楽譜21.クレデンス・ユスティティアム3
レーテメンバー全員が、逃げるためのオン源を生成している中、リーダーのシナヴリアは敵勢力の迎撃に備えていた。
「演奏に色が出てきたな」
汽車の窓から聴こえている演奏に耳を澄ませると、各々が好きなように演奏をしている。やっぱり生身の人間が演奏している姿は、楽器の音色がわかる。
「心配は無くなった」
エレオスは語り手らしいから、心配はなかった。イロハは最近まで一般人だった。その中で楽譜以外の演奏は難しい課題だった。
「最初は難しいと思うけど、頑張って欲しいな」
今日は違う。新しいメンバーを迎えるコンサート。一人のソロも楽しい。だが、それ以上に沢山の人間の演奏は素晴らしいのだ。
「うんうん、だいぶ良くなったよ〜イロハ」
通信機越しでイロハに声をかけ続ける。イロハ組織に入ってから張り切ってるけど、まだまだひよこっ子ちゃん。今まで、自由に音楽ができなかった反動で、急いでいる節がある。
「別に全部が完璧じゃなくてもいい。少しずつ、一歩、一歩進めばいいんだ」
教科書通りでしかない、演奏。自由な演奏も知らない子だ。
さっきは間違えて随分、焦っていたけど周りの音に引っ張られて立て、直しているようだ。
ガコン、ガコンと汽車は遠くへ走る。それを許さないのが、政府の人間。さて迎撃に備えよう。
「大きい機体だね。いくら税金使ってんのか」
後方の空には、巨大な戦闘機。翼は大きく広げており、外装は俺たちの汽車とは、反対に楽器は一切搭載されていない。
「本当に技術あるんだから、兵器じゃなくて音楽に使えばいいのに」
政府は徹底的に音楽を取り締まる。俺も皆の音を仕上げよう。
指揮棒を上下へ振るう、演奏によって得られたオン源が集まってくる。七色のオーロラのように輝くオン源は、皆んなの思いが詰まっている。
「よっと」
巻き上げたオン源を一塊ににまとめる。コードを出す前準備に構えると、敵側は砲撃が放たれる。
レーザー状に一直線に伸びる閃光は、汽車へ発射される。赤色に光り輝くレーザーは、当たると木っ端微塵だ。
「フィレオー・トゥリト」
だが、俺のフィレオー•トゥリトは攻撃、防御に対応したコード。これぐらいの攻撃は防がなければ、リーダーの名を廃する。
列車に攻撃が当たる直前、七色のシールドがレーザーの砲撃を難なく相殺する。
「皆んなが好きなように弾いている。いいね」
耳をすませば、好きなように演奏しているね。セレナーデは流石、ベースが上手いな。イロハが戸惑っているときに裏で、皆のリズムを取っていたのは知っている。
「ふーむ、エレオスはピアノは得意と言ったけど上手だな」
楽しそうだ。聴いていてわかる。みんなの演奏が、さて、近づいてくる怖い女隊長を追い払いましょうか。
政府の機体は相変わらず、強そうな装備しちゃってまぁ、全部俺が壊すけど。
「にしても」
政府の人間も隊長一人で戦わせるなんて、相当な信頼があるね。相変わらず。
よく、あの暴力女について行くのは、俺には絶対無理!
「…!フィレオー・トゥリト」
暴風雨のように素早く迫りくる。強者の風格。音楽管理組織『ディケ』の隊長コロディア。いつ見ても絶対的女王様のようだ。最初の攻撃が早い。コードを出すのもギリギリだ。
「脆い守りだな」
「ハッ!お前は楽譜の曲は使わないのか?」
「必要ない。私はこれで十分」
音もなく剣をさばくのは、心臓に悪い。剣一つで捌く姿はいつ観ても、敵ながら称賛するよ。
「そうですか〜本当に音楽嫌いだな!」
楽譜なしでも、この実力。俺は皆の力がないと負けてしまう。
弱い人間だ。だから、演奏の力を借りるよ!車内の窓から溢れている曲を俺の曲に取り込む!
「フィレオー・トゥリト」
オン源を収集して、まとめ上げて、放つ!一つにまとめ上げたオン源は巨大な竜巻が生成される。強風が起こされて、バサバサと空気が切る音が鳴る。
しかし、コロディアは持っている剣を横へ大きく振りかざすと、コードの竜巻は一刀両断このコードじゃやっぱりダメか。
「フィレオー・プロト」
もう一度だ。演奏の音をまとめろ。この女はただのコードじゃ時間は稼げない。
『大丈夫だよ、シナヴリアまた曲を創造するよ』
語りは俺にはいない。でも、心の中で生きてる。姿が変わっても君の声はずっと、聞こえてる。優しいお前の声に耳を傾ける。
そうだよな、フィレオー。何度でも、何度でも音を一つにしよう。
「フィレオー・テタルト」
指揮棒を振るってみんなの音楽をまとめ上げる。これが俺とフィレオーの楽譜の奏で方だ。七色の光の槍がコロディアへ降り注がれる。だが、彼女は表情一つ変えずに剣を巧みに操り、矢は破壊される。
「シナヴァリア、こんな雑音に何に価値がある?」
「価値があるか、無いかじゃない。音楽は楽しいものだ」
今の時代音楽はエネルギー製造機。政府が音楽を管理し始めてからだ。
でも、管理が無ければ、今の平和がないのは事実だ。
「違う貴様は本当にわかってないな、弱い者同士が群れているだけだろ」
「弱い者?演奏は一人でもできる。けど、多彩な音は一人じゃできない!何故わからないんだ、コロディア!」
イロハのヴァイオリンが聴こえる。セレナーデのベース、俺の曲が再び合わさる。
怒りはない。ただ彼女に分かってほしい。理解してほしい。思いを届けるように、まとめ上げた音を指揮棒に込める
『若い才能を失うのは、うんざりなんだよ』
「フィオー・ペンブト!」
それは、フィレオーのコードの最速最速を誇る。一直線に向かう、オン源のブレードはコロディアの剣を捌く前に頬を掠める。
「シナヴリア…」
やっと当たった。いつもいつも、しぶとくて、参るよ。さて、オン源は少し当てた。あとは時間勝負だ。彼女がどうやって、この場を乗り越えるのか俺たちの運命を握る。
いつも観ていただき、ありがとうございます。今後も良い作品を書くように精進します。




