楽譜26.マイルーム
歓迎会を楽しんだ昨晩、汽車はトウキョウから離れて、私達は緑溢れる自然の中に居た。
「というわけでカルイザワに到着!」
「緑しなかない!」
周りは緑しかない。昨日まではビルの景色から一変。息を吸い込めば澄んだ空気が肺に入り込み、とても気持ちが良い。
「そりゃ此処は、自然があってこそだよ」
「暫くは、この周辺で楽譜の反応があるまで、待つ形でしょうか」
「いや、ナガノに俺の別荘あるからそこに向かう」
別荘…アニメやドラマでしか無いものだと思っていたけど、実在していたのか、でもカルイザワ=別荘は古くから言われているけど、変わらない物なんだな…と頭の片隅に置いた。
「シナヴリアさんってお金持ちですか?」
「今は普通、昔買ったの」
昔はお金だったんだ。シナヴリアさんってあまり内輪の話しないから、結構知らないことが多いんだよね〜まっ、あまり気にすることじゃないからいいか!と考えることはやめた。
「今後はディケに対抗できる力を身につけて欲しいんだ」
音楽管理組織の『ディケ』まだ謎の多い組織、だが、力はソナタを始め、私以上の実力者がわんさか居る。力を付けるのは必然だ。
「力ですか…カラオケとか楽器弾いたりするんですかね」
でも、普段の特訓ならわざわざカルイザワでやる理由は、何だろうか?考えている私よりも先に、セレナーデさんはぽつりと呟く
「曲の続きだろ」
「セレナーデ正解!」
ピシッと指を向ける。ピンポーンと効果音が鳴りそうな感じだが、セレナーデさんは特に嬉しそうじゃなさそうだ。
「曲の続きって何でしょか?」
「イロハ〜曲完成してないじゃ〜ん」
「あっ、いつもテトラが創造してくれたんで、忘れてました」
そうだ元々私が作った曲は未完成、毎度毎度、冒頭部分以外は、変わっているから、自分の曲が未完成なのを忘れていた。
「もちろん、曲は毎回アドリブでもいいんだけど〜安定したコードも覚えた方がいい」
確かにソナタは曲調は同じでコードのタイミングが同じ、それは決して悪く無い。正確に出せるコードは安定してるとも言える。
「勿論全部丸覚えだと、相手に攻撃読まれるから工夫が必要だけどね」
「納得しました!それで何故カルイザワなんですか?」
シナヴリアさんはこの質問を待ってました!言わんばかりに手を大きく広げる。心地の良い風がふんわりと髪を揺らす。
「何と言ってもここは、自然だらさ」
「自然?しぜん?シゼン?」
「あれ?ピンと来ないね」
イマイチピンとこない。楽器が自然と絡み合うのはわからないし、演奏の練習はいつも室内だから尚更だ。
「そうだね、今の時代だと自然の中の音楽触れ合って無いもんね」
「はい、なので尚更わからないのですよ」
「まっ、このことは追々わかるよ、まずは別荘あるから行こうか」
ここで理由がわからないのは、むず痒いが仕方ない。汽車からまとめていた衣類や日用品の入った鞄を持ち、移動を開始した。
林をかき分けて、歩いていると鳥の鳴き声が聞こえる。空を見上げると青空が広がっている。アイチでもここまで静かな場所はない。
「見えてきたあそこだよ」
「デッカ!」
歩いて数分後、林を抜けた先には西洋風の建物が見えた。壁は白を基調としており、緑の中にぽつりと白い別荘はなんとも、異質な空間が漂っていた。
「まずは、荷物を部屋に置いて、その後は掃除だよ~」
別荘内は天井にはキラキラと広く輝くシャンデリアに床の大理石が反射しており、別荘と言うよりも豪邸のような内装だ。
「掃除ですか?結構綺麗に見えますよ?」
「でも、小さな汚れは早めにとって方がいいよーちりも積もれば山になるからね」
そんな事があり、私たちは別荘の清掃を始めた。だが、掃除の機械が細かい埃を落としてくれるお陰で、私たちはやることが少ない。
「雑巾とかいつぶりだ?家の機械が全部壊れた時以来だわ」
雑巾を片手に窓を磨いている理由は、別荘の構造上機械の手が届かない箇所が、どうしても発生するので、ここは人間の出番だ。
「ふんふんふーん♪」
別荘内は床を磨き、外装の清掃と様々な機械が動いており、オン源を生成するための音楽が響いている。マーチングを彷彿させる演奏は、鼻歌を歌ってしまう。
「あっ!セレナーデさんこの部屋の清掃終わりました」
部屋の前を偶然通り掛かった。先輩であるセレナーデさんに清掃完了の確認を取らせる。険しい顔で窓の表面を小指で擦る。
「おい、真面目にやってんのか!」
小指に乗った小さな汚れにセレナーデさんは大激怒、真面目にやったが不合格掃除だけでも厳しいセレナーデさんは、案外完璧主義者なのかもしれない。
「えーシビアな判定」
「窓以外にも、引き戸も見ろ」
いつも、機械に任せ切りだったので、アナログな掃除方法を知らない私に、掃除箇所を的確に指摘してくれた。さて、このアドバイスを糧に綺麗にするぞ!張り切って掃除を再開する。
「ヘードネ!エレオス走り回るな!埃舞うだろうが!」
廊下では、小さい子たちに声を上げているセレナーデさんは、兄弟たちの長男のように見えた。本人に言ったら怒られる未来しかないので、「お兄ちゃん」とは言わない。
3章始まりました。引き続き読んでいただけますと、幸いです。よろしくお願いします。




