表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第3章:友愛の楽譜編
29/45

楽譜29.ランチ・ミュージック

 翌日私はディアリマの演奏向上のために練習をしていたが、難航していた。


「上手に同じ曲しか演奏しなかったから、癖がついてるね」


「今まで、やらなかったツケね」


 ディアリマは、楽譜通りに演奏は出来ていた。問題は所々違和感があり、それが一向に改善できないことだ。


「じゃあ、私が演奏するね」


 楽譜通りで難しいなら、私がまず手本を見せる。それが彼女のヒントになれば良いかな。レーテから貸し出しのフルートを手に持つ。


「〜♩」


 皆んなにはディアリマのことを話したら、案外賛成だった。私の作曲は後で良いと返事をもらった。


 だが、時間は有限だ。ダラダラ続くのは良くない。彼女の意欲を削ぐことなく、練習を楽しんで欲しい。


「どう?」


「私の思う、演奏と全然違うわ…」


 演奏を終わると、ディアリマは自分の演奏方法の違いに、あんぐりとしていた。やっぱり長年の癖は手強い。


「それでも、楽譜を見るよりも演奏をしてもらった方が覚えやすいわ」


「ディアリマは耳で覚える感じか…」


 彼女も難しいと言っても、上手くなる方法を考えている。なら、私が演奏をして正解を見つけてくれば、良い。


「演奏しながら、覚えようか」


「お願いするわ」


 それから、私達は何度も、何度も同じ箇所を練習した。ディアリマは自分の癖に苦労しながらも、演奏を続けた。


 元々ディアリマは、演奏の基礎を持っていた。飲み込みも早く、指摘箇所も素直に聞いてくれて、直ぐに実行してくれた。


「大分よくなったよ!」


「本当かしら?」


 一通りの演奏を終わると、今朝に聞いた時よりも上手になっていた。私も演奏しながら、ディアリマの演奏を聴いていたが、違和感は少なくなっていた。


「後2、3曲ぐらい練習しようか」


「そ、そうね…」


 流石に一曲だけじゃ、あの曲を極めるのは難しい。近道はない。ディアリマは顔をしかめる理由は分かるが、もうひと頑張りだ。


「イロハ」


「あれテトラ?」


 さて、演奏を再開しようとしたが、後ろからテトラが居た。手元には楽器では無く、ランチボックスを手に持っていた。


「お昼持ってきた」


「もう昼か」


 練習をして大分時間が経っていたのか、確かに太陽の位置が真上だ。お昼の時間にはもってこいだ。


「昨日お昼食べなかったでしょ」


「そうだった、ありがとう」


 昨日は作曲に夢中で、お昼ご飯の存在すら忘れていた。テトラからありがたく昼食をいただき、葉の上に座る。


「ディアリマお昼にする?」


「そうね、私も食べるわ」


 ディアリマは自分の昼食を用意していたようで、私の向かい側に座った。だが、テトラは私達と昼食を取らずに帰ろうとした。


「一緒に食べないのは?」


「うん、俺は帰るよ」


 皆んなで一緒に食べれば良かったのにな…テトラは個人特訓があるから、仕方ないか…テトラも一人になりたい時もあるか。


「美味しそう」


 皆と昼食を取れないのは、残念だが、いただいた物はありがたく貰う。ランチボックスの中には、サンドイッチ。たまごやサラダと、色とりどりで美味しそうだ。


「いただきます」


 まずは、たまごサラダ。ゆで卵を潰して、味付けは王道のマヨネーズと胡椒。マヨネーズとたまごの相性は抜群だ。


「ローストビーフだと」


「何よ」


 ディアリマも昼食はサンドイッチ。しかし、私の物とは違う。具材はローストビーフだ。調理も面倒で値段も普通の昼食にしては高いもの。


「やっぱお金持ちだ」


「てもあげないわよ」


「そんなこと考えてないよ」


 欲しいとはちょっと思ったが、流石に人のものをそう、簡単にはいただけない。今度はハムサンドイッチに一口食べる。


「ねぇ、イロハ達は何でカルイザワに居るの?」


「私達はまぁ、旅をしているのかな?」


 言葉をソフトにすると、今のは間違いない。事情を知らない人に、政府と対立している。なんて、言えるわけ無いからね。


「旅?演奏団とかの」


「まぁ、そんなところ」


 一般人には私たちのことを、公にしない。少し踏み込めば簡単に危険な目にあってしまう。現に私は一般人から政府から即死刑と、言い渡される。


 普通の生活は簡単に変わるのだ。


 ディアリマには、危険な世界に踏み込まず、フルートの腕をあげて、沢山の人を楽しませて欲しい。


 私は普通に我慢出来なかった。罪悪感はある。だけど、私は後悔はしたくない。自由に縛られた音楽を知った以上私は前へ進むことしか、出来ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ