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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第3章:友愛の楽譜編
30/45

楽譜30.ウラハラ・ハラ

 

「これなら、大丈夫。今から演奏練習しようか」 


「本当になんて、お礼をすれば」


 演奏も上達して、後はディアリマの持ち込んだ曲のみになった。諦めずについて行ってくれた。


「別にいいよ、私が勝手にやったことだから」


「そう、イロハは自分のことやらなかったわね」


 作曲のためにカルイザワに居るとは、言いたくても言えない。

 自分の特訓をやりたくても、やれない状況だ。


「大丈夫それは、仲間にも伝えてあるから」


 睡眠時間を削って、作曲時間の確保をしなければならないが、ディアリマの上達を考えたら、安いものだ。


「いいわね、演奏できる仲間が居て」


「ディアリマも何処かの演奏団に入れば、いいと思うよ」


 ディアリマをこちらの世界に引き込ませない提案をするが、表情は曇りが掛かったようなもの。嬉しい表情とは言えなかった。


「そ、そうね私も一人旅もいいわ」


 何かを隠しているような、言葉。互いに隠し合っているような会話。

 しかし、そこに口出しは出来なかった。


 喧嘩ではない気まずい空気感に押しつぶさながらも、私たちは演奏の練習を再開した。


 ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー


「今日は調子悪かったかな?」


「少し詰め込みすぎたのかもね」


 会話の後から、些細なミスが互いに増えて、練習どころではなかった。空はまだ明るいが、これ以上練習をしても互いに疲れるだけだ。


「ディアリマ今日は休もう。詰め込みすぎたね」


「気遣いありがとう。言葉に甘えるわ」


 本当はもっと、練習をしたい。でも、本当の事を話したら、関係は此処で終わってしまう。その恐れで話し合えない。


「じゃぁ、また明日お願いするわ」


「うん、また明日」


 互いに別れの挨拶を交わした後、ディアリマは遠くへ行った。私は去っていく姿を見て、むしゃくしゃする気持ちでいっぱいだった。まさにジレンマだ。


 音楽が関わるだけで、政府は命を簡単に狩る。私はまだ弱い。人を一人守れることすら難しい人間が簡単に、「一緒に組織に入ろう」とは気やすく言えない。


「イロハ」


「シナヴリアさん」


 作曲もせずただぼーっとしていると、シナヴリアさんが私の元に来ていた。まったく気付かなかった。流れるように私の隣へ草の上に座る。


「これおやつだよ、シンフォニアから」


「ありがとうございます」


 渡されたのはシュークリームだ。生地は固めのクッキー生地は持つだけでも美味しさが漂う。ほのかに香る生地はどうやら焼き立ての様だ。


「俺も食べよう~」


「いただきます」


 一口だけでも正に美味。生地のサクサクな硬さは丁度良い。そして、中身のクリームは柔らかいカスタードクリームと香りづけのバニラは贅沢なおやつだ。


「甘いものはいいね、イロハの気持ちは上がったかな?」


「ありがとうございます。そんな暗かったですか?」


「うん、沈み込んでいたよ」


 変に気遣ってしまった。テトラの昼食の時もそうだが、組織の皆に変な心配を掛けていた。今後は気を付けよう。


「心配ありがとうございます。大丈夫です」


「良かった。それで例のフルート吹きの子は」


「今日は早めに終わりました」


 特訓期間は終了時間ギリギリまで、別荘に帰らなかった私だが、早めに特訓を終えていることにシナヴリアさんは、優しく問いかけた。


「おや、それはどうして?」


「恐らくですけど、ディアリマは組織に入りたいと思うんです」


「なんで、そう思ったの」


 これは、ただの憶測。ディアリマは学校で音楽を話し合える友は居ない。今の時代だから、仕方ない。だが、初めて音楽に熱中している私と出会ったことで、組織に興味が向いた。


 ディアリマの顔を見れば、分かる音楽に対する話をする姿は、まるで星が散らばったような輝く笑顔で会話をしているんだ。誰でも分かることだ。


「ディアリマは才能があります。スポンジのようにアドバイスを吸収をするんです」


 音楽の才能は本来世の中の人のためにあるもの。お金のためじゃない。純粋に彼女の努力は人を楽しませるために使って欲しい。

 

 私の気持ちをシナヴリアさんはただ、頷きながら最後まで聞いてくれた。


「イロハの気持ちも間違えてはない」


「やっぱりこのまま、言葉を濁した方がいいですよね」


「イロハそれで良いの?」


 それで良い。良くないわけがないのが本音。こんなに音楽に熱中している子は、そうそう居ない。組織のメンバーで演奏をしたら、更に美しい演奏が出来るに違いない。


 なんなら、音楽の才能を秘めたダイヤの原石。他の人に渡ってほしくないぐらいだ。


「本当は彼女を組織に入れたいですよ、仮にも今政府と対立しているんですよ?」


「そうだね、毎回ドンパチやっている。現にイロハも怪我したし」


 人が簡単に死ぬ世界だ。軽い命はどこにもない。だから、この板挟みに私はどうしようもないのだ。


「決めるのはまだ早い。隠さずに話せばいいんだよ」


「つまり、私は犯罪者ですっと言うんです?」


「そう!隠す方が余程苦しいよ」


 苦しいか…私はどうやら隠すことが苦手なようだ。こそこそと作曲していたり、音楽に嘘をつくことが出来ない。


 ディアリマに嘘をつくのは、正直辛い。素直な彼女に辛い思いをさせていると思うと余計にだ。


「一番最悪なのは、話せなくなった時だよ」

作品投稿一か月祝!いつも観ていただきありがとうございます。更新ができるのは皆様のお陰です。明日も18時に更新します。引き続き☆やブックマークなどの応援などよろしくお願いします!

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