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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第2章:快楽の楽譜編
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楽譜18.ユー・メイ・ドリーム

 不完全なドレスコードの戦闘で状況は大きく傾いた。相手は怒りに乗るまま、謎の物体を出した。

 だが、シンフォニアの介入でそれは行動は阻止させる。


「レーテのシンフォニアじゃん」


「私の名前を知ってもらって光栄です」


 シンフォニアは身動きが取れないように、強く拘束する。また、何をするのか、分からない。警戒心は高まる。


「これが何なのか、貴方は知っているでしょう?一般人も殺すつもりですか?」


「オン源弾、それぐらい知ってるし!」


 拘束していた腕を赤髪の青年はくるりと、身体を回転させる。

 すると、回った反動で拘束は解かれた。青年は先程よりも表情は落ち着いていた。


「セレナーデだっけ?ボロボロで戦う姿、潰し甲斐がある、今度は完全なドレスコードで戦わせてね〜」


 ヒラヒラと手を振って、また人混みの中へ入っていった。シンフォニアが来なかったら、本当に危なかったと、自身の額の汗を拭う。


「いってぇ」


 ズキズキと耳からの痛みに耐えるように音を両手を使い、遮断する。やはり不完全なドレスコードは負担が大きい。


「…大丈夫ですかセレナーデ」


「すんません、助かりました」


「いいえ、よく頑張りました。セレナーデのお陰で皆無事ですよ」


 緊迫していた時間は、シンフォニアの言葉で解かれる。

 長い戦いがやっと、終わった。眩い光にふわっと、灯るとドレスコードは解除された。


「疲れたぁー!」


 大きな声で叫んでしまうほど、疲れていた事に街中だと言うのに、俺は大の字に倒れ込んだ。シンフォニアは微笑みながら近寄る。


「街中で寝転ぶとは、相当疲れたんですね」


 疲れるに決まってる、普段はこんな大胆な行動をしない。これも新人の影響だろうか…


「疲れるだろ…です」


「ふふっ、また変な敬語出てますよ」


「ウッス」


 返事もしっかりと出来ない事に想像以上に疲れていた事を知る。

 流石にそれは許さないシンフォニアは、パンパンと手を叩く。


「リーダーもそろそろ来ます。準備しますよ」


「セレナーデ怪我してるから、早く列車に行こ」


 ドレスコードを解除したので、テトラも俺の隣に立っていた。伸ばされた手を手に取り、再度立ち上がる。


「わーてるよ」


 いつもよりも疲れが溜まっており、無茶な戦い方をしたのに、やりきった気分で満ちていた。

 今なら、テトラに聞けるかもしれない。恐る恐る俺は内に秘めている気持ちを吐露する。


「なぁ、テトラ」


「何?」


「俺の曲はあの新人に劣っているか?」


 聴いて何か変わることはない。劣っていることも分かりきってる。

 戦っている時にずっと、考えていた。やっぱりコードを出すのにも苦労する。


 自分を弱さを認めることは辛い。卑下してくれた方が、これからのために切り替える気持ちになる。


「ねぇ、セレナーデってヘードネが組織に入ってからずっと顔が曇ってたよね」


 曇っているか、言われてみれば、そうかだったかもしれない。


 ヘードネがこの組織に入ったのは、偶然だった。その偶然が重なり合い、曲を作ったら、ヘードネの作り手になった。


 その時からだった。テトラの関係が、一気に離れていったのは…


「そうだな、俺は力が無いことにイラついていた。今日テトラの創造する曲を久しぶりに聴いて気づいた」


 ヘードネは幼子まだ未熟だが、テトラは正確な曲を創造できる。自分の中で比べていた。


 出来ないことをいつまでも、認めないガキのように…しかし、今日の戦いで気づけた。どんな形であれ、曲は奏でられる。


「音楽は自由だ。音さえ出れば望むようなものに、変わる俺はそれが好きなんだよ」


 必死になって、自分が組織に入った目的を忘れていた。自由の楽譜とは何なのか?


 自ら曲を作りたい。もっと自由でなんでもアリな曲を聴きたい。その一心で組織に入った。なのに、いつの間にか、他人と比べて、勝手にへこんで、怒って、一人で考えてた。言えば良かったんだ。


「俺はテトラの作り手になれねぇ」


 語り手が望まない曲を作り続けても、意味がない。これで諦めがついた。曲を奏でることは楽しい。しかし、認められない以上、区切りを付ける必要がある。その諦めにテトラは、状況を理解していたのか、首を横に傾げていた。


「セレナーデ何か勘違いしてない?さっき、望む曲を作れなかったことが、悪いって言ったよね」


「悪いに決まってんだろ」


 きっぱりと、自分の力不足だと断言する。しかし、テトラは首を横に振って否定する。


 なんで、否定しねぇんだよ。せっかく諦めが付いたのに、テトラは俺を諦めさせねぇ!落ち着いていた心が、またふつふつと湧き出したが、テトラはいつもの無表情だ。


「違うよセレナーデ、不完全なら完成させない?皆で」


「はぁ?」


 皆で?曲作りは一人でやるものだろ?間抜けな声をだしてしまった。


 興味の関心が極端な彼が提案に回るなんて、想像すらしてなかった。ぽかーんと口をあけて、驚いている俺にテトラは、再度提案を持ちかけた。


「だから、楽譜を一緒に作る。そう言うことはダメなのかな?イロハが誰かを助けるように俺も出来そうなことをやってみたい」


 初めてだ。テトラが自分から前向きな言葉を投げることは一度もなかった。しかし、今は真剣に俺の曲を完全なものにしたいと、強く語っていた。


「いいのか?どれぐらい時間が掛かるかわからねぇ」


「大丈夫、俺はもっと、いろんな曲を創造したい」


 表情は変わってないが、テトラの言葉には、説得力があった。

 真っすぐに俺を見つめる瞳からは、嘘の文字は浮かばなかった。


「新人の影響か?」


「そうかもね」


 別に組織の仲が悪かった訳じゃない。しかし、新人…イロハが組織に入っても何も知らない。馬鹿丸出しの所を見ると、普段を忘れてしまう程の行動をしてしまうのだ。


「ねぇ、セレナーデもイロハのこと気にかけてる?」


「新人がクソ下手くそだからだ。カラオケ音漏れしてただろ」


 あのカラオケはひどすぎた。いくら普段お堅い曲しか歌わねぇヤツだとしてもだ!途中で投げ出していたら、俺はキレていたに違いない。


「でも、最後は上手く行ってた」


「あのやる気は認める。まだ初心者丸出しが多いから、直すことが多い」


「そうだね、でもイロハは何も知らないから、色々言っちゃうからいいのかな?それに釣られて俺もたくさん話しちゃうし」


 あーあー自分で悩んでいたことがアホらしくなってきた。重く考えていたのは、俺だけかよ。


「おかしくてしょうがねぇ、バカみたいだ」


「セレナーデはバカじゃないでしょ」


「バカじゃねぇよ」


 だが、テトラの天然産の返しは何も変わってない。案外話し合えばいけるモンだな。


 ちんちくりん…ヘードネにも色々謝らねぇと、こんなにも簡単な悩みなら、早く解決したほうが良かったぜ。さて、あとは全員と合流すれば一安心だ。


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