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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第2章:快楽の楽譜編
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楽譜16.サルバ・ノス3

 青色と赤色の服装を纏う二人が相対する、レーテのリーダーシナヴリア。

 政府上層部の人間ソナタが、鋭い視線を向け合う。今に戦いの火蓋が開かれる。

 

 私はシナヴリアさんからもらった止血パットで傷口を抑える。こんな傷生まれて始めてだ。普段なら、泣いているだろうか?

 でも、今は考える暇は一切ない。なぜなら、二人の姿だけで、痛みなど忘れる怖さがあるからだ。

 

「シナヴリア…」


「赤い隊服、君の階級は上のようだね」


「だから、なんだ」


 怒りがふつふつと湧き上がっているソナタとは、対象にシナヴリアさんの感情は起伏はない。それは、負けることのない、強者の余裕のようだ。


「別に政府の犬でも、法律は気しているんだなって」


「隊長に向かって何てことを!」


 ソナタは私とのやりとりで、感情のコントロールができなかった。市民が大勢いる中で、拳銃を再度構えてしまった。


「行こうかフィレオー」


 懐から、シナヴリアさんは、オン源ミュートが付けられている楽譜と青色の石を取り出した。語り手がいないのに、ドレスコードに換装ができるのか?その心配は直ぐに無くなった。


「大丈夫、シナヴリアは語り手が、居なくてもいい」


 オン源ミュートを取り外した瞬間、青色の石が強く光を放つ、楽譜から音符も滝のように溢れ出した。


 楽譜から流れる曲は、とても暖かな音だ。曲調もスローバラード、楽器の音も派手ではない。しかし、曲には癒しをもたらすような、コーラスが一瞬で周りを魅了した。


フィレオー•アルモ(友愛の曲)ニア」


 楽譜、語り手、作り手が無ければ換装すら、不可能だ。だが、シナヴリアさんは、それを可能にした。

 煌びやかに輝く、スノーホワイト色のドレスコードは、レーテのリーダーにふさわしい格好だ。


「語り手が結晶化しても、力はあるようだな」


「アンタの所もそうだろ?俺は結晶化の影響で力は全く出ないよ」


「隊長は別だ。まとめて此処で殺す」


 結晶?あの石はシナヴリアさんが、ドレスコードの換装をさせるためのもの?

 でも、力が出ないと来たら、何故そうなったのか?分からないまま、話は進む。


「あのさ、殺すことしか考えられない?せっか良い才能があるのに、もったいないよ」


「私だって自由があるなら、そうする!」


 曲は再び、始まる。ソナタの音色とシナヴリアさんの音色が混ざり合い。ホッカイドウの戦いを思い出す。


 戦いが始まったのにシナヴリアさんは、手元に武器を持っていない。どのように戦うのか、先に仕掛けたのは、シナヴリアさんだった。


「君の持っている曲は、俺が使う」


 シナヴリアさんの手には。銀色の指揮棒が握られていた。指揮者は音の入り、テンポの強弱の指示で演奏のバランスを調整する者。


 それを体現したようにシナヴリアさんは、指揮棒を大きく振るった。


フィレオー•プロト(友愛の一番目)


 コードの詠唱、周りのバラバラだった音が、一つになった。突然の曲調の変化に私は、思わず身震いをした。 


「曲が纏まった…」


 真反対の曲が一つになった。重々しいソナタの曲の特徴である。パイプオルガンの音色は、全く違う物に変わった。


 変わった曲は言い表すなら、神から許しを得た罪人の曲。どれだけの悪事を重ねても、神が罪を認めたものには慈悲が宿る。心が浄化されるような、優しい曲が流れる。


「俺とは真逆の曲調でも、合わせれば、こうも楽しい。コードのタイミング、分からなくなったでしょ?」


「貴様!」


 すごいソナタは自分の曲がシナヴァリアさんのコードの影響で、身動きが取れない。自分の曲が全く違うものになっただけで、こうも、作り手影響するとは!


 しかし、シナヴリアさんは曲を合わせているだけで、攻撃はしない。これも作戦だろうか?


「俺の曲フィレオーは協調、どんな曲でも対応できる」


 軽く、指揮棒を振るっただけで、曲の続きが創造された。語り手なしでもこの力量。これが、レーテのリーダシナヴリアさんの実力だ。


「綺麗な曲、あっ動画!」


「俺も!」


 市民達は、先程まで武器を振るっていた人間を忘れるぐらいに、曲に心に魅了され、心を弾ませていた。今この瞬間を収めようと、携帯で動画の撮影や曲について語っている者が沢山居た。


「イロハこれが俺たちが、求めている音楽だよ!」


 自由がこの場にある。法律に縛られずに伸々と音楽を奏でている。

 皆が音楽について、語り合っている。これこそが自由な音楽だ。


「はい!」


 楽しい。楽しい!自分で曲を作るのも聴くことも好きだ。この世には、誰もが自由に音楽を奏でる権利があるんだ!


「楽しそうだな、私も入れろ」


 曲を遮断するような、凛と聴こえる声に周りが凍りついた。カツカツと、ヒールを鳴らしながら歩く姿は、曲が奏でられてると言うのに、この場の人を全員、釘付けにした。


「あのさ。楽しい事してたのに、邪魔しないでよ政府の犬さん」


 シナヴリアさんが指揮棒をまた振ると、曲が止まってしまった。周りが曲の中断に残念がる姿に、彼女はキッと睨みつけた。


 赤い隊服ということは、政府の人間でも、かなり上だ。それにソナタは女性の姿を見た瞬間、声も出さずに目を見開き驚いていた。


「騒ぎすぎた。一般人にも情報が漏洩してしまった」


 何故これがダメなの?一方的に終わる曲ほど、名残惜しいものは無い。この女性は政府のどんな人なの?


「此処にいる全員を拘束する」


「はぁ!?なんでよ!私達はともかく、曲を聴いていた人は関係ないでしょ!」


 思わず声を上げてしまった。だってただ曲を聴いている人は何も関係ない。


 美しい曲は誰でも聴く権利がある!


「お前が喜び(ハラ)の曲作り手、本当に何も知らないようだな!」


 速い!瞬きしただけで、私の目の前に来た。ヘードネとエレオスが危ない!守らないと!二人の目の間に両手を大きく広げて、攻撃の手から守る体制を取る。


「イロハ、逃げるよ。守る体制は正解だったよ」


「は…はい」


 助けられた。シナヴリアさんはなんと、指揮棒で女性の鋭い剣先を止めていた。女性はシナヴリアさんに殺意を込めた視線を送る。


「いつも私の邪魔をするな、シナヴリア」


「邪魔はするよ、コロディア」


 二人の関係とは一体何なのか?ただの対立ではない。それ以上に強く硬い糸で、繋がれているようにも見えた。

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