楽譜24.100もの2
イロハ達が戦闘車両から出て直ぐ、車内はコンサートホールから、いつもの休憩スペースへ戻った。
床下からソファが出ると、流れるように皆がソファーへ腰を落とす。
「エレオスもこっちに座りな〜」
全員が疲れを癒しているが、エレオスは座らずに立っていた。まだ何も知らない俺達の前で、くつろぐことを遠慮したのだろう。
「エレオス座って」
ヘードネはポンポンとソファを叩き、隣に座るように促す。ヘードネナイス!心の中で親指を立てた。
エレオスは誘いに乗ってヘードネの隣にちょんと、座った。
「飲み物なんかいる?」
「えと…」
まずはお茶でも飲みながら、これからについて話そうじゃないか、しかし、彼はまだ遠慮しているようだ。
「オレンジジュース」
「それはヘードネが飲みたい物でしょうが」
「オレンジジュースが飲みたい」
先程のように助け舟は出なかったか、この子は優しいのか、優しくないのか、その欲は結構!オレンジジュースね多分あるよね?
「素直で結構、シンフォニア皆の分お願いできる?」
「直ぐにお持ちします」
「ありがと〜」
シンフォニアが頼んだから、多分飲み物は困らないかな、再びエレオスの顔に向き合って、話を再開する。
「エレオス演奏ありがとう、本当に助かった」
「いえ!僕がお役に立ててよかったです」
エレオスは両手を振って「自分はまるで、大したことをしていないと」と思っているけどそんなことは無いんだけどね。
「それで、だけどエレオス、俺たちと行動を共にして欲しい」
テトラから話を聞いてから、保護が優先だった。戦力関係なく、政府にまた命が狙われるのは、時間の問題だ。
「それは…いいのでしょうか」
「良い、悪いより君は語り手だ。政府に命を狙われる身。今日でわかっただろう?」
「はい…」
彼の重い一言は、政府の恐怖を味わったのだろう。彼には言いづらいことが多いそうだ。直ぐに話せとは言わない。
「君のことは聞かない。話したくなった時に言いなさい」
直ぐに人に頼ることは難しい、時間が必要だ。音楽の演奏が上手くなるように、物事は少しずつ前に進めなければならない。
「自由に演奏をしても良い。作っても良い。何か聞きたいことがあったら、周りに言うんだよ?」
彼の小さな頭をゆっくりと、撫で回す。エレオスはようやく心が落ち着いたのか、両目に涙がこぼれ落ちる。
「…ありがとうございます!」
「一人でよく頑張ったねエレオス」
声を静かに出して、涙を流すエレオスは皆見守り続けた。そこで、車内からエレオス以外の泣いている声が入って来た。
「おっ、イロハいつのに怪我は大丈夫?」
「テトラの処置で楽になりました!」
声の正体はイロハだった。適切な処置を行なった事で、イロハの表情は先程よりも楽なようだ。にしても、もらい泣きとは感性豊かだ。
「それは良かった。顔ぐしょぐしょじゃん」
「だって、エレオスを見ると泣けてしまって」
「泣くのはわかるけどさっ!無事に敵から逃げられたし、今夜は二人の歓迎会をしよう〜」
暗いお話はこれでお終い!イロハが来てからドタバタして、歓迎会をしなかった。
皆で美味しい物をいっぱい食べて、今後の話を沢山しようじゃないか!
「クソ面倒なことになった!」
「えっ?歓迎会いいじゃないですか〜」
ノリの良いイロハとノリの悪いセレナーデ、特訓の甲斐があって二人の会話も弾んでいるようだ。
いいね〜仲が良くなってるじゃん!と二人の関係に小さな喜びを覚える。
「テメェは何も知らないから言えるんだよ!」
「さぁ!決まったら飾り付けと料理をしちゃうよ〜ん」
皆のモチベーションが高い内に早く準備を済まそう!いや〜いつも以上に楽しくなっちゃうぞ〜食べ物は何がいいかな?
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戦闘車両がゴールド色やシルバー色の飾り付けが、壁に貼り付けられている。
しかし、そこにはアンバランスな、和風の飾り付けが混ざっている。
『イロハ、エレオス歓迎会!』
半紙の上で豪快に書かれた文字は、少し照れくさい。まさか、歓迎会をするとは思わなかった私は、飛んだサプライズだ。
「イロハ食べてる〜」
「はい!とても美味しいです」
テーブルの上にある料理を、各々の取る形式だ。サラダの野菜は水々しいく、なんと、その上にはサーモン!他の料理は選ぶのに迷ってしまう。
「ふふん〜喜んでくれて良かったよ」
「どう?イロハこの数日は」
「どう?と言われましても‥まだ私は学ぶ事が多いと思い知りましたね」
何度も何度も考えて実行して、短い間でも頭をどれだけ使ったか、音楽はやっぱり奥深くて、楽しい物は変わらない。
「そっか、今日は沢山食べてね!明日からも頑張ってもらうからね」
「はい!」
さぁ〜まだ料理は沢山ある食べるぞ!このお肉は何だろう?こんがりと表面が丁寧に焼かれている。美味しそうだ。
「あの!イロハさん!」
「エレオス!食べてる?」
「は、はい食べてますよ」
ヘードネと仲良くしているから、私の元へ来る事は予想外だ。何か話したい事があったのかな?一度持っている皿をテーブルに置く。
「そう、何か私に話したい事があったのかな?」
エレオスの目線に合わせて顔を見ると、目が泳いでることがわかる。小さい子の初対面の印象が悪いのかな?私…
「その!イロハさん!助けてもらってありがとうございます!」
「…!」
必死に声を出したエレオスに車内の皆の視線が向かれる。突然のお礼に私は返す言葉が、直ぐに思い付かなかった。
「えと、ありがとうね?お礼言ってくれて、私もエレオスが組織に入って嬉しいな」
まだ新人の私がお礼を言われるのは、予想してなかった。危険な目に合わせてしまったし、最後の演奏は手を止めることもあった。
それでも、言葉を伝えてくれたエレオスは、私からも感謝の気持ちを伝えたかった。
「僕も組織に入れて嬉しいです!」
満面の笑顔のエレオスに私は、必死に小さな命を守れて心から良かったと、実感した。
車内は皆の楽しいそうな会話が聞こえる。この日は私の思い出の1ページに綴られた。
本日も観ていただき、ありがとうございます。2章は終わりに近づいています。




