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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第2章:快楽の楽譜編
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楽譜17.サルバ・ノス4

 シナヴリアとソノタが戦いを繰り広げている頃、テトラとセレナーデの戦況は最悪だった。一方的な戦いだった。


「そろそろ飽きたよー」


「うるせぇ!」


 セレナーデの持っている武器は拳銃しかない。相手はナイフでザクザクと、切りつける。隙がない。服もナイフにより裂け始め、ポタポタと血が流れる。


「傷だらけでボロボロ、曲作りって楽しいかな?」


 管理された音楽、今の世の中で曲を作ることが楽しいとは、赤髪の青年は到底理解できない考えだ。


「はぁ?テメェは何も知らないようだな」


 セレナーデは自由の楽譜を求めるレーテの一員。普段知らない音楽を多く聴いてきた。音楽の素晴らしさ、尊さを知っている人間だ。


「堅い曲しか無い世界に俺はつまらない」


 セレナーデもこの世に退屈している。その中で心の底から、追い求めている物がある。知っているなら、追いかけるしかない。


「自由の楽譜に何があるか、俺は知りたいんだよ」


 退屈していた日々に、彩りを与えたのは音楽だった。だが、今の時代は自らの手で、思い描く音楽が作れない。


 だから、自分の手で自由に作れる音楽を求めるために、戦っている。


「俺は昔の人間の方が羨ましいぜ、自由に曲作って、歌って、弾いて、何も縛られない」


 嘘のようだった。昔の人間には当たり前だったことが、今ではできない。セレナーデは何もできない歯痒さに苛つきながらも戦う。


「こんな楽しいこと、今の時代ねぇだろうが!来い!テトラ」


「うん!」


 通常ドレスコードは楽譜の内容が、語り手の思い描く、一致度が合わないと不可能だ。しかし、セレナーデはこの状況を打破するために、ある手段を選んだ。


 テトラもセレナーデの動きを見て、瞬時に判断した。彼が伸ばす手を取るように掛け寄る


「コイツらまさか!」


 相手が気づいた時には、遅かった。セレナーデは懐から楽譜を取り出す。楽譜は普段使っている物より、随分と古びている物だ。それは、ヘードネの楽譜ではない。


ハラ・アルモニア!!(喜びの曲)


 イロハの持っている喜びの楽譜ではない。それは、セレナーデが自ら作った喜びの楽譜。彼女がレーテに来る前は、セレナーデは喜びの楽譜の作り手でもあった。


「だっさ!君語り手と作り手合ってないでしょ」


 ドレスコードは名前は同じだが、セレナーデは本当の喜びの楽譜ではない。現に彼のドレスコードはイロハの物とは、到底違う。一致しているのは、サーベルのみ。


「だから何だよ、わかってるんだよ俺は、テトラが望む楽譜が作れなかった。それだけだ」


 作り手には曲作りの才能が秘められている。その才能があるからこそ、語り手の望む曲が作れる。

 

 しかし、わずかにも望む曲がズレてしまうと、今のセレナーデのような、不完全なドレスコードになってしまう。


「テトラすまねぇ」


 望まない曲を創造するのは、テトラに申し訳ない気持ちでしかない。だが、事態が緊急のため、この方法しか思い付かなかった。


「大丈夫俺は語り手、作り手の曲に合うよに、曲を創造する」


「無理はするな、逃げる隙が出たら、直ぐに演奏をやめる」


 曲が奏でられる。テトラの創造する曲がセレナーデの耳元に入る。僅かにに聞こえる音を頼りにコードを出すように、タイミングを測る。


 そもそも、セレナーデは不完全なドレスコードだ。


「「ハラ•デフテロ(喜びの二番目)」」


 二番面のコード、鋭い一線が放たれるが、軽々とジャンプをして避けられる。セレナーデは予想が当たり、小さく舌を打った。コードのタイミングが相手に読まれている。


 戦闘で彼の実力は想像していたが、ここまで軽く攻撃を避けるのは、厄介だ。


「ふーん適正は少しあるから、コード出せるようだね」


「がちゃがちゃうるせぇな、政府の犬は適正って言う言葉にしか、従えないのか?」


「はぁ?」


 政府の中でもトップを自負している青年にとって、セレナーデの言葉は僅かながらも、感情を乱す一言になった。


 従っている。青年は自分よりも下の相手を痛めつけることが、政府に所属している意味を持っている。


 誰よりも自由に生きている。そう考えている中で「従う」は何よりも嫌いで仕方なかった。


「言わせておけば!」


「やっと出たなぁ!余裕のねぇ顔を!」


 二人は、三度剣を交える。セレナーデはテトラが創造する曲を必死に聴きながら、コードのタイミングを作る。


 ナイフとサーベル、力は圧倒的にセレナーデが有利だが、青年の素早い動きがセレナーデを翻弄する。


「「ハラ•デフテロ(喜びの二番目)」」


「当たらないって言ってるだろ!」


 青年の表情が次第に曇ってきた。コードを避けることが簡単でも、タイミングがズレれば戦況は一気に傾く。


 不完全だろうとコードは発動している。相手の集中力を奪う。これがセレナーデの作戦だった。


「もう街はなんかどうでもいい、お前をつぶす!」


 痺れを切らしたのか、青年は声を上げて、懐から丸い物体を取り出した。セレナーデはその物体に見覚えがあった。


 直ぐに彼の持っている物体を離さなければ、セレナーデどころか、市民にも危害が及ぶ。必死に手を伸ばし、彼の行動を止めるにも間に合わない。


「そこまでです」


「はぁ?」


 音もなく背後から現れた、紺色髪の女性。物体を持っている方の手首を強く握り、床に落ちる前に反対の手で掴む。


 セレナーデは胸を撫でおろす。女性の正体は、レーテの操縦士シンフォニアだった。


いつも観ていただきありがとうございます。2章はまだまだ続きます!

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