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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第2章:快楽の楽譜編
25/45

楽譜25.扉

 イロハとエレオスの歓迎は、各々好きな形で進み、俺は適当な料理をつまんでいた。


「あ!セレナーデさん!何食べているんですか?」


「なんでもいいだろうが」


 皿一杯に料理を盛り付けいているイロハ、興味津々に俺の皿を見るが、特に代り映えしない者だ。


「そうだ!お礼を言えませんでした。私たちを守っていただきありがとうございました」


 別にこれは俺が組織に所属している以上やっているだけ、お礼を言われる筋合いはない。

 ましてや、イロハも怪我の中よく演奏出来たものだ。


「別に」


「それでも、助かりました。ねエレオス?」


「はい!本当に助けられました」


 二人の表情を見ると、たまにはお礼を言われることも悪くない。だが、照れくさいことだ。


 自分が組織に所属しているのは、自由の楽譜から得られるものだ。それが、偶然人助けになっただけだ。


「そうかよ、お前腕大丈夫か」


 俺は、切り傷、包帯の箇所が多く見た目が派手に見えるが、戦闘や演奏には影響がない。だが、イロハの手当は痛々しいことが、想像出来る痕だ。


「はい!大丈夫です。自分でもびっくりです。演奏中は大丈夫でしたが…」


「夢中になってんだろ」


「それも、そうですね」


 イロハは音楽に対する意欲が高いのは、知っている。今の時代に抗うように演奏する姿は、痛みを忘れてしまうほどだ。


 だが、その様子は危うい場面に繋がる。いつか、仲間を捨てて逃げることもある。経験が浅いイロハを導くのは、同志である俺達だ。


「イロハ~デザート食べる?」


「食べる!じゃ、私テトラのところ行きますね」


 テトラに呼ばれて、イロハ俺たちの元を去る。一方のヘードネは、空になったガラスのコップを持ち、俺を見続ける。


「飲み物欲しいのか?」


「うん、ちょうだい」


「貸せ」


 コップを受け取ると、ドリンクサーバーから好きそうな飲み物を選ぶ。


 歓迎会もあって、飲み物の種類はフルーツを使った飲み物から、炭酸飲料と、色とりどりの飲み物がガラスの容器に並べてある。


「ほらよ」


「ありがとう」


 俺も適当な飲み物を注ぎ、ソファにドカッと座る。料理も大分食べ進めたので、一旦飲み物を飲んで休憩だ。


「ヘードネ」


「何?」


 飲み物に夢中だったヘードネは、コップから視線を外し俺と目を合わせる。空色の瞳にはクリアな青、が広がっていた。


 言うのを迷っていた。今更遅いと思うが、言わなければならないと思った。


「すまなったな」


 弱い自分を認められず、怒って当たっていた。小さい子供だ。なんとも、情けない話だ。


 許してほしいとは、言わない。ただ、今度は向き合って、作り手と語り手の関係を続けたい。


 その意味を込めて俺はヘードネに顔を見て謝罪をした。


「なんで謝るの?」


 なんと、帰ってきた言葉は、なぜ謝っているのか、理解していない表情だ。ヘードネは話の興味を逸らして、飲み物をズゾーッとストローで飲み干した。


「ヘードネ、セレナーデの曲が好き。だから、他は知らない」


 曲が好きなだけで、彼女は俺と共に曲を奏でてくれた。それだけの理由だ。


 たったひとつだけの事だけで良い。初めから俺の行動を許してくれたようなものだ。


「そうかよ、なら俺は曲の更に続きを書く」


 彼女の好きを裏切らないように俺は自分の曲の続きを書く、これは決定事項だ。


 今までの許しを無くすことはしない。だが、この許しを可能な限り「曲」という形で返す。これが俺の新たな目標だ。


「セレナーデ」


「なんだよ」


「おかわり」


 ヘードネの空になったコップを受け取り、さっきからオレンジジュースしか飲んでないのによく飽きないものだと、呆れながら飲み物を注ぐのであった。


 ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー


 イロハたちが歓迎を行う中、音楽管理組織『ディケ』の基地内は、作戦失敗による空気感で最悪だった。


「隊長」


 階級が上であるソナタは、他の部下よりも先に隊長であるコロディアに声を掛けるが、何も反応がない。


 いつもは、作戦に失敗した場合は、殴り暴力による制裁をしてきた。しかし、今回はコロディアの失敗だ。


「隊長が失敗…」


「責任とかどうするよ」


 端で機体の操作をしている下っ端の隊員は、いつものコロディアの振る舞いから不安が溢れた。


 その声を聴いたのか、彼女はなんと自身の顔面を場所に関係なく殴り始めた。


「……」


 頬や瞼の上を無造作に殴る動作は、手加減の文字は知らずに音を立てて、殴る姿は隊員達は止めようが無い。


 ボロボロになるコロディアの姿をただ、見ることしかなかった。


「コロディアちゃ〜んそんなに殴ったら、また可愛い顔に傷ができるよ?」


 コロディアを痛めつける手を止めたのは、階級を証明する、赤い制服を身にまとった男だった。


「離していただけますか?楽譜のひとつも消せなかった戒めです」


「でも。失敗したよね?現実受け止めなきゃ〜」


 口調は軽々しいが、現実を受け止めないコロディアには、行動を改めさせるには十分な一言だった。


「すみません、取り乱しました。処罰ならなんなりと」


 冷静さを取り戻したコロディアは、男に罰をもらうように促す。しかし、男は罰を気にしている様子は、感じられなかった。


「いいでしょ?今のが罰で、次は分かっているよね?」


「はい、コロディアは法に従うまでです」


 今回は許す。だが、次はない。釘を刺されたのは、少なからずコロディアだけではない。ここにいる隊員全員に向けた言葉だ。


2章終わりました。見ていただきありがとうございます。明日から3章に入ります。是非今後も楽しんでもらえますと、幸いです。


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