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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第3章:友愛の楽譜編
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楽譜31.不老不死

「一番最悪なのは、話せなくなった時だよ」


「話せなくなったとき」


「そう、イロハ分かっていると思うけど、俺は語り手がいない」


シナヴリアさんは、青い石の首飾りを私に見せる。それはシナヴリアさんの語り手の代わりの石だ。


「語り手はこの結晶だ」


「その、この結晶ってなんですか」


以前ソナタと戦闘をしていた時も、結晶については気になっていた。私はテトラと楽譜があるから、ドレスコードに換装できる。対して、シナヴリアさんは相棒的存在だが結晶が謎なのだ。


「簡単に言うと、語り手の命が尽きた時の形だ」


「命…」


「そう、テトラ、ヘードネ、エレオスも命が尽きるときこの姿になる」


シナヴリアさんは顔色を変えることなく、淡々と説明する。私は言っている意味が理解できなかった。命が尽きる。つまり死という概念でテトラ達は結晶化する。それは…


「テトラ達は人間じゃないのですか?」


「察しがいいね、語手は人間じゃない」


考えれば不自然な点はあった。ドレスコードに換装している時は、声だけ聞こえて私の目の前に居ない。小さな違和感を知らずにいた。


「語り手の根源は知らない。確かなのは音楽を愛していること。俺達から音楽を奪う敵じゃない。これは一般人も知らないこと」


テトラ達の語り手は一般人もしらない。それは楽譜同然に命が狙われる可能性がある。そのなかで自分の「音楽」のために協力している。


「イロハ知らないことは恥じゃないよ。これから知れば大丈夫」


話を聞くだけで、テトラが居なくなったことを考えてしまった。シナヴリアさんの語り手は命が無くなった。


曲を互いに話し合ったり、音楽を語り合える友がいない。話を聞いているだけなのに、胸が締め付けられる。


「すみません、シナヴリアさん」


私の相談を理由にシナヴリアさんに辛い話をさせてしまった。申し訳ない気持ちが押しつぶされる中、彼の表情は私の謝罪を気にしている様子がない。


「何が?俺は大丈夫だよ命がなくなっても、曲があればフィレオーと話せる」


「フィレオーて言うんですか?」


優しく結晶を持って私の前に持っていく。曇り一つない青く輝く結晶はなにか不思議な力を秘めているように感じる。


「そう、本当に可愛い子だったんだよね。いつもキラキラした空色の瞳で音楽について話す」


もう戻ることのない思い出。結晶を見つめるシナヴリアさんは愛おしそうに結晶を撫でる。

本当にフィレオーとシナヴリアさんは心が通う友愛が育まれていたんだ。


「語り手に限らず、人の関係は大切にしなよ?」


「頑張ってみます」


一方的に突き放すのはまだ早い。もし、ディアリマの関係が終わってしまっても、本当の事を話したい。まずは、話すことから始めよう。


「そうそう、沢山迷えばいいさ、まだ若いからね」


「そうですね、話してみようと思います」


胸に曇りが掛かる気持ちが、収まった。最近まで一般的だった私は、人間関係に張りつめていたのかも知れない。今まで何も気にしなかった分。考えすぎていた。


シナヴリアさんが言うように沢山迷って、その末に正解を見つければ良い。


 ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー


「おはよう」


「おはよう、昨日は申し訳なかったわ」


翌朝いつもの野原で、ディアリマは昨日の件で謝った。しかし、私にも非がある。演奏中に考え事をしてしまった影響で、ディアリマを気まずい空気にさせてしまった。


「ううん、私も悪かったの」


流れるようにディアリマはフルートを取り出すが、今日は違う。昨晩何を話すのか考えた。私は事で飾ることはできない。


正直に言う。隠さずに全部。


「ディアリマは私達の音楽団に入りたいんだよね?」


ディアリマは、準備している手を止めて、私を見つめる。頭に想像していた言葉を言い当てられた彼女は動揺していた。


「入りたいわ…」


恐る恐る、言葉を紡いだディアリマはフルートを強く握っていた。その手は小さく震えていた。必死に出した言葉に私は無視することはできない。彼女の気持ちに答えるように言葉を零す。


「ディアリマ私たちは、音楽団じゃないの」


「音楽団じゃないって…どういうことなの?」


嘘をつくのは、こんなにも辛いものとは、思わなかった。純粋に私たちに羨望の眼差しを向けていたが、これから彼女を失望させるかもしれない。でも、話すんだ。本当のことを。


「私たちは音楽組織レーテ、政府と戦っているの」


「政府と…イロハは犯罪者なの?」


「そうだよ、私は自由に作曲や演奏が、出来ない世の中が辛かった」


世界には、美しい音楽が沢山ある。だが、自由に作れない。隠して作曲していたこと。レーテとの出会い。ここ数日の出来事をディアリマに全部伝えた。


組織に入った理由と、つい最近までは一般人だったことも。


「故郷を離れても、作曲や演奏に溢れてる日々を選んだ。でも、その先は命を狙われる日々」


ここ数日で、沢山の命の関わりの巡りを知った。名の知れない作り手。エレオスとの出会い。そして、結晶化の存在。


組織に入ったら、今までの生活が無くなる。ただ作曲や演奏じゃ済まない。正面から政府と戦う。


「ディアリマ、私達の組織が正解とは、断言しない。戻れるのは今のうちだよ」

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