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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第3章:友愛の楽譜編
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楽譜28.ア・リトル・レッスン

 フルートの演奏が始まって、数秒私は彼女の演奏に違和感を持っていた。決して下手な演奏はしない。基礎は出来てるし音も間違えてない。


「ちょっと何よその顔!」


 演奏を終えると、彼女は私の顔を見て不満な様子。顎に手を当てて彼女の演奏を振り返るが、やはり、心当たりがない。


「ごめん、演奏の内容を思い出していた」


「やっぱり下手かしら」


 彼女は顔を下に俯かせて、自信のある表情から暗い表情になった。演奏開始前も「下手」と言われることを嫌っていた。


「下手って言ってないよ、演奏してくれたのにごめんね」


 誰だって演奏は上手になりたい。その成果が実らないのは私も経験した。せっかく演奏してくれたのに不安な思いをさせてしまった。彼女に率直な気持ちを伝える。


「基礎は出来てるし、譜面も間違えてないけど、何か違和感がある」


 一曲だけじゃ、演奏者の癖が分からない。他の曲を聴けば彼女の演奏の問題点が解明するかもしれない。


「他に演奏できる曲は?」


「これだけよ」


「ん?」


 演奏技術は基礎は出来ている中、曲は今のだけ。これだけとは聞き間違いか?と彼女に聞き返した。


「だから、これしかまともに弾けないわ」


 彼女はそれが当たり前のように発言したが、これは大問題だ。直ぐにでも指摘したが、それだとただの否定的な言葉になる。


「この曲が好きなの?」


 まずは、相手を知ること、知らなければ何も始まらない。彼女が一曲しか弾かない曲には必ず理由がある。


「ええ、これが一番好きな曲、だから極めたいの」


 彼女の桃色の瞳は、真っすぐに私を見つめていた。ひしひしと伝わる気持は、絶対に成し遂げる覚悟を秘めていた。


「他に演奏している友達とかいる?」


「居ないわ。皆都会で稼ぎの良い演奏団に所属がほとんどよ」


 そっか、これはどこのでも共通か、 今の安定職は演奏団。娯楽が集約した都会は、音楽は古くから経済が動いているから必然的に都会に集中する。


 彼女の演奏の成長ができなかった理由が分かった。


「学校は将来のために覚える演奏だけ、だから意欲が上がらないのよ」


「演奏嫌いじゃないけど、同じものですこし飽きちゃうからわかる」


 ルーティンと言えば分かりやすい。学校の授業は基礎と応用は習えるが、それはお金を作るための演奏。でも、そこに自分の好みの音楽は教えられない。


「そうなの!みんなお金のことばっかなの」


 でも、ひとつだけじゃダメ。一つの曲にも、他の曲からしか得られない知識が必要になる。上手になるためにも嫌なこともする必要がある。


「なら、一緒に曲を極めよう」


 演奏にも種類は多岐にわたる。遅い演奏、逆に早い演奏もある。彼女は一曲しか演奏できないなら、どこで適切な演奏をすれば、分からないのだろう。


 違和感の正体は演奏方法だ。


「ほんと!それならぜひ教えて欲しいわ」


 彼女は目を輝かせて、教えを被った。良かった。ここで努力を嫌う人はいる。楽な方法ではないが私は音楽好きなら、力になりたい。


「うん、私も曲の完成みたいし、協力する」


「ありがとう!アタシ、ディアリマ」


「イロハ、よろしく」


 よろしくの意味を込めて握手を交わすと、ふと、空の色が橙色の事に気づいた。すっかり時間を忘れていた。18時には、別荘に戻る予定だった。


「ごめんディアリマ、私戻らないと明日もここにいるから来れる?」


 本当は今日にでも練習をしたかったが、組織に所属している以上ルールを守る義務がある。科の情は理由に嫌な顔をせずに答える。


「勿論よ、朝もここにいるわ」


 予定を決めて、私は急いでトイピアノと楽譜を持ち出し、別荘へ走った。


 ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー


「ただいま、帰りました」


 扉を開けると、テトラが丁度入れてくれた。時間は間に合った。安堵の息を漏らしたのはつかの間だ。


「おかえり、作曲できた」


「あ」


 思わず声を漏らしてしまった。今日は私は何もしていない。それどころか、私の特訓から大きく外れてしまったからだ。


「何も思い浮かばなかった?」


「…はい」


 目を泳がせながら返事をすると、テトラは私のことを特に言及することは無かった。


「大丈夫、まだ1日目だから、セレナーデとヘードネも意見食い違って大変だったみたい」


「想像できるかも」


 ヘードネとセレナーデさんって性格が全く違うから、作曲に手こずるのは想像できる。曲は二人で一つのようなものだから、安易に続きを書けない。


「テトラは何していたの」


「俺はずっと好きな曲演奏していた」


 ふむ、テトラは個人で特訓か、テトラの演奏は楽譜通りに演奏しているから、外れることが無いんだよね。


「自然の中だから落ち着いて演奏できて楽しかった」


「わかる!すごいよね全部の音が、曲の一部になってるようで」


 そっか、テトラも外で演奏していたんだ。屋内と外じゃ演奏の雰囲気が変わる。屋内の楽器だけの音も良いが、外はそこに自然の音が入るから良い。


「もしかして、カルイザワの特訓はこれが、目的なのかな?」


 確信ではないが、自ら自然と音楽の関係を気づかせるためにシナヴリアさんは、答えを言わなかったのだろう。


『だとしても、テトラと一緒に作曲できない理由ってなんだろう?』


 特訓はまだ一日目、自分の力を付けられる機会を無駄にしちゃダメだ。でも、まずは…ディアリマのことを皆に言わないと。


本日も観ていただきありがとうございました。引き続き応援のほどお願いします。

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