楽譜25.扉
イロハとエレオスの歓迎は、各々好きな形で進み、俺は適当な料理をつまんでいた。
「あ!セレナーデさん!何食べているんですか?」
「なんでもいいだろうが」
皿一杯に料理を盛り付けいているイロハ、興味津々に俺の皿を見るが、特に代り映えしない者だ。
「そうだ!お礼を言えませんでした。私たちを守っていただきありがとうございました」
別にこれは俺が組織に所属している以上やっているだけ、お礼を言われる筋合いはない。
ましてや、イロハも怪我の中よく演奏出来たものだ。
「別に」
「それでも、助かりました。ねエレオス?」
「はい!本当に助けられました」
二人の表情を見ると、たまにはお礼を言われることも悪くない。だが、照れくさいことだ。
自分が組織に所属しているのは、自由の楽譜から得られるものだ。それが、偶然人助けになっただけだ。
「そうかよ、お前腕大丈夫か」
俺は、切り傷、包帯の箇所が多く見た目が派手に見えるが、戦闘や演奏には影響がない。だが、イロハの手当は痛々しいことが、想像出来る痕だ。
「はい!大丈夫です。自分でもびっくりです。演奏中は大丈夫でしたが…」
「夢中になってんだろ」
「それも、そうですね」
イロハは音楽に対する意欲が高いのは、知っている。今の時代に抗うように演奏する姿は、痛みを忘れてしまうほどだ。
だが、その様子は危うい場面に繋がる。いつか、仲間を捨てて逃げることもある。経験が浅いイロハを導くのは、同志である俺達だ。
「イロハ~デザート食べる?」
「食べる!じゃ、私テトラのところ行きますね」
テトラに呼ばれて、イロハ俺たちの元を去る。一方のヘードネは、空になったガラスのコップを持ち、俺を見続ける。
「飲み物欲しいのか?」
「うん、ちょうだい」
「貸せ」
コップを受け取ると、ドリンクサーバーから好きそうな飲み物を選ぶ。
歓迎会もあって、飲み物の種類はフルーツを使った飲み物から、炭酸飲料と、色とりどりの飲み物がガラスの容器に並べてある。
「ほらよ」
「ありがとう」
俺も適当な飲み物を注ぎ、ソファにドカッと座る。料理も大分食べ進めたので、一旦飲み物を飲んで休憩だ。
「ヘードネ」
「何?」
飲み物に夢中だったヘードネは、コップから視線を外し俺と目を合わせる。空色の瞳にはクリアな青、が広がっていた。
言うのを迷っていた。今更遅いと思うが、言わなければならないと思った。
「すまなったな」
弱い自分を認められず、怒って当たっていた。小さい子供だ。なんとも、情けない話だ。
許してほしいとは、言わない。ただ、今度は向き合って、作り手と語り手の関係を続けたい。
その意味を込めて俺はヘードネに顔を見て謝罪をした。
「なんで謝るの?」
なんと、帰ってきた言葉は、なぜ謝っているのか、理解していない表情だ。ヘードネは話の興味を逸らして、飲み物をズゾーッとストローで飲み干した。
「ヘードネ、セレナーデの曲が好き。だから、他は知らない」
曲が好きなだけで、彼女は俺と共に曲を奏でてくれた。それだけの理由だ。
たったひとつだけの事だけで良い。初めから俺の行動を許してくれたようなものだ。
「そうかよ、なら俺は曲の更に続きを書く」
彼女の好きを裏切らないように俺は自分の曲の続きを書く、これは決定事項だ。
今までの許しを無くすことはしない。だが、この許しを可能な限り「曲」という形で返す。これが俺の新たな目標だ。
「セレナーデ」
「なんだよ」
「おかわり」
ヘードネの空になったコップを受け取り、さっきからオレンジジュースしか飲んでないのによく飽きないものだと、呆れながら飲み物を注ぐのであった。
ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー
イロハたちが歓迎を行う中、音楽管理組織『ディケ』の基地内は、作戦失敗による空気感で最悪だった。
「隊長」
階級が上であるソナタは、他の部下よりも先に隊長であるコロディアに声を掛けるが、何も反応がない。
いつもは、作戦に失敗した場合は、殴り暴力による制裁をしてきた。しかし、今回はコロディアの失敗だ。
「隊長が失敗…」
「責任とかどうするよ」
端で機体の操作をしている下っ端の隊員は、いつものコロディアの振る舞いから不安が溢れた。
その声を聴いたのか、彼女はなんと自身の顔面を場所に関係なく殴り始めた。
「……」
頬や瞼の上を無造作に殴る動作は、手加減の文字は知らずに音を立てて、殴る姿は隊員達は止めようが無い。
ボロボロになるコロディアの姿をただ、見ることしかなかった。
「コロディアちゃ〜んそんなに殴ったら、また可愛い顔に傷ができるよ?」
コロディアを痛めつける手を止めたのは、階級を証明する、赤い制服を身にまとった男だった。
「離していただけますか?楽譜のひとつも消せなかった戒めです」
「でも。失敗したよね?現実受け止めなきゃ〜」
口調は軽々しいが、現実を受け止めないコロディアには、行動を改めさせるには十分な一言だった。
「すみません、取り乱しました。処罰ならなんなりと」
冷静さを取り戻したコロディアは、男に罰をもらうように促す。しかし、男は罰を気にしている様子は、感じられなかった。
「いいでしょ?今のが罰で、次は分かっているよね?」
「はい、コロディアは法に従うまでです」
今回は許す。だが、次はない。釘を刺されたのは、少なからずコロディアだけではない。ここにいる隊員全員に向けた言葉だ。
2章終わりました。見ていただきありがとうございます。明日から3章に入ります。是非今後も楽しんでもらえますと、幸いです。
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