楽譜33.キンチョウ・チョウオウ
「レーテにいれて頂戴イロハ」
ディアリマは覚悟を決めたように、握る手に力がこもった。なら、私も貴方を危険な世界へ連れて行った責任がある。
「わかった。私はディアリマを此処に引き込ませた、絶対に守るよ」
「あら、頼もしいわでも、私は守る術は身に着けるわ」
ディアリマはただ守られるだけではない。自分もこれから戦う人間のことを示す。彼女の本気度はきっと皆に伝わるだろう。
「ありがとう…ちょっとごめん」
携帯からの着信に手を取ると、相手はシナヴリアさんからだった。携帯の通話ボタンをタップをして、応答する。
「はい。イロハです」
「やっほーお話は終わったかな?」
まるでこちらのタイミングを見計らったかのような話し方に、全て見透かされている気がした。シナヴリアさんは、いったいどこまで私たちの行動を予想していたのだろう。
「今ちょうど終わりました」
「そうか、悪いけど別荘に戻れる?予定が急遽変わってね。フルート吹きの子も連れて行ってね」
自分の存在をディアリマに明かしたから、今日から本格的に作曲をしようとしたが、急遽予定変更。何かあったのだろう。
「わかりました。直ぐに向かいます」
「おねがいねー」
さて、今日の練習は無くなってしまったが、ディアリマに皆を紹介しよう。準備をしてもらって申し訳ないが、仕方ない。
「ディアリア皆に紹介したいから、着いて来て」
「えぇ案内して頂戴」
楽器をテキパキと片づけて、私たちは皆の待つ別荘へ向かう。今日は朝から快晴で暖かい日差しが私たちを照らす。
野原から林へ入って、歩いて数分後、見慣れた別荘へ到着だ。
「ただいま」
扉を開けると、テトラが私たちを玄関で待ってくれた。隣のディアリマを見ると緊張をしているのか、歩き方がどこかぎこちない。
「イロハから聞いてるよ、皆集まっているよ」
「うん、ありがとう」
パタパタと三人の足音だけが響く。静寂さもあって、ディアリマは少し緊張した様子で、表情が硬くなっているようだった。
「緊張しなくて大丈夫だよ」
「緊張するわよ…ここの別荘一等地じゃない…」
「そうなの?」
「アンタね!」
そういうことか、私はなにも分からずに別荘で過ごしていたが、さすが現地民。土地勘が分かっている。でも、話したらディアリマはいつも通りの様子に戻った。
「ただいま、もどりました」
「主役の登場だね」
談話室へ入ると、既に各々席に座っていた。シナヴリアさんは私たちの前に歩み寄る。
「しっかりと、話せたんだね」
「はい、シナヴリアさんのお陰です」
「選んだのは、君だよ」
もし、あやふやなまま今日を迎えても、何も変わらなかった。ディアリマの言葉で心の枷が外れたようだった。今はとても清々しい気分だ。
「初めまして、ディアリマ。俺はレーテのリーダのシナヴリアだ」
「ディアリマです!」
差し出された手をディアリマは握り返す。シナヴリアさんは、彼女の緊張をほぐすように優しく言葉を紡ぐ。
「緊張しなくても大丈夫。此処に居る皆は音楽が好きだ」
「はい!イロハから聞いています」
「君はどうしてレーテに入りたのかな?」
ディアリマの考えと組織にあっているのか質問をする。陽気な雰囲気から一変し、空気が重く張り詰めた。
「私は演奏は決して上手ではありません。しかし、ここでは時代に負けず、演奏の技術を磨けると思ったからです」
シナヴリアさんは、シナヴリアさんは彼女の返事を聞くと、太陽のように優しく微笑んだ。周りの皆は歓迎するようにパチパチと拍手をする。私も拍手に合わせた。
「ようこそ、レーテへ君を歓迎するよ」
「ありがとうございます!」
新しい居場所を見つけたディアリマは本当に嬉しそうだ。私も演奏の腕も、作曲を磨かないと!
「じゃぁ、三人は空いてる席に座って、話始めるから」
そうか、ここに呼ばれた理由は、今日の特訓が急遽無くなったからだ。言われるまま、空いてる席に腰を掛ける。
「急遽入った情報でね、特訓を続けたいのだけど…話が少し変わった」
「これは…」
「これって、記念祭の」
談話室の大型モニターには、大きな城が映っていた。私は初めて見る建物だが、ディアリマには見覚えがあるようだ。
「ディアリマは記念祭のこと知ってるね」
「はい、地元民なので明日ですよね?」
記念祭?何かのお祭りなのかな?あまり別の街は知らないから、ここはディアリマに任せよう。
「そう、北カルイザワでは毎年、記念祭があるんだ。音楽を祝う意味でね」
「音楽を祝うのですか、いいですね」
「毎年カルイザワだと、ビックイベントだよ~」
いいなー音楽を祝うから記念祭は、大いに盛り上がるイベントだろう。それに私達になんの関係が?他人ごとに想像していたが、記念祭はそうじゃ済まなかった。
「その記念日のメインイベントの舞踏会でセラピアの楽譜が展示されるんだ」
ディアリマ正式介入です。次回から皆が舞踏会へ潜入します!




