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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第3章:友愛の楽譜編
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楽譜27.オーロラプリンセス

 私達は大都会トウキョウから自然豊かな、カルイザワにやって来た。昨日は別荘の掃除で特訓が出来ずに一夜が明けてしまった。


 場所は移り、別荘の入り口前で今日の動きを皆で確認している。


「さっ!今日から特訓だよ!」


「待ってました特訓!」


 待ってました!やっと作曲に没頭できる。ここ数日はドタバタとしており、毎日の日課であった作曲の時間すらなかったからだ。


「イロハノリ良くなってるね」


「そりゃぁ、昨日特訓出来ずに一夜今日からビシバシやりますよね?」


 当然の答えを問うようにしたが、シナヴリアさんは深刻な表情をする。まさか今日も作曲が出来ずに終わってしまうのか?


「勿論!と言いたけど…残念なお知らせです」


「えっトイピアノ?」


 シナヴリアさんは、私に小さな子供が使うトイピアノを渡される。まさか作曲はこのトイピアノを使うのか?と視線を向けると、ニッと笑い返された。


「イロハ一人で作曲してね」


 まさかの一人での作曲だった。私はてっきりテトラ作曲すると勝手に考えていたが、違ったようだ。


 ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー


「まさかのボッチか」


 皆とは場所は離れて、別荘から歩いて数分後にある野原で紙とペン、そして、トイピアノを持ち草の上に座った。


「今まで作曲は一人でやってたからいいけど」


 そう思うと一人の時間は久しい、皆といる事が当たり前だったが、目の前は綺麗な緑の景色と私だけこの時間は過去に戻ったような感覚だ。


「本当に小さいな、トイピアノ」


 鍵盤を叩くと、ポロンと可愛らしい音が鳴る。まずは一通り、出来上がっている箇所だけ弾いてみよう。


「たんたん、たんたん」


 譜面上をなぞる様に音が奏でられる。しかし、最近はテトラが、創造してくれた壮大なスケールで奏でられていたが、楽器が減るだけで別の曲のようだ。


「わからん」


 一通り曲を弾き終わると、何かしらアイディアが出ると思ったが、何も思い浮かばない。諦めて地面に寝転ぶ。


「天気も良くて気持ちが良いね」


 空は青く薄く雲があるだけで、まさにお出かけ日和とはこの言葉だろう。風に乗って雲がゆっくり動く様子をただひたすら見つめ続ける。


「葉っぱの揺れる音、鳥のささやき」


 街の音すら感じられない野原は、葉が揺れるだけでも、心が落ち着く様な気がした。音に集中するために試しに目を閉じる。


「これは自然の中の音楽会だね」


 葉っぱの揺れる音は、風によってずっと聴こえる。例えるなら自然のドラム。鳥の鳴き声は時折奏でられるハープのような音色だ。

 

 この自然の音楽会は知らない間に眠りの世界へ誘われた。


 ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー


 ポロン、ポロンとピアノの音色に意識が浮上する。ぼんやりとした視界では、藤色のショートカットの女性がピアノを弾いていた


「だれ?」


 演奏主に声を掛けると、私の元へ勢い良く顔が振り向かれる。余程驚かせてしまったのか、ピアノからは乱暴な音が鳴る。


「起きているなら言いなさいよ!」


 なぜ起こるのか。勝手に人の楽器を使うとは、なんと失礼な、私も借り物だからとやかく言わないが…


「今起きた。この辺りの人?」


 寝転んで体勢を立て直すが、まだ感覚が鈍い。気持ちよく寝ていた証拠だ。


「そうよ、何か悪いかしら?」


 彼女の服装を見ると、ふんわりとした真っ白なワンピースと花の髪飾りは、どこかのお嬢様のようだ。


「悪くないよ、このピアノに興味があったの?」


 目の前でおもちゃのピアノに興味を持つのは、楽器を初めて触る子供までだと思ったが、このお嬢様は違った。その疑問を投げかけると、視線は私の楽譜に向けられる。


「貴方が寝ている横に楽譜とピアノがあったからよ」


「そっか洋装おいとは裏腹に大胆だね…」


 山に行くのは、そこに山があるからと似た理由を堂々と宣言したのは、彼女に非が無いことが分かって安心した。


「これって?あなたのフルート?」


「別になんだっていいでしょ」


 彼女の横には銀色に輝くフルートが置いてあった。彼女は話を逸らすように、フルートを隠してしまった。


「隠さなくていいじゃーん、貴方のフルート一般流通しているものじゃないでしょ?」


 隠す前に見えた。フルートは金属部分は基本同色。しかし、彼女の物はピンクゴールドが美しく見える箇所があり、目を奪われるデザインだ。


「そうよ!これはアタシ専用のものよ」


 この小さな気づきが嬉しかったのか、彼女はフルートを見せる。綺麗に磨きあがっているフルートはきっと良い音を奏でてくれそうだ。


「ねぇ良かったら、弾いてほしいな?ピアノのことは何も言わないから」


「下手でも、何も言わない?」


 下手でもこれは音楽好きとして気になる。せっかくの縁だ。どんな演奏が聴けるのか是非お願いしたい。


「うん、言わない」


「わかったわ」


 彼女から了解を得ると、フルートを手に音色を奏でる。静かな野原の中でのフルートの演奏は決して下手ではない。しかし、私の脳裏には違和感があった。

本日も投稿しました。観ていただきありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。

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