に致命傷を負っていた。その実力を行使すれば良いのにわざと弱い攻撃を放っている。


 答えは辿り着けそうなのに、辿り着けない。相手は勿論私に考える時間を与えず、刃を向ける。


 そこから、会場から演奏が廊下に響き思わず、演奏を聴いてしまう。演奏者は全員プロのため演奏を聴きたいが、今の状況からしっかりと演奏を聴けない苛立ちを覚えていた。私は一つのことしか集中できないのに!


「~♪」


 演奏は中盤に差し掛かり、チェロの心安らぐ音が自然と耳に入る。戦闘以外だったらじっくりと聞きたいのに本当に、政府は私の心情にお構いなしだ。


 この曲は、一定の演奏で代り映えが無いように聴こえるけど、ヴァイオリンの旋律が多重に交差して、メインであるチェロが引き立つ。この一定が魅力なのだ。


「一定…これって!?」


 マーチの動作を見ながら、演奏も耳に入った瞬間。私はようやく法則性に気付いた。答えが普段当たり前に目にしている動作に私は、笑みを零した。


『8分の12拍子だ』


 あの扇状の動きは、指揮者の動作だ。刀の持ち前のスピード消してまで、やった理由は一番最初に言っていた。曲の制御に関係がある。


 この動作だけで曲の音を消すトリックは、あるのだろうか?正直私も楽譜の特徴を掴めてないが、まずは攻撃の手を止める。


 チャンスは真上に上げて、左へ振りかざす時だ。その際マーチの身体はガラ空きになる。


「おりゃー!!」


 マーチの腹の上へ渾身の蹴りをお見舞いする。だが、悲しいことに私の身体能力では、動きを止めただけでも、目的はそれじゃない。


「テトラ来て!」


 距離が離れているテトラの元へ全速力で走る。ドレスだから走りづらい。私の作戦がバレた以上絶対にテトラの元へ追いつく。


「イロハ!」


 テトラも私の行動に気付き、互いの距離を縮める。あと少し、もう少しで彼の元へ辿り着ける。必死に手を伸ばした。後ろから私を追いかけている足音から察するに、マーチも私の作戦に気づいたようだ。


「私の法則性見破ったことに敬意を」


 なぜ、自分の作戦が見破ったことを褒めている。意味深な発言を疑問を抱いた瞬間。私の背中に今までに経験したことのない痛みが走った。


 「イロハ!」


 テトラの悲痛な叫びと共に私は床に倒れ込む。純白のドレスは、赤く染め上げてる。私はマーチに、重い一撃を受けていた。


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